貧血診療内容/内科

貧血とは?

貧血は、血液中で酸素を運ぶ赤血球のヘモグロビン濃度が減り、全身で酸素が不足してしまう状態です。

 

人間の活動のためには十分な酸素が不可欠ですので、貧血が進行すると体が疲れやすくなり、不足した酸素を取り込もうと心臓や肺が無理をして、動悸や息切れなどがおこります。

 

貧血になると、本来は充血しているはずの眼瞼結膜(アッカンベーをした時の目の下の部分)が蒼白になります。これが最もわかりやすい身体所見で、診断は採血して血液を調べることで確定します。

 

「貧血」というのは病名ではなく、「状態」です。大切なのは「なぜ貧血がおきているか」ということで、原因や程度により対処は異なります。

 

よく見られるのは鉄不足による貧血で、およそ70%程度が鉄欠乏性貧血になります。ですが、子宮筋腫や胃潰瘍やがん、腎臓や免疫の病気が原因の貧血もあるので注意が必要です。重大な病気が原因ではないとしても、貧血の状態を放置すると、様々な臓器に負担がかかります。健康診断で貧血が指摘されたときは、「たかが貧血」と軽く見ず、医療機関を受診してください。

 

貧血治療の専門家は血液専門医になりますが、総合病院でも在籍していないことが少なくありません。当院では複数の血液内科専門医が在籍していますが、限られた曜日と時間帯になります。事前に連絡いただければ、血液専門医の診察予約をおとりすることができます。

 

クリニックで可能な検査を行い、骨髄穿刺といった精査が必要な方は、提携している総合病院にご紹介させていただきます。原因が判明してクリニックでの通院治療が可能な場合は、当院の血液内科外来にて継続的な治療を担当させていただきます。

貧血の定義

貧血の原因に関わらず、

  • 末梢血管内の血液中ヘモグロビン(Hb)濃度が基準値以下=貧血

と定義されます。一般的な採血検査で調べることができます。

 

ヘモグロビンは血液中の赤血球の主要成分で、血の赤い色をつくる血色素です。ヘムという鉄とタンパク質が結びつき、全身に酸素を運ぶ重要な働きをしています。この濃度が減少すれば血液が運べる酸素量も減り、全身が酸素不足の貧血状態になってしまうのです。

 

「貧血」と聞くと「血液が少ない」「血の巡りが悪い」と考えがちですが、血液量があってもヘモグロビン濃度が低ければ、貧血になります。ヘモグロビンが足りていない血液は、いくら巡っても十分な酸素を運ぶことができません。

 

血液は、

  • 赤血球
  • 白血球
  • 血小板
  • 血漿(液体成分)

から構成されていますが、「貧血」の定義は、血液中の赤血球内ヘモグロビン濃度によるものです。血液の全体量や巡りの良し悪しとは関わりません。

 

ちなみに、血の巡りが悪い状態のことは「虚血」といいます。ある部分で血流が減れば、その部分の赤血球(内のヘモグロビン)量は減りますので、酸素不足の状態がおこります。急激に酸素がまったく運ばれなくなってしまうと、その周囲の臓器や組織が壊死してしまいます。

貧血の分類と検査データ

ヘモグロビン濃度が減った貧血状態は、

  • 赤血球自体の重量(数や大きさ)が減少している
  • 赤血球内のヘモグロビンが薄くなっている

のいずれかが考えられます。

 

赤血球のサイズによって、貧血を以下の3つのタイプに分けることができます。貧血が認められた場合、まずはここからみていきます。

  • 小球性貧血
    赤血球のサイズが普通より小さい。赤血球をつくる鉄などの栄養素が不足するとおこる。
  • 大球性貧血
    赤血球のサイズが普通より大きいが、全体量は不足している。赤血球細胞のDNA合成に関わる葉酸やビタミンB12の不足でよく見られる。
  • 正球性貧血
    赤血球自体は正常だが、全体量が不足している。溶血などで赤血球が多く失われている疑いがある。

 

サイズの目安となるのは、MCV(平均赤血球容積:Ht/RBC×10)という値になります。これによって、赤血球1つあたりの大きさがわかります。検査機関によっても検査基準値が異なりますが、およそ80~100の間が正球性となります。

 

また、ヘモグロビンの濃さから2つに分類できます。

  • 低色素性貧血
    赤血球の体積あたりのヘモグロビン重量が少ない。小球性貧血とセットでおこりやすい。
  • 正式素性貧血
    赤血球の体積あたりのヘモグロビン濃度は正常だが、全体量が不足している。正球性貧血と同様に、何らかの原因で赤血球が失われている可能性がある。

 

ヘモグロビンの濃さの目安となるのは、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度:Hb/Ht×10)という値になります。これによって、赤血球全体に含まれるヘモグロビン濃度がわかります。こちらも検査基準値が医療機関によって異なりますが、およそ31~36の間が正色素性となります。

貧血の検査と診断

貧血かどうかは採血検査で調べられます。

  • 血中ヘモグロビン濃度(Hb)が基準値以下

なら貧血と判断できます。

 

ヘモグロビン濃度によって貧血が認められたら、次はその原因を調べます。貧血の原因は実に多彩で、原因によって治療方法も異なりますので、何が原因によって貧血がおこっているかが重要です。

 

患者さんの症状や生活状況や病歴を聞き取り、採血検査に他の項目を追加して考えられる貧血の原因を推測した後、より詳細な検査を行うこともあります。

原因判別のために参考となる情報の例

  • 自覚症状
  • 顔色や眼瞼結膜
  • 月経、妊娠の状態(女性)
  • 持病、病歴
  • 飲んでいる薬
  • 食事の状態

など

原因判別のために行う採血以外の検査の例

  • 月経の異常がある女性
    →婦人科での超音波検査
  • 胃の不調や体重減少のある方
    →上部内視鏡(胃カメラ)
  • 血便が見られる方
    →便潜血(検便)や下部内視鏡(大腸カメラ)
  • 便潜血に異常が認められた方
    →下部内視鏡

など

原因判別のための採血項目の例

  • 血清鉄(Fe)

血清とは、血液の中の液体成分のことです。血清鉄(Fe)は、その液体成分である血清中に含まれる鉄分になります。血清鉄が低下している貧血ばかりではなくて、原因によっては増加します。

 

血清鉄が低下している場合は、鉄欠乏性貧血が一番多いですが、貯蔵鉄の利用障害(炎症性貧血)や消耗性疾患(悪性腫瘍など)、赤血球増加症などがあります。

 

血清鉄が増加している場合は、鉄利用障害(再生不良性貧血)や鉄過剰状態(ヘモクロマトーシスや悪性貧血)などが考えられます。

 

  • 血清フェリチン値

体内の貯蔵鉄の量を示しています。つまり、鉄分の貯金になります。鉄欠乏性の貧血で低値になります。

 

  • 不飽和鉄結合能(UIBC)

血清中の鉄は、すべてトランスフェリンと呼ばれる血清蛋白とくっついて存在しています。UIBCは、トランスフェリンと結合していない鉄の量を意味しています。鉄を欲している状態かどうかがわかる指標になります。

 

  • 網赤血球数

網赤血球とは若い赤血球のことで、血液を作ろうと頑張っているかどうかが反映されます。

 

骨髄での造血機能が弱くなると減少します。網赤血球数が少ない貧血状態なら造血機能の異常を疑い、多い状態なら慢性出血や溶血の可能性が疑われます。

 

  • 葉酸・ビタミンB12

葉酸やビタミンB12は、赤血球を造るときに必要なビタミンです。不足してしまうとDNAの合成がうまくいかなくなってしまい、赤血球の元となる赤芽球が正常に作れなくなって異常な巨赤芽球が作られます。

 

このため、巨赤芽球性貧血と呼ばれる大球性貧血となってしまいます。例えば、胃を切除した後はビタミンの吸収がうまくできなくなって生じることがあります。それ以外にも、萎縮性胃炎によって胃粘膜の内因子が不足してしまうと、ビタミンB12をうまく吸収できなくなってしまいます。このような貧血を悪性貧血といいます。

 

  • 赤血球数(RBC)

1dLあたりの赤血球数を示しています。赤血球数が正常なのに貧血の場合、鉄欠乏などで小さく低色素の赤血球ばかりになっている可能性があります。

 

  • ヘマクリット値(HtHct)

血液全体に対する血球成分の体積の占める割合を示しています。血球成分は95%程度が赤血球によるため、血液内の赤血球の割合を示す数値と見ることができます。

 

  • 平均赤血球容積(MCV)

ヘモグロビンや赤血球数、ヘマトクリットなどから計算して求めることができる指標のことを赤血球恒数といいます。

 

MCVは、ヘマクリット値を赤血球数で割って算出した数値に10をかけて求めます。低値なら鉄欠乏などの小球性や低色素性の貧血、高値ならビタミンB12や葉酸不足などで見られる巨赤芽球性貧血が考えられます。上述しましたが、貧血の原因を考えるときに重要な指標です。

 

  • 平均赤血球ヘモグロビン量(MCHC)

MCHCも赤血球恒数のひとつで、ヘモグロビン濃度を赤血球数で割って10をかけて求めます。低値なら鉄欠乏など低色素性、正常範囲ならその他の原因が考えられます。

ヘモグロビンの基準値について

ヘモグロビン(Hb)濃度は、1dL(デシリットル)あたりのヘモグロビン重量(g)で示されます。血液検査上で貧血と判断される基準値の目安は以下の通りです。

  • 成人男性 1314g/dL未満
  • 成人女性 12g/dL未満
  • 80歳以上11g/dL未満
  • 妊娠中10.511g/dL未満

 

妊娠中の基準値が低いのは、妊娠中には血液の液体成分(血漿)が増え、結果としてヘモグロビン濃度が多少薄くなるのが普通だからです。妊娠中はヘモグロビンが少なくていいという意味ではなく、来たる出産での出血に備えて、生理的に血液量が増えてヘモグロビン濃度が薄くなっているのです。

 

これらの基準値は、ヘモグロビンの平均値から見た1つの目安です。ヘモグロビン濃度には個人差があるため、普段の量と比較し、急に2g/dL以上の減少が見られた場合は、基準値内であっても貧血状態が疑われることもあります。

 

基準値は人種や状況によって多少前後することがありますが、ゆっくりと貧血が進行した場合に症状を自覚できるのが遅れることは少なくありません。78g/dLを下回った貧血は、早急な検査や対応が必要になります。

 

そのように、貧血は進行しなければ自覚が持てないことも多いため、とくに貧血の傾向がある方は、定期的な血液検査でのチェックが奨められます。

貧血では何科を受診するのか

健康診断で貧血が指摘されたり、貧血かな?と感じたときに何科を受診すればいいのか迷ってしまう方も多いと思います。

 

貧血の専門は血液内科ですが、通常は一般内科の受診でも大丈夫です。原因の病気によっては各専門科の受診が必要ですが、その必要性があると判断された場合には、一般内科の方から紹介することが多いです。

 

女性の方で明らかな月経異常(出血量が異常に多い、出血が止まらないなど)も見られる場合には、婦人科からの受診が奨められます。腎臓、肝臓、膠原病、消化器疾患、内分泌疾患など他の内科疾患で治療中の方は、そちらの主治医に相談してみるといいでしょう。

 

健康診断や他科の血液検査で貧血が見つかり、他の病院を再受診する場合、血液検査の結果を持参してください。

貧血の症状

貧血の状態が軽度だと症状が自覚できないことも多いですが、主な症状としては以下のようなものがあります。

  • 疲れやすくなる
  • すぐ息が切れる
  • 動悸がする
  • めまいや立ちくらみ
  • 耳鳴り
  • 頭痛
  • 肩こり
  • 眠気が強い
  • 食欲不振や悪心
  • 性機能低下

などがあります。

 

ジワジワと進行した貧血の場合、酸素不足の状態に体が慣れてしまい、症状に自覚が持てない場合もあります。血液検査で「貧血」と指摘され、「私は別に疲れやすくはないのに」と言っていた人が治療を受け、貧血改善後の状態と比べて初めて自覚が持てるケースも珍しくありません。

 

健康診断で貧血を指摘された場合は、症状の有無に関わらず病院を受診しましょう。

 

また、貧血のおきている原因により、特有の合併症が見られることもあります。例えば、重度の鉄分の不足による鉄欠乏性貧血では、

  • スプーン状に爪が反って薄くなる(スプーン状爪)
  • 食べ物が飲み込みにくくなる
  • 舌炎や口角炎
  • 異食症(氷や異常に硬いものを食べたくなる)
  • むずむず脚症候群

などの症状が認められることがありますが、これは貧血による症状ではなく、からだの組織における鉄欠乏による症状です。

 

また、ビタミンB12の不足による貧血では、

  • 舌がツルツルになって痛む(悪性貧血ではhunter舌炎)
  • 年齢不相応の白髪
  • 食欲不振や下痢
  • 末梢神経障害

などの症状が見られることもあります。

貧血の原因

貧血の原因は実に多彩で、単純な栄養バランスの乱れの場合もあれば、重大な病気が関わっていることもあります。様々な病気に合併して貧血はおこります。

 

その中で一般的によく見られる貧血の原因としては、

  • 慢性出血
  • 栄養素の不足

による貧血になります。

 

慢性出血は、

  • 月経過多
  • 子宮筋腫
  • 消化管出血(胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胃がん、大腸がんなど)

など、出血の自覚の持ちにくい性器や消化管からの出血によるものが中心です。

 

栄養素の不足では、

  • ビタミンB12
  • 葉酸

などの不足で貧血がおこります。とくに鉄はヘモグロビンの主成分になるミネラルのため、鉄不足による鉄欠乏性貧血がもっとも多く、貧血全体の約7割を占めます。

 

その他の原因も含め、貧血の原因を大きく分けると、

  • 赤血球が失われている
  • 赤血球が上手くつくられていない

のいずれかが考えられます。

赤血球が上手くつくられない原因

  • 栄養の不足(鉄、ビタミンB12、葉酸など)
  • 栄養の吸収不全 (胃壁の障害、胃切除、腸の吸収力下など)
  • 慢性炎症(がん、膠原病など)
  • 腎臓の病気
  • 肝臓の病気
  • 骨髄の病気

などげ原因となります。

 

赤血球が失われる以外の貧血の原因としては、そもそも赤血球の産生が上手くいかず、赤血球が不完全だったり、全体の数が少なかったりすることが考えられます。

 

一番多いのは鉄の不足による鉄欠乏性貧血で、ヘモグロビンの原料として必須であるミネラルの鉄量が体内で不足し、十分な大きさや量の赤血球がつくられなくなってしまい貧血がおこります。腸の吸収障害によって、鉄が不足することもあります。

 

ビタミンB12や葉酸が不足すると、赤血球細胞のDNA合成に異常がおこります。ビタミンB12の吸収には胃壁からの内因子と呼ばれる分泌物が必要ですので、胃の全摘をしたり胃壁が障害を受ける病気で不足しやすいビタミンです。葉酸は妊娠中、とくに多く消費されます。

 

栄養の不足による貧血は、

  • 年齢や体質に見合った量が摂取できていない
  • 吸収力低下により摂取しても吸収されない
  • 慢性出血などで必要以上の栄養分が消費されている

3つのケースがあり、原因に応じた対処が必要です。

 

単純に摂取量が足りていないのならそれを補えばいいのですが、吸収不全の状態があれば口からの摂取では補えません。その場合は病院で点滴や筋肉注射での補充を行います。

 

栄養不足以外に赤血球が上手くつくられない原因としては、腎不全により赤血球産生促進をするホルモン(エリスロポエチン)の応答が悪くなったり、肝臓の病気や内分泌異常で腎臓由来のホルモンが影響を受けることもあげられます。

 

あとは非常に稀ですが、赤血球をつくる骨髄の造血細胞自体に問題がおこり、赤血球に限らず血液細胞すべてが減少する悪性不良貧血という難病もあります。

赤血球が失われる原因

  • 慢性出血(月経異常、消化管出血など)
  • 赤血球が壊れる病気
  • 赤血球がもろくなる病気
  • 免疫の異常
  • 振動や衝撃が過度にかかるスポーツ

などが原因となります。

 

赤血球は骨髄の中の造血細胞でつくられています。産生された赤血球には寿命があり、120日程度の周期で脾臓や肝臓で破壊されるため、通常は新しい赤血球が補充されて濃度を一定に保っています。

 

しかし、慢性的な出血や、若い赤血球が血管内で破壊されてしまうような状態があると、新しい赤血球の補充が追いつけません。赤血球が失われる原因になる病気には数多くの種類があります。

 

何らかの原因で赤血球が失われておこる貧血では、失われる原因を見つけ、治療することが大切です。

鉄欠乏性貧血

鉄欠乏性貧血は、日本でもっとも多く見られる貧血です。とくに月経のある年代の女性に多く、妊娠・授乳中にもよくおこります。また、男女関わらず成長期には鉄の必要量が増えるため、鉄欠乏性貧血がおこりやすいので注意が必要です。

 

赤血球中のヘモグロビンは、ヘムという鉄とグロビンというタンパク質が結合してつくられています。ヘモグロビンの赤茶っぽい色は鉄の色で、その大部分が鉄で構成されています。そのため、鉄が不足すると小さく色の薄い赤血球ばかりになってしまいます。その状態を小球性低色素性貧血と呼びます。

 

鉄欠乏性貧血では、何が原因で鉄欠乏がおこっているかの判別も重要です。単純な鉄の摂取不足なら鉄剤の内服で治療ができますし、食事改善やサプリも有効です。けれど、慢性出血や他の病気が関わっているならそちらの治療が必要で、腸の吸収不全のある方では口からの補充が難しく、鉄剤の点滴が必要な場合もあります。

鉄が欠乏する原因

鉄欠乏の主な原因としては、

  • 単純な鉄の摂取不足
  • 過多月経や慢性出血
  • 腸の吸収不全

があります。

 

鉄は、吸収の悪いミネラルです。摂取量の約10%程度しか腸で吸収されず、不足しやすい特徴があります。腸の働きの悪い方だとさらに吸収量が低下します。

 

私たちの体内には、通常34gの鉄が様々な形態で存在していますが、毎日1mgくらいの鉄が自然に失われており、その分は日々の食事から補う必要があります。月経のある女性や成長期の10代の方なら、さらに鉄の必要量が増えます。

 

けれど、1mgの鉄を摂取するためには、10mgほどの鉄を吸収する必要があります。そこに慢性出血、成長期、妊娠・授乳など鉄の需要が増える因子があれば、なおさら積極的な摂取を心がけないといけません。

鉄欠乏性貧血の検査・診断

鉄欠乏性貧血では、ヘモグロビン濃度の低下に加え、

  • MCV(赤血球の大きさを示す数値)80以下
  • 血清鉄が40μg/dl以下
  • 血清フィリチン(体内の貯蔵鉄量を示す)が低下 12ng/mL未満
  • TIBC(総鉄結合能)・UIBC(不飽和鉄結合能)が高値

などの数値を参考に診断をします。

鉄欠乏性貧血の治療と再発予防

鉄欠乏性貧血の治療としては、鉄剤の投与が基本です。

 

鉄剤の副作用(吐き気)があって飲めない方・吸収障害のある方には、点滴で補充します。慢性出血など他の原因がある場合は、そちらの治療も必要です。後述しますが、慢性出血を見逃さないことが非常に重要です。

 

慢性出血や吸収不全などを伴わない鉄欠乏性貧血は、日々の食事の心がけが重要な予防策です。ただ、すでに貧血が進行してしまっていると食事改善だけでの対処は難しいため、病院での治療を受けながら、再発の予防として食事を改善していくことが奨められます。

 

鉄の所要量としては、1日10mgほどが目安です。そのうち10%の1mgが吸収されます。

 

鉄には動物性と植物性がありますが、動物性の鉄はヘム鉄と言って吸収性が良いのが特徴です。赤身の肉・魚、内臓、貝類に多く含まれます。動物性食品にはタンパク質も豊富ですので、鉄欠乏貧血の方は食事に取り入れたい食品です。とくにレバーには、鉄以外にも貧血予防に役立つビタミンB12、葉酸、亜鉛などが豊富に含まれています。

 

ただ、動物性の食品ばかりで補おうとすればカロリーやコレステロールの問題がありますので、植物性の食品と合わせ、バランス良く摂取するようにしましょう。植物性の鉄はビタミンCと合わせることで吸収が良くなります。また、鉄は必要以上の量を摂っても尿に排出されてしまいます。毎日バランス良く取り入れることが大切です。

 

また、緑茶や紅茶に含まれるタンニンには鉄の吸収を妨げる働きがあります。コップ1杯の適量なら問題はありませんが、食事と一緒にガブガブお茶を飲むのは控えましょう。

鉄欠乏性貧血では慢性出血を見逃さないことが重要

産生される赤血球量やヘモグロビン濃度は健常だったとしても、慢性的な出血が続いていれば貧血がおこります。慢性出血の原因となる病気には、

  • 過多月経
  • 子宮筋腫
  • 子宮内膜症
  • 胃や腸の潰瘍やがん

などがあります。大きく分けて、

  • 婦人科系
  • 消化器系

の出血になります。

 

「出血」と言っても、外傷で明らかに血が出ているのを放置する人はいないと思います。一時的なケガによる出血だけで、全身性貧血が持続することは通常ありません。多量に出血すれば一時的な貧血状態になるものの、止血・輸血など適切な対処をすれば、じきに回復します。

 

慢性的な貧血の原因となるのは、婦人科系と胃腸などの消化管からの慢性出血です。

婦人科系の貧血

月経のある女性は毎月必ず出血をしますので、男性や閉経後の女性に比べると貧血になりやすい特徴があります。それに加え、ホルモンの乱れによる月経過多、子宮筋腫や子宮内膜症を伴う多量出血、ダイエットや偏食による鉄やタンパク質の不足などがあると月経による貧血が進行します。

 

貧血とともに、

  • 月経が28日よりずっと短い周期でおこる
  • 出血が1週間以上止まらない
  • 出血量が異常に多い
  • レバーのような血の塊が出る

などの症状が見られれば、婦人科での検査が必要です。

 

月経のある女性は男性や閉経後の女性より2倍近い鉄を消費しますので、積極的に鉄分を摂取する食生活を心がけることも大切です。

消化管出血や痔による出血

男性の方や閉経後の女性で多いのは、痔など肛門からの出血による貧血や、胃や腸など消化器の潰瘍やがんによる消化管出血による貧血です。とくに消化管出血は自覚が持てませんので、注意が必要です。

貧血とともに、

  • 胃腸の不調
  • 体重減少
  • 胃潰瘍の病歴
  • 血便(鮮血が混じる、便が黒くなる)

などの症状があれば、消化器の病気を疑い詳しい検査をします。

 

肛門からの出血も腸の病気が隠れている可能性があるため、安易に切れ痔と判断することはできません。便潜血の検査も必要に応じて行います。

 

出血性の貧血では、原因となっている病気の究明と治療が必要です。

巨赤芽球貧血/悪性貧血

鉄以外では、ビタミンB12や葉酸の不足でも貧血がおこりやすいことが知られています。ビタミンB12や葉酸は細胞のDNA合成に関わる重要なビタミンB群で、これらが不足すると赤血球細胞の成長に異常がおこるのです。

 

DNA合成に異常がおこると細胞の成熟に不一致がおこり、通常より大きなサイズの赤血球がつくられます。サイズは大きいものの全体量は不足し、大球性貧血の状態になります。そのような貧血を巨赤芽球貧血と呼びます。

 

そのうち、胃壁の障害や胃の全摘後に見られるビタミンB12吸収不全による巨赤芽球貧血のことを悪性貧血と呼びます。ビタミンB12は、胃壁細胞から分泌される糖タンパク(内因子)と結びついて回腸で吸収されるため、胃壁の障害や胃の全摘後に吸収不全をおこしやすいのです。そして吸収される回腸での異常も原因のひとつになります。

 

現在はその仕組みがわかっているので、ビタミンB12を筋肉注射で補えば治療ができます。ですが昔は、胃の障害からおこる貧血がビタミンB12の吸収不全のためとはわからず、治療法がなくて難治性の貧血とされていました。それで「悪性貧血」という名前がついたのですが、現在は治療法が確立されたため、名前のわりに予後は悪くない貧血の1つとなっています。

ビタミンB12不足の原因

ビタミンB12と葉酸では、不足の原因が異なる場合があります。ビタミンB12が不足する原因としては、

  • 胃の全摘
  • 萎縮性胃炎
  • 動物性食品の制限

などがあります。

 

ビタミンB12は胃での働きが吸収に不可欠のビタミンのため、病気で胃をすべて摘出した人や、胃壁からの分泌障害がおこる萎縮性胃炎ではビタミンB12が不足します。

 

萎縮性胃炎は、胃に抗内因子抗体や抗胃壁細胞抗体がある場合、胃が荒らされておこりやすい胃炎です。その状態を放置していると胃がんに進行することもあるため、胃カメラでの詳しい検査が奨められます。

 

ビタミンB12はおよそ5年間肝臓に貯蔵される性質があり、吸収不全があってもすぐに貧血の症状はおこりません。胃の全摘をしたとしても、貧血が見られるのは5年程度経ってからになります。

 

胃の障害以外でビタミンB12不足の原因としては、

  • 菜食主義
  • 過度なダイエット
  • 動物性食品を除去したアレルギー食
  • 回腸の異常

などがあります。

 

ビタミンB12は動物性ビタミンのため、菜食主義者やダイエット目的・アレルギー対策などで極度に動物性食品を制限すると不足しやすくなります。食事としては、レバー、アサリ、しじみ、さんまなどに多く含まれます。制限食による不足の場合は、ビタミンB12製剤の投与を行います。

 

ビタミンB12を吸収する回腸を切除したり、炎症などがあると吸収が妨げられることがあります。腸でビタミンB12を消費する細菌が異常に増殖したり(bind loop症候群)、広節裂頭条虫という寄生虫によってビタミンB12が消費されてしまうこともあります。

葉酸不足の原因

葉酸は、ビタミンB12とともに、細胞の合成に不可欠な栄養素です。葉酸は鶏レバー、菜の花、モロヘイヤ、ブロッコリーなどに多く含まれます。

 

葉酸が不足する原因としては、

  • 成長期、妊娠期、授乳期
  • リウマチ治療薬の影響
  • アルコールの過剰摂取
  • 吸収不良症候群

 

胎児期にはとくに重要な役割があるため、妊娠を望む女性の方には積極的な摂取が奨められているビタミンB群の1つです。通常は不足しにくいビタミンですが、成長期、妊娠期、授乳期には必要量が増大するので欠乏しやすくなります。

 

とくに妊娠期にはかなりの量の摂取が推奨されるため、サプリも多く市販されています。妊娠中の方がサプリを使用される場合は婦人科の主治医と相談してください。

 

葉酸摂取量の増大以外では、アルコールの過剰摂取による吸収不全、関節リウマチの治療などで使われるメソトレキサート(商品名:リウマトレックス)というお薬の副作用に葉酸の不足があげられています。転換治療薬や経口避妊薬ピルの服用でも、葉酸の吸収が邪魔されます。

巨赤芽球性貧血の検査・診断

巨赤芽球貧血では、ヘモグロビン濃度の低下とともに、

  • MCV(赤血球の大きさ)=100以上

となると疑いが持たれます。

 

その場合は、

  • 網赤血球
  • ビタミンB12
  • 葉酸

などを測定します。網赤血球が増加している場合は、出血や溶血によって材料であるビタミンB12や葉酸が不足して、結果として巨赤芽球性貧血になっていると判断します。

 

網赤血球が増加していなければ、ビタミンB12か葉酸欠乏のことが多いですが、それらも正常な場合は精査が必要です。肝機能障害が影響していたり、骨髄異形成症候群が認められることがあります。

巨赤芽球性貧血の治療

これらの貧血の治療法としては、ビタミンB12や葉酸を補うことです。ビタミンB12の吸収障害のある方には筋肉注射が行われますが、それ以外の方には飲み薬での治療ができます。

 

貧血が改善されていくと正常な量の赤血球が産生されるようになるため、今度は原料の鉄の不足がおこることがあります。治療中には、鉄量のチェックともに、食事全体の見直しも大切です。

溶血性貧血

  • 振動や衝撃が過度にかかるスポーツ
  • 免疫の異常
  • 異常赤血球が作られるようになる

などにより、溶血性貧血が認められることがあります。

 

赤血球の正常寿命は120日程度ですので、その前後で赤血球が脾臓や肝臓で破壊されるのは普通ですが、外力や病気によって血管内の若い赤血球が壊れてしまうことがあります。赤血球を包んでいる膜が壊れ、血管内にヘモグロビンなどの成分が流れ出すことを溶血と言います。

 

溶血性貧血では、

  • 黄疸(肌や白目が黄色っぽくなる)
  • 尿が褐色になる
  • 血中ビリルビン濃度の上昇
  • 乳酸脱水素酵素(LDH)の上昇
  • ハプトグロビンの低値

などが見られます。

 

溶血性貧血には、

  • 外からの力で赤血球が壊れされる
  • 赤血球を壊す免疫がつくられてしまう
  • 赤血球自体に問題がある

3つのケースがあります。

外からの力で赤血球が壊される

外からの力で赤血球が壊されてしまう溶血では、激しい運動によるものが知られています。とくに、足裏に強い衝撃がかかり続けるマラソン、サッカー、剣道などでおこります。足裏を地面に長く打ち付け続けていると、足裏の血管が圧迫されて赤血球が壊されてしまうことがあります。

 

この貧血はかつて強く足裏を打ち付けて行進する軍人さんに多く見られたため、行軍ヘモグロビン尿症(流れ出したヘモグロビンが尿中に排出されて褐色になる)と呼ばれていて、現代ではスポーツ貧血と呼ばれています。

 

また、心臓に人工弁が入っている場合も溶血がおこりやすくなります。人工弁の脇に血液がもれ、狭い空間で血流が発生したときの負担からおこることが多く、機械的溶血と呼ばれます。血小板とともに溶血性貧血が認められる血栓性血小板減少性紫斑病という病態もありますが、極めて稀です。

 

また、赤血球を処理している脾臓の機能が亢進してしまうBanti症候群などもあります。

赤血球を壊す免疫が作られてしまう

溶血性貧血の原因の中で一番多いのは、赤血球を破壊する免疫がつくられてしまうことです。自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と呼ばれ、後天性溶血性貧血の約6割を占めます。自己抗体と補体が赤血球に結合し、脾臓のマクロファージ(免疫細胞の1)によって破壊されてしまうことでおこります。

 

免疫性溶血性貧血(AIHA)の原因としては、

  • 膠原病
  • がん
  • 感染症(マイコプラズマやウイルス感染)

などがありますが、原因不明(特発性)でおこることもあります。

 

この貧血では、

  • 血液検査でハプトグロビンの低下
  • Coombs試験(クームス試験)が陽性

などの検査が判断の基準になります。

 

抗体の違いによって病態がことなりますが、最も多いのが赤血球に対する温式抗体(IgG)がつくられてしまう溶血性貧血です。およそ80%は温式AIHAで、脾臓で赤血球が壊されてしまう血管外溶血となります。

 

治療はプレドニンなどのステロイド治療が主で、約7割の方で効果が見られます。ステロイド治療では効果が不十分なときや、ステロイドが使えない体質の方の場合は、脾臓摘出や免疫抑制剤の使用を考えます。

 

これら以外にも、冷式抗体が原因の発作性寒冷ヘモグロビン尿症、寒冷凝集素が原因のる寒冷凝集素症などがありますが、寒いところで溶血してしまいます。ですから保温することで、溶血を防ぐことができます。

赤血球自体に問題がある

赤血球自体に問題があっておこる溶血性貧血は稀ですが、代表的なものに

  • 発作性夜間血色素尿症(PNH

があります。

 

細胞の遺伝子の突然変異によって溶血が起こる病気です。診断はフローサイトメトリーという方法を使い、赤血球表面CD55CD59が発現していないことを確認します。ハム試験(アシドーシス)や砂糖水試験(電解質のない状況)で溶血が認められます。

 

就寝中は換気しにくくなって呼吸性アシドーシスになります。このため夜に血管内溶血がおきて、尿の色がワインカラーだったことから、夜間尿症とよばれています。補体の感受性が増してしまうことにより、容易に溶血してしまいます。赤血球だけでなく、血小板や白血球も同様に低下してしまいます。

 

治療法には、補体(C5)に対するモノクローナル抗体(エクリズマブ)の点滴があります。

 

また、先天性の赤血球異常としては

  • 遺伝性球状赤血球症
  • サラセミア

などがありますが、いずれもかなり稀な病気です。家族歴や赤血球の形態、遺伝子検査などで診断をします。

腎性貧血

赤血球の産生は骨髄で行われていますが、その産生を促すには腎臓から分泌されるエリスロポエチンというホルモンの刺激が必要です。腎臓の病気で腎機能が障害されるとエリスロポエチンの応答が悪くなるため、貧血がおこりやすいのです。

 

重度の腎不全の人には多くの場合腎性貧血が見られますが、軽度の腎機能障害でもおこることがあるので注意が必要です。治療には、エリスロポエチン製剤の注射を使います。

 

腎臓の障害以外でも、甲状腺や副腎や下垂体などの内分泌器官の低下があった場合、ホルモン分泌のバランスが崩れ、エリスロポエチンの産生抑制がおこることがあります。

慢性炎症(二次性貧血)

長期の感染症、リウマチなどの膠原病、がんなど、体内に慢性的な炎症のおこる病気が長くなると貧血がおこることがあります。病気が直接貧血の原因になっているのではなく、炎症が長く続いて赤血球をつくるための正常な働きが障害を受け、結果として貧血がおこってくるのです。

 

炎症は本来病気に侵された部位や感染源を取り除くための反応ですが、それが重くなると健全な部位の方まで炎症が広がってしまうことがあります。

 

病原菌を除去するための免疫細胞が自らの赤血球まで攻撃したり、病原菌の発する毒素によって赤血球がダメージを受けたりすることもあります。

 

また、炎症がおこると、肝臓でヘプシジンというホルモンの合成が増えます。ヘプシジンには、赤血球の材料である鉄の吸収や利用を抑制する作用があるため、ヘプシジンが増えると赤血球の産生が阻害され、貧血になってしまうのです。

 

炎症がなくとも、何らかの病気の結果ホルモンや臓器に異常がおこったり、薬剤による影響が二次的に貧血を引き起こす病気は数多くあります。それらは二次性貧血と呼ばれますが、非常に多くの病気に貧血は合併することが知られています。いずれも、対症療法とともに、原因となっている病気のコントロールが必要です。

 

二次性貧血の原因となる病気の例としては、

  • 感染症
  • 膠原病(リウマチなど)
  • がん
  • 慢性腎不全
  • 内分泌疾患
  • 肝疾患

などが挙げられます。

再生不良性貧血

再生不良性貧血は、骨髄の造血細胞に異常がおこり、赤血球に限らず白血球や血小板も不足してしまう病気です。頻度は稀で、難病に指定されています。検査や治療は大きな病院の血液内科でないと対応ができません。

 

この貧血では赤血球数の減少とともに、白血球中の好中球数の減少、血小板数の減少も見られます。免疫担当の白血球が減るので感染症にかかりやすくなり、血液凝固作用のある血小板の減少により、出血しやすく血が止まりにくくなります。

 

再生不良貧血の原因としては、

  • 先天性の遺伝子の異常(Fanconi貧血)
  • 免疫の異常で造血細胞が破壊される
  • 薬剤や放射線の影響(続発性)

などがあげられていますが、原因不明の場合(特発性)が多いです。

 

重症度や年齢によって治療は異なりますが、基本はアンドロゲンなどの蛋白同化ステロイドの投与をして造血刺激をしたり、免疫抑制療法を行っていきます。

 

40歳以下で血縁者からの移植が行える場合には、同種骨髄移植も検討されます。免疫抑制療法の効果もなく血縁者ドナーもいない場合には、非血縁者間の造血幹細胞移植も選択肢になります。

 

そして血球減少による症状を抑えるために、必要に応じてG-CSF(好中球減少)やエリスロポエチン(赤血球減少)などを投与したり、血小板輸血や赤血球輸血などを行います。

貧血の治療

一般の内科で行う貧血の治療は、

  • 一般的な鉄欠乏性貧血に対する鉄剤での治療
  • 不足した栄養のビタミン剤などの補助

が中心です。

 

その原因が単純な摂取不足ではなく他の病気が原因の場合は、それぞれの専門家での治療が必要です。

 

一般的な鉄欠乏性貧血の治療としては、鉄剤の内服が基本です。ただ、鉄剤には吐き気の副作用があり、続けることができない場合もあります。鉄剤が飲めない場合や、吸収力が極度に低下している方には、鉄剤の点滴を行う方法もあります。

 

通常は、鉄剤を内服してから約2カ月以内にヘモグロビン濃度が回復しますが、そこで鉄剤を止めてしまうとすぐに貧血が再発してしまいますので、体内に鉄を十分に貯えるために、貯金であるフェリチンが十分に回復するまでは鉄剤の内服を続けていただくのが一般的です。

 

鉄欠乏性貧血なら食事だけで改善したいと希望される方もいますが、ある程度進行した鉄欠乏は食事だけではなかなか改善が難しい実情があります。まずは鉄剤での治療を行い、再発予防の目的としては食事改善が有効ですので、併用されるのがいいかと思います。

 

その他のビタミンB12、葉酸なども摂取不足による欠乏が見られるときには、ビタミン製剤を投与することがあります。

貧血の治療薬

  • 鉄剤

・フェロミア

・フェルム(徐放剤)

・インクレミン(シロップ剤)

・フェログラデュメット(徐放剤)

・フェジン(注射剤)

 

吐き気や下痢、腹痛の副作用がおこりやすい難点があります。鉄剤を飲むと便が真っ黒になりますが、これは鉄の色がが便に含まれているだけなので問題はありません。

 

  • ビタミンB12

・メチコバール(一般名:メコバラミン)

 

手の痺れなどの末梢神経障害でよく処方されるお薬です。体内時計のリズムに関係しているメラトニンの合成に関係しており、睡眠相後退症候群などにも使われることがあります。とくに強い副作用はとくにありません。

 

  • 葉酸

・フォリアミン

 

葉酸の吸収を阻害するお薬と併用することが多いです。また、総合ビタミン剤にも葉酸は含まれます。

 

食事の偏りによる貧血では、これらの医薬品やサプリメントなどを組み合わせて、効率よく必要な成分を摂取していきます。しかし、症状がどれ位で良くなるかは、かなり個人差があります。人によっては半年から1年近くお薬を内服し、ようやく改善する人もいます。

貧血予防と食事

鉄欠乏の貧血や慢性出血による貧血を治療し治ったとしても、食事のバランスが乱れると再発してしまう可能性があります。とくに鉄は吸収が悪く不足しやすいミネラルですし、ビタミンB12、葉酸も欠乏して貧血につながることが少なくありません。

 

それぞれが多く含まれている食品をまとめましたので、バランスの良い食事を意識し、貧血を予防しましょう。

 

貧血をきたしやすいミネラルを多く含む食事をまとめました。

 

ほかにも、タンパク質、ビタミンC、亜鉛、ビタミンB6、銅なども赤血球の産生に関わります。

 

貧血=痩せている人、少食の人がなりやすいイメージが持たれることがありますが、ミネラルやビタミンの不足で貧血はおこります。大盛りの麺類だけ、パンだけなど、糖質や油分ばかりで肉・魚・野菜・海草類が不足する食事では、食事はとっていても貧血がおこることはあるので注意しましょう。

 

多忙で食生活が乱れがちな方は、サプリメントを補助に用いるのもいいと思います。どの栄養も集中的にたくさん摂れば効果的というわけではなく、日々の食事でまんべんなく、適量の食事内で摂取することが大切です。サプリメント使用の際は過剰摂取に注意しましょう。(基本的には、過剰な分は尿で排出されていきますが…)

 

貧血の原因として最も多い鉄については、1日の吸収の上限が決まっています。ですから、こまめにとる必要があります。肉類の鉄はヘム鉄と呼ばれて、吸収されやすいです。野菜などは非ヘム鉄になりますが、ビタミンCと同時にとることでヘム鉄に変換されますので、吸収効率が良くなります。

貧血は油断せず、病院で相談を

健康診断で貧血を指摘されたとしても、他の異常数値に比べ「たかが貧血だし」と軽視してしまう方が多いようですし、「鉄分の多いものをたくさん食べれば治る」「病院に行くほどのことではない」と判断する方も多いようです。

 

けれど、貧血の原因に慢性出血などが隠れていれば早急な治療が必要ですし、食生活の乱れが原因の貧血としても、貧血状態が長く続けば心臓や肺に負担がかかります。貧血が引き起こす酸素不足は、全身や脳の健康にとっても好ましいものではありません。

 

忙しい方ほど栄養のバランスが崩れやすく、かなりの貧血状態にあっても無理をして頑張ってしまう人が多いです。進行した貧血を食事改善だけで対応するのは難しいですので、元気に働くためにも病院を受診し、原因に合わせた治療や対処を行いましょう。

 

また、成長期や若い女性の方ではダイエット+月経による貧血が多いですが、成長期の貧血は成育に影響を与えますし、大人の方は将来の妊娠に備えて体の基礎をしっかり作っておく必要があります。ダイエットは栄養のバランスを考え、体に負担のかからない健康的な範囲にとどめましょう。貧血になれば、肌や髪の美容にも良いことはありません。すでに貧血が進行している方は、病院を受診し治療を受けましょう。

【参考】隠れ貧血とは?

最近は「隠れ貧血」という言葉が世の中にでています。医学的には、隠れ貧血などという病名はありません。

 

しかしながら、採血でのヘモグロビン濃度に異常はないものの、だるい、息切れがするなど貧血に似た症状が見られることがあります。そして詳しく調べてみると、血清鉄やフェリチンの値が低下していることがあります。その場合を「隠れ貧血」の状態といっているのかと思われます。

 

あえて隠れ貧血という言葉を使っていきますが、隠れ貧血は貧血の1歩手前の鉄不足の状態です。鉄剤を使うことで、症状が改善していきます。

 

このように隠れ貧血は、

  • 血清鉄
  • 血清フェリチン

という血液検査の項目でわかります。血清フェリチンは、体内に蓄えられている鉄分の量を測定した値です。けれど、一般的な採血検査で血清フェリチンを調べることは少ないですし、それを疑って調べる医師も多くはないので、見逃されてしまうことが少なくありません。

 

血清フェリチンが8030ng/ml程度なら、症状が出ていてもおかしくありません。

  • 顔色悪く、肌がくすんだり肌荒れしたりしている
  • 下まぶたの内側(結膜)が白い、目の下に青くまがある
  • 寝起きが悪い、睡眠不足が続いている
  • 風邪をひきやすい、風邪のような倦怠感が続いている
  • めまいや立ちくらみが多い
  • ちょっとした坂道や階段で動悸や息切れがする
  • 爪の色が白っぽい、割れたり欠けたりする
  • 枝毛や抜け毛が多い

 

生活習慣についても、

  • ダイエットをしている
  • 朝食を抜くことが多い
  • インスタント食品や冷凍食品を食べることが多い
  • 外食や市販の弁当が中心の食生活が続いている
  • 偏食で肉魚や野菜などをバランス良く食べていない

こういった点が当てはまる方が多いです。

 

このような症状であるため、隠れ貧血は慢性疲労症候群やストレス性の反応と診断されがちです。とくに、仕事の忙しい方は疲労やストレスによる症状だろうと判断されてしまいがちですが、実は食生活の乱れによる栄養不足が主な原因になっていることも多いのです。

 

多忙の方は食生活の改善がなかなか難しいかもしれませんが、必要に応じてサプリや栄養剤の処方を合わせながら対応していくと、症状の改善が見られるようになります。症状や生活習慣に思い当たることがあれば、ご相談ください。

隠れ貧血の原因

隠れ貧血は鉄欠乏性貧血の1歩手前の状態ですので、原因としては鉄欠乏性貧血と同じです。一番多いのは食事の偏りによる鉄不足で、そこに過多月経や胃潰瘍などの慢性出血が合併していることもあります。

 

激しい食事の偏りがあるならタンパク質、ビタミンB12、葉酸、亜鉛、ビタミンCなども不足している可能性が高く、赤血球産生に必要な栄養全体が不足した貧血状態かもしれません。

 

鉄は体内に34gあり、タンパク質(トランスフェリン)と結合して存在しています。そのうち6070%が血液にまわり、ヘモグロビンとなります。そして、残りの3040%は肝臓や脾臓で貯蔵鉄となり、血液の鉄が不足してしまったときの予備として蓄えられています。この貯蔵鉄の量を示すのがフェリチンです。

 

ヘモグロビンは体に酸素を送る大切な細胞ですので、私たちの体はヘモグロビンを最優先に鉄を使います。貯蔵鉄が残っている間はヘモグロビン濃度は保たれ、貧血と診断されることはありません。

 

けれど、それは体が見栄を張り、貯金を無理に使い込んでカツカツの状態で生活しているようなものです。ヘモグロビン濃度だけは何とか保ち頑張ってみても、だんだん追い詰められて倦怠感や息切れなどが出現してくるのです。

 

体内の鉄がギリギリなのに補われなければ、いつか貯蔵鉄も底をつき、ついにはヘモグロビン産生も減少し始めます。つまり、

  1. フェリチン減少
  2. 血清鉄減少
  3. ヘモグロビン減少(貧血)

の順で、鉄不足による貧血は進行していきます。

 

フェリチンの正常値は、80200ng/dlですので、80ng/dl以下であれば、貯蔵鉄が消耗していることがわかります。これが30ng/dl以下になると、貧血状態が進行していると考えられるので、その間の3080ng/dlでは、隠れ貧血となるかと思います。

隠れ貧血の治療

鉄を摂取することが一番ですが、タンパク質やビタミンCも合わせて摂取して効率よく吸収することが大切です。亜鉛やビタミンB6B12、葉酸も赤血球を作るときに必要な成分です。

 

鉄分はタンパク質と結合して普段存在するので、タンパク質もとらないと体内に存在できなくなります。またビタミンCを摂取することで鉄分の吸収率が上昇します。銅も少量ながら必要なので意識してとってみると良いでしょう。

 

隠れ貧血の改善のためには食生活の改善が大切ですが、長い期間その状態にあった方は、食事の改善だけではなかなか結果が見えてこないのが実状です。多忙の方が食事のバランスを考え規則正しく食事するのは現実的に困難なこともあります。その場合は病院で鉄剤やビタミン剤を処方したり、サプリを活用したりすることが奨められます。

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