抗精神病薬診療内容/精神科

抗精神病薬ってどんなお薬?

抗精神病薬は、統合失調症の治療薬として開発されたお薬です。ドパミンの働きを調節する働きをもつお薬になります。

 

抗精神病薬には、定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬に分けることができます。

 

<定型抗精神病薬>

  • ブチロフェノン系:セレネース・インプロメン・トロぺノンなど
  • フェノチアジン系:コントミン・レボトミン・フルメジン・PZCなど
  • ベンズアミド系:ドグマチール・バルネチールなど

<非定型抗精神病薬>

  • SDA:
    リスパダール(リスペリドン)・インヴェガ(パリペリドン)
    ・ロナセン(ブロナンセリン)・ルーラン(ペロスピロン)
  • MARTA:
    ジプレキサ(オランザピン)・セロクエル(クエチアピン)
    ・シクレスト(アセナピン)
  • DSS:
    エビリファイ(アリピプラゾール)

また持続性注射薬として、以下のお薬があります。

  • ハロマンス/ネオペリドール(セレネースの持続注射剤)
  • フルデカシン(フルメジンの持続注射剤)
  • リスパダールコンスタ(リスパダールの持続注射剤)
  • ゼプリオン(インヴェガの持続性注射剤)
  • エビリファイ持続性水懸筋注用(エビリファイの持続性注射剤)

 

ここでは、抗精神病薬の効果や副作用についてご紹介していきます。理解を深めて納得してお薬を使っていただくことで、より良い治療につながれば幸いです。

抗精神病薬のドパミンへの作用

抗精神病薬には様々な種類のお薬がありますが、いずれもドパミンに対する作用が特徴となっています。

 

ドパミンは脳の中で、大きく4つの働きをしています。

 

抗精神病薬の作用とドパミンへの影響について図にしてまとめました。

 

  • 中脳辺縁系―陽性症状の改善
  • 中脳皮質系―陰性症状の出現
  • 黒質線条体―錐体外路症状の出現
  • 視床下部下垂体系―高プロラクチン血症

 

統合失調症では、中脳辺縁系でのドパミンの分泌・活動の異常によって幻聴や妄想といった症状が認められているといわれています。幻聴や妄想といった目立つ症状を陽性症状といいますが、中脳辺縁系のドパミンを抑えることで改善が期待できます。(ドパミンD2受容体遮断作用)

 

ですが陽性症状が認められていても、脳全体でドパミンが過剰になっているわけではありません。脳全体でドパミンを抑えてしまうと、他の部分でバランスが崩れてしまいます。

 

中脳皮質系のドパミンが不足すると、意欲や関心の低下などの陰性症状が生じます。黒質線条体のドパミンが不足すると、錐体外路症状という不随意運動の障害が生じます。視床下部下垂体系のドパミンが不足すると、高プロラクチン血症が生じます。

抗精神病薬のセロトニンへの作用

幻聴や妄想といった陽性症状はドパミンを抑えることで改善が期待できますが、陰性症状には改善が期待できません。

 

そこで注目されたのが、ドパミンを抑制する働きのあるセロトニンです。このセロトニンをブロックすると、中脳辺縁系以外でのドパミンの働きを高める作用が期待できます。

 

ですから、ドパミン(ドパミンD2受容体)とセロトニン(セロトニン2A受容体)を同時にブロックすれば、陽性症状と陰性症状の両方に効果が期待できます。

 

このようなお薬のことを非定型抗精神病薬といい、比較的新しいお薬はいずれもこのタイプになります。それに対して従来のお薬は定型抗精神病薬と呼ばれ、ドパミンに対しての作用が中心です。

抗精神病薬のその他の作用

抗精神病薬は主にドパミンに作用するお薬ですが、それ以外の作用もあります。それが治療的に作用することもありますが、マイナスに作用すると副作用となります。

 

それぞれのお薬によって、受容体への影響は異なります。その違いは後述させていただき、ここではそれぞれの受容体への影響をまとめておきましょう。

  • セロトニン2A受容体遮断作用:睡眠が深くなる
  • セロトニン2C受容体遮断作用:体重増加
  • α1受容体遮断作用:ふらつき・立ちくらみ・射精障害
  • ヒスタミンH1受容体遮断作用:体重増加・眠気
  • ムスカリン受容体遮断作用:口渇・便秘・排尿困難

抗精神病薬はどのような病気に使われるのか

抗精神病薬は、おもに統合失調症の治療薬として使われています。統合失調症にも様々なタイプがありますが、一番多いのは幻聴や妄想といった症状を特徴とする統合失調症です。

 

統合失調症では、脳の機能を整えることで症状を落ちつけることはできます。しかしながら原因を取り除けるわけではないので、お薬と付き合っていきながら生活していく必要があります。

 

抗精神病薬はそれ以外にも、気分安定作用があるといわれています。このため、双極性障害のように気分の波がある病気に使われることも多いです。気分安定薬に比べると効果が早いですが、鎮静作用によって眠気が生じたり、体重増加の副作用が多いです。

 

このような目的としては、セロクエル、ジプレキサ、エビリファイ、リスパダール、ロドピンなどが使われます。

 

それ以外にも、

  • イライラや興奮を落ちつけて衝動性を抑える
  • 食欲を増加させる
  • 睡眠を深くする
  • 抗うつ剤の効果を増強する(augmentation)

といった目的で使われます。

抗精神病薬の種類と作用

これまでお伝えしてきた通り、抗精神病薬には様々なタイプに分類されます。それぞれのタイプの大まかな特徴をみていきましょう。

 

定型抗精神病薬は、以下の3つのタイプがあります。

  • ブチロフェロン系:ドパミン遮断作用が強い
    商品名:セレネースなど
    特徴:⊕陽性症状に効果的 ⊖錐体外路症状や高プロラクチン血症が多い
  • フェノチアジン系:全体的にいろいろな受容体に作用
    商品名:コントミン・レボトミンなど
    特徴:⊕鎮静作用が強い ⊖陽性症状の効果が乏しい
  • ベンズアミド系:低用量で抗うつ作用、高用量で抗精神病作用
    商品名:ドグマチール・バルネチールなど
    特徴:⊕穏やかに陽性症状に効果 ⊖高プロラクチン血症が多い

 

非定型抗精神病薬は、以下の3つのタイプに分けられます。

  • SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬):ドパミンとセロトニン遮断作用
    商品名:リスパダール・インヴェガ・ロナセン・ルーラン
    特徴:⊕陽性症状に効果的 ⊖錐体外路症状や高プロラクチン血症が多め
  • MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬):様々な受容体に適度に作用
    商品名:ジプレキサ・セロクエル・シクレスト
    特徴:⊕鎮静作用や催眠作用が強い ⊖太りやすい・眠気が強い
  • DSS(ドパミン受容体部分作動薬):ドパミンの量を調整
    商品名:エビリファイ
    特徴:⊕副作用が全体的に少ない ⊖アカシジアが多い・鎮静作用が弱い

 

このような特徴があり、それぞれのタイプでも特徴があります。代表的な抗精神病薬の受容体への作用を比較してみましょう。

 

抗精神病薬の受容体に対する作用を一覧しました。

 

この表を見ていただくと、おおまかなお薬の特徴がわかります。それぞれのタイプごとに、それぞれの抗精神病薬の特徴をお伝えしていきたいと思います。

SDA(セロトニン・ドパミン拮抗薬)

  • リスパダール(リスペリドン)
  • インヴェガ(パリペリドン)
  • ルーラン(ペロスピロン)
  • ロナセン(ブロナンセリン)

 

非定型抗精神病薬として初めに開発されたのがリスパダールになります。リスパダールが改良されたお薬としてインヴェガが作られ、日本を中心にルーランやロナセンも開発されました。

 

セロトニン2A受容体とドパミンD2受容体を同時にブロックすることで、陽性症状だけでなく陰性症状を改善するお薬です。このため、SDA(Serotonin-Dopamine Antagonist)と呼ばれています。

 

定型抗精神病薬と比較すると錐体外路症状や高プロラクチン血症が抑えられていますが、他の非定型抗精神病薬と比較するとドパミンへの作用が強いため、これらの副作用はやや多いといえます。

 

ドパミンよりもセロトニンをブロックさせるお薬が多いですが、ロナセンだけはドパミンにしっかりと結合するため、DSA(ドパミン・セロトニン拮抗薬)と呼ばれたりもします。

MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬)

  • ジプレキサ(オランザピン)
  • セロクエル(クエチアピン)
  • シクレスト(アセナピン)

 

これらのお薬はドパミンやセロトニンだけではなく、その他の受容体に広く作用するお薬です。このため、MARTA(Multi-Acting Receptor Targeted Antipsychotics)とよばれています。

 

作用する受容体としては、

  • アドレナリンα1受容体
  • ヒスタミンH1受容体
  • ムスカリン受容体

などがあります。

 

このように多くの受容体に作用するため、効果に厚みがあるお薬です。抑うつ・不安・衝動性などを抑える効果もあるため、様々な病気で使われます。

 

気分安定化作用も認められるため、双極性障害(躁うつ病)にも適応が認められているお薬が多いです。

 

しかしながら代謝への悪影響が認められ、シクレスト以外は糖尿病の患者さんには使えないお薬となっています。

DSS(ドパミン受容体部分作動薬)

  • エビリファイ(アリピプラゾール)

 

統合失調症の症状は、ドパミンが過剰による陽性症状と、ドパミン不足による陰性症状が同時に認められます。そこでドパミンの量をほどほどに調整するお薬として、部分作動薬が開発されました

 

このような働きがあるため、DSS(Dopamine System Stabilizer)と呼ばれています。

 

ドパミンが多い状況では抑えるように働き、少ない状況では多少なりともドパミンを増やすように働きます。

 

このようなお薬ですから副作用が全体的に少ないのですが、鎮静作用が弱いために、興奮している患者さんには鎮静系のお薬との併用が必要になります。また、副作用としてアカシジア(じっとしていると落ち着かない)が多いです。

定型抗精神病薬

<ブチロフェノン系>

  • セレネース(ハロペリドール)
  • インプロメン(ブロムペリドール)
  • トロペロン(チミペロン)

<フェノチアジン系>

  • コントミン/ウィンタミン(クロルプロマジン)
  • レボトミン/ヒルナミン(レボメプロマジン)
  • フルメジン(フルフェナジン)
  • PZC(ペルフェナジン)
  • ピモジド(オーラップ)
  • ニューレプチル(プロペリシアジン)

<ベンズアミド系>

  • ドグマチール/アビリット/ミラドール(スルピリド)
  • バルネチール(スルトピリド)

 

統合失調症のお薬として、古くから開発されてきたお薬が定型抗精神病薬です。非定型抗精神病薬に主役をゆずっていますが、今でもよく使われています。

 

定型抗精神病薬は大きく3つのタイプに分けることができますが、

  • 陽性症状に対して:ブチロフェロン系・(ベンズアミド系)
  • 興奮に対して:フェノチアジン系
    ※ベンズアミド系は抗うつ剤として使われることが多いです

主にこのような目的で使われます。

 

幻覚・妄想に対しては、今でもセレネースなどのブチロフェロン系に頼らざるを得ないことが少なくありません。点滴ができるのはセレネースのみであり、さらにセレネースの液剤は味がしないため、入院治療ではよく使われています。

 

興奮を鎮めたり睡眠薬がわりとして、統合失調症に限らずコントミンなどのフェノチアジン系も使われています。

 

副作用としては、ブチロフェロン系はドパミンをブロックしすぎてしまうため、錐体外路症状や高プロラクチン血症が認められます。フェノチアジン系は様々な受容体に作用するため、多岐にわたる副作用が認められます。

抗精神病薬の注射剤

抗精神病薬には、2つの目的の注射剤が発売されています。

  • 即効性を期待した注射剤
  • 持続的な効果を期待した注射剤

 

即効性を期待したお薬としては、セレネース・ヒルナミン・コントミン・ジプレキサなどが使われます。入院治療の場で活躍するお薬です。

 

それに対して外来の場では、持続性注射剤が使われることがあります。統合失調症では抗精神病薬を継続的に服用しなければならず、飲み忘れてしまうことが一番の再発リスクになります。

 

このため、一度注射をするだけで効果が持続するお薬が開発されています。

 

定型抗精神病薬としては、

  • ハロマンス/ネオペリドール(セレネースの持続性注射剤)
  • フルデカシン(フルメジンの持続性注射剤)

非定型抗精神病薬としては、

  • リスパダールコンスタ(リスパダールの持続性注射剤)
  • ゼプリオン(インヴェガの持続性注射剤)
  • エビリファイ持続性水懸筋注用(エビリファイの持続性注射剤)

 

これらは1カ月に1回(リスパダールコンスタのみ2週間に1回)、お尻か肩に筋肉注射をすることで効果が持続するお薬です。

 

最大のメリットは飲み忘れが防げることですが、お薬の血中濃度が安定するため副作用も軽減されます。ただし、薬価が高いお薬が多いというデメリットがあります。

抗精神病薬の内用液(液剤)

抗精神病薬には、内用液という水薬もあります。

 

内用液はすぐに服用することができるため、

  • すぐに服用することができる
  • 錠剤よりも効き目が早い
  • 錠剤よりも鎮静作用がある

といった特徴があります。

 

抗精神病薬の内用液としては、

  • セレネース(ハロペリドール)
  • リスパダール(リスペリドン)
  • エビリファイ(アリピプラゾール)

があります。

 

セレネースとリスパダールに関しては、陽性症状への効果を期待したり、気持ちを落ちつける目的で使われます。

 

それに対してエビリファイの内用液は、少量で使うことで元気にさせる効果を期待して使うことが多いです。少量で使うことでドパミンを増加させ、倦怠感や過度な眠気を改善するために使われます。

抗精神病薬の副作用の比較

それでは、抗精神病薬の副作用についてみていきましょう。

 

まずは定型抗精神病薬と非定型抗精神病薬の違いからみていきましょう。非定型抗精神病薬は、

  • 全体的に副作用が少ない
  • 重篤な副作用のリスクが少ない
  • ドパミン不足による副作用が少ない

というメリットがあります。その一方で、

  • 代謝に対して悪影響がある

というデメリットがあり、糖尿病や脂質異常症などに注意が必要になります。

 

抗精神病薬の副作用は、

  • ドパミンを過剰にブロックしてしまうことによる副作用
  • 不必要な受容体に作用してしまうことによる副作用

に分けられます。

 

具体的には、

  • ドパミン遮断作用:錐体外路症状・高プロラクチン血症
  • セロトニン2C受容体遮断作用:体重増加
  • α1受容体遮断作用:ふらつき・立ちくらみ・射精障害
  • ヒスタミン1受容体遮断作用:体重増加・眠気
  • ムスカリン受容体遮断作用:口渇・便秘・排尿困難

これらの副作用が認められます。

 

それぞれのお薬ごとに作用の特徴に違いがあり、それらが複合的に働いて副作用の頻度が異なります。具体的なお薬ごとの副作用の頻度については、以下のようになります。

 

抗精神病薬の副作用の頻度を比較しました。

抗精神病薬の副作用と対処法

抗精神病薬の代表的な副作用としては、

  • 錐体外路症状(EPS)
  • 高プロラクチン血症
  • 便秘・口渇
  • ふらつき
  • 眠気
  • 体重増加

があげられます。

 

そして頻度はそこまで多くありませんが重篤な副作用として、

  • 悪性症候群
  • 遅発性ジスキネジア
  • 麻痺性イレウス
  • アナフィラキシー
  • けいれん
  • 無顆粒球症
  • 不整脈

などがあります。それぞれの副作用についてお伝えしていきます。

①錐体外路症状(EPS)

錐体外路症状は、ドパミンを過剰にブロックしてしまう副作用のひとつです。

 

脳の黒質線条体という部分では、身体の運動の細かな調節を自動で行ってくれています。これには黒質で作られるドパミンが重要な働きをしているのですが、抗精神病薬によってブロックされてしまいます。

 

これによって運動調節がうまくいかなくなってしまい、錐体外路症状(EPS:ExtraPyramidal Symptom)となります。

 

同じように黒質の神経細胞が変性しまってドパミンが作れなくなってしまう病気に、パーキンソン病があります。錐体外路症状は、パーキンソン病に似た症状が出現します。その他にも運動に関係する副作用が生じます。

  • 薬剤性パーキンソニズム(ふるえ・筋肉のこわばり)
  • アカシジア(ソワソワして落ち着かない)
  • 急性ジストニア(筋肉の異常な収縮)
  • ジスキネジア(勝手に身体が動く)

 

錐体外路症状への対処法としては、4つあげられます。

  1. お薬の減量
  2. 抗不安薬やβ遮断薬の追加
  3. 抗コリン薬の追加
  4. 他の抗精神病薬へ変更

 

まずは可能であれば、お薬を減らしていきます。効果を見ながら、少しずつ減量していきます。

 

減量が難しい場合は、抗不安薬やベータ遮断薬によって和らぐことがあります。不十分であれば、抗コリン薬で緩和していきます。

 

抗コリン薬としては、

  • アキネトン(ビペリデン)
  • アーテン(トリヘキシフェニジル)
  • ピレチア/ヒベルナ(プロメタジン)
    ※抗コリン作用のある抗ヒスタミン薬

がよく使われます。しかしながら、副作用止めによる副作用(便秘・口渇・尿閉・せん妄など)も考慮する必要があります。

 

効果との兼ね合いになりますが、錐体外路症状が少ないお薬に変更していくこともあります。

②高プロラクチン血症

高プロラクチン血症も、ドパミンを過剰にブロックしてしまう副作用のひとつです。

 

抗精神病薬が下垂体に働いてドパミンを抑えてしまうと、プロラクチンというホルモンを増やしてしまいます。

 

それによって女性では、

  • 母乳がでる(乳汁分泌)
  • 生理が遅れる(生理不順)
  • 不妊の原因となる(無排卵・無月経)
  • 胸がはって痛い

 

男性では、

  • 胸がふくらむ(女性化乳房)
  • 性欲が落ちる(性機能低下)

といった副作用がみられます。

 

プロラクチンは本来、授乳中の女性で分泌されているホルモンです。授乳のときは次の出産をする余裕がないので、排卵を抑制して妊娠しないようになっています。

 

高プロラクチン血症の対処法としては、

  • お薬の減量
  • 他の抗精神病薬へ変更

となります。

③便秘・口渇(抗コリン作用)

抗精神病薬は、アセチルコリンという物質が働くムスカリン受容体をブロックしてしまうことがあります。アセチルコリンの働きを邪魔するので、抗コリン作用と呼ばれます。

 

アセチルコリンは副交感神経の働きを伝える物質です。ですから抗コリン作用は、副交感神経の働きを邪魔された時に認められる症状になります。

 

つまり、「リラックスできない時はどういう身体の状態か?」をイメージすると理解しやすいです。胃腸の働きは抑えられるので、便秘や尿が出にくくなります。口も渇いていてしまいます。

 

こういった便秘や口渇といった抗コリン作用への対処法としては、4つあげられます。

  1. 生活習慣の改善
  2. お薬の減量
  3. 下剤や漢方などの追加
  4. 他の抗精神病薬へ変更

 

生活習慣で改善できることは取り組んでいきます。それでも改善しない場合は、お薬の減量になります。

 

しかしながら効果との兼ね合いで減量できないこともあります。その場合は下剤や漢方薬などで症状を緩和していきます。どうしても合わない場合は、他のお薬に変更していきます。

④ふらつき

抗精神病薬のいろいろな作用が重なり、ふらつきが認められることがあります。

 

とくに血管の調節を行っているアドレナリンα1作用の影響が大きいです。脳に血液がうまくめぐらなければ、くらくらしてふらついてしまいます。いわゆる立ちくらみは、この作用によるところが大きいです。

 

ふらつきが認められた場合の対処法としては、4つあげられます。

  1. 生活習慣の改善
  2. お薬の減量
  3. 昇圧剤の追加
  4. 他の抗精神病薬へ変更

 

生活習慣でできることとしては、

  • 朝食を抜いている方は、しっかりととるようにする
  • 立ち上がる時はゆっくりと身体を動かす

以上のようなことがあります。改善がない場合は、可能であればお薬を減らしていきます。

 

メトリジンやリズミックといった昇圧剤を使うこともあります。合わない場合は、他の抗精神病薬に変更します。

⑤眠気

眠気の副作用もいろいろな作用が重なって生じますが、抗ヒスタミン作用の影響が大きいです。

 

抗ヒスタミン作用とは、風邪薬や花粉症のお薬を服用してきたときの眠気になります。ヒスタミンは脳の覚醒状態に大切な脳内物質ですので、これがブロックされることで眠気が生じます。

 

それ以外にも、

  • セロトニン2A受容体遮断作用
  • アドレナリンα1受容体遮断作用

などが関係しています。

 

眠気が認められた場合の対処法としては、4つあげられます。

  1. 睡眠環境や習慣を見直す
  2. お薬の減量
  3. 飲み方を工夫する
  4. 他の抗精神病薬へ変更

 

しっかりと睡眠がとれることで眠気が薄れることもあるので、睡眠環境や習慣に関して改善できることがあれば見直していきます。詳しくは、「睡眠薬について」をお読みください。

 

可能であれば、お薬を減量していきます。就寝前や夕食後に服用するなど、飲み方の工夫でうまくいくこともあります。合わないようならば、他の抗精神病薬へ変更します。

⑥体重増加

抗精神病薬は、体重増加してしまうことが比較的多いお薬になります。

 

  • ヒスタミンH1受容体遮断作用
  • セロトニン2C受容体遮断作用

などによって、食欲が増加してしまいます。

 

それだけでなく、代謝への悪影響があることが分かっています。このため、食べている以上に体重増加してしまいます。

 

非定型抗精神病薬の方が代謝への悪影響は大きく、特にMARTAのジプレキサとセロクエルで注意が必要です。糖尿病の患者さんには、この2つのお薬は禁忌となっています。

 

体重増加が認められた場合の対処法としては、4つあげられます。

  1. 体重測定・食事管理
  2. 運動
  3. お薬の減量
  4. 他の抗精神病薬へ変更

 

まずは体重を測定することが大切です。食生活を整えることから始めましょう。運動なども取り入れながら、体重をコントロールできればそれが一番です。

 

お薬の減量が可能であれば、それによって食欲が落ち着くこともあります。お薬によっては量とは関係なく、問答無用で体重増加してしまうことがあります。改善が難しければ、他のお薬に変更を考えていきます。

⑦その他の副作用

抗精神病薬には、頻度は多くないものの重篤な副作用もあります。具体的には、以下のようなものがあげられます。

  • 悪性症候群
  • 遅発性ジスキネジア
  • 麻痺性イレウス
  • アナフィラキシー
  • けいれん
  • 無顆粒球症
  • 不整脈

 

これらのうちで、比較的多いのが悪性症候群です。筋肉が硬直してしまい、話しづらくなるといった神経症状が認められます。発熱や自律神経症状などが認められ、腎不全などから死に至ることもあります。

 

長期間にわたって抗精神病薬を使っていると、遅発性ジスキネジアはという不随意運動(勝手に身体の一部が動いてしまうこと)が生じることがあります。

 

抗コリン作用が強すぎると腸が動かなくなってしまって、麻痺性イレウスが認められます。どのようなお薬でもありますが、アナフィラキシー(アレルギーによる血圧低下)も起こりえます。

 

けいれんしやすくなってしまったり、血を作る細胞の働きが抑制されて無顆粒球症になることもあります。

 

また、危険な不整脈である心室性不整脈が起こりやすくなることもあります。心電図をとってQT時間を測定することで、このような不整脈の起こりやすくなっていないかを確認していく必要があります。

抗精神病薬の妊娠や授乳への影響

 

抗精神病薬は、長期間にわたって服用を続けることも多いお薬になります。ですから女性の場合は、妊娠や授乳への影響も考えていく必要があります。

 

統合失調症の患者さんでは、原則的にはお薬を中止せずに続けていきます。統合失調症の再発・再燃によって、むしろ流早産のリスクが高まってしまうからです。もちろん、できるだけ減量していきます。

 

 

抗精神病薬の妊娠・授乳への影響に関する2つの基準をご紹介したいと思います。

 

抗精神病薬の妊娠・授乳への影響をまとめました。

 

 

  • 妊娠への影響:FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準

    A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
    B:ヒトでの危険性の証拠はない
    C:危険性を否定することができない
    D:危険性を示す確かな証拠がある
    ×:妊娠中は禁忌

  • 授乳への影響:Hale授乳危険度分類

    L1:最も安全
    L2:比較的安全
    L3:おそらく安全・新薬・情報不足
    L4:おそらく危険
    L5:危険

 

抗精神病薬は、妊娠への影響はそこまで大きくないといわれています。わずかに奇形が増えたという報告もありますが、明らかなリスクとまではいえません。このためFDAでは、Cとなっています。セレネースに関しては、お薬の添付文章で「妊娠中は禁忌」となっています。

 

むしろ妊娠糖尿病や妊娠高血圧といった、お母さん側の合併症になりやすくなるといわれています。定期検診をしっかりと受けて、産婦人科の先生と相談していきましょう。

 

授乳に関しては、ジプレキサやセロクエルといったMARTAでは、乳汁への移行が少ないといわれています。リスパダールは母乳中への移行がおおいといわれていて、エビリファイはプロラクチンを低下させて母乳の産生量が減ってしまうともいわれています。

 

母乳で育てていただくことも大きな問題はありませんが、お薬によっては人工乳で育てることを検討したほうが良いかもしれません。

 

 

 

 

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