強迫性障害診療内容/精神科

強迫障害とは?

強迫性障害は、頭の中にしつこく浮かぶ不快な考えやイメージ(強迫観念)にとらわれ、それを打ち消そうとするくり返しの行為(強迫行為)が止められず、日常生活や精神状態に大きな影響をおよぼす病気です。

 

多くの患者さんは、その考えや行為の度が過ぎていること、生活に支障をおよぼしていることを自覚し止めようとしますが、その意志に反して強迫観念や強迫行為が続き、心身が激しく疲労してしまいます。

 

昔は強迫神経症などといわれていて、治療が難しいとされていました。お薬や精神療法の進歩により、少しずつ改善していける病気になっています。

 

強迫性障害は、WHO(世界保健機関)によって「経済損失および生活の質の低下に影響する10大疾患」の1つとされたほど、苦痛や支障の大きなものですが、なかなか治療に踏み出せず苦しんでいる人が多いです。

 

放置してしまうと重症化していく傾向があり、うつ状態などを合併してしまうこともあり、治療も大変になります。確認行為に家族も巻き込んでしまうことが少なくありません。生活の大部分が左右されて行動範囲が狭まり、自宅から一歩も出られなくなってしまうケースもあります。

 

強迫性障害は、かつては不安障害の一種と考えられていました。しかしながら現在では、「とらわれ」と「くり返し行動」を特徴とした病気で、不安障害とは異質の病気と考えられています。

強迫性障害の症状

強迫性障害の症状としては、

  • 中核症状
  • 問題となる症状

の2つに分けてお伝えしていきたいと思います。

 

強迫性障害の中核症状は、

  • 強迫観念
  • 強迫行為

になります。何らかの考えやイメージが急に頭に浮かんでしまう「強迫症状」と、それを打ち消すために「強迫行為」を行ってしまいます。

 

多くの患者さんが、「バカバカしい」という認識をもっていますが、それでも強迫観念にとらわれてしまって、強迫行為をやめることができません。

 

このようなことが続くと、

  • うつなどの合併
  • 回避行動
  • 周囲の巻き込み

といったことが問題となってしまいます。

 

ストレスが蓄積することでうつ状態になってしまったり、社会不安障害などの不安障害を合併してしまうことがあります。

 

強迫観念を避けるために距離をおいてしまったり、周囲を巻き込んでしまうことがあります。このため仕事や学校といった社会生活だけでなく、友人や家族などの日常生活にも影響が出てしまうことがあります。

 

強迫性障害の症状について、詳しくみていきましょう。

強迫観念と強迫行為

強迫観念とは、繰り返し頭の中にあらわれる考えやイメージのことです。強迫行為には大きく4つの「とらわれ」があると考えられています。

 

  • 汚染や洗浄→汚染恐怖・不潔恐怖(汚染されている)
  • 禁断的思考→加害恐怖(いけないことをしてしまう)
  • 対称性→不完全恐怖(ぴったりこない)
  • ため込み→ため込み障害(物がなくなってしまう)

※ため込み障害は、強迫性障害の親戚の病気として別で扱われています。

 

 

〇不潔恐怖/汚染恐怖

…「自分が汚れている」「何かに汚染されてしまった」という恐怖

 

つながりやすい強迫行為

・過度な手洗い・シャワー・歯磨きなどをくり返す

・家のすみずみまでを除菌したり徹底的に掃除したりする

・汚れる可能性のある物質や場所を過度に避けようとする

 

〇加害恐怖

…「自分が他者に危害を加えるのではないか」「卑猥な行為や反社会的な行動をしてしまうのではないか」という恐怖

つながりやすい強迫行為

・自分自身で「大丈夫か?」とひたすら確認を続ける

・他者に「私は何もしていませんよね?」としつこく確認する

 

〇不完全恐怖

…「ぴったりしない」「しっくりしない」といった感覚(強迫観念という認識が本人にないことが多い)

つながりやすい強迫行為

・何度も整理整頓をしてしまう

・同じ行動を繰り返し行ってしまう

→その作業のくり返しによって、やるべきことが前に進まなくなってしまう。(強迫性緩慢)

強迫性障害の問題となる症状

強迫観念への「とらわれ」が生活していく上でつきまといますので、それによって様々な問題となる症状が生じます。

 

  • うつなどの合併
  • 回避行動
  • 周囲の巻き込み

 

毎日が強迫観念と強迫行為に支配されている状態では精神的な疲労が激しく、うつ状態や睡眠障害などを合併することがあります。アルコールに走ってしまう方もいらっしゃいます。

 

強迫性障害は、「バカバカしい」と本人が自覚していることが多いです。ですが、「分かっていても止められない」のが強迫性障害です。仕事や学校といった日常で常に強迫観念につきまとわれると、苦手な状況を避けたいと思うようになってしまいます。

 

自分自身でコントロールができなくなると、家族や友人などを強迫行為に巻き込んでしまうこともあります。「大丈夫」という保証を求めてしまい、何度も確認してしまったりします。

 

こういった回避行動や巻き込みによって、

  • 「とらわれ」が強まって悪循環になってしまう
  • 社会生活がうまくいかなくなってしまう

といった状況に陥ってしまいます。

強迫性障害の2つのタイプ

強迫性障害の症状の特徴から、2つのタイプに分けることができます。それによって治療方針も異なってきますので、ご紹介していたと思います。

 

強迫性障害は、頭の中にしつこく浮かんでくる特定の考えやイメージ(強迫観念)と、それにともなうくり返しの行為(強迫行為)が認められるという特徴があります。

 

この強迫観念と強迫行為の関係性によって、認知タイプと運動性タイプに分けられます。

 

先に強い不安などの強迫観念があり、それを打ち消す強迫行為へとつながっていくケースが「認知タイプ」になります。不潔恐怖、汚染恐怖、加害恐怖などが当てはまります。

 

それに対して、何かの行動をしたときに発する違和感が元となり、それによって強迫行為が見られるケースは「運動性タイプ」になります。不完全恐怖やため込み障害等が当てはまります。

認知タイプ

何らかの強い恐怖が元となった強迫観念が先にあり、それを打ち消そうとする強迫行為へつながっていくタイプです。

 

「自分が汚れているのでは?」「何か大変なことをしてしまうのでは?」という必要以上の恐怖が元になっていることが多く、認知(物事のとらえ方や考え方)の異常が明らかに認められます。

 

このタイプの症状の根本にある恐怖は、けっして異様なものではありません。例えば、「外に行ったから汚れたかもしれない」→「帰宅後は病気になるのを防ぐために手を洗おう」「今日は暑いから汗くさいかもしれない」→「外出する前にシャワーを浴びよう」という流れは普通です。

 

もし、特別に感染の恐れのある病院のような場所に行ったとしたら徹底的に手を洗うかもしれませんが、そのように明確な理由があるなら正常な範囲です。

 

しかし、強迫性障害の人では、そのように明確な理由がないにも関わらず「汚れてしまった、何かに感染してしまった、それが原因で大変な病気になってしまうかもしれない」のような不安が必要以上にふくらんでしまい、過度な行動へとつながっていくのです。

 

誰かに危害を加える妄想や反社会的な考えが頭に浮かぶことも、人間としてめずらしいことではありませんが、多くの人は「考えが浮かんだとしても行動にうつすわけではない」ことを自分でわかっています。けれど、強迫性障害の人においては「実際にやってしまうのではないか」という根拠のない不安がなぜかふくらんでしまい、何度も確認せずにはいられなくなるのです。

 

「認知」とは、物事のとらえ方や考え方のことですが、このタイプの患者さんでは現実以上に物事を悲観的に考えてしまう認知傾向が目立ち、その認知の歪みが元で強迫観念や強迫行為がおこっていると考えられるため、認知タイプと呼ばれています。

 

多くの場合、患者さん自身も自分の抱く恐怖や行為の度が過ぎていることを自覚しています。けれど、勝手にわいてくる強迫観念を止めることができず、その恐怖からおこる強迫行為も意志でおさえることはできず、大変な精神的苦痛と疲労がともなってしまいます。

運動性タイプ

認知タイプのように特定の強い恐怖が先にあるわけではなく、何かの行為をしたときに極度な違和感をおぼえ、その違和感を打ち消そうと何度も同じ行為を繰り返してしまうタイプです。

 

例えば、「机の本を並べたがまっすぐに置けていないような気がして何度も並べ直してしまう」といったようなことが、運動性タイプにあたります。「本を並べた」という行為に対し、「まっすぐに置けていない、なぜかしっくりとこない」という違和感が生じ、くり返しの行為が止められなくなります。

 

こちらのタイプは、何かの行動がきっかけとなって「なぜかしっくりとこない感じ」という強い違和感が発生し、それによってくり返し行為がやめられなくなるため、運動性タイプと呼ばれます。

 

一般的なレベルに比べ、ささいなズレに違和感を抱きやすい敏感な性質の人は、「几帳面」「神経質」などと言われることがありますが、それによって生活が支障されていないのなら性格の個性の範囲です。

 

けれど、その違和感とくり返し行動のせいで次の行動にうつれず、肝心の仕事や家事が前に進まないような状態になると、強迫性障害の症状と考えられます。

 

運動性のタイプの患者さんでは、それによって生活が妨げられていることに患者さん自身が気づいていないケースも少なくありません。

強迫性障害と潔癖症の違いとは?

強迫性障害の症状を見ていただくと、いわゆる潔癖症との違いが気になる方もいらっしゃるかと思います。潔癖症は性格傾向ととらえている方が多いかと思います。

 

几帳面で細かくて神経質、そして柔軟性に乏しく、こだわりが強い性格傾向のことを強迫性人格といったりします。比較的遺伝しやすい性格傾向ともいわれています。

 

しかしながらこのような性格は、決して悪いものではありません。むしろキッチリしていて抜け目がなく、美徳として発揮されていることの方が多いと思います。

 

性格傾向としての潔癖症か、病的な強迫性障害かの線引きは、生活に支障があるかどうかにつきます。具体的には、3つの影響をみていきます。

  • 本人が苦しみを感じているか
  • 仕事や学校にいけない
  • 繰り返しに時間がかかりすぎる

 

このことは強迫性障害の診断基準にも、以下のように明記されています。

  • 臨床的に意味がある苦痛があること
  • 社会的・職業的な障害があること
  • 強迫観念や強迫行為で1時間以上を浪費している

強迫性障害の診断基準

こころの病気では、あらわれている症状をDSM-5ICD-10などの国際的な診断基準にあてはめて診断をくだす方法が主流となっています。

 

もちろん単純にそれだけで診断がつくわけではなく、実際には医師が患者さんとの面接の中で注意深く判断をしますが、ある程度診断基準に沿うことで診断のブレを少なくすることが目的とされています。

 

DSM‐5というAPA(米国精神医学会)による診断基準がわかりやすいので、こちらで紹介したいと思います。

 

  • 強迫観念、強迫行為、またはその両方の存在。

→強迫性障害の中核症状になります。なかには運動性タイプのように、強迫観念が明確でないこともあります。

 

  • 強迫観念や強迫行為によって時間が浪費されているか、明らかな精神的苦痛、もしくは仕事や生活上の支障がある。

→何らかの生活への支障があることが、病気と考えていくには必要になります。例えば、外出して1回念入りに手を洗うのは普通ですが、手が真っ赤になってあかぎれができるほどに洗ってしまうのは病的です。

 

  • 強迫観念や強迫行為は、アルコールや薬物の影響・他の病気によるものではない。
  • 他の精神疾患の症状ではうまく説明できない。

他の病気による強迫症状ではないことが必要です。

 

  • うつ病:すべての考えが悲観的になりやすいため、うつ病の2次的なものとして、強すぎる不安や過度な考えが頭を支配することがあります。反対に、強迫性障害の苦痛が元でうつ病を発症している場合もあります。
  • 統合失調症:強迫観念が妄想的になると、統合失調症の妄想症状と紛らわしいことがあります。強迫性障害では、その考えが自分の内部でおこっていることを患者さん自身が自覚しています。一方で統合失調症の場合は、「外から思考が入り込んでくる、操作されている」という感覚が強くなります。

  • 発達障害:独自のこだわりが強く、くり返し行動が認められることが多い障害です。強迫性障害はその合併症としておこるケースもあり、元の障害と絡んで重症化しやすい傾向があります。

 

これまで強迫性障害は不安障害の一つと考えられていましたが、次第に別の病気と考えるようになりました。2013年に発表されたDSM-5では、その考えが反映されて強迫関連症候群(強迫スペクトラム障害)として独立したカテゴリーが作られています。

強迫性障害の治療

薬物療法や精神療法の進歩により、難治性だった強迫性障害も改善が可能な病気となりました。

 

ただ、治療の効果や進度には個人差が大きく、必ずしも「完治」が目指せるわけではないですが、治療は、「患者さんの苦痛を少しでも取り除き、環境を整え、生活の質を向上させること」が目的です。

 

病気を治すことそのものを目指すというより、今現在の状態や生活の中で改善できそうな部分に1つずつ地道な対処を続けることが、強迫性障害の予後には重要なポイントとなります。

 

この病気の患者さんには、根本的な性質として物事にとらわれやすい傾向がある場合が多く、ストレスが積み重なると症状が再発するケースが目立ちます。

 

そのため、薬や精神療法である程度症状が軽くなってきたとしても、できるだけ生活リズムを整えること、可能な範囲で負担を避けること、精神療法で培ったことを忘れず日々積み重ねることなどが大切です。

強迫性障害での薬の役割

強迫性障害では、

  • 強迫観念のとらわれを薄れさせる
  • 気持ちを落ちつけて精神療法を行いやすくする

の2つの役割でお薬を使っていきます。

 

強迫性障害では、とらわれている強迫観念を薄れさせていくことが必要です。後述しますが、最も基本となるのはセロトニンを増加させる抗うつ剤になります。しかしながら強迫性障害では、他の病気と比べて量が必要になることが多いです。そしてお薬の反応も、他の病気と比べるとよくありません。

 

お薬の反応をみながら、少しでも和らぐお薬を見つけていきます。量が必要になることが多いので、しっかりと使っていかないと効果も期待できません。そして薬物療法と並行して、精神療法も重要になります。

 

強迫性障害では、精神療法を行っていく中で不安や恐怖と対峙しなければいけません。その際に背中がおせるように、気持ちを落ちつけるお薬が使われることが多いです。

 

このように強迫性障害は、お薬だけでよくなる病気ではありません。ですがお薬がなければ、治療がなかなか進まないことが多いです。適切なお薬をしっかりと使い、精神療法を積み重ねていく必要がある病気になります。

 

また、二次的にうつ状態になってしまった場合などは、うつ状態を改善させることが先決になります。それに合わせたお薬を使っていきます。

強迫性障害で使われるお薬とは?

それでは具体的に、強迫性障害ではどのようなお薬を使っていくのでしょうか。ご紹介していきます。

 

強迫性障害の治療で軸になるのが、セロトニンを増加させる抗うつ剤になります。SSRIというお薬が最もよく使われています。しかしながら高用量が必要となることが多く、抗うつ剤を十分に使っても反応率は60%程度といわれています。

 

効果が不十分な患者さんに対しては、ドパミンをブロックするような抗精神病薬が有効であることがあります。特に発達障害やチックが関係している強迫性障害や、強迫観念が妄想的である場合は、抗精神病薬が効果を見せることがあります。

 

そして強迫症状による不安を和らげるために、抗不安薬を使っていくことが多いです。不安が一日中強い方は、抗不安薬を常用します。精神療法をすすめていくにあたって不安が強まるときに、一時的に頓服として使われたりもします。

 

認知タイプは精神療法を並行していけるのですが、運動性タイプでは本人が自覚していないことも少なくありません。ですから、お薬を使っての変化を実感していただくことが重要になります。

抗うつ剤(SSRI)

強迫性障害の治療で使用される薬は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)というタイプの抗うつ剤が中心です。

 

SSRIには、セロトニンという脳内の神経伝達物質を増やす作用があります。セロトニンの不足は、うつ状態や強い不安の原因の1つとなりますが、強迫傾向にも深く関わっていると考えられています。

 

強迫性障害に正式に適応が認められているのは、以下の3つの薬剤になります。

  • デプロメール/ルボックス(一般名:フルボキサミン)
  • パキシル(一般名:パロキセチン)
  • アナフラニール(一般名:クロミプラミン)

 

このうち上の2つはSSRI、アナフラニールは三環系抗うつ薬と呼ばれる古いタイプの抗うつ剤になります。

 

他の抗うつ剤が効果がないわけではないのですが、正式に適応が認められているのがこれらのお薬になります。

 

パキシルの用量はうつ病では40㎎までになりますが、強迫性障害では50㎎までとなっています。このことからも、強迫性障害ではお薬の量が必要ということがお分かりいただけると思います。

 

抗うつ剤について詳しく知りたい方は、抗うつ剤のページをお読みください。

抗精神病薬

セロトニンに作用するSSRIだけで効果が不十分な場合には、抗精神病薬を追加することがあります。

 

抗精神病薬はドパミンをブロックする働きのあるお薬のことです。強迫性障害の患者さんにおいては、セロトニンだけでなくドパミンの機能異常の可能性も指摘されており、ドーパミンを調整できる抗精神病薬が有効な場合があるのです。

 

とくに、

  • 発達障害やチックが関係する強迫症状があるケース
  • 妄想に近い強迫観念があるケース

では、抗精神病薬の効果が期待できます。

 

  • リスパダール(一般名:リスペリドン)
  • ジプレキサ(一般名:オランザピン)
  • セロクエル(一般名:クエチアピン)
  • エビリファイ(一般名:アリピプラゾール)
  • ルーラン(一般名:ペロスピロン)

などが使われますが、比較した中ではリスパダールでの効果がよかったとする論文がありました。

 

抗精神病薬について詳しく知りたい方は、抗精神病薬ページをお読みください。

抗不安薬(精神安定剤)

 

即効性が期待しにくい抗うつ剤に比べ、抗不安薬は服用してしばらくすると効果が現れます。

 

その名の通り、強すぎる不安を緩和させる薬ですが、全体に脳をリラックスさせる作用があるため、緊張や高ぶりをしずめるために使われるお薬です。強迫性障害の治療においても、抗不安剤が効果的なことがあります。

 

  • 一日を通して不安が強いとき
  • 精神療法のなかで不安が強いとき

こういった時に使われます。

 

ただ抗不安剤は、長期間飲み続けるにはあまり向きません。慣れが生じて効果が薄れたり、依存性がついたりする傾向の薬が多いため、あくまで一時的に補助薬として使うのが基本です。

 

強迫性障害の抗不安薬としては、レキソタン(一般名:ブロマゼパム)が使われることが多いと感じます。

 

抗不安薬ついて詳しく知りたい方は、抗不安薬(精神安定剤)のページをお読みください。

強迫性障害の精神療法

強迫性障害の治療では、合った薬をしっかりと飲むことに加え、精神療法の併用が欠かせません。

 

専門の臨床心理士とともにじっくり取り組むことが理想ですが、保険制度の関係で自費診療となってしまうため、どうしてもそれが難しいという患者さんもいます。その場合は、医師が診療内で行える範囲で精神的なアプローチをくり返し、地道な精神療法を積み上げていくことになります。

強迫性障害の治療では精神療法が必要ではあるのですが、かなりの労力がともない、けして簡単なものではありません。症状が辛い時に無理をするとよけい状態が悪化する恐れがあるため、お薬によって少しずつ改善が認められてから行っていきます。

 

お薬の効果を見ながら、日常生活の中で意識をしながら過ごしていただくことで、精神療法を重ねていきます。

 

精神療法は、根本の強迫傾向を改善していく基礎力アップの訓練のようなものです。それを有効に行うためには、今ある辛い症状や弱い部分を助けるための薬物療法を行い、ある程度状態を整えておくことが大切です。

 

強迫性障害の精神療法としては、

  • 暴露反応妨害法(認知行動療法)
  • 森田療法

の2つの考え方で進めていくことが多いです。

暴露反応妨害法(認知行動療法)

強迫性障害の治療で多く用いられる精神療法は、暴露反応妨害法という認知行動療法のひとつです。

 

認知行動療法には様々なやり方がありますが、強迫性障害治療の場合、認知(物事のとらえ方や考え方)の方からのアプローチが困難なので、先に行動をおこし、それによって発生する認知の方に対処する行動主体の方法が取られます。

 

具体的には、暴露反応妨害法という方法を使います。この方法は、強迫性障害の人にとって恐怖の強い行動(苦手なイメージを想像するなどの内的行動も含む)にあえて挑戦してもらい、それをくり返すことで不安に慣らしていく方法です。

 

不安は多くの人が苦手とする感情ですが、それが生活に差し障ることは通常おこりません。けれど、強迫性障害の人に生じる不安の不快度は通常のレベルを大きく超えており、それを何とか打ち消そうとするがために強迫行為が止められなくなってしまうのです。

 

つまり、「不安などの不快な感情を放置できない」状態です。けれど、不安はむやみに打ち消そうとすればするほどそれにとらわれ、果てしなくふくらんでいく悪循環になり、最後は「不安を感じないですむ場所や状況に逃げ込む」という回避行動につながります。

 

そこで、避けたり打ち消したりしようとしていた不安や不快なイメージをあえて呼び起こし、打ち消そうとする強迫行為を我慢し「そのまま放置する」練習をしてもらいます。そうすると、「避けたり打ち消したりしなくても現実的に恐れていたような事態はおこらない」「不安は放置していると少しずつ薄れる」などのことが体感としてつかめるようになっていきます。

 

この方法は、強迫性障害や不安障害の精神療法として有効性が認められていますが、楽なものではありません。地道な積み重ねが必要となります。

 

そのため、とくに症状の重いときには無理をせず、薬での安定や緩和をはかりながら行うことが重要で、軽い負担のものから段階に沿って少しずつ取り組むことがすすめられています。

森田療法

森田療法は、古くから神経症の治療に用いられた日本発の精神療法で、患者さんの状態によっては強迫性障害にも適応します。

 

この方法も、「考えや感情にとらわれず、やるべき行動を実行する」という行動主体の方法で、どのような考えや感情がわいてもそれを打ち消したりせずに放置し、たとえ「怖いから避けたい」「不安だから手を洗いたい」と思ったとしても行動に結び付けず、現実に沿った家事や仕事の方に向かう訓練を積み重ねていきます。

 

恐怖や不安は仕方がないこととして考え、これ自体を変えようとはしません。そのままにして受け入れられることを目指していきます。

 

不安や恐怖の裏側は、「よりよく生きたい」という欲望でもあります。それを認識し、「あるがまま」を受け止められることを目指していきます。

 

例えば不潔恐怖の方であれば、「汚いものを触ると不快である」ということは、「きれいにして健康に長生きしたい」という欲望の表れです。それを受け止め、感情と切り離して自分の本来の望みのままに、建設的な行動をできるようにしていきます。

強迫障害で学校や仕事は休むべき?

強迫性障害では、学校や仕事といった社会生活での支障がとても多い病気です。ストレスを感じながら日々の生活を過ごさざるを得ないのですが、治療のために休みをとるべきなのかという質問を受けることがあります。

 

結論から申し上げると、何とか学校や仕事にいけているのでしたら、症状が悪化していかなければ、そのまま続けながら治療を行っていく方が良いです。

 

強迫症状は自分の意思で抑えられませんが、学校や仕事で人目や時間制約があると、ある程度のブレーキがかかります。そのブレーキが治療においては重要な意味を持つので、できる限り学校や仕事を続けていくことが治療的になります。

 

ただそれは、ストレスがかかり続けていくことになります。お薬で症状を緩和しながら、専門家と相談しながらすすめていくべきです。心身が疲弊してしまうと、強迫症状が悪化してしまい、うつ状態に陥ってしまう方もいらっしゃいます。うつ状態がひどいときには、一時的な休養が必要になります。

 

強迫性障害の患者さんは、学校や職場に病気のことを伝えるべきか悩まれている方も多いです。可能であれば管理者に病気の治療のことを伝え、ある程度理解をしてもらっておくことが理想です。ですが現実的な状況も人それぞれですので、ケースバイケースかと思います。

強迫性障害での家族の接し方

強迫性障害は、家族の人に与える影響も大きな病気です。

 

軽度のうちは患者さん本人が苦痛なだけですが、強迫症状が強くなってくると、例えば家のすみずみまでを除菌しようとしたり、家族の触れたものであっても汚く感じてしまったりすることもあり、家族の方も辛い思いをし、精神状態や家族関係が悪くなってしまうことがあります。

 

また、確認行為を家族に求めるようになると、1日に何回もしつこく「大丈夫だよね?」と確認を求められ、家族の方が疲れ果ててしまうこともあります。

 

強迫性障害の治療においては、家族の理解と協力も重要になります。「理解」と言っても、患者さんの行為や要求に従うということではありません。それが病気の症状であること、患者さん自身も止めたいのに止められずに苦しんでいること、その改善のためには、専門家の指導に沿った対処が必要なことを理解することが大切です。

 

強迫性障害は、心の弱さや意志の弱さからおこっているものではなく、脳の伝達物質の働きが何らかの異常をおこしている1つの病気で、薬や精神療法でのアプローチが必要なものです。

 

その治療には時間がかかるため、家族の人も焦ってしまうかもしれませんが、周囲の人は必要以上に患者さんに踏み込まず、自分の心身の健康維持をはかり、適度な距離を持って見守るようにしましょう。

 

患者さんの強迫行為や確認行為への対処は、主治医と相談の上で一定のルールを持って接することがすすめられます。そのため、可能であれば家族の人にも治療に協力してもらい、患者さんが日常生活の中で症状の改善を目指せるような環境づくりを行うことになります。

 

治療中は、患者さん自身だけではなく、見守る家族の人も苦しい部分があります。対処で迷うことや困ることがあった場合は抱え込まず、医師と相談をしてください。

診療内容

当院では患者さまをできるだけお待たせしない快適な医療のために、予約システムを導入しています。

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※受付は、診療終了時間の15分前までとなります。

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