ジプレキサ(オランザピン)診療内容/精神科

ジプレキサ(オランザピン)とは?

ジプレキサは、第二世代の抗精神病薬(非定型抗精神病薬)になります。

 

色々な受容体に作用するため、MARTA(多元受容体標的化抗精神病薬)と呼ばれています。過剰なドパミンの働きを抑える働きがあるため、

  • 統合失調症

の治療薬として開発されました。

 

幻聴や妄想といった陽性症状に対する効果はややマイルドですが、陰性症状(意欲減退や感情鈍麻)や認知機能の改善に効果が期待できます。

 

そしてジプレキサは、気分の安定にも効果が期待できるお薬であることがわかってきました。そして、

  • うつ病・うつ状態
  • 双極性障害(躁うつ病)

の治療薬として使われることがあります。

 

ジプレキサには鎮静作用が期待できるため、衝動コントロールや不眠にも使われることがあります。また食欲を増したり、吐き気を抑える効果も期待できます。

 

現在日本で発売されているMARTAは3剤となります。

  • セロクエル(一般名:クエチアピン):2001年発売
  • ジプレキサ(一般名:オランザピン):2001年発売
  • シクレスト(一般名:アセナピン):2016年発売

 

ジプレキサは発売から年月がたっているため、2016年よりジェネリック医薬品が発売となっています。一般名(成分名)のオランザピン錠として発売されています。

ジプレキサの効果・効能が期待できる病気

ジプレキサには、どのような効果・効能が期待できるのでしょうか。

 

ジプレキサはドパミンだけでなく様々な受容体に作用して、その働きをブロックすることで効果を発揮します。このためドパミンが過剰となって生じる幻聴や妄想の改善が期待できますが、同時に気持ちを穏やかにする鎮静作用も期待できます。

 

ジプレキサはドパミン受容体に緩やかに結合するため、ドパミンをブロックしすぎません。このため、ドパミン関連の副作用も軽減されています。

 

それだけでなくジプレキサは、気分安定薬としても働きます。

  • 抗躁効果(強い):気分の高まりを鎮める
  • 抗うつ効果(やや弱い):落ち込みを改善する
  • 再発予防効果(中程度):気分の波を小さくする

 

ジプレキサの効果は幅広く、様々な症状を和らげる目的でも使われています。

 

気持ちの高ぶりを抑える作用があるため、不安や焦燥感が強いときに使われます。また深い睡眠が促されるため、睡眠薬として使われることもあります。食欲を増加させる効果や制吐作用も認められます。

 

このためジプレキサでは、

  • 統合失調症
  • うつ病・うつ状態
  • 双極性障害(とくに躁状態)
  • 不眠や不安
  • 衝動のコントロールできない状態(認知症や青少年の行動障害など)
  • 吐き気(抗がん剤など)
  • 食欲低下

などに効果・効能が期待できます。統合失調症やうつ病・双極性障害については詳しく後述しますので、それ以外についてみていきましょう。

 

ジプレキサには鎮静作用や気分安定作用が期待できるため、衝動をコントロールしやすくするために使われることがあります。また、強い不安や不眠に対しても使われることがあります。抗不安薬や睡眠薬を使っていくよりも、症状をコントロールできることもあります。

 

ジプレキサには制吐作用が期待でき、抗がん剤の副作用での吐き気を和らげる目的で正式に適応が認められています。身体的な吐き気だけでなく、心因的な吐き気にも使われることがあります。

 

またジプレキサは、食欲を増加させる作用があります。副作用として問題になることも多いのですが、高齢者で食欲不振がひどい場合などに、ごく少量のジプレキサが食欲を回復してくれることがあります。

ジプレキサの統合失調症での効果

ジプレキサの特徴として、ドパミン受容体を穏やかにブロックすることがあります。そしてドパミン以外の多くの受容体にも作用して、鎮静作用が期待できる抗精神病薬になります。

 

ジプレキサは、幻覚や妄想といった陽性症状に対するコントロールは不十分となってしまうことがあります。ですが興奮や衝動を鎮める鎮静作用が期待できます。統合失調症の患者さんでは、衝動性や過敏さが強まってしまうことが多いため、そういった場合に効果が期待できます。

 

急性期の興奮が強い患者さんには使いやすいお薬で、そのための剤形もバリエーションがあります。ザイディス錠や筋注製剤など、ご本人が服用が困難な状況でもお薬を投与することができます。

 

またジプレキサは、意欲減退や感情鈍麻といった陰性症状、認知機能障害や感情障害に効果が期待できます。

 

このため急性期だけでなく、慢性期にも使われることも多いです。ただしジプレキサは糖代謝に悪影響を及ぼすことがあるため、血糖値に注意して使っていく必要があります。

ジプレキサのうつ病・双極性障害での効果

ジプレキサの気分に対する効果をみていきましょう。

 

ジプレキサは、双極性障害での適応が認められています。うつ状態・躁状態のどちらの目的でも適応が認められており、海外では維持療法でも適応があります。

 

ジプレキサは、特に躁状態に対しての効果が期待できます。海外ではジプレキサ単剤でのうつ状態の適応がなく、SSRIのプロザック(一般名:フルオキセチン)と併用することで適応が認められています。

 

双極性障害だけでなく、うつ病の患者さんにも使われることがあります。抗うつ剤で十分な効果が認められない場合に、抗うつ剤にジプレキサを追加する形で効果の増強(augmentation)に使われます。

 

ジプレキサのうつ状態に対する作用は、セロトニンが関係していると考えられています。認知機能や実行機能などを司っている大脳皮質の前頭前野において、セロトニンの働きが強まることが関係しています。

 

一方で躁状態では、ジプレキサは気持ちを落ちつけていく効果が期待できます。躁状態は中脳辺縁系という部分でのドパミン過活動も要因と考えられていて、ジプレキサは併せて効果が期待できます。

 

このようにジプレキサはうつ状態にも躁状態にも効果が期待でき、気分の波を小さくする再発予防効果も期待できます。抗うつ効果はやや弱く、抗躁効果は強いという特徴があります。

ジプレキサの適応が正式に認められている病気

ジプレキサの適応が正式に認められている病気は、

  • 統合失調症(2001年)
  • 双極性障害の躁状態(2010年)
  • 双極性障害のうつ状態(2012年)
  • 抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状(2017年)

となっています。

 

日本での適応では、双極性障害の維持療法には適応がみとめられていません。うつ状態や躁状態には適応がみとめられていますので、状態が落ちついても維持療法目的で継続して使われています。

 

また、抗がん剤の副作用による悪心・嘔吐などの消化器症状に対しての適応が認められています。ジプレキサに制吐作用があることは以前より知られており、ガイドラインなどでも中等度以上の催吐性リスクのある抗ガン剤で推奨されていました。

 

シスプラチンなどの強い吐き気の副作用を生じるお薬を使う場合に、5-HT3受容体拮抗薬(アロキシなど)やNK1受容体拮抗薬(イメンドなど)など、抗がん剤による吐き気止めと同様に使うことができるとされています。

海外での適応からみるジプレキサの効果

ジプレキサは海外でも、

  • 統合失調症
  • 双極性障害

の適応が認められています。

 

アメリカでは、

  • 統合失調症
  • 双極性障害の躁状態・混合状態
  • 双極性障害のうつ状態(フルオキセチンとの併用)
  • 治療抵抗性うつ病(フルオキセチンとの併用)

以上のような適応となっています。

 

イギリスでは、

  • 統合失調症
  • 中~重度の双極性障害の躁状態
  • 双極性障害の再発予防

に適応が認められています。

 

このようにジプレキサは、うつ状態に対しては単独での適応は認められていません。おもに統合失調症と双極性障害の躁状態での適応となっています。

 

アメリカでは、SSRIのプロザック(一般名:フルオキセチン)との併用でうつ状態に効果が認められています。これらを合わせた合材として、シンビアックスというお薬が発売されています。

ジプレキサの特徴

  <メリット>

  • 陰性症状や認知機能の改善が期待できる
  • 気分安定作用が期待できる
  • 鎮静作用で不眠や不安に効果が期待できる
  • ジェネリックが発売されている(薬価がリーズナブル)
  • 1日1回の服用が可能
  • 剤形が豊富

  <デメリット>

  • 体重増加や代謝の悪化に注意が必要(糖尿病に禁忌)
  • 眠気やふらつきが強くでやすい
  • 口の渇きや便秘の可能性がある
  • タバコを吸う人は効果が弱まってしまう

 

それではジプレキサの特徴を、

  1. 効果
  2. 副作用
  3. 剤形と薬価

に分けてみていきましょう。ジプレキサ以外の抗精神病薬との比較も行っていきます。

ジプレキサの効果

ジプレキサは、

  • 幻聴や妄想を軽減
  • 躁状態やうつ状態の改善
  • 衝動性のコントロール
  • 不安や不眠の改善
  • 吐き気の改善
  • 食欲増進

に効果が期待できます。

 

それではジプレキサは、抗精神病薬の中でどういった効果の位置づけなのでしょうか。ジプレキサの作用について、他の抗精神病薬と比較してみましょう。

 

抗精神病薬の作用プロファイルをまとめました。(Ki値での比較)

ジプレキサは、

  • ドパミンに緩やかに作用する
  • 様々な受容体に作用する
  • 抗コリン作用が認められる

という特徴があります。

 

このためドパミンをブロックしすぎてしまう副作用は少ないです。ですが効果としては陽性症状への効果の不安定さにつながり、コントロールしきれないこともあります。

 

また、抗ヒスタミン作用や抗α1作用による鎮静作用が認められます。興奮を鎮めるだけでなく、不安や不眠にも効果が期待できます。このように様々な受容体に作用するため、効果に厚みがあります。

 

抗精神病薬の中では抗コリン作用の強さが特徴的で、便秘や口の渇きといった副作用や離脱症状に注意が必要になります。

 

抗精神病薬は気分安定作用が期待できるお薬もあります。ジプレキサもその一つで、

  • 抗躁効果:強い
  • 抗うつ効果:やや弱い
  • 再発予防効果:中程度

となります。

ジプレキサの副作用

ジプレキサの副作用は、昔の抗精神病薬と比べると明らかに副作用は少なくなっています。

 

しかしながらジプレキサは、様々な受容体に作用することで効果に厚みがありますが、副作用も認められます。

 

ここではジプレキサの副作用について、他の抗精神病薬と比較してみましょう。

 

抗精神病薬の副作用を比較しました。

 

ジプレキサの副作用としては、

  • 鎮静作用の副作用:眠気やふらつき
  • 代謝系の副作用:体重増加や高血糖(糖尿病)
  • 抗コリン作用による副作用:口渇・便秘

が目立つ点があげられます。糖尿病の患者さんでは禁忌(使うことができない)となっています。

 

その一方で、

  • ドパミン遮断の副作用:錐体外路症状や高プロラクチン血症

は少ないです。

 

また、ジプレキサの承認時の副作用報告(統合失調症)では、

  • 体重増加(7.71%)
  • 傾眠(4.01%)
  • 不眠(3.47%)
  • 便秘(3.21%)
  • アカシジア(3.13%)
  • 食欲亢進(2.63%)

このようになっています。

 

またジプレキサは、タバコを吸っていると効果が弱くなってしまうことがわかっています。タバコは肝臓の酵素(CYP1A2)の働きを強めてしまいますが、この酵素はジプレキサの分解に重要になります。このためタバコを吸っていると、有効成分が分解されやすくなってしまいます。

ジプレキサの剤形と薬価

ジプレキサのお薬としての特徴についてみていきましょう。

 

ジプレキサにはジェネリックも発売されており、オランザピン錠という名称で発売されています。かつては高用量使う場合にはかなりの薬価になってしまいましたが、現在はリーズナブルとなっています。

 

ジプレキサは、

  • 錠(2.5mg・5mg・10mg)
  • 細粒(1%)
  • ザイディス錠(2.5mg・5mg・10mg)
  • 筋注(10mg)

※ジェネリック医薬品のみ、1.25mg錠・20mg錠も発売されています。ザイディス錠は、近しい剤形がOD錠として発売されています。

 

  • 1.25mg錠(ジェネリックのみ:15.3円)
  • 2.5mg錠:98.3円(ジェネリック:24.9~32.1円)
  • 5mg錠:183.4(ジェネリックのみ:45.2~59.3円)
  • 10mg錠:345.8円(ジェネリック:85.9~112.6円)

  • 20mg錠(ジェネリックのみ:130.7円)
  • 2.5mgザイディス錠:98.3円(ジェネリックOD錠:円)
  • 5mgザイディス錠:183.4円(ジェネリックOD錠:45.2~59.3円)
  • 10mgザイディス錠:345.8円(ジェネリックOD錠:85.9~112.6円)
  • 1%細粒:342.3円/g(ジェネリック:93.2~127円/ℊ)

  • 10mg筋注用:2020円

    ※2018年4月現在の薬価になります。

 

これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。

 

ジプレキサは薬価が高いのがデメリットでしたが、ジェネリックが発売されて使いやすくなりました。

ジプレキサの用法と効果のみられ方

ジェイゾロフト錠は、以下のような用法となっています。

 

【統合失調症】

  • 開始用量:5~10mg
  • 維持量:10mg
  • 用法:1日1回
  • 最高用量:20mg

 

【躁状態】

  • 開始用量:10mg
  • 用法:1日1回
  • 最高用量:20mg

 

【うつ状態】

  • 開始用量:5mg
  • 維持量:10mg
  • 用法:1日1回(就寝前)
  • 最高用量:20mg

 

【抗がん剤による吐き気】

  • 開始用量:5mg
  • 用法:1日1回
  • 最高用量:10mg

 

このようにジプレキサは、鎮静作用を期待するときは10mgから、それ以外の場合は2.5mg~5mgより漸増していくことが多いです。

 

作用時間が長いため、1日1回の服用で効果が持続します。鎮静作用が強くて眠気が認められることがあるため、夕食後や就寝前に服用とすることが一般的です。効果が安定してくるまでには時間がかかるので、2週間ごとにじっくりと調整していくが多いです。

【参考】ジプレキサの半減期

お薬の効き方を見ていくにあたっては、

  • 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
  • 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間

が重要になってきます。

 

ジプレキサは、

  • 半減期(T1/2):28.5時間
  • 最高血中濃度到達時間(Tmax):4.8時間

となっています。

 

ジプレキサは4.8時間ほどでピークになり、そこから28.5時間で半分の量になるということになります。ですから1日1回の服用によって、効果が一日安定します。

ジプレキサの剤形と効能の違い

ジプレキサは通常の錠剤だけでなく、様々なタイプが発売されています。

  • ザイディス錠
  • 筋注用

お薬の剤形によって、メリットとデメリットがあります。それぞれについて、ご紹介していきます。

ジプレキサザイディス錠

ジプレキサザイディス錠とは、口の中に入れると唾液で溶けるように作られているジプレキサの剤形になります。

 

フリーズドライを応用したザイディズ技術を利用していて、通常の口腔内崩壊錠と比べてもすぐに口の中で溶けます。フリーズドライは食品などでも使われていますが、液体成分を凍らせてから乾燥させることで、穴の開いたスポンジ状になります。水に素早くとけます。

 

 

ジプレキサザイディス錠は、2.5mg・5mg・10mgの3規格が発売されています。

 

 <メリット>

  • 水なしでも服用が可能(推奨はされていない)
  • 内服が苦手な方でも服用できる
  • 飲み込みが悪い方でも服用しやすい
  • 拒薬している人にも使える場合がある
  • 服薬しやすい味になっている
  • 7錠1シートになっている

 <デメリット>

  • 一包化ができない
  • パッケージから出すと崩れやすい
  • 濡れた手で触ってはいけない
  • 他の薬を服用しているとメリットが少ない

ジプレキサザイディス錠の一番のメリットは、その服用しやすさです。その一方でデメリットは、管理のしにくさです。

ジプレキサザイディス錠は湿度が高いと崩れやすく、一方化(同じ飲み方の薬をまとめる)ができません。濡れた手で触ってしまうと溶け出してしまいます。

 

ジプレキサザイディス錠は、お薬の吸収のされ方などには通常の錠剤と変わりはないとされています。ですが口に入れてすぐに溶けるため、効果の実感が早く感じることが多いです。

 

また統合失調症や躁状態の患者さんでは、お薬をご自身の意思で服用できないこともあります。無理にでもお薬を服用させなければならない場合もありますが、その場合には鎮静作用も期待できるジプレキサザイディス錠は有用です。

ジプレキサ筋注

ジプレキサは、筋肉注射を行うことができます。

 

ジプレキサの筋注は、

  • 統合失調症における精神運動興奮

での適応が認められます。興奮や衝動性が高まっている時に、鎮静作用を期待して使われます。

 

ジプレキサは錠剤の内服と比べて、一気に吸収されるという特徴があります。0.25時間で血中濃度がピークとなり、その濃度は5倍にもなります。そして2~3時間すると、飲み薬と同じような血中濃度になります。

 

ビタミン剤のような黄色い注射液に、10mgの有効成分が含まれています。この注射液を、肩(三角筋)やお尻(中殿筋)に注射します。お尻といっても腰の下ほどのイメージで、こちらの方が痛みが少ないです。

 

1回注射して効果が不十分であれば、2時間あけて2回目の注射が可能です。1日2回まで行うことができます。

 

<メリット>

  • 初回通過効果を受けない(肝臓での代謝による効果減弱)
  • 効果が早い
  • 患者さんの意志がなくても必要であれば使える

<デメリット>

  • 副作用のリスクが高まる
  • 筋肉の拘縮や神経障害が起こることがある

 

お薬を内服すると、吸収されて肝臓を通過して一部が分解されてしまいます。しかしながら筋注では、ダイレクトに血管に有効成分が届きます。このため効果も早く、鎮静作用が強く認められます。

 

その一方で、副作用のリスクは高まります。注射をした後に眠気が強くなってしまうことはよくあります。また何回も筋肉注射をすると、筋肉が線維化して固まってしまいます。筋注したときに誤って神経を傷つけてしまうリスクもあります。

服用時期でみたジプレキサの副作用

ジプレキサの副作用について、服用時期ごとにみていきましょう。

 

MARTAの服用時期での副作用をまとめました。

 

ジプレキサの飲み始めに注意すべきなのは、眠気やふらつきといった鎮静作用になります。服用を続けていくうちに少しずつ慣れていきますが、服用中も注意が必要になります。

 

服用を続けていく中で問題となるのが、

  • 糖代謝異常
  • 肝・腎機能障害

になります。

 

またジプレキサは、血糖値に注意が必要です。糖代謝に悪影響をきたし、食欲が増して体重増加のリスクがあります。糖尿病に進行してしまうことがあり、糖尿病の方は禁忌(使ってはいけない)となっています。

 

そして肝臓や腎臓に負担がかかってしまって機能が低下してしまうことがあるため、定期的に採血して行く必要があります。

 

お薬を減薬していく際には、離脱症状や悪性症候群の可能性があります。ジプレキサでは離脱症状により、減薬の際に心身の不調が認められることもあります。

 

またお薬の増減によって、悪性症候群が起こることがあります。悪性症候群は発熱や意識障害に加え、錐体外路症状(手足の震えやこわばり、嚥下障害)、自律神経症状、横紋筋融解症(筋肉の痛み)などが認められます。お薬の増減の後に、咳や鼻水などがなくて高熱が認められた場合は、注意が必要です。

 

MARTAの副作用をまとめました。

ジプレキサの副作用の対処法

ジプレキサの副作用が認められた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

 

ジプレキサで副作用が認められた場合、

  • 何とかなるなら様子を見る(経過観察)

が基本的な対処法となります。お薬を飲み続けるうちに身体が少しずつ慣れていき、落ちついてくることが多いためです。

 

しかしながらどうしても症状が改善しない場合は、主治医に報告して相談してください。ジプレキサを使っていったほうが良い場合は、症状を和らげるお薬を併用してしばらく様子を見ることもあります。

 

生活習慣で改善ができる部分があれば、並行して行っていくことも大切です。

 

抗うつ剤の副作用への対処法をまとめました。

 

ジプレキサの副作用で多くの方が気にされるのが、

  • 眠気
  • 太る

になります。ジプレキサの副作用ではどちらも注意が必要なため、対処法も含めて詳しくお伝えしていきます。

ジプレキサと眠気・不眠

ジプレキサの発売後調査での副作用頻度をみてみましょう。

  • 眠気(傾眠):7.27%
  • 不眠:5.45%

このようにジプレキサは、眠気と不眠の両方が認められます。

 

しかしながら不眠の多くは、精神症状として改善が乏しいことが原因です。ジプレキサは明らかに眠気が強いお薬になります。そしてジプレキサは、用量を増やすにつれて眠気が強まっていく傾向にあります。

 

ジプレキサで眠気が生じる原因としては、

  • 抗ヒスタミン作用や抗α1作用、抗コリン作用の直接的な眠気
  • セロトニン2A遮断作用による深部睡眠の増加

こういったことが考えられます。

 

ジプレキサは抗ヒスタミン作用が強く、抗α1作用や抗コリン作用も認められます。このため直接的な眠気も強いです。セロトニン2A遮断作用によって深い睡眠が増加するため、睡眠薬がわりに使われることもあります。

 

効果には個人差があるため、作用時間が長いために朝に残ってしまうこともあります。倦怠感や眠気の持ち越しによって起きれなくなってしまうこともあるので、はじめは慎重に使っていくことが多いです。

 

ジプレキサで眠気が認められた場合の対処法としては、

  • 慣れるまで待つ
  • 服用のタイミングをかえる(夕食後や就寝前)
  • お薬の量を減らす
  • 他の抗精神病薬に変更する

といったことがあります。

ジプレキサと体重(太る?痩せる?)・糖尿病

ジプレキサでは、体重や血糖について注意が必要です。

 

食欲や代謝などは様々な影響があり、お薬だけでなく病状も関係してきます。このため、一概にお薬の影響だけを評価していくことは難しいです。

 

ですがジプレキサは代謝を悪くしてしまい、食欲も増加させてしまいます。基本的には太る傾向にあるお薬になります。

 

ジプレキサの発売後調査での副作用頻度は、

  • 体重増加:13.64%
  • 体重減少:0%

このように報告されています。このように見れば、太りやすいお薬であることがわかるかと思います。

 

発売後の1910人での調査では、平均して3kgの体重増加が認められ、そのピークは4~5カ月ほどと報告されています。また、服用してすぐに体重増加(1か月で7%以上)する方は、1年後には平均で+10.1kgと報告されています。

 

ジプレキサが太る原因は、

  • 抗ヒスタミン作用や抗セロトニン2C作用の直接的な食欲増加
  • 原因不明だが、非定型抗精神病薬が代謝を低下させるため

が考えられます。

 

抗ヒスタミン作用や抗セロトニン2C作用は、いずれも食欲を増加させる働きがあります。これらが直接的に食欲増加を生じ、ジプレキサの直接的な食欲増加の原因となります。

 

また原因がよくわかっていませんが、昔からある定型抗精神病薬に比べて、非定型抗精神病薬は代謝が低下することが分かっています。

 

これらが合わさり、ジプレキサは太る傾向にはあるお薬です。さらには糖尿病に進行してしまい、糖尿病性昏睡から死亡例も報告されました。このためジプレキサは、糖尿病患者では禁忌となっています。

 

およそ13万人のうちに9例で重篤な糖尿病性昏睡の報告があり、亡くなってしまったのは2例になります。

 

基本的には安全性が高いお薬ではあるため、過剰に心配する必要はありません。ですが注意が必要なケースとしては、

  • 飲み始めてすぐに7%以上の体重増加
  • 若い人の多飲(とくにソフトドリンク)
  • もともと肥満体型

これらがあげられます。

 

口渇・多飲・多尿・頻尿といった症状には注意が必要で、こういった症状が認められた場合は血液検査をしっかりと行うことが大切です。

 

そしてジプレキサで太ってしまった場合の対処法としては、

  • 生活習慣を見直す
  • 運動習慣を取り入れる
  • 食事の際によく噛むようにする
  • お薬の量を減らす
  • 他の抗精神病薬に変更する

といったことがあります。糖尿病の診断基準を満たしてしまえば、直ちに中止します。

ジプレキサの離脱症状と減薬方法

ジプレキサは、離脱症状に気をつける必要があるお薬になります。長期で服用している場合は、少しずつ減量していく必要があります。

 

ジプレキサの離脱症状としては、

  • ドパミン作動性:幻覚や妄想(過感受性精神病)・アカシジア・ジスキネジア
  • コリン作動性:精神症状(不安・イライラ)・身体症状(不眠・頭痛)・自律神経症状(吐き気・下痢・発汗)

この2つの離脱症状が認められることがあります。

 

ジプレキサはドパミンをブロックするお薬ですが、その働きは穏やかになります。このため、ドパミン作動性の離脱症状はおこりにくいです。

 

ジプレキサの離脱症状で問題になるのは、抗コリン作用による離脱症状です。ジプレキサは抗コリン作用が強いためで、減量していく際には少しずつ行っていく必要があります。

 

コリン作動性の離脱症状とは、抑え込まれていたアセチルコリンが急に解放されることで、リバウンドによりアセチルコリンの活動が一気に高まってしまうことでの症状です。

 

アセチルコリンは副交感神経という自律神経の調整をしているので、吐き気や下痢といった胃腸症状などの自律神経症状、不眠や頭痛などの身体症状、不安やイライラなどの精神症状が認められます。

 

これらの離脱症状は、薬が減って1~3日ほどして認められます。2週間ほどで収まっていくことが多いですが、まれに月単位で続いてしまうこともあります。

 

こういった離脱症状を防ぐために、ジプレキサの減量は少しずつ行っていきます。離脱症状がひどい場合は元のお薬の量に戻し、減量のペースを緩めていきます。減量の方法は、以下の2つの方法があります。

 

ジプレキサの運転への影響

心の病気の治療薬は多くが運転や危険作業が禁止となっていました。

 

これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得ませんでした。

 

ジプレキサの添付文章でも同様に、

傾眠、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、本剤投与中の患者には高所での作業あるいは自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。

という表現となっています。

 

統合失調症や双極性障害でも、症状がコントロールできていれば運転免許は取得することができます。(医師の診断書が必要)

 

ですがほとんど全てのお薬で運転禁止とされているのが実情です。運転ができないことが、社会復帰の妨げになってしまうこともあります。自己責任にはなりますが、お薬を服用しながら運転されている方もいるのが実情です。

 

ただし、

  • はじめて使ったとき
  • 他のお薬からの切り替えをしたとき
  • 量を増減させているとき
  • 体調不良を自覚したとき

は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです。

ジプレキサの妊娠・授乳への影響

ジプレキサの妊娠への影響から見ていきましょう。ジプレキサのお薬の添付文章には、

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。

このように記載されています。

 

もちろん妊娠中は、お薬を避けるに越したことはありません。しかしながらジプレキサを中止したら病状が不安定になってしまう場合は、お薬を最小限にしながら続けていくことが多いです。

 

統合失調症や双極性障害は、お薬を減量していくと症状が不安定になるリスクが高まります。ですからその場合は、ジプレキサの服用を続けることが多いです。

 

ジプレキサは、奇形のリスクに関して明かな報告はありません。ジプレキサが影響するのは、産まれた後の赤ちゃんになります。離脱症状や錐体外路症状が認められることがあると報告されています。

 

後遺症が残るたぐいのものではないので、産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。

 

次に、ジプレキサの授乳への影響をみていきましょう。ジプレキサのお薬の添付文章には、

授乳中の婦人に投与する場合には、授乳を中止させること。

このように記載されています。

 

しかしながら授乳についても、明らかなネガティブな報告はありません。

母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。ご自身での判断にはなりますが、ジプレキサを服用していても授乳を続ける方がメリットが大きいようにも思います。

 

母乳を通して赤ちゃんにジプレキサの成分が伝わってしまうことは、動物実験だけでなく人間でも確認されています。血中濃度の0.46倍が母乳に移行するという報告があります。乳児検診で体重が増えていかないといったことがあれば、医師と相談したほうが良いでしょう。

海外の妊娠と授乳に関する基準

海外の妊娠と授乳に関する基準をご紹介します。

  • 妊娠への影響:FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準

    A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
    B:ヒトでの危険性の証拠はない
    C:危険性を否定することができない
    D:危険性を示す確かな証拠がある
    ×:妊娠中は禁忌

  • 授乳への影響:Hale授乳危険度分類

    L1:最も安全
    L2:比較的安全
    L3:おそらく安全・新薬・情報不足
    L4:おそらく危険
    L5:危険

抗精神病薬の妊娠・授乳への影響をまとめました。

 

ジプレキサは、FDA基準で「C」、Hale分類で「L2」となっています。

ジプレキサ錠のジェネリック(オランザピン錠)

ジプレキサ錠は、2001年に発売されたお薬になります。お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売できるようになります。(先発品)

 

ジプレキサ錠のジェネリックは、この特許が切れた2016年にオランザピン錠として発売となりました。薬価も先発品の半分以下となっているので、リーズナブルになっています。

 

先発品はお薬を開発した会社から発売されますが、ジェネリック医薬品は複数の会社から発売されます。オランザピン錠も、様々な製薬会社から発売されています。

 

これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。

 

しかしながらジプレキサは、不眠や不安については即効性を期待してつかうこともあります。そういった場合は、効果の実感の違いを感じる方もいます。それだけでなく、お薬が先発品から変化することに心配になってしまう方もいらっしゃいます。そのような場合はもちろん、先発品のまま使っていくことも可能です。

【参考】ジプレキサの作用機序

最後に、ジプレキサの作用の仕組みについてお伝えしていきたいと思います。

 

ジプレキサが効果が発揮するのは、大きく2つの物質が関係しています。

  • ドパミン
  • セロトニン

ドパミンは脳の中で、大きく4つの働きをしています。

 

抗精神病薬の作用とドパミンへの影響について図にしてまとめました。

 

  • 中脳辺縁系―陽性症状の改善(幻聴や妄想)
  • 中脳皮質系―陰性症状の出現(感情鈍麻や意欲減退)
  • 黒質線条体―錐体外路症状の出現(パーキンソン症状やジストニア)
  • 視床下部下垂体系―高プロラクチン血症(生理不順や性機能低下)

 

統合失調症では、中脳辺縁系でのドパミンの分泌・活動の異常によって幻聴や妄想といった陽性症状が認められると考えられています。この中脳辺縁系のドパミンを抑えることで、陽性症状の改善が期待できます。(ドパミンD2受容体遮断作用)

 

しかしながらドパミンを全体的にブロックしてしまうと、他の部分では必要なドパミンの働きが抑えられてしまいます。他の3つの部分ではドパミンの働きが抑えられてしまい、上記のような副作用が生じます。

 

そこで注目されたのが、ドパミンを抑制する働きのあるセロトニンです。このセロトニンをブロックすると、中脳辺縁系以外でのドパミンの働きを高める作用が期待できます。

 

ですから、ドパミン(ドパミンD2受容体)とセロトニン(セロトニン2A受容体)を同時にブロックすれば、陽性症状と陰性症状の両方に効果が期待でき、副作用も軽減されます。

 

こういった作用メカニズムがあるお薬を非定型抗精神病薬(第二世代抗精神病薬)といいます。ジプレキサは非定型抗精神病薬に分類されます。

 

ジプレキサはこれ以外にも、様々な受容体に働きます。抗ヒスタミン作用や抗α1作用により、気持ちの高ぶりを抑える鎮静作用が期待できます。これらの働きのために、ジプレキサは様々な目的で使われて効果を発揮しています。

 

ジプレキサのドパミンとセロトニンへの働き方について、以下で詳しくお伝えしていきます。

ドパミンに対する作用

ジプレキサは、

  • D2受容体遮断薬(アンタゴニスト)

として働きます。

 

ジプレキサは、ドパミン受容体に対する結合は緩やかです。エビリファイなどの結合の強いお薬と併用すると、ドパミンに対する働きは奪われてしまいます。

 

このためドパミンをブロックする作用は、ジプレキサ単剤では不十分となってしまうことがあります。その一方で、過剰にブロックすることでの副作用は軽減されています。

セロトニンに対する作用

ジプレキサはセロトニンに対して、

  • セロトニン2A受容体:遮断(アンタゴニスト)
  • セロトニン2C受容体:遮断(アンタゴニスト)

の2つの働きがあります。

 

セロトニン2C受容体遮断作用は、食欲増加などの副作用に関係します。ジプレキサでは、中程度認められます。

 

セロトニン2A受容体をブロックすることで、中脳辺縁系以外でのドパミンの働きを間接的に強めます。これがジプレキサでの陰性症状の改善や副作用の軽減につながります。

 

また、抗うつ剤の作用ポイントであるセロトニン1A受容体に対しては、ジプレキサはほとんど作用が認められません。このこともありジプレキサは、うつ状態に対するエビデンスは少ないです。

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