パキシル(パロキセチン)診療内容/心療内科

パキシル(パロキセチン)とは?

パキシル(一般名:パロキセチン)は、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)に分類される抗うつ剤になります。

 

主にセロトニンの働きを高める作用が期待できるお薬で、

  • セロトニン:不安や落ち込み

といった精神症状の改善に効果が期待できます。

 

ですからうつ状態だけでなく、不安の病気にも幅広く使われています。効果の切れ味がよいお薬ですが、お薬をやめていくときの離脱症状が目立つお薬です。

 

現在の日本では4剤のSNRIが発売されています。

  • ルボックス/デプロメール(一般名:フルボキサミン):1999年発売
  • パキシル(一般名:パロキセチン):2000年発売
  • ジェイゾロフト(一般名:セルトラリン):2006年発売
  • レクサプロ(一般名:エスシタロプラム):2011年発売

日本では2つ目のSSRIとなっており、「うつは心の風邪」のキャッチコピーとともに広まり、いまだに一番多く処方されている抗うつ剤になります。

 

パキシルは2012年より、ジェネリック医薬品も発売となっています。ジェネリック医薬品としては、一般名(成分名)のパロキセチン錠として発売されています。

 

また同時期に、パキシルCR錠という剤形が発売となっています。お薬の吸収をゆっくりにすることで、副作用や離脱症状が軽減されています。

パキシルの効果が期待できる病気

パキシルはどのような効果が期待できるのでしょうか。

 

パキシルは、できるだけセロトニンだけを増加させるように作られたお薬になります。それ以外の作用を抑えることで、副作用を軽減させています。

 

セロトニンは落ち込みや不安に効果を発揮するため、

  • うつ病・うつ状態
  • さまざまな不安障害
  • 強迫性障害
  • 外傷後ストレス障害(PTSD)
  • 月経前気分不快症(PMDD)

に効果が期待できます。

 

うつ状態の方では、気分の波がある方や若い方には注意が必要です。切れ味が良いお薬ですが、気分を持ち上げすぎてしまったり、衝動性を高めてしまうことがあります。

 

そしてパキシルは、パニック障害や社交不安障害、全般性不安障害といった様々な不安障害に使われます。強迫性障害や外傷後ストレス障害(PTSD)にも効果が期待できます。

 

 

またパキシルは、生理前の気分の不安定さにも効果が期待できます。軽度のものは月経前緊張症(PMS)、精神的な不安定さがひどい月経前気分不快症(PMDD)に使われます。

 

パキシルの適応が正式に認められている病気

パキシルの適応が正式に認められている病気は、以下のようになります。

  • うつ病・うつ状態(2000年)
  • パニック障害(2000年)
  • 強迫性障害(2006年)
  • 社会不安障害(2009年)
  • 外傷後ストレス障害(2013年)

 

パキシルは日本でも適応が幅広く認められているお薬になります。先の東日本大震災を受けて、国際的にも効果があることが分かっている外傷後ストレス障害に対して、パキシルの適応拡大がなされました。

海外での適応からみるパキシルの効果

パキシルは海外と遜色なく、幅広い適応が認められている抗うつ剤になります。

 

アメリカでは、

  • うつ病
  • パニック障害
  • 社会不安障害
  • 全般性不安障害
  • 強迫性障害
  • 外傷後ストレス障害
  • 月経前気分不快症

このような適応となっています。

 

パキシルの徐放剤(吸収をゆっくりにした錠剤)であるパキシルCR錠では、

  • 月経前気分不快症(PMDD)

にも適応がみとめられています。

 

このためパキシルは、

  • うつ
  • 不安
  • 強迫
  • トラウマ
  • 生理の不安定さ

に効果を期待して使われるお薬であることがお分かりいただけると思います。

パキシルの特徴

 <メリット>

  • 効果の切れ味が良い
  • 様々な不安障害に効果があり適応がある
  • 5mg錠やCR錠など剤形が豊富
  • ジェネリックが発売されている(薬価がリーズナブル)

  <デメリット>

  • 胃腸障害が多い
  • 性機能障害が多い
  • 他のSSRIより眠気や太りやすさがある
  • 離脱症状が目立つ
  • 賦活症候群によって躁転のリスクに注意が必要

 

それではパキシルの特徴を、

  1. 効果
  2. 副作用
  3. 剤形と薬価

に分けてみていきましょう。

パキシルの効果

パキシルは、できるだけセロトニンを増加させる作用にしぼったお薬になります。

 

このため、

  • 落ち込み
  • 不安

に対する効果が期待できます。日本でもうつ病だけでなく、幅広い不安障害に対して適応が認められています。

 

それではパキシルは、抗うつ剤の中でどういった効果の位置づけなのでしょうか。パキシルの作用について、他の抗うつ剤と比較してみましょう。

 

抗うつ剤の効果をまとめ、比較できるようにしました。

 

パキシルなどのSSRIは、

  • セロトニンにしぼって効果が期待できる
  • 三環系や四環系に比べて、その他の物質への影響は少ない

ということがお分かりいただけるかと思います。

 

同じSSRIの中でみるとパキシルは、

  • わずかにノルアドレナリン
  • 抗コリン作用がある
  • 薬の濃度の立ち上がりが早い

という特徴があります。

 

抗コリン作用は気持ちを落ちつける作用もあるので、不安にも効果が期待できます。わずかながらノルアドレナリンの効果もあり、薬が少量でも血中濃度が立ち上がりやすく、切れ味の良さにつながっています。

 

ですから他のSSRIと比べてもお薬がスッと効いて、効果の実感が得られやすいお薬になります。

パキシルの副作用

パキシルは同じSSRIの中では副作用が目立ちますが、昔の抗うつ剤と比べると副作用は少ないお薬になります。

 

パキシルの副作用について、他の抗うつ剤と比較してみましょう。

 

抗うつ剤の副作用を一覧にして比較しました。

 

パキシルの副作用として中心になるのは、セロトニンを刺激してしまうことでの副作用です。

  • 嘔吐や下痢便秘といった胃腸障害
  • 睡眠が浅くなる不眠
  • 性機能障害

といった症状が目立ちます。特に胃腸障害と性機能障害が非常に多いです。

 

パキシルは他のSSRIと比べて、

  • 太りやすい
  • 眠気が目立つ

という特徴があります。

 

さらに注意が必要なのは、賦活症候群のリスクが高まることです。パキシルは切れ味が良い反面、

  • 気分を高揚させて躁転させてしまう
  • 不安や焦燥感が急激に強まって自殺衝動を高めてしまう

ことがあります。ですから気分に波がある方や若者では、慎重に使っていく必要があります。

 

お薬承認時のジェイゾロフトの副作用頻度は、

  • 傾眠(23.6%)
  • 悪心(18.8%)
  • めまい(12.8%)
  • 頭痛(9.3%)
  • 肝機能異常(8.4%)
  • 便秘(7.9%)

このようになっています。

 

報告しにくい性機能障害(性欲低下や勃起機能不全)は含まれていませんが、かなりの方に性機能障害が認められます。

 

またパキシルは、離脱症状に注意が必要なお薬です。抗うつ剤の中でも最も離脱症状が目立つお薬と言えます。減量は慎重に行っていく必要があります。

パキシルの剤形と薬価

パキシルのお薬としての特徴についてみていきましょう。

 

パキシルにはジェネリックも発売されており、パロキセチン錠という名称で発売されています。

 

現在パキシルで発売されているのは、

  • 5mg錠
  • 10mg錠
  • 20mg錠
  • 12.5mgCR錠
  • 25mgCR錠

の5剤形になります。5mg錠剤は、お薬を減量していくときの離脱症状軽減のために作られました。

 

CR錠とは徐放錠(Controlled Release)の略で、お薬の吸収をゆっくりにした錠剤になります。CR錠は、ジェネリック医薬品は発売されていません。

 

ジェネリックのパロキセチンでは、5mg・10mg・20mgの口腔内崩壊錠(OD錠)が発売されています。

 

薬価はジェネリック医薬品のパロキセチン錠が発売されているため、比較的リーズナブルになります。

  • 5mg錠:52.6円(ジェネリック:20.5円)
  • 10mg錠:92.3円(ジェネリック:37.9円)
  • 20mg錠:160.7円(ジェネリック:67.9円)

  • 12.5mgCR錠:92.9円
  • 25mgCR錠:161.5円

     


    ※2018年1月現在の薬価になります。

    ※ジェネリックは、最も安い製薬会社の薬価になります。

 

これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。

パキシルCR錠の効果と副作用

パキシルCR錠は、2012年に発売された新しい剤形のお薬です。

 

CRとは徐放剤(Controlled Release)の略で、薬の成分がゆっくりと放出されるように工夫されてお薬になります。

 

パキシルは効果の切れ味はよいのですが、離脱症状が多いため、減量中止する際に大変なお薬でした。それを少しでも軽減するために、CR錠が作られました。

 

パキシルCR錠では、パキシルの2倍ほどの時間をかけて吸収され、8~10時間ほどで血中濃度が最大となります。吸収されると成分はパキシルと同じですから、13~14時間で血中濃度が半減していきます。

 

このため、

  • 血中濃度の上昇がゆるやか
  • 作用時間が長くなる

という特徴があります。

 

さらにパキシルCR錠は、胃でお薬が溶け出さない工夫がされています。腸でゆっくり溶けるため、パキシルで多い胃腸障害が軽減されます。

 

これによってパキシルよりも、

  • 胃腸障害などの飲み始めの副作用が軽減する
  • 離脱症状が和らぐ

といった効果が期待できます。

 

その一方で、パキシルCR錠にもデメリットがあります。

  • ジェネリックが発売されていない
  • 小さな剤形がない(分割すると徐放剤の効果がなくなる)
  • 効果の実感が変わることもある

 

薬価という意味では、先発品と同等となってしまいます。また小さな剤形が発売されていないため、細やかな調整が難しいです。さらにパキシル錠よりも立ち上がりがゆっくりになることで、効果の実感に変化を感じる方もいます。

 

パキシルCR錠とパキシル錠の用量ですが、

  • パキシルCR錠12.5mg=パキシル錠10mg
  • パキシルCR錠25mg=パキシル錠20mg

となります。吸収がゆっくりとなるため、パキシルCR錠の方が量が必要となっています。

 

うつ病・うつ状態のみの適応となり、最大用量は50mgとなります。

パキシルの用法と効果のみられ方

パキシルは、以下のようなお薬になります。

  • 開始用量:10mg
  • 用法:1日1回(夕食後が多い)
  • 最高用量:40mg(パニック障害:30mg、強迫性障害:50mg)
  • 剤形:錠(5mg・10mg・20mg)・CR錠(12.5mg・25mg)

 

パキシルは1日1回服用を続けることで、少しずつ効果が期待できるお薬です。効果が実感できるようになるまでには、およそ2週間~1か月ほどかかることが多いです。

 

1日1回服用すればいつでも良いのですが、一般的には夕食後とすることが多いです。パキシルは食事の影響は少ないお薬ですので、寝る前などに服用を変更することもあります。

 

パキシルを開始すると、2週間ごとに効果を判定していきます。効果が不十分な場合は、10mgずつ増量をしていきます。最高用量まで使っても効果が不十分な場合は、

  • 他の抗うつ剤を追加
  • 抗精神病薬や気分安定薬を追加(増強療法)
  • 他の抗うつ剤に変更
  • 薬物療法のアプローチの変更(診断の見直し)

を検討していきます。

 

日本でのパキシルの最高用量は、病気の特徴を表しています。

  • 強迫性障害:50mg
  • パニック障害:30mg
  • うつ病やその他の不安障害:40mg

強迫性障害は抗うつ剤が高用量必要になることが多く、パニック障害は低用量でも効果が期待しやすいということになります。

 

パキシルは海外では、60mgまで使うことができるお薬です。日本でも50mgまでは使えますので、海外に近い用量で使えるお薬になります。

【参考】パキシルの半減期

お薬の効き方を見ていくにあたっては、

  • 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
  • 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間

が重要になってきます。

 

パキシルは、

  • 半減期(T1/2):14時間
  • 最高血中濃度到達時間(Tmax):4~5時間

となっています。

 

パキシルは4~5時間ほどでピークになり、そこから14時間で半分の量になるということになります。1日1回の服用でも効果は持続します。

 

そしてお薬の血中濃度は、飲み続けていくことで安定していきます。およそ半減期の4~5倍の時間で安定するといわれていて、このようになると定常状態と呼ばれます。

 

ですからパキシルの血中濃度は、安定するまでに3~5日かかります。

 

それだけではなく、パキシルは特徴的な血中濃度のあがり方をします。多くのお薬は、薬の量を増やすと同じ割合で血中濃度が増えていきます。パキシルは、薬の量よりも多く血中濃度が増えていきます。

 

通常のお薬は、薬の量と血中濃度のグラフを書くと一直線になるので、線形といいます。パキシルは2倍の量にしたら3倍になるといった具合なので、非線形といいます。

 

これには、CYP2D6という肝臓の酵素が関係しています。CYP2D6はパキシルの分解に必要な酵素になりますが、パキシルが増えるとこの働きを邪魔してしまいます。

 

つまり分解がうまく進まなくなり、パキシルの濃度がどんどんと増えてしまいます。

 

パキシルを減量しているときは逆向きになるため、一気にパキシルの血中濃度が低下してしまいます。これが離脱症状が多い大きな原因となっています。

服用時期でみたパキシルの副作用

パキシルの副作用について、服用時期ごとにみていきましょう。

 

抗うつ剤の服用時期と副作用をまとめました。

 

パキシルの飲み始めに注意すべきこととして、賦活症候群(アクチベーション シンドローム)があげられます。同じSSRIの中でも、気をつける必要があります。

 

中枢神経系を刺激してしまうことで、気分が高揚して躁転してしまったり、不安や焦りが高まって衝動的に、自殺企図をしてしまうことがあります。こういった異様な精神状態が認められた場合は、すぐに中止してください。

 

そして飲み始めには、セロトニンを刺激してしまうことによる副作用が認められることが多いです。パキシルの副作用として最も多いのは、下痢や吐き気といった胃腸障害です。その他にも様々な副作用が生じることがありますが、多少であれば服用を続けるうちになれることが多いです。

 

そしてパキシルは、お薬を減量していく際には離脱症状に注意が必要です。パキシルは抗うつ剤の中でも最も頻度が高く、身体にお薬が慣れてしまい、急激に減量すると心身の不調が生じてしまうことが多いです。ですから少しずつ減量していくことが必要です。

 

抗うつ剤の副作用の症状を簡潔にまとめました。

パキシルの副作用の対処法

パキシルの副作用が認められた場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

 

飲み始めにパキシルの副作用が認められた場合、

  • 何とかなるなら様子を見る(経過観察)

が基本的な対処法となります。お薬を飲み続けるうちに身体が少しずつ慣れていき、落ちついてくることが多いためです。

 

生活習慣で改善ができる部分もあれば、副作用を和らげるお薬を使っていくこともあります。

 

抗うつ剤の副作用への対処法をまとめました。

 

パキシルの副作用で多くの方が気にされるのが、

  • 眠気
  • 太る
  • 胃腸症状
  • 頭痛
  • 性機能障害

の5つになります。パキシルは全体的に、SSRIの中では副作用が目立ちます。対処法も含めてみていきましょう。

パキシルと眠気・不眠

パキシルの承認時と発売後の副作用調査では、

  • 不眠:1.38%
  • 眠気(傾眠):9.41%

となっています。

 

パキシルは理論的には、「眠気」よりも「不眠」になりやすいお薬になります。

 

パキシルは、セロトニン2A受容体を刺激します。これによって深い睡眠が妨げられてしまって、睡眠が浅くなってしまいます。これが不眠として報告されることは考えられます。

 

ですがパキシルは、同じSSRIの中で眠気を比較すると眠気がやや多いです。その理由としては、パキシルに副交感神経の働きを抑える抗コリン作用が認められることが考えられます。

 

ですからパキシルで眠気が認められる原因としては、

  • わずかにある抗コリン作用などによる直接的な眠気
  • 夜間の睡眠の質が落ちて、日中の眠気が強まる
  • 理屈では説明できない眠気

こういったことが考えられます。

 

 

パキシルで眠気が認められた場合の対処法としては、

  • 慣れるまで待つ
  • 服用のタイミングをかえる(就寝前)
  • 服用を2回にわける
  • お薬の量を減らす
  • 他の抗うつ剤に変更する

といったことがあります。

 

反対に不眠が認められている場合の対処法は、

  • 慣れるまで待つ
  • 睡眠の質の改善を図る
  • 服用のタイミングを変える(朝食後)
  • レスリンなどの鎮静系抗うつ剤を追加する
  • お薬の量を減らす
  • 他の抗うつ剤に変更する

といったことがあります。

パキシルと体重(太る?痩せる?)

パキシルと体重について心配される方も少なくありません。

 

食欲や代謝などは様々な影響があり、お薬だけでなく病状も関係してきます。このため一概にお薬の影響だけを評価していくことは難しいです。

 

パキシルの食欲や体重への影響は、

  • 抗ヒスタミン作用や抗5HT2c作用での直接的な食欲増加
  • セロトニンによる代謝抑制
  • 抗コリン作用による喉の渇き

こういった要因からはそこまで太りやすいお薬とはいえません。

 

パキシル販売後半年での体重での副作用報告(使用成績調査)では、

  • 体重増加:0.27%
  • 体重減少:0.06%

となっています。

 

体重の変化は長期的に見ていく必要がありますが、少なくともお薬の直接的な副作用によって、そこまで太りやすいわけではないといえます。

 

一般的にSSRIは、飲み始めの数カ月は胃腸障害の副作用も重なって、やせる方向に行くことが多いです。心身の回復に伴って、体重増加に向かっていくことが多いです。

 

しかしながらパキシルは、SSRIの中では太りやすい傾向にあります。パキシルが他のSSRIと比べて太りやすい理由としては、

  • 効果の切れ味が良くて回復しやすい
  • 抗コリン作用による口の渇き

などが考えられます。

 

それに加えてパキシルでは、なぜか急に過食が発作的に認められる方がいます。10kg単位で太ってしまった方は、過食が認められることが多い印象があります。

 

パキシルで太ってしまった場合の対処法としては、

  • 生活習慣を見直す
  • 運動習慣を取り入れる
  • 食事の際によく噛むようにする
  • お薬の量を減らす
  • 他の抗うつ剤に変更する

といったことがあります。

パキシルと胃腸症状

パキシルの副作用で最も多いのは、胃腸症状になります。お薬の承認時と使用後調査を合わせると、

  • 悪心:10.12%
  • 嘔吐:1.10%
  • 下痢:1.13%
  • 便秘:2.77%

このようになっています。

 

このような胃腸症状が認められるのは、パキシルによるセロトニン刺激作用が原因になります。セロトニンは脳だけでなく、胃腸にも作用してしまいます。

 

胃腸が動いてしまうことが多く、吐き気が認められるときは下痢も認められることが多いです。その一方で、便秘になることもあります。

 

パキシルによる胃腸症状は飲み始めがピークで、徐々に慣れていくことが多いです。

 

このためパキシルで胃腸症状が認められた場合の対処法としては、

  • 慣れるまで待つ
  • お薬を少しずつ増量する
  • 胃腸症状を和らげるガスモチンなどを併用する
  • 服用を2回にわける
  • 他の抗うつ剤に変更する

といったことがあります。

パキシルと頭痛

パキシルでは、頭痛の副作用が認められることが少なからずあります。

お薬の承認時と使用後調査を合わせると、

  • 頭痛:2.88%

となっています。

 

パキシルで頭痛が生じるタイミングは、大きく2つあります。

  • お薬の飲み始め
  • お薬を減量・中止するとき(離脱症状)

パキシルで頭痛を生じる理由はよくわかっていませんが、セロトニンが関係していると考えられます。

 

セロトニンは脳血管が収縮する作用がありますが、セロトニンが分解されると反動で、脳血管が急激に拡張します。周りを取り巻いている三叉神経から痛み物質が作られ、頭痛につながると考えられます。

 

その一方でパキシルをはじめとした抗うつ剤は、片頭痛の予防効果もしられています。セロトニンが安定することで脳血管の拡張を予防でき、さらにはセロトニンには痛みの抑制効果があること知られています。

 

ですからパキシルで頭痛が認められた場合の対処法としては、

  • 慣れるまで待つ
  • 服用のタイミングをかえる(就寝前)
  • 痛み止めを使う
  • 増量のペースをゆるめる
  • 他の抗うつ剤に変更する

といったことがあります。

パキシルと性機能障害(性欲低下・勃起不全)

パキシルの副作用として、数字にあらわれている以上に多いのが性機能障害です。

 

なかなか相談しにくい副作用であるがゆえに、困っていても表に出てこない副作用です。パキシルはジェイゾロフトと並んで抗うつ剤の中でも多く、およそ7~8割の方に認められるという報告があります。

 

性機能障害の割合を抗うつ剤で比較してグラフにしました。

 

性機能障害のうちでも、

  • 性欲低下
  • 勃起機能不全
  • オーガニズム低下や射精障害

になります。パートナーとの関係性にも影響するため、軽視できない副作用です。

 

パキシルで性機能障害が生じる理由としては、セロトニン2A受容体作用や抗α1作用が関係しているといわれています。

 

パキシルで性機能低下が認められた場合の対処法としては、

  • 慣れるまで待つ
  • お薬の量を減らす
  • レスリンなどを追加(持続性勃起障害という副作用を転用)
  • ED治療薬を使う(勃起不全に対して)
  • 他の抗うつ剤に変更する

といったことがあります。

パキシルの離脱症状と減薬方法

パキシルを減量していく場合には、離脱症状に注意する必要があります。

 

パキシルは抗うつ剤の中でも離脱症状が多いお薬になります。その理由としては、パキシルのお薬の濃度のあがり方が独特であることが大きいです。

 

パキシルが増えると、自分の薬の分解が邪魔されるという特徴があるため、お薬の量を増やすと血中濃度が一気に上がっていきます。反対にお薬を減らしていくと、一気に血中濃度が低下してしまいます。

 

このためパキシルは、離脱症状が非常に多いお薬です。長期間服用してから急激に減量すると、心身の不調が生じてしまいます。

  • 身体症状:しびれ・耳鳴り・めまい・頭痛・吐き気・だるさ
  • 精神症状:イライラ・ソワソワ感・不安・不眠
  • 特徴的な症状:シャンピリ感・ビリビリする

これらの離脱症状は、薬が減って1~3日ほどして認められます。2週間ほどで収まっていくことが多いですが、月単位で続いてしまう方もいらっしゃいます。

 

こういった離脱症状を防ぐために、パキシルの減量は非常に慎重に行っていく必要があります。まずは少しずつ量をへらしていきます。パキシルは、

  • 40mg→30mg→20mg→10mg→5mg

などのように、5~10mgずつ減量していくことが多いです。

 

離脱症状は、抗不安薬(精神安定剤)を使うと症状が緩和することがあるため、必要に応じて頓服や併用を行っていきます。5mgまで減量できれば、以下の方法で断薬を試みていきます。

 

パキシルの運転への影響

心の病気の治療薬は多くが運転や危険作業が禁止となっていました。

 

これは眠気やふらつきなどの副作用が生じる可能性があるためです。そういったリスクがある以上は、製薬会社も「運転禁止」とせざるを得なかったのです。

 

その中でパキシルをはじめとしたSSRIでは、

眠気、めまい等があらわれることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には十分注意させること。

という表現となっています。

 

「注意は必要だが、禁止ではない」ということになります。このためパキシルは、運転することも可能ではあります。むしろ、抗うつ剤を服用してうつ状態が改善している方が、未治療よりも事故につながりにくいかもしれません。

 

ただし、

  • はじめて使ったとき
  • 他のお薬からの切り替えをしたとき
  • 量を増減させているとき
  • 体調不良を自覚したとき

は無理をせず、運転は控えていただいたほうがよいです。

パキシルの妊娠・授乳への影響

パキシルの妊娠への影響から見ていきましょう。

 

パキシルのお薬の添付文章には、

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人では、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合以外には投与しないこと。

このように記載されています。これは他のSSRIと同じなのですが、パキシルには怖い一文がついています。

本剤を投与された婦人が出産した新生児では、先天異常のリスクが増加するとの報告があるので・・・

 

パキシルによる先天異常は、おもに心臓奇形が報告されています。アメリカやスウェーデンの調査では、心室中隔欠損を中心とした心臓奇形が、通常1%のところパキシルは2%になったという報告があります。

 

その一方で、パキシルは先天異常を引き起こさないとする報告もあるため、結論ははっきりしていません。

 

妊娠を考えるときは、パキシルはできれば避けたほうが良いです。しかしながらパキシルを服用しながら妊娠しても、過度に心配する必要はありません。そもそもパキシルでリスクを高める可能性のある心室中隔欠損ですが、生後に手術してよくなることがほとんどです。

 

パキシルが影響するのは、むしろ産まれた後の赤ちゃんになります。胎盤を通してお薬が赤ちゃんにも伝わっていたものが、急に身体からなくなります。これによって、新生児離脱症状が生じることがあります。

 

早めに見つけて症状を和らげる治療をおこなっていけば、問題ないことがほとんどです。後遺症が残るたぐいのものではないので、産科の先生にお伝えしておけば、過度に心配しなくても大丈夫です。

 

次に、パキシルの授乳への影響をみていきましょう。パキシルのお薬の添付文章には、

授乳中の婦人への投与は避けることが望ましいが、やむを得ず投与する場合には授乳を避けさせること。

このように記載されています。しかしながら授乳についても、明らかなネガティブな報告はありません。

 

母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。ご自身での判断にはなりますが、パキシルを服用していても授乳を続ける方がメリットが大きいようにも思います。

 

母乳を通して赤ちゃんにパキシルの成分が伝わってしまうことは、動物実験だけでなく人間でも確認されています。といっても、投与量の約1%になります。乳児検診で体重が増えていかないといったことがあれば、医師と相談したほうが良いでしょう。

海外の妊娠と授乳に関する基準

海外の妊娠と授乳に関する基準をご紹介します。

  • 妊娠への影響:FDA(アメリカ食品医薬品局)薬剤胎児危険度基準

    A:ヒト対象試験で、危険性がみいだされない
    B:ヒトでの危険性の証拠はない
    C:危険性を否定することができない
    D:危険性を示す確かな証拠がある
    ×:妊娠中は禁忌

  • 授乳への影響:Hale授乳危険度分類

    L1:最も安全
    L2:比較的安全
    L3:おそらく安全・新薬・情報不足
    L4:おそらく危険
    L5:危険

抗うつ剤の妊娠・授乳への影響について、お薬ごとに一覧にしてまとめました。

 

パキシルは、FDA基準で「D」、Hale分類で「L2」となっています。妊娠については奇形の報告があるため、厳しめの評価となっています。

パキシル錠のジェネリック(パロキセチン錠)

パキシル錠は、2000年に発売されたお薬になります。お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売できるようになります。(先発品)

 

パキシル錠のジェネリックは、この特許が切れた2012年に発売となりました。薬価も先発品の半分以下となっているので、リーズナブルになっています。

 

先発品はお薬を開発した会社から発売されますが、ジェネリック医薬品は複数の会社から発売されます。パキシルのジェネリックのパロキセチン錠も、様々な製薬会社から発売されています。

 

これらのお薬は有効成分は同じですが、それぞれが微妙に異なります。というのも、お薬の製造方法や製剤工夫が会社によって異なるためです。

 

ですがジェネリック医薬品は、先発品と同じように効果を示すための試験をクリアしていて、血中濃度の変化がほぼ同等になるように作られています。

 

パキシルは即効性を期待するお薬ではないため、変更しても効果に大きな差はないと推定されます。理屈ではそうですが、心配になってしまう方もいらっしゃいます。そのような場合はもちろん、先発品のまま使っていくことも可能です。

【参考】パキシルの作用機序

最後に、パキシルの作用の仕組みについてお伝えしていきたいと思います。

 

パキシルは、どのようにして効果が認められるのでしょうか。分かっていないことも多いのですが、モノアミン仮説がもっとも理解しやすく一般的です。

 

モノアミンとは、脳内の神経伝達物質になります。神経細胞と神経細胞の間を橋渡しをする物質で、情報を伝える働きがあります。パキシルなどの抗うつ剤は、このモノアミンの量を調整することで脳内のバランスを整え、つらい症状を改善していくと考えられています。

 

おもな神経伝達物質として、以下の3つがあげられます。

  • セロトニン(不安や落ち込み)
  • ノルアドレナリン(意欲や気力の低下)
  • ドーパミン(興味や楽しみの減退)

 

これらの物質と症状の関係をもう少し細かくみていくと、以下の図のようになるといわれています。

 

抗うつ剤の神経伝達物質と症状の関係についてグラフでまとめました。

 

パキシルはこれらの物質のうち、

  • セロトニン

の働きを強めます。パキシルは、再取り込み阻害という方法をとります。

 

セロトニンなどのモノアミンは、役目を果たすと不要になるため、再取り込みという形で回収されていきます。パキシルはこの働きの邪魔をして、セロトニンの働きを強めます。

 

これらの物質が直接的に効果があるのならば、すぐにでも抗うつ効果が認められるはずです。しかしながら実際には、2週間くらいかけて効果が認められます。タイムラグがあることは、パキシルなどの抗うつ剤の作用が単純ではないということを意味しています。

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