インフルエンザ迅速検査

インフルエンザ迅速検査

当院のインフルエンザ迅速検査

当院では、インフルエンザ迅速検査を実施することができます。

風邪の症状が認められる場合、その原因がインフルエンザかどうかを判断することは非常に重要です。インフルエンザ治療薬は早期でなければ効果を発揮しませんし、また周囲への感染を予防するためにも重要です。

当院のインフルエンザ迅速検査では、検査をして5~15分ほどで結果がわかります。感度・特異度ともに高い検査ですので、診断がほぼ確定します。発熱後比較的早い段階でも、高い確率で診断することができる迅速キットを使用しています。(6時間は空けた方が望ましいです。)

インフルエンザ迅速検査は、綿棒で鼻の奥のぬぐい液を採取して、その中にインフルエンザウイルスが存在するかを調べる検査になります。冬場などの流行時期は、風邪の症状がある方には実施をお勧めしています。

インフルエンザについて詳しく知りたい方は、インフルエンザの症状・検査・治療についてのページをご覧ください。

インフルエンザ迅速検査の流れ

インフルエンザが感染していたとすれば、できるだけ早く治療を行っていくとともに、周囲への感染予防を意識する必要があります。

当院でのインフルエンザ迅速検査の流れとしましては、

  1. 受付で、「内科の問診表」に記載いただきます。
  2. インフルエンザ検査をご希望の方は、冒頭でご希望をうかがいます。
  3. 咳がある方には、受付よりマスクをお配りします。
  4. 医師の診察でインフルエンザ検査が必要か判断します。
  5. 検査が必要な場合、看護師の準備が整いましたらお声掛けいたします。

このようになっています。

最近は「隠れインフルエンザ」といった報道がなされているせいか、例えばインフルエンザよりも肺炎などを疑うべき方が、インフルエンザ迅速検査を希望されることがあります。

患者様の御希望もうかがいますが、医師が診察して他の検査が必要になる場合もありますのでご了承ください。

インフルエンザの検査は非常に簡単で、細長い綿棒で鼻の奥の方を軽くこすります。採取した液体を試薬につけて、それを検査キットに垂らすだけです。

インフルエンザ迅速検査は、5分~15分で結果がわかります。陽性ですと、AやBといった判定ラインに線がつきます。結果が出ましたら、直ちに医師に報告します。

インフルエンザ検査は痛い?

インフルエンザの検査を行ったことがある方の中には、痛い思い出があるのでやりたくないという人は少なくありません。

確かにインフルエンザの検査は細長い綿棒で鼻の奥の方をこするので、不快な感覚にはなります。しかしインフルエンザの検査キットは、毎年新しく改良されています。

今ではインフルエンザ簡易検査の素材も改良されており、かなり柔らかいプラスチックとなっています。そして非常に細くなっています。さらに鼻腔の奥深くに突き刺すのではなく、周りをなでるように擦ることでも十分に検査ができるようになっています。

当院では、看護師含めて新製品の勉強会を積極的に行っております。その中でインフルエンザの簡易キットの説明会も実施しており、しっかりとキットの使い方についても講習を受けています。

患者さんに説明するのに自分たちも体験してみようと思い、医師も患者役となって看護師に検査をしてもらいました。「痛い」というよりは、「くすぐったい」という表現が適切です。痛みも少なく検査できることを実感しました。

一方で検査の痛みを和らげるためにも、患者さんにも協力が必要です。痛いと思って顔を背けたり、それこそ手を挙げて払おうとすると危なくなります。

実際検査に協力してくだされば、数秒で終わるのがインフルエンザ検査です。過度な恐怖心は痛みを倍増します。

インフルエンザ検査は発熱後すぐは意味がない?

インフルエンザ検査は、「発熱後すぐに行っても意味がない」と聞いたことがあるかもしれません。

実は医者の中にも、「インフルエンザは発熱直後は検査しても意味がない」と考えている人が非常に多くいます。かつてはインフルエンザ検査は、十分なウイルス量がなければ検知できませんでした。ですが近年のインフルエンザ簡易キットは、検査の精度も非常に上がっています

当院で使用しているインフルエンザの検査キットについて、発熱してから検査を行うまでの経過時間ごとに、検査での陽性率の違いは以下のようになります。

当院のインフルエンザ迅速キットの診断率をまとめました。

医学と薬学 第72巻 2015年9月1595-1602 原 三千丸らの論文より作図

この検査は、簡易キットとリアルタイムPCRの結果の一致率をみています。

リアルタイムPCRとは、検体(患者さんの鼻腔液)を遺伝子レベルで解析したものです。リアルタイムPCRで陽性ということは、インフルエンザで間違いがないということになります。

この結果をみていただくと、遺伝子レベルで解析した結果と簡易キットで検査した結果の陽性一致率は、どの経過時間でも90%以上を超えていることになります。

3時間『以内』で93.6%という結果が報告されているように、当院で使用している簡易検査キットでは発熱直後でも陽性率が高いものになります。

ですが実際には6時間程度は空けていただく方が、正確にインフルエンザ診断ができる印象があります。従来は12時間以上といわれていましたので、比較的早めに診断が可能です。

そうはいっても、インフルエンザであっても検査が陰性となってしまう例もあります。陰性の場合はインフルエンザの流行具合を考慮しながら、症状や周囲への影響なども含めて医師が判断していきます。インフルエンザ簡易キットの精度は非常に上がったものの、残念ながら100%ではありません。

そのため他の病気が可能性が低い場合は、インフルエンザ治療薬を処方することもあります。

インフルエンザ検査をせずにお薬を処方できないの?

インフルエンザ検査の意義に考えてみましょう。『発熱』というのは、実は非常に難しい主訴です。

熱がある際にまず考えるのは、『感染症』です。どこにばい菌が感染したかを考えていきます。

  • のどが痛いのであれば、咽頭炎
  • 咳をするのであれば、肺炎
  • 嘔吐や下痢をしているのであれば、胃腸炎

といったように、症状に応じて感染した部位、およびどのようなばい菌が感染したかを考えます。

一方で発熱のみであったり、複数症状がある場合は、どこにばい菌がいるか特定が難しいことがあります。この時に発熱した原因がインフルエンザであると確定できれば、ただちに患者さんに抗インフルエンザ薬を処方することができます。このことで、無駄な検査や待ち時間を防ぐことができるのです。

インフルエンザではない人にインフルエンザ薬を投与しても、全く効果がありません。インフルエンザ薬はインフルエンザウィルスのみに作用するお薬のため、違うばい菌が原因の場合は意味がないばかりか、病気の発見の遅れにつながります。

そのため、インフルエンザウィルスが流行している時期は積極的に検査を提案させていただきます。

インフルエンザの治療は、早期に対応することで症状がやわらげることができます。本当の意味で重症化することは少ない病気なのですが、大切な家族や職場の同僚、友人など多くの人に移してしまう病気です。

インフルエンザと確定できることで、出勤や登校を自粛するべきかの判断をしたり、家族が予防投与すべきかを判断することもできます。解熱剤だけで様子を見るのではなく、本当にインフルエンザかどうか調べていくことは意義があります。

インフルエンザ検査について詳しく知りたい方へ

インフルエンザ検査は、非常に簡便に行うことができる検査です。検査の精度も高く、発熱からしばらくすれば判定ができるようになってきています。

ここでは最後に、インフルエンザ検査について詳しく知りたい方にむけて、どのようなメカニズムでインフルエンザの判定がなされているのかについてお伝えしていきます。感度や特異度についてもみていきましょう。

当院のインフルエンザ検査キットのメカニズム

当院では、金コロイドクロマト免疫法による迅速検査を採用しています。

迅速検査キットの試薬には、金コロイド粒子に結合した抗インフルエンザウイルス抗体が含まれています。

鼻腔より綿棒で採取した鼻腔ぬぐい液にインフルエンザウイルスが存在すると、この抗インフルエンザウイルス抗体と結合します。この結合体が含まれた液体を、キットのスタート部分に垂らします。すると少しずつ浸透していきます。

検査キットには、AとBの判定ラインがあります。この部分にラインが浮かび上がると、A型インフルエンザやB型インフルエンザということになります。実はこの判定ラインには、抗インフルエンザウイルス抗体が固定されています。

先ほどの結合体が検査キットの判定ラインに到達すると、この抗体と結合します。すなわちインフルエンザウイルスが、抗体と抗体にはさまれた形となって固定するのです。(この方法をサンドイッチ法といいます)

その結果、判定部分が赤紫色に発色し、判定のラインが出現します。インフルエンザウイルスAとBが同時に感染することもあるので、その場合は判定部分の「A」・「B」の両方に赤紫のラインが表示されます。

当院のインフルエンザ検査の精度(感度と特異度)

ある検査の精度を評価するには、感度と特異度という2つの割合をみていきます。

感度と特異度を理解するための図です。
  • 感度:病気がある人をどれだけ見つけられたか(A/A+C)
  • 特異度:病気でない人をどれだけ除外できるか(D/B+D)

この両方が高いことが理想的な検査といえ、バランスをみていきます。

当院のインフルエンザ迅速検査キットの感度と特異度をご紹介しましょう。

インフルエンザ迅速キットの感度・特異度について

それでは、具体例でシミュレーションしてみましょう。「風邪の症状が認められたら2人に1人はインフルエンザ」というような時期でしたら、以下のようになります。

インフルエンザ迅速検査キットを有病率50%で検証します。

検査が陽性であれば、ほぼインフルエンザと断定できるかと思います。検査が陰性の場合では、90%以上否定できることがわかるかと思います。

しかしながら症状や状況により、「医師が判断したところ8割はインフルエンザ」というような場合は、以下のようになります。

インフルエンザ迅速キットの感度と特異度を有病率90%でシミュレーション

この結果をみていただくと、検査が陰性だとしても、3割ほどはインフルエンザの可能性があるということになります。

このように

  • インフルエンザが流行している時期か
  • 医師がインフルエンザの可能性が高いと判断するか

によって、検査の解釈がかわってきます。

医師がインフルエンザの可能性が高いと判断した場合は、陰性だとしてもインフルエンザ治療薬を開始することがあるのは、この点にあります。

「それならば検査をする意味がないだろう」という意見は耳が痛いのですが、原則的には確定診断をしなければインフルエンザ治療薬を処方できません。このためインフルエンザ迅速検査は、必ず行っていかなければいけません。