貧血こころみ医学

【医師が解説】溶血性貧血の症状・診断・治療

  • 更新日:2019年08月17日 15:50
  • 作成日:2019年10月02日 22:00

溶血性貧血とは?

溶血性貧血とは、文字通り赤血球が壊れて溶け出してしまうことによる貧血になります。

  • 振動や衝撃が過度にかかるスポーツ
  • 免疫の異常
  • 異常赤血球が作られるようになる

といった原因により、溶血性貧血が認められることがあります。

赤血球の正常寿命は120日程度ですので、その前後で赤血球が脾臓や肝臓で破壊されるのは普通ですが、外力や病気によって血管内の若い赤血球が壊れてしまうことがあります。赤血球を包んでいる膜が壊れ、血管内にヘモグロビンなどの成分が流れ出すことを溶血と言います。

溶血性貧血では、

  • 黄疸(肌や白目が黄色っぽくなる)
  • 尿が褐色になる
  • 血中ビリルビン濃度の上昇
  • 乳酸脱水素酵素(LDH)の上昇
  • ハプトグロビンの低値

などが見られます。

溶血性貧血には、

  • 外からの力で赤血球が壊れされる
  • 赤血球を壊す免疫がつくられてしまう
  • 赤血球自体に問題がある

3つのケースがあります。

外からの力で赤血球が壊される

外からの力で赤血球が壊されてしまう溶血では、激しい運動によるものが知られています。とくに、足裏に強い衝撃がかかり続けるマラソン、サッカー、剣道などでおこります。足裏を地面に長く打ち付け続けていると、足裏の血管が圧迫されて赤血球が壊されてしまうことがあります。

この貧血はかつて強く足裏を打ち付けて行進する軍人さんに多く見られたため、行軍ヘモグロビン尿症(流れ出したヘモグロビンが尿中に排出されて褐色になる)と呼ばれていて、現代ではスポーツ貧血と呼ばれています。

また、心臓に人工弁が入っている場合も溶血がおこりやすくなります。人工弁の脇に血液がもれ、狭い空間で血流が発生したときの負担からおこることが多く、機械的溶血と呼ばれます。血小板とともに溶血性貧血が認められる血栓性血小板減少性紫斑病という病態もありますが、極めて稀です。

また、赤血球を処理している脾臓の機能が亢進してしまうBanti症候群などもあります。

赤血球を壊す免疫が作られてしまう

溶血性貧血の原因の中で一番多いのは、赤血球を破壊する免疫がつくられてしまうことです。自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と呼ばれ、後天性溶血性貧血の約6割を占めます。自己抗体と補体が赤血球に結合し、脾臓のマクロファージ(免疫細胞の1)によって破壊されてしまうことでおこります。

免疫性溶血性貧血(AIHA)の原因としては、

  • 膠原病
  • がん
  • 感染症(マイコプラズマやウイルス感染)

などがありますが、原因不明(特発性)でおこることもあります。

この貧血では、

  • 血液検査でハプトグロビンの低下
  • Coombs試験(クームス試験)が陽性

などの検査が判断の基準になります。

抗体の違いによって病態がことなりますが、最も多いのが赤血球に対する温式抗体(IgG)がつくられてしまう溶血性貧血です。およそ80%は温式AIHAで、脾臓で赤血球が壊されてしまう血管外溶血となります。

治療はプレドニンなどのステロイド治療が主で、約7割の方で効果が見られます。ステロイド治療では効果が不十分なときや、ステロイドが使えない体質の方の場合は、脾臓摘出や免疫抑制剤の使用を考えます。

これら以外にも、冷式抗体が原因の発作性寒冷ヘモグロビン尿症、寒冷凝集素が原因のる寒冷凝集素症などがありますが、寒いところで溶血してしまいます。ですから保温することで、溶血を防ぐことができます。

赤血球自体に問題がある

赤血球自体に問題があっておこる溶血性貧血は稀ですが、代表的なものに

  • 発作性夜間血色素尿症(PNH

があります。

細胞の遺伝子の突然変異によって溶血が起こる病気です。診断はフローサイトメトリーという方法を使い、赤血球表面CD55CD59が発現していないことを確認します。ハム試験(アシドーシス)や砂糖水試験(電解質のない状況)で溶血が認められます。

就寝中は換気しにくくなって呼吸性アシドーシスになります。このため夜に血管内溶血がおきて、尿の色がワインカラーだったことから、夜間尿症とよばれています。補体の感受性が増してしまうことにより、容易に溶血してしまいます。赤血球だけでなく、血小板や白血球も同様に低下してしまいます。

治療法には、補体(C5)に対するモノクローナル抗体(エクリズマブ)の点滴があります。

また、先天性の赤血球異常としては

  • 遺伝性球状赤血球症
  • サラセミア

などがありますが、いずれもかなり稀な病気です。家族歴や赤血球の形態、遺伝子検査などで診断をします。

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