貧血こころみ医学

【医師が解説】巨赤芽球貧血(悪性貧血)の症状・診断・治療

  • 更新日:2019年08月17日 16:18
  • 作成日:2019年09月25日 22:00

巨赤芽球性貧血・悪性貧血とは?

鉄以外では、ビタミンB12や葉酸の不足でも貧血がおこりやすいことが知られています。ビタミンB12や葉酸は細胞のDNA合成に関わる重要なビタミンB群で、これらが不足すると赤血球細胞の成長に異常がおこるのです。

DNA合成に異常がおこると細胞の成熟に不一致がおこり、通常より大きなサイズの赤血球がつくられます。サイズは大きいものの全体量は不足し、大球性貧血の状態になります。そのような貧血を巨赤芽球貧血と呼びます。

そのうち、胃壁の障害や胃の全摘後に見られるビタミンB12吸収不全による巨赤芽球貧血のことを悪性貧血と呼びます。ビタミンB12は、胃壁細胞から分泌される糖タンパク(内因子)と結びついて回腸で吸収されるため、胃壁の障害や胃の全摘後に吸収不全をおこしやすいのです。そして吸収される回腸での異常も原因のひとつになります。

現在はその仕組みがわかっているので、ビタミンB12を筋肉注射で補えば治療ができます。ですが昔は、胃の障害からおこる貧血がビタミンB12の吸収不全のためとはわからず、治療法がなくて難治性の貧血とされていました。それで「悪性貧血」という名前がついたのですが、現在は治療法が確立されたため、名前のわりに予後は悪くない貧血の1つとなっています。

ビタミンB12不足の原因

ビタミンB12と葉酸では、不足の原因が異なる場合があります。ビタミンB12が不足する原因としては、

  • 胃の全摘
  • 萎縮性胃炎
  • 動物性食品の制限

などがあります。

ビタミンB12は胃での働きが吸収に不可欠のビタミンのため、病気で胃をすべて摘出した人や、胃壁からの分泌障害がおこる萎縮性胃炎ではビタミンB12が不足します。

萎縮性胃炎は、胃に抗内因子抗体や抗胃壁細胞抗体がある場合、胃が荒らされておこりやすい胃炎です。その状態を放置していると胃がんに進行することもあるため、胃カメラでの詳しい検査が奨められます。

ビタミンB12はおよそ5年間肝臓に貯蔵される性質があり、吸収不全があってもすぐに貧血の症状はおこりません。胃の全摘をしたとしても、貧血が見られるのは5年程度経ってからになります。

胃の障害以外でビタミンB12不足の原因としては、

  • 菜食主義
  • 過度なダイエット
  • 動物性食品を除去したアレルギー食
  • 回腸の異常

などがあります。

ビタミンB12は動物性ビタミンのため、菜食主義者やダイエット目的・アレルギー対策などで極度に動物性食品を制限すると不足しやすくなります。食事としては、レバー、アサリ、しじみ、さんまなどに多く含まれます。制限食による不足の場合は、ビタミンB12製剤の投与を行います。

ビタミンB12を吸収する回腸を切除したり、炎症などがあると吸収が妨げられることがあります。腸でビタミンB12を消費する細菌が異常に増殖したり(bind loop症候群)、広節裂頭条虫という寄生虫によってビタミンB12が消費されてしまうこともあります。

葉酸不足の原因

葉酸は、ビタミンB12とともに、細胞の合成に不可欠な栄養素です。葉酸は鶏レバー、菜の花、モロヘイヤ、ブロッコリーなどに多く含まれます。

葉酸が不足する原因としては、

  • 成長期、妊娠期、授乳期
  • リウマチ治療薬の影響
  • アルコールの過剰摂取
  • 吸収不良症候群

胎児期にはとくに重要な役割があるため、妊娠を望む女性の方には積極的な摂取が奨められているビタミンB群の1つです。通常は不足しにくいビタミンですが、成長期、妊娠期、授乳期には必要量が増大するので欠乏しやすくなります。

とくに妊娠期にはかなりの量の摂取が推奨されるため、サプリも多く市販されています。妊娠中の方がサプリを使用される場合は婦人科の主治医と相談してください。

葉酸摂取量の増大以外では、アルコールの過剰摂取による吸収不全、関節リウマチの治療などで使われるメソトレキサート(商品名:リウマトレックス)というお薬の副作用に葉酸の不足があげられています。てんかん治療薬や経口避妊薬ピルの服用でも、葉酸の吸収が邪魔されます。

巨赤芽球性貧血の検査・診断

巨赤芽球貧血では、ヘモグロビン濃度の低下とともに、

  • MCV(赤血球の大きさ)=100以上

となると疑いが持たれます。

その場合は、

  • 網赤血球
  • ビタミンB12
  • 葉酸

などを測定します。網赤血球が増加している場合は、出血や溶血によって材料であるビタミンB12や葉酸が不足して、結果として巨赤芽球性貧血になっていると判断します。

網赤血球が増加していなければ、ビタミンB12か葉酸欠乏のことが多いですが、それらも正常な場合は精査が必要です。肝機能障害が影響していたり、骨髄異形成症候群が認められることがあります。

巨赤芽球性貧血の治療

これらの貧血の治療法としては、ビタミンB12や葉酸を補うことです。ビタミンB12の吸収障害のある方には筋肉注射が行われますが、それ以外の方には飲み薬での治療ができます。

具体的には、以下のようなお薬が使われます。

  • ビタミンB 12:メチコバール(一般名:メコバラミン)
  • 葉酸:フォリアミン(一般名:葉酸)

貧血が改善されていくと正常な量の赤血球が産生されるようになるため、今度は原料の鉄の不足がおこることがあります。治療中には、鉄量のチェックともに、食事全体の見直しも大切です。

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