糖尿病の診断基準

糖尿病診療ガイドラインによる診断基準

糖尿病は初期症状がほとんどありませんが、どのように診断するのでしょうか。
この記事では糖尿病の診断基準、血糖値の判定基準、境界型糖尿病の定義について解説します。
これを読めば糖尿病の診断基準が理解できます。
糖尿病を疑われている人は役立ててみてください。

糖尿病の診断基準

糖尿病は、検査結果と症状から診断されます。
以下の3つの基準のうち1つでも満たせば糖尿病です。

  1. 糖尿病型を2回確認(1回は血糖値)
  2. 血糖値で糖尿病型を1回確認+慢性高血糖症状
  3. 過去に糖尿病と診断されたことがある

それではそれぞれの基準について解説します。

1-1.糖尿病型を2回確認

まず糖尿病型の基準を示します。

満たす条件
血糖値 空腹時血糖値:126mg/dL以上
ブドウ糖負荷試験(OGTT)2時間値:200mg/dL以上
随時血糖値:200mg/dL以上
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー) 6.5%以上

このどちらかの基準に当てはまることを2日にわたって確認します。
ただし少なくとも1回は血糖値で確認することが必要です。
また1日目で血糖値、HbA1c両方の基準を満たせば糖尿病と確定します。
たとえば、随時血糖値が2日にわたって200mg/dL以上の場合は糖尿病と診断されますが、HbA1c2回だけでは不適当です。

1-2.血糖値で糖尿病型を1回確認+慢性高血糖症状

血糖値と症状を合わせて糖尿病と診断します。
血糖値の糖尿病型の基準は前章で記載したとおりです。
慢性高血糖症状は以下のとおりです。

  • 口喝、多尿、多飲、体重減少
  • 糖尿病性網膜症

たとえば空腹時の血糖値が126mg/dL以上で、口喝、多飲、多尿の症状があれば糖尿病と診断されます。

1-3.過去に糖尿病と診断されたことがある

過去に1. または2. の基準を満たしたことがあれば、新たに検査するまでもなく、糖尿病と診断されます。

糖尿病における血糖値の判定基準

静脈血漿(けっしょう)で、空腹時血糖値、ブドウ糖負荷試験、随時血糖値、HbA1cを検査します。
それぞれの検査結果の判定基準は以下のとおりです。

2-1.空腹時血糖値

10時間以上食事をとらずに血糖値を測定します。
一般的には、朝食をとらずに来院して採血することが多いようです。
判定基準は以下のとおりです。

  • 110mg/dL未満:正常型
  • 100~109mg/dL:正常高値
  • 110~125mg/dL:境界型(正常型にも糖尿病型にも含まれないもの)
  • 126mg/dL以上:糖尿病型

2-2.ブドウ糖負荷試験(OGTT)

意識的にブドウ糖を摂取させて血糖値を測る検査です。
75gのブドウ糖が溶けた液体を飲んで行うことから、「75gOGTT検査」と呼ばれます。

75gOGTTが強く推奨される要件
  • 空腹時血糖値:110~125mg/dL
  • 随時血糖値:140~199mg/dL
  • HbA1c:6.0~6.4%
75g OGTTの検査手順
  1. 糖質を150g以上含む食事を3日以上摂取
  2. 10~14時間絶食
  3. 早朝空腹時に75gブトウ糖を含む225~350mLの溶液を服用
  4. 服用前、服用後30~60分ごとに採血して血糖値を測定(服用前、服用後2時間値は必須)
75gOGTTの判定基準

2時間値により判定します。

  • 140mg/dL未満:正常型
  • 140~199mg/dL:境界型
  • 200mg/dL以上:糖尿病型

2-3.随時血糖値

食事に関係なく測定した血糖値のことです。
実際には食後で血糖値が高くなっていると推定される時間帯の血糖値を指します。

  • 140mg/dL未満:正常型
  • 140~199mg/dL:境界型
  • 200mg/dL以上:糖尿病型

つまり随時血糖値が200mg/dL以上あれば、75gOGTT検査の2時間値が200mg/dL以上あるのと同じです。

2-4.HbA1c

HbA1Cは糖化ヘモグロビンの割合を示すもので、過去1~2カ月の血糖値を反映します。
陽イオン交換樹脂を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法で測定します。
判定基準値は以下のとおりです。

  • 5.6%未満:正常型
  • 5.2~5.5%:要注意
  • 6.0~6.4%:糖尿病が否定できない
  • 6.5%以上:糖尿病型

3.境界型糖尿病

糖尿病の診断基準に従えば、2回以上血糖値が糖尿病型に当てはまれば、糖尿病と診断されます。
そして基準に当てはまらないが、正常とは言えない場合を境界型糖尿病と呼びます。
境界型糖尿病は糖尿病に移行しやすいため、生活指導を受けた後、定期的な検査が必要です。

4.まとめ

以下に示すいずれかの基準を2回にわたって満たせば糖尿病と診断されます。。

  • 空腹時血糖値≧126mg/dL
  • 75gOGTT2時間値≧200mg/dL
  • 随時血糖値≧200mg/dL
  • HbA1c≧6.5%

ただし1回は血糖値の基準を満たすことが必要です。
また血糖値で糖尿病型を1回確認+慢性高血糖症状の場合も、糖尿病と診断できます。
そして基準に当てはまらないが、正常とは言えない場合を境界型糖尿病と呼びます。
境界型糖尿病は糖尿病に移行しやすいため、定期的に検査を受けてください。

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大澤 亮太

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大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:糖尿病  投稿日:2025-05-28

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