糖尿病で痩せるのはなぜ?理由・症状を解説
糖尿病で痩せる時には、病気そのものが原因で痩せる場合と、治療のために痩せる場合があります。
両者では痩せる意味が全く異なるため、区別が必要です。
この記事では、まず糖尿病そのものが原因で痩せる時の症状、原因、危険性について解説します。
また治療によって痩せる理由として、食事療法、運動療法、痩せる副作用をもつ経口薬、注射をご紹介します。
これを読めば、糖尿病で痩せるという意味が分かります。
糖尿病を治療する際に役立ててみてください。
糖尿病そのものが原因で痩せる場合の症状
糖尿病そのものが原因で痩せる場合には、食べる量を減らしていないのに体重が減ります。
とりわけインスリンがほとんど全く分泌されない「1型糖尿病」では、体重が急激に減ることが特徴です。
数週間で5~10㎏痩せることもあります。
また口の渇き、尿回数の増加も見られます。
糖尿病で食べても痩せることがあるのはなぜ?
人の体は食事から栄養素をとり、エネルギー源として利用します。
しかし体脂肪や筋肉を分解することでもエネルギーが得られます。
この反応は糖新生と呼ばれます。
簡単に仕組みを解説します。
まず脂肪の分解によりグリセオールや遊離脂肪酸が増え、筋肉の分解によりアラニンが増えます。
次にグリセオールおよびアラニンは、グルカゴンの働きによって肝臓でブドウ糖に変えられます。
そして作られたブドウ糖はエネルギー源として利用されます。
インスリンは糖新生が過剰にならないように調整します。
しかし1型糖尿病でインスリンが欠乏すると、グルカゴンが増えて糖新生が過剰となり、体脂肪や筋肉が分解されて痩せてしまいます。
糖尿病で食べても痩せると余命が短くなる?
インスリンの欠乏によりグルカゴンが増えると、ミトコンドリアにおいて遊離脂肪酸からケトン体が過剰に生成されます。
血液中にケトン体が増えると、血液が酸性に傾き、糖尿病性ケトアシドーシスを起こします。
ケトアシドーシスは放置すると意識障害を起こし、昏睡あるいは死にいたる病態です。
つまり余命が短くなります。
この場合は早急に入院して治療が必要です。
糖尿病の食事療法・運動療法で痩せることがある
2型糖尿病は、過食、運動不足などの生活習慣により肥満となることが主な原因です。
したがって肥満を解消すると高血糖が改善します。
治療のために食事療法、運動療法を行って、意識的に痩せることが必要です。
食事療法では、総エネルギー摂取量を適正化することで体重を減らし、糖尿病の発症リスクを減らします。
適切なエネルギー摂取量は、目標体重とエネルギー係数から算出します。
運動療法では、有酸素運動、レジスタンス運動により、消費エネルギーを増やすことで血糖値をコントロールします。
消費エネルギー量がエネルギー摂取量を上回れば、体重が減り、痩せてきます。
糖尿病で痩せる経口薬がある
血糖値を下げる経口薬の一種として、SGLT2阻害薬があります。
血中のブドウ糖は、腎臓の尿細管で再吸収されるために、通常は尿から排泄されることはありません。
この再吸収においてSGLT2というたんぱく質が働きます。
SGLT2阻害薬は、SGLT2の働きを阻害することで、ブドウ糖を尿中に排泄させ、血糖値を下げる薬です。
副作用として、尿量増加、脱水、体重減少が見られます。
SGLT阻害薬を使う際には、副作用対策として適度な水分補給が必要です。
糖尿病で痩せる注射とは?
糖尿病の治療に使われる注射薬として、GLP-1受容体作動薬があります。
GLP-1とは、食事により糖分やアミノ酸が小腸に運ばれると分泌されるホルモンの一種です。
GLP-1は、膵臓のβ細胞にあるGLP-1受容体と結びつくことで、インスリンの分泌を促します。
GLP-1受容体作動薬は、注射でGLP-1を補う薬です。
インスリンの分泌を促し、血糖値を下げます。
また脳の視床下部に働きかけ、食欲を抑える作用があります。
この結果、食事量が減って痩せることがあります。
糖尿病は治療して痩せると治る?
痩せて肥満が解消すれば、インスリン抵抗性が改善し、インスリンが効きやすくなって血糖値が下がります。
しかし糖尿病の原因はインスリン抵抗性だけでなく、インスリンの分泌低下もあります。
したがって糖尿病が完治することはありません。
ただし血糖値が下がることは間違いないため、糖尿病の治療に役立ちます。
まとめ
1型糖尿病では糖新生が過剰となり、食べる量を減らしていないのに体重が減ることがあります。
この場合、命に関わることもあり、早急に治療が必要です。
2型糖尿病で食事療法、運動療法の効果で痩せる場合は好ましい状態です。
また糖尿病の治療薬であるSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の副作用で痩せることがあります。
糖尿病は治療して痩せても完治することはありません。
ただし血糖値が下がりますので、糖尿病の治療に役立ちます。
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カテゴリー:糖尿病 投稿日:2025-06-14
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