紫斑病(血小板減少症)こころみ医学

【医師が解説】紫斑病(血小板減少症)の症状・診断・治療

  • 更新日:2019年08月17日 23:16
  • 作成日:2019年10月30日 22:00

紫斑病(血小板減少症)とは?

血小板減少症とは、止血に重要な働きをしている血小板が減少してしまうことで、血が止まりにくくなってしまいます。皮下出血(内出血)したときに紫色のアザができるので、紫斑病とも呼ばれます。

皮下出血の結果である紫斑は、様々な原因によって現れます。一時的なものなら誰にでもおこり得るもので、とくに心配はありません。

けれど、

  • 複数の紫斑が一度に現れる
  • 細かな点のような紫斑が広い範囲に現れる
  • 紫斑がだんだん広がっている
  • 急に紫斑ができる頻度が増えた
  • 一度消えてもすぐに次の紫斑が現れくり返す

などの状態のときは、何らかの原因によって過度に出血しやすくなってしまっている可能性があります。強くぶつけたなどのはっきりとした理由がないのにアザが増えるのも、何らかの原因によって血管から出血しやすくなってしまっている可能性があります。

病的な紫斑の原因となる病気には様々なものがありますが、その中でとくに紫斑が中心の症状となるものを『紫斑病』と呼んでいます。

病的な紫斑の原因として大きくは、

  • 止血作用のある血小板の不足/過度の増加
  • 血管の壁が弱くなり、血液が漏れやすくなっている
  • 血小板機能異常やそれ以外の血液凝固機能の異常

3つに大別されます。

血小板に原因のある紫斑病は血小板性紫斑病と呼ばれ、

  • 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
  • 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

が代表です。

これ以外に血小板性の紫斑をおこす病気としては、

  • 急性白血病
  • 本態性血小板血症(ET)
  • 再生不良性貧血
  • 溶血性尿毒症症候群(HUS)

などがあります。

一方、血管に問題のある紫斑病は血管性紫斑病と呼ばれ、

  • アレルギー性紫斑病(アナフィラクトイド紫斑病/ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)

が代表的です。血小板機能異常や凝固系の異常によって紫斑が認められることもあります。

紫斑の中には体質的なものでとくに心配がないこともありますが、重篤な病気が原因となることもあります。異常にアザが増えて感じるときは病院を受診しましょう。

紫斑の特徴

紫斑は、皮膚に現れる赤紫色~暗褐色のアザです。場所によっては青っぽく見えることもあります。それは皮膚の下で血管からの出血がおこり、皮膚の上から血液の広がりが透けて見えている状態です。

ケガなどで皮膚にも傷が入って出血した場合は、外に赤い血が流れ出しますが、血管が圧迫されたり、何らかの原因で血管の壁がもろくなっていたりすると、外傷がなくても血管から出血することがあり、そのときは紫斑として確認されます。

皮下出血による紫斑は、皮膚をガラス板などで圧迫しても消えることがないのが特徴です。その大きさは出血の状態によって様々で、直径3㎜以下の小さな点状のものから、鶏の卵大くらいの大きなものまであります。

直径3㎜以下の紫斑は『点状紫斑(点状出血)』、それ以上の大きなものは『斑状紫斑(斑状出血)』と医学的に区別されています。

健常な状態でもどこかに強くぶつけたり、長時間一部が圧迫されたときなどには皮下出血をおこし紫斑が現れます。その場合はしばらくすると自然に出血が治まり紫斑は消失します。しかしながら、とくにそんな覚えもないのに複数の紫斑が手足などに現れてきたときや、何度もくり返すようなときは、何らかの異常によって簡単に出血をおこしてしまっている可能性があるため、注意が必要です。

紫斑病の原因

紫斑が現れる直接的な原因としては、

  1. 血小板減少/過度の増加(血小板性紫斑)
  2. 血管の異常(血管性紫斑)
  3. 血小板機能異常
  4. 血液の凝固異常
  5. 外的な要因(ぶつけた、強く圧迫したなど)
  6. 体質や年齢での変化によるもの
  7. 薬剤性(アスピリンなどの服用)

の7つがあります。

このうち⑤と⑥はとくに病的なものではなく、体質的に血管が弱く内出血をおこしやすい状態です。⑦はお薬による副作用になります。また、③の血小板機能異常は、基本的には遺伝による生まれ持っての病気になります。

④は紫斑病としてではなく、播種性血管内凝固症候群(DIC)や血友病などの病名がついています。

紫斑病の直接的な原因となるのは、①と②になります。

血小板減少/過度の増加(血小板性紫斑)

血小板は、赤血球・白血球と並ぶ血液の3大成分の1つです。主な働きは止血作用で、血小板が減少すると出血しやすくなったり、出血が止まりにくくなったりします。また、過度に増加し過ぎても止血機能が低下し、出血傾向をおこすことがあります。

血小板は健康な血液1μL中では約15万~40万存在していますが、その数が5万以下になると紫斑や、鼻血・歯肉出血の増加、出血が止まりにくくなるなどの症状が現れます。1万以下になると脳出血など重度の臓器出血をおこす危険性があります。

血小板性紫斑の原因となる代表的な紫斑病には、

  • 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
  • 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

があります。その他、本態性血小板血症、再生不良性貧血、急性白血病などの血液の病気でも、血小板減少・過度の増加による紫斑が多くみられることがあります。

なぜ血小板が減少してしまうかの原因は、病気によって様々です。正常な血小板を自己の免疫が攻撃するようになってしまう免疫の異常や、血小板細胞が正常に育たなくなる造血機能の異常などが原因となります。

血小板性紫斑は、3㎜以下の小さな点状で現れるのが特徴です。

血管の異常(血管性紫斑)

血管性紫斑は、血管の問題から出血しやすくなっている状態です。炎症などが原因で血管の壁がもろくなり、中を通る血液が漏れ出しやすくなります。

血管性紫斑をおこす代表的な病気は、全身の血管にアレルギー性の炎症をおこす『アレルギー性紫斑病』(アナフィラクトイド紫斑病/ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)で、3歳~10歳くらいまでの小児によく見られる血管性紫斑です。

免疫機能がかかわるアレルギー疾患の一種で、溶連菌やマイコプラズマなどの感染症、ひどい風邪等が治まった後に発症することが多く、とくに溶連菌との関連性が指摘されています。自己がアレルギー性を持つ食べ物や薬剤が引き金となることもあります。

体質や年齢での変化

特別に深刻な病気ではなく、体質的に毛細血管が弱かったり、年齢とともに血管の壁が弱くなってきたりすると、軽い刺激で出血しやすくなることがあります。

  • 単純性紫斑

若い女性に多く見られます。毛細血管が弱い人に多くおこり、主にひざから足首にかけて小さな紫斑が現れます。

特別に危険な病気というわけではなく、紫斑以外に症状はありません。点状の紫斑が多く出現しくり返したり、紫斑とともに鼻血や生理出血が増えたりするようなことがあれば、血小板減少性紫斑の可能性があります。

  • 老人性紫斑

年齢とともに毛細血管を保護するコラーゲン繊維や脂肪組織が減少し、血管自体ももろくなってくるため、軽い刺激でアザができやすくなります。

これも特別な病気というわけではなく、年齢による変化の1つです。それ以外に症状がなく、自然と治まるようならとくに問題はありません。

紫斑病の種類と症状・治療

上記のように、紫斑は様々な原因でおこります。そのうちで、とくに『紫斑病』と呼ばれている代表的なものには、

  • 特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
  • 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
  • アレルギー性紫斑病(アナフィラクトイド紫斑病/ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)

3つがあります。

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)は血小板性紫斑病で、止血作用のある血小板が減少することで血が止まりにくくなり、紫斑ができやすくなる病気です。どちらも難病指定を受けています。

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)

この紫斑病では、免疫抗体の異常によって自らの血小板を破壊してしまうようになって血小板が減ることで血小板が減少します。

急性型と慢性型があり、急性型は小児に多く、慢性型は成人に多くみられます。紫斑のほか、鼻血や歯肉出血や血尿などの外部出血も症状として現れます。

原因は不明ですが、小児の急性型はウイルス感染などの後におこることが多く、その関連が指摘されています。慢性型では胃潰瘍などの原因となるヘリコバクター・ピロリ菌の関与が注目されています。

急性型は6カ月内に自然治癒することも多いですが、血小板減少や外部出血が深刻になるとステロイド治療などを行います。

慢性型ではピロリ菌検査を行い、感染が確認されたときは飲み薬によるピロリ菌除菌療法が行われます。

非感染のときや除菌療法の効果がないときは、血小板数や症状の経過を見守り、それらが深刻になったときはステロイド療法や免疫抑制剤(適応外)での治療が検討されます。

血小板の数を増やす薬が用いられることもあります。薬に効果を示さない難治例では、血小板を破壊する臓器の脾臓(ひぞう)を摘出することもあります。

厚生労働省の指定難病63に認定されています。

詳しく知りたい方は、特発性血小板減少性紫斑病の症状・診断・治療をお読みください。

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)

血小板の凝固などを調整する酵素の機能が低下し、血小板の凝固力が異常に高まって血栓が多発し、血小板が大量に消費されてしまうことで正常な血小板が減少してしまう病気です。

紫斑のほか、血小板血栓の影響で溶血性貧血(赤血球が破壊されていくことでおこる貧血)、腎機能障害、脳機能障害、38℃以上の発熱などを示します。

発症率は人口100万人あたり年間4人程度と多くはないですが、乳幼児から高齢者まで幅広く発症します。20代・30代では女性の方が発症率が高く、一部の経口避妊薬(ピル)との関連も指摘されています。重度の肝機能障害や感染症がきっかけとなるケースも報告されています。

患者さん全体の5%以下とまれですが、生まれつき酵素が欠如している先天性のタイプもあります。

治療は、血液の液体成分である血漿を定期的に新鮮なものと入れ替える血漿交換療法が基本です。状態に応じ、ステロイド療法や免疫抑制剤による治療が併用されることもあります。

この紫斑病は厚生労働省の指定難病64に認定されています。

詳しく知りたい方は、血栓性血小板減少性紫斑病の症状・診断・治療をお読みください。

アレルギー性紫斑病(アナフィラクトイド紫斑病/ヘノッホ・シェーンライン紫斑病)

上の2つが血小板減少による血小板性紫斑病であるのに対し、アレルギー性紫斑病は血管に炎症がおこることで血管の壁がもろくなり、血液が漏れ出しやすくなる血管性紫斑病です。

アナフィラクトイド紫斑病、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、IgA血管炎などと呼ばれることもあります。

患者さんのほとんどは3歳~10歳ごろの小児で、皮膚からやや盛り上がった足などの細かな紫斑が特徴です。多くはかゆみもともないます。

紫斑のほか、激しい腹痛や嘔吐などの腹部症状、関節痛、むくみ、腎炎などが症状としてみられることがあります。紫斑より先に腹痛がおこり、虫垂炎(盲腸炎)と誤解される場合もあります。

原因は不明ですが、溶連菌やマイコプラズマなどに引き続いて発症することが多く、とくに溶連菌との関連が指摘されています。薬剤や食べ物でのアレルギーがきっかけになることもあります。

根本的な治療法はなく、関節痛や腹部症状などに対する対症療法と、腎炎を合併した場合の治療が中心になりますが、多くの場合予後は良好で回復へむかいます。

この病気にともなう腎炎は紫斑性腎炎と呼ばれ、治療が長期間になるときは『小児慢性特定疾患』として治療費に助成が受けられます。

詳しく知りたい方は、アレルギー性紫斑病の症状・診断・治療をお読みください。

【参考】血小板とは?

血小板は、赤血球、白血球と並ぶ重要な血液細胞です。血液は、『血漿』と呼ばれる液体成分に固形の『血球』(血液細胞)が混じり合っています。血球には、赤血球、白血球、血小板の3つの種類があります。それぞれの主な働きは、

  • 赤血球…全身に酸素を運ぶ
  • 白血球…ウイルスや異物と戦う免疫担当
  • 血小板…出血時に血液を固めて傷を塞ぎ出血を防ぐ

となり、どれも適度な数や大きさでバランスが取れているのが健康な状態です。

血小板は11つが独立した核を持っている赤血球や白血球と異なり、骨髄の中の巨核球という細胞の一部がちぎれたものなので核を持たず、突起のあるいびつな形をしています。色は黄色がかっています。

大きさは約2μm(マイクロメートル)で赤血球や白血球の細胞よりも小さく、正常状態の血中では15万~40万個/μL程度含まれています。平均寿命は812日で、寿命を迎えた血小板は主に脾臓で破壊され、一部は血中でも破壊されます。血小板の約1/3は脾臓に存在しています。

血小板には、止血と血液凝固の働きがあります。血管が傷つき出血したときに活性化し、血管の傷に血小板が血漿(血液の液体成分)のフィブリノーゲンによって血小板同士が接着してのり状となり、血管の壁の傷口を防いで血栓をつくります。

その状態からさらに凝固成分が放出され、血漿(血液の液体成分)の凝固を助け、他の血小板や赤血球を密着させて強力に止血をします。このときつくられるのが一般的に『かさぶた』と呼ばれるものです。

血小板の重要な役割は、出血の際の止血が主ですが、血管内皮細胞を維持するための物質を供給したり、炎症、免疫、感染防御、動脈硬化、がんの転移や発育など、様々な生体反応にも深くかかわっていると考えられています。

血球の産生をコントロールしているのは、ポエチンと呼ばれる因子です。血小板の産生は主に『トロンボポエチン』と呼ばれるポエチンが担っています。その他、赤血球の産生を促すエリスロポエチンも関わっているとされています。

トロンボポエチンは、血小板のもととなる巨核球の数や倍数性を増加させるだけでなく、産生後の血小板にも作用します。血小板にはトロンボポエチンと結びつく部位があり、その刺激によって凝集の機能などが促進されると考えられています。

血小板は自力では傷の部位に移動することができませんが、白血球と結合することで動くことができます。傷ができた際、白血球は傷の修復や感染防御のためにその部位へと自ら移動していきますが、血小板はその白血球と結びついて傷まで連れていってもらっていると考えられています。

また、炎症反応など白血球の働きに血小板がかかわっていることもあり、この2つはお互いに協力し相互に影響しあって働いているとみられています。

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