紫斑病(血小板減少症)こころみ医学

【医師が解説】特発性血小板減少性紫斑病の症状・診断・治療

  • 更新日:2019年08月17日 22:17
  • 作成日:2019年10月16日 22:00

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)とは?

特発性血小板減少性紫斑病(ITP)は、血小板性紫斑病の代表です。免疫抗体の異常により、自己免疫が自身の健常な血小板を攻撃してしまうようになり、血小板が減ることで皮下出血による紫斑や、外部出血がおこりやすくなります。

この病気には急性型と慢性型があり、急性型は小児に多く36か月以内に治癒しますが、慢性型は6か月以上に及び、20代~40代の女性や60~80代の高齢者で発症が目立ちます。

この病気は自己免疫疾患の1つで、型アレルギーに属し、厚生労働省による指定難病となっています。

軽症の場合は日常に特別な支障はありませんが、血小板の減少が進むと深刻な出血をおこす可能性があるため経過観察が必要で、血小板数の低下が進行したときは適切な治療による血小板数のコントロールが必要になります。

厚生労働省の調査によると、この病気の患者さん総数は約2万人、新たに診断される人は毎年約3,000人と推定されています。小児の患者さんは急性型が約7580%を占め、慢性型は20代~40代の女性の他、60代~70代男女での発症が多く認められています。

急性型と慢性型の違い

急性型は小児に多く、風疹ウイルスなどのウイルス感染症やひどい風邪などに引き続いて発症するケースが多くみられます。それらの症状が治癒した後、14週後くらいに突然小さな点状の紫斑がくり返しできたり、鼻血が止まりにくいなどの症状が現れ、関節痛や激しい腹痛をともなうこともあります。

自己がアレルギー性を持つ食べ物や薬剤が引き金となることもあります。通常は一時的なもので数カ月で自然治癒することが多いですが、合併症として腎炎を引き起こしたり、腹部の症状がひどかったり、血小板が2万以下となるような場合は短期間のステロイドなどによる治療が必要になります。慢性型への移行は10%程度と言われています。

慢性型は、20代~40代の女性や60~80代の高齢者を中心に成人で多くみられます。発症の引き金は不明ですが、近年は胃潰瘍などの原因として知られるヘリコバクター・ピロリ菌感染との関連性が指摘されています。

また、まれではありますが、慢性型に自己免疫性溶血性貧血を合併することがあり、その状態はとくに『エバンス(Evans)症候群』と呼ばれます。

特発性血小板減少性紫斑病の症状

この病気の症状としては、

  • 点状の紫斑
  • 鼻血・歯肉出血・月経過多などの出血傾向

2つが主です。

紫斑は3㎜以下の小さな点状紫斑が特徴で、大きなアザではなく細かな紫斑が増えます。紫斑は最初は赤紫色でしだいに茶色になり、自然と薄くなって10日程度で一度消えますが、すぐに新しいものが現れます。

急性型は36カ月程度で治まって自然に治癒することも多いですが、慢性型は6カ月以上症状が継続します。

外部への出血傾向は、血小板数の減少とともに目立つようになり、

  • 歯肉出血
  • 鼻血
  • 血尿や血便
  • 月経過多
  • 脳出血

などが確認されるようになります。

血小板は正常値が15万~40/μLですが、これが10万以下になるとこの病気が疑われ、5万以下になると外部への出血傾向が現れます。1万を切ると脳出血など危険な臓器出血の可能性があるため、注意が必要です。

特発性血小板減少性紫斑病の原因と検査・診断基準

この病気の患者さんの体内では、血小板に対する『自己抗体』ができています。自己抗体があると免疫が攻撃して破壊してしまうため、血小板が減少してしまうと考えられています。

そのような自己抗体がつくられてしまう引き金として、急性型ではウイルスなどの感染、慢性型ではヘリコバクター・ピロリ菌との関連が深いケースがあるとして研究が進められていますが、はっきりしたことはわかっていないのが現状です。

この病気かどうかは、血液検査によって調べます。必要に応じて、骨髄穿刺をして骨髄の細胞を調べます。ある特定の遺伝子異常などは確認されておらず、遺伝性の病気ではないとされています。

  • 血小板が減少している
  • 赤血球と白血球は正常
  • 骨髄中の巨核球数は正常か増加している
  • 血小板に結合した抗体(血小板結合性IgG,PA IgG)が増加している
  • 他に血小板減少の原因になる病気がない

以上を満たす場合、特発性血小板減少性紫斑病と診断されます。

特発性血小板減少性紫斑病の治療

小児に多い急性型は自然に治癒することも多いため、軽度の場合は様子を見ます。外部への出血傾向が強くなったり、検査で血小板数が3/μL以下になるようなことがあれば、ステロイドホルモンや免疫グロブリンによる治療を検討します。

慢性型では、状況に応じて様々なものが検討されます。

ピロリ菌除菌療法

慢性型は、近年ヘリコバクター・ピロリ菌感染と病気の発症や進行の関連が指摘されているため、まずはその検査を行います。

ピロリ菌は胃潰瘍などの原因になる菌で、主に胃の中に住み着きます。検査でピロリ菌感染が確認された場合、ステロイドによる治療を行う前に、まずは飲み薬によるピロリ菌除菌療法を行います。

患者さんによっては、ピロリ菌を除菌することでITPの症状も回復することがあります。半数ほどの患者さんで、血小板の増加が認められます。

平成22年には、ピロリ菌除菌療法がこの病気の治療法として保険適用になっています。

ピロリ菌除菌療法の効果が無いときや、非感染の患者さんに対しては、軽症なら経過観察をしながら病気の進行を見守ります。

ステロイド治療

出血傾向や出血傾向や血小板数の減少が激しいときには、ステロイドの内服や点滴投与による治療を検討します。

ステロイドは副作用もある薬のため、効果と副作用のバランスをはかりながら慎重に投与を続け、血小板数の回復とともに薬を減量していきます。

脾臓摘出(摘脾)

ステロイドの効果も不十分な難治例や、副作用でステロイドが使用できない場合には、脾臓の摘出(手術で取り除いてしまうこと)も検討されます。

血小板を破壊するのは脾臓の働きのため、取り除くことで血小板数の回復を期待します。60%程度の患者さんでは脾臓摘出後に血小板数がある程度まで回復し、薬を止めても血小板数が維持されるようになります。

免疫抑制剤

その他の治療としては、血小板を壊す免疫の機能を抑える免疫抑制剤を使用することもあります。

薬剤にはアザチオプリン・シクロホスファミド・シクロスポリン・ダナゾールなどの種類がありますが、いずれも健康保険が適応されません。

免疫製剤治療(ガンマグロブリン)

免疫物質であるガンマグロブリン製剤を大量投与する治療です。

有効性は高いですが一過性で、分娩前など緊急性の高いときや、脾臓摘出などの手術前に行われることがあります。

血小板増加剤

平成23年には血小板の数を増やす血小板増加薬が発売され、この病気の治療で用いられることがあります。

飲み薬のエルトロンボパグと、皮下注射用製剤であるロミプロスチムの2種があり、どちらも血小板の産生を促し治療に効果を発揮します。

ただし、これらの薬は血小板が破壊されてしまう病気の根本を治すものではなく、血小板を増加させる薬です。そのため、継続しての服用・注射が必要になります。

特発性血小板減少性紫斑病の注意点

この病気を持っている人は風邪などのウイルス感染をきっかけに出血症状が悪化することがあるため、そのときは主治医へ連絡しましょう。

また、解熱鎮痛剤の使用は血小板の機能を弱めるため、できるだけ避けた方がいいと言われています。

日常において軽い運動はできますが、激しい衝撃のかかるサッカーやラクビー、柔剣道等のスポーツは避けた方が安心です。状態によって日常の注意点は変わるため、気になるときは主治医とよく相談しましょう。

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