コラムこころみ医学

【精神科医が解説】コロナうつの症状と対策

  • 更新日:2020年05月23日 13:57
  • 作成日:2020年05月23日 00:00

はじめに

うつ状態がひどいと、この記事を読むのもご負担かと思います。そのような方は、心療内科や精神科に必ずご相談ください。

 

新型コロナウイルス感染症によるパンデミックによって、私たちは多くの社会生活の変化を余儀なくされています。そして多くの方が、経済的に大きな損失を受けています。

その理不尽さは災害以外の何物でもありませんが、東日本大震災のような誰の目にも明らかなものではなく、そのストレスの性質は立場によって様々かと思います。

患者さんと接していると、本当に苦しまれている方が多いのを実感します。また感染を避けるために、医療機関の受診を控えるように周知されています。そのような中で、相談もなかなかできない方もいらっしゃるかと思います。

ここでは、新型コロナウイルスによるストレスでのうつ症状にフォーカスをあてて、ご自身でできる解決策と専門家に相談するタイミングなどをご紹介していきたいと思います。病気のレベルだけでなく、「うつっぽさ」から抜ける糸口などもご紹介していきます。(とくに運動に力を入れて)

少しでも悩まれている方の参考になれば、私たちとしてもうれしいです。

「コロナうつ」とは?うつ病の症状と診断

新型コロナウイルス感染症での自粛が続く中、「最近なんだかうつっぽい・・・」といった会話を何気なくされているかもしれません。「気分が落ち込む≒うつ」という形で使われることが多くなっていますが、なんとなく不調から病気レベルまで、いろいろな方がいらっしゃいます。

うつ病という病気を、誤解を恐れずに一言でお伝えするならば、「エネルギーの病的な低下」になります。誰しも日によって体調の波はあります。気力が充実している日もあれば、なんだか無気力な日もあります。ですが、

  • 本来やらなければいけないことができない・・・
  • 何とかできても本来の力が発揮できずに苦しい・・・

といった状態が長く続き、生活に支障がでてきて苦しみが深まると、「病的なエネルギーの低下としてのうつ状態」を考えていきます。あえて「うつ状態」という言葉をつかいましたが、「うつ状態=うつ病」というわけではありません。ストレスで消耗すれば、どのような病気であっても「うつ状態」になる可能性があります。

ですから、その本質的な原因を考えていく必要があります。(※正確に言えば、診断基準を満たせばうつ病の合併となります。)それがストレスの蓄積としてのものであるならば、エネルギーの低下が病的であればうつ病と診断されます。

「病的なエネルギーの低下」の症状としては、

  • 持続する強い落ち込み
  • 精神活動(意欲や思考)の抑制
  • 興味や関心の消失
  • 極度の疲れやすさ

といったところが認められることが多いです。その他にも、

  • 食事や睡眠の異常
  • 強い自責感

といった症状が認められることが多いです。診断基準では、その持続期間が2週間以上となっています。

新型コロナウイルスでのストレスとうつ

今回のコロナウイルス感染症では、本当に多くの変化がありました。環境の変化では、誰しもがストレスをうけます。そして好ましい変化もストレスにはなりえることも見落としがちで、例えば在宅勤務で仕事が楽になったと感じていても、生活のペースが変化することはストレスであったりもします。

新型コロナウイルス感染症の影響としては、

  • 心因性(適応障害~うつ病)

の方が多いかと思います。心因性とは、現実的なストレスへの反応が原因となっていることです。適応障害とは、うつ病までの「エネルギーの低下」はないまでも、環境との折り合いがつかずに生活への支障や大きな苦痛となっている病気です。詳しくは、「適応障害について」をお読みください

しかしながら一定数いらっしゃるのが、

  • 精神的な持病の悪化

になります。例えば、

  • 双極性障害の方が、ストレスでうつ状態が悪化
  • 強迫性障害の方が、在宅で社会生活がなくなることで状態が悪化
  • 反復性うつ病性障害の方が、生活の不安から状態が悪化

といったものになります。その場合は総合的にみて治療が必要になり、脳の機能的な異常が想定される(内因性)であれば、お薬の役割が大きくなります。

このように、うつ状態といえるほどにエネルギーが低下してしまっている場合は、その本質的な原因を考えていく必要があります。このため、心療内科や精神科などの専門家に相談が必要となります。

【参考】うつ状態の原因の考え方

うつ状態が認められた時には、その背景にある原因を考えていくことが大切になります。従来の日本の診断では、

  • 外因性
  • 内因性
  • 心因性

という3つに分けて、その原因を大きくとらえていました。外因性は頭のケガなどがきっかけとなったもので、今回のコロナウイルスで新たに起こることは少ないかと思います。内因性と心因性という分け方は、治療のためにもとても大切です。

心因性は何らかのつらい出来事がきっかけとなって、その反応としてうつ状態となったことを意味します。それに対して内因性は、何らかの脳の機能的な異常が示唆されることを意味します。

心因性であれば、その原因が取り除かれれば回復に向かっていくことも多いです。それに対して内因性であれば、脳の機能的な異常が背景にあるので、原因が取り除かれてもなかなか回復をみせないこともあります。お薬の役割も大きくなります。

病院に相談する目安

どの程度になった場合に、病院に相談したほうが良いのでしょうか?

その線引きは難しいところですが、

  • 生活への支障が大きくなってきた場合
  • 苦しみが深まってきた場合

は、ご自身で無理をしすぎてもよくありません。「何とかなる」という感覚がなくなってきた場合は悪循環になっていきますので、病院に相談いただいたほうが良いでしょう。

また、上で述べたような「病的なエネルギーの低下」を満たしている場合も、お薬を含めた治療が回復への近道になります。無理をせずに、お近くの心療内科や精神科にご相談ください。

励ましや気晴らしは逆効果?

うつ病の方に対して、

  • 励ましはNG
  • 気晴らしは逆効果

といったことをお聞きになったことがあるかもしれません。

エネルギーが低下している状態では、何かをしようと思ってもできないために、励ましや気晴らしは逆効果となってしまいます。思うようにいかないことがストレスになり、思い詰めてしまうこともあります。

その一方で、ある程度回復してきたら、無理のない程度の励ましや気晴らしは良い方向に働くこともあります。後述しますが、運動は心身共に効果的だといわれています。ですがあくまで、「疲れすぎない程度」に留めておくことが大切です。

無理に気晴らしをする必要はありませんが、自分が疲れすぎない範囲の中で体を動かしてみることは、むしろ回復を早めてくれるのです。

現実的な解決をはかるべき?

うつになってしまってエネルギーが低下してしまっていると、物事の捉え方が歪んでしまうことがあります。気分が良いときはポジティブにとらえられたことが、気分が落ち込んだ時にはネガティブにとらえてしまうといったことは、誰しもが経験されているかと思います。

うつの症状がひどいときは、物事の捉え方が歪んでしまって、建設的に考えられない場合が多いです。なかなか難しいのですが、そのような時は「考えすぎずに休めるようになる」ことが近道です。どうしても目の前の問題から目を背けられない場合は、時間を決めて対応を心掛けた方が良いでしょう。

「うつの時は重大な決断を避けた方が良い」というのは、こういった所以です。思考力も低下してしまい、後悔につながる意思決定をしてしまいます。今は困難なことも、落ち着いてきたら冷静に考えられることもあります。

今回の新型コロナウイルスでのストレスは、

  • 経済的な不安
  • 健康不安
  • 仕事の不安

など、現実的に解決しなければいけないこともあるかと思います。自信がなくなっている場合は、立ち止まってください。信頼できる方に相談したり、専門家にご相談ください。

コロナでの「うつっぽさ」から抜けるための3つの対策

病気としてのうつについてご説明してきましたが、そこまでいかなくても「なんだか気分が晴れない」「なんだか気持ちが落ち込む」といった方は少なくないでしょう。こういった状態を「うつっぽさ」と表現したいと思います。

「うつっぽさ」から抜けるためには、どのようなことができるでしょうか?

  • 規則正しい生活習慣
  • 適度なコミュニケーション
  • 疲れすぎない範囲での運動習慣

日ごろからできることとしては、以上の3つがあるかと思います。それぞれご説明していきましょう。

規則正しい生活習慣

規則正しい生活習慣は、すべての基本になります。生活リズムが整っていることは、安定した気分を維持するために重要です。

在宅勤務に移行したり、自粛生活の中で生活リズムがずれてしまっている方も少なくありません。

規則正しい生活リズムを維持するためには、起床時間を一定にすることが何より重要です。ペースメーカーを見つけてください。好きなテレビ番組でもよし、1日1回無料の漫画サイトを読むでもよし、楽しいことの方がリズムが作りやすいです。

適度なコミュニケーション

気分を安定していくためには、社会リズムも大切です。人との接点が多すぎるのもストレスになりますが、急になくなってしまうのもストレスになるものです。

オンラインや電話などを利用して、お互いに無理のない範囲でコミュニケーションをとる意識をもつことが気分の安定につながることもあります。

悩みを抱えている場合も、人と話をすることで整理されることもあります。オンラインカウンセリングサービスなどもありますので、利用されても良いかもしれません。

疲れすぎない範囲での運動習慣

運動習慣については、否定的な報告もあるので評価は定まっていない部分もあるのですが、軽症のうつ病であれば治療的にも有効ともいわれています。

メンタルの予防効果としては、運動習慣がある方が良いというエビデンスが多いです。運動したらスッキリするという感覚は、シンプルに理解しやすいかと思います。

新型コロナウイルス感染の状況からは、「密を避ける」ということを前提に、運動習慣を取り入れることも良いでしょう。

詳しくは、「うつ病への運動療法の効果とは?(当院外部サイト)」をお読みください。

うつにならず健康的なメンタルヘルスを維持するための運動習慣

2018年にランセットという超一流雑誌にて、120万人のデータを解析して健康的なメンタルヘルスを維持するためにもっともよい運動習慣についてまとめた論文(Association between physical exercise and mental health in 1·2 million individuals in the USA between 2011 and 2015: a cross-sectional study, Lancet Psychiatry 2018 5: 739–46)が発表されています。

うつ病がある人の方が運動の効果は大きく、その運動内容としては以下が効果的と示されました。

  1. チームスポーツ
  2. 自転車
  3. エアロビックスやジム

このようにみると、コミュニケーションをとりながら行う運動の効果が高いといえるのかと思います。ソーシャルディスタンスの観点では、このような運動は難しい状況かと思います。

ですがどのような種類の運動であっても、運動している人は運動していない人よりも、メンタルが良好に保たれているという結論が得られています。ウオーキングなどに比較すると、ヨガや太極拳などのマインドフルな運動も効果的といわれています。また家事も多少の効果がある…という結果でしたが、世の男性にとっては、奥様に知られたくない情報かもしれません…

実際に私の患者さんが取り組まれている運動としては、

  • 自宅でできるような運動:踏み台昇降・トランポリン・エアー縄跳び・オンライン運動プログラム・筋トレなど
  • 密にならないような外での運動:ウオーキング・ジョギング・庭いじりなど

以上のようなことがありました。

運動の時間としては、

  • 1回45分
  • 週3~5回

がもっともストレス低減に効果的という結果になっています。こちらの研究では、運動のやりすぎはメンタルヘルスの悪化につながるという結果も出ています。

  • 週6時間以上
  • 月23回以上
  • 90分以上

ただし、運動のやりすぎがメンタルに悪影響とは結論はでておらず、メンタル不調の方が運動をしすぎる傾向があるのかもしれません。いずれにしても、「疲れすぎない範囲の運動習慣をもつ」ことは、健康的なメンタルヘルスを維持するために有用だといえるでしょう。

オンライン診療は利用できる?うつの相談方法

新型コロナウイルス感染症の流行をうけて、健康相談の無料オンラインサービスなどがあるかと思います。病院への受診に抵抗がある方は、まずはご相談いただいても良いかと思います。

お薬が必要な状態ですと、現状ではオンライン診療などでは対応ができなくなっています。オンライン診療による初診が認められましたが、こころのお薬(向精神薬)は処方できないルールとなってしまいました。悪用されてしまうリスクがあるためです。

このため一歩踏み込んだ心の治療を行っていくためには、心療内科や精神科に受診する必要があります。こころのお薬には抵抗がある方も少なくないかもしれません。ですが出口を見据えて適切に使えば、お薬はとても有効です。それと同時に、お薬だけではこころの治療は限界があります。お薬をうまく使いながら、専門家と二人三脚で回復を目指すことが大切です。

感染に対して抵抗があるかもしれませんが、心身の健康が悪化してしまうことを避けなければなりません。「何とかなる感覚」が薄れてしまっていたり、本来の自分を失ってしまって支障が大きくなっているときは、お近くの心療内科・精神科にご相談ください。

抗うつ剤について詳しく知りたい方は、抗うつ剤のページをお読みください。
うつ病について詳しく知りたい方は、うつ病のページをお読みください。

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