妊娠・授乳についてこころみ医学

妊娠へのお薬の影響が気になる方へ

「夫が薬を飲んでいるけど、妊娠への影響はないの?」という質問を受けることがあります。

男性がお薬を飲むことで、妊娠へは何か影響が出るのでしょうか?

ここでは、男性がお薬を飲んでいるときの妊娠への影響について、お伝えしていきたいと思います。

※妊娠へのお薬の影響全般が気になる方は、妊娠へのお薬の影響とは?よくある7つの疑問をお読みください

男性の飲んだお薬はどのように妊娠へ影響するのか

男性のお薬で妊娠への影響を考えなければいけないのは、

  1. 精子への影響
  2. 精液を通しての女性への影響
  3. 副作用による性機能への影響

の3つです。それぞれについてみてみましょう。

精子への影響

「お薬を飲むと異常な精子ができてしまうのでは?」。そのような不安をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんが、お薬の精子への影響は、特別に心配する必要はありません

仮に問題ある精子が増えたとしても、それらは卵子までたどり着けず受精しないのが通常です。妊娠率の低下にはつながるかもしれませんが、赤ちゃんへの影響はないと考えても大丈夫です

また、精子の状態には、お薬以上に睡眠や食事などの生活習慣による影響が大きくかかわります。生活習慣を整えるだけでも精子の質は変化するのです。

お薬を飲まない健康な男性でも、射精される精子は 100%完璧なわけではなく、20%程度は何らかの異常が見られるといわれています。

精液を通しての女性への影響

お薬の中には、精液に溶け出してしまうものがあります。それを聞くとパートナーの女性への影響が心配になるかと思いますが、ほとんどのお薬はごく微量しか溶け出さず、女性への影響は無いと思っても大丈夫なレベルです。

精液から女性への影響を考えなければいけないのは、

  • サリドマイド(®サレド)やレナリドミド(®レブラミド)などの癌治療薬
  • リバビリン(®レベトール)というC型肝炎治療薬

など、ごく一部のお薬だけです。

副作用による性機能への影響

これまでお伝えした通り、男性が飲んだお薬が女性や赤ちゃんに影響することはほぼありません。

しかし、精神科のお薬には性機能障害の副作用がでやすく、性欲低下・勃起障害・射性障害などがみられることがあります。とくに抗うつ剤のSSRIに分類されるジェイゾロフトやパキシルでは、7~8割ほどの方に性機能障害の副作用が現れます。

「性」の悩みは、打ち明けづらいかとも思うのですが、妊娠を希望される方には重要な問題です。お薬の飲み方や種類の変更などで対応できることもありますので、悩んでいるときは主治医に相談してください

※抗うつ剤による性機能障害についてくわしく知りたい方は、抗うつ剤の性欲低下・性機能障害と5つの対策/『副作用としての性機能障害の抗うつ剤での比較をお読みください。

まとめ

男性が飲んでいるお薬が、赤ちゃんや女性に与える影響はほぼないと考えて問題ありません。精液への移行で注意しなければいけないのはごく一部の特殊なお薬のみです。

精神科のお薬で妊娠への問題になりやすいのは、抗うつ剤SSRIなどに多くみられる性機能障害の副作用です。性の問題は打ち明けづらいかもしれませんが、重要な問題です。悩んでいるときは主治医へ相談してみてください。

執筆・監修

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こちらの記事は、下記の精神科医が執筆・監修しております。

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大澤亮太

  • 役職:医療法人社団こころみ理事長/(株)こころみらい代表産業医
  • 資格:精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医
  • 学会:日本精神神経学会

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