【専門家が解説】YG性格検査(矢田部ギルフォード性格検査)

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YG性格検査(矢田部ギルフォード性格検査)とは?

YG性格検査は、多くの質問項目から性格傾向を評価していく心理検査になります。YGとは、考案者の矢田部・ギルフォードの頭文字をとっています。

YG検査は、アメリカ南カリフォルニア大学心理学教授のGuilford教授が考案したギルフォード性格検査をモデルとし、京都大学の矢田部教授が日本の文化環境に合うように作成された検査になります。

120問の質問に答えることにより、性格の特性を判断していく検査になります。性格を構成する12の因子の強弱を測定することにより、その人の持つ性格特性を客観的に判断することを目指した検査です。

12の尺度から性格特性を分類し、A・B・C・D・E5つに分類し、その人の持つものの考え方やとらえ方、人との関わり方などの傾向を知ることができます。

YG性格検査は、尺度と性格分類をグラフ化することによって、見やすくわかりやすく解釈できます。また検査が容易であるにも関わらず、その人の根本的な性格傾向が判別しやすいということがあげられます。

ですから臨床現場のみならず、教育、または採用試験などの分野でも広く使用されている心理検査と言えます。

YG性格検査の目的

YG性格検査では、その人の性格特性を知ることを目的としています。性格特性とは、本人が普段から持ち合わせた考え方や人間関係、社交性などになります。

たとえば、会議やグループ活動、友人間でもあまり発言をせず、リーダーシップをとることもない人もいます。反対に親しい友人かどうか関係なく気楽に発言し、グループや会議でリーダーシップを発揮するという傾向の人もいます。

YG性格検査では12の尺度に分けて性格特性をはじき出し、5つのタイプに分類してデータ化したグラフを作成することにより、その人が持ち合わせている社交性や気分の変調の程度、協調性などを客観的に判断します。

性格傾向は心身の状態や周囲との適応に影響を及ぼす大きな要素ですので、YG性格検査によって傾向をつかめることで、よりよい治療を探ることができます。

このような臨床現場のみならず、教育現場、また企業の採用試験でも実施され、本人の向いている部署や仕事の仕方などを判断する目的にも使用されています。

YG性格検査の料金

YG性格検査は、健康保険で請求できる心理テストの一つです。

認知機能心理検査に分類されていますが、YG性格検査は簡易検査に分類されます。

心理検査は保険請求の際に点数の差がありますが、それは検査の複雑さに関係しています。

YG性格検査は簡易な検査に括られていますが、問題数が120問と患者さんの記入やスタッフの祭典に時間がかかる検査になります。しかしながら患者さんが用紙を読んで、自らが〇を付けるために簡易となっています。

ですからYG検査は、簡易検査として80点の診療点数となります。80点は800円に値し、3割負担の場合は窓口で支払う際は240円になります。

医師やカウンセラーが自由診療で診察をする際は別途料金はかからないケースもありますが、各機関のシステムがありますので、気になる場合は実施を検討している医療機関に直接ご確認ください。

YG性格検査の検査をする際の注意点

YG性格検査は、性格特性を判断する検査になります。ですが、性格が悪いとか良いとかを判断する検査ではありません。

本人にとって理想の性格などはあるかもしれませんが、それを検査用紙に記入しては本人の性格とは違ってしまいます。

もし抑うつ傾向が強い性格特性であるのにそれは良くないと思い、本来の自分と違うところに〇をつけてしまっては、正しい治療がスタートできません。

また採用試験で社交的な方が良いと思い、社交的にみられるところに〇をつけたことにより、合わない職種につき苦労するかもしれません。

仮に控えめで発言力がないというのは、別に悪いことではありません。状況によってはそのような人が望まれることはあります。決断力があるのが良いと思うかもしれませんが、なかなか決断せず慎重に物事を進めていく方が望まれる場合もあるかもしれません。

YG性格検査で明らかに偏りがあり、そのため何らかの心の病を呈しているのなら、その部分を少し弱めたりするような心理療法を行うことはありますが、あくまで本人の性格特性まで変えてしまうようなことはしませんし、できません。

YG性格検査の結果は、本人の性格特性を見ながら治療方針を決めたり、本人の思考や考え方を基に仕事や教育をより円滑に進めていくために活用します。

YG性格検査の検査・採点方法

YG性格検査は120問の問題からなる質問用紙記述型の性格検査です。

質問を読み、当てはまるものにしるしをつけます。

YGテストの記入方法についてまとめました。

このようにして質問に対し、しるしをつけています。

検査にかかる時間は、30分ほどを予定しています。小学生用、中学生用、高校生用、一般成人用の4パターンがあり、各年齢に応じて該当する検査を受けることができます。小学生用は96問です。今回は成人用をモデルにしています。

採点方法は、しるしの箇所を合算して検査の結果をグラフ化し、本人の性格特性からなる分類を判断していきます。

YG性格検査でわかること

YG性格検査での性格特性を測定する12の尺度は、以下のようになります。

  • D尺度(抑うつ性)悲観的、落ち込みやすさ
  • C尺度(回帰的傾向)気分の変わりやすさ、情緒の安定
  • I尺度(劣等感)自分への自信、過小評価傾向など
  • N尺度(神経質)心配性、気にしやすさ、打たれ弱さの程度
  • O尺度(客観性)客観的に物事を判断できるか
  • Co尺度(協調性)人との同調、猜疑心の強さなどの程度
  • Ag尺度(攻撃性)物事や人に対する攻撃や衝動性の程度
  • G尺度(一般的活動性)心身両面の活動力
  • R尺度(呑気さ)気軽さ、決断力など
  • T尺度(思考的外向)思考のおおざっぱさ、浅はかさ
  • A尺度(支配性)リーダーシップの高さ。(⇔従順)
  • S尺度(社会的外向)対人関係における社交性

YG性格検査では、12の尺度から6つのグループに分類します

【情緒不安定因子】

  • D尺度(抑うつ性)悲観的、落ち込みやすさを見る尺度
  • C尺度(回帰的傾向)気分の変わりやすさ、情緒の安定を見る尺度
  • I尺度(劣等感)自分への自信、過小評価傾向などを見る尺度
  • N尺度(神経質)心配性、気にしやすさ、打たれ弱さなどの程度を知る尺度

【社会不適応性因子】

  • O尺度(客観性欠如)客観的に物事を判断できるかを見る尺度
  • Co尺度(協調性欠如)人との同調、猜疑心の強さなどの程度を知るための尺度
  • Ag尺度(愛想の悪い)物事や人に対する攻撃や衝動性の程度を知るための尺度

【活動性因子】

  • Ag尺度(愛想の悪い)物事や人に対する攻撃や衝動性の程度を知るための尺度
  • G尺度(一般的活動性)心身両面の活動力を知るための尺度

【衝動性因子】

  • G尺度(一般的活動性)心身両面の活動力を知るための尺度
  • R尺度(呑気さ)気軽さ、決断力などを知るための尺度
  • R尺度(呑気さ)気軽さ、決断力などを知るための尺度

【非内省性因子】

  • R尺度(呑気さ)気軽さ、決断力などを知るための尺度
  • T尺度(思考的外向)思考のおおざっぱさ、浅はかさを見る尺度。逆は慎重、思索的

【主導性因子】

  • A尺度(支配性)リーダーシップの高さを見る尺度。逆は従順
  • S尺度(社会的外向)対人関係における社交性を見る尺度。逆は他人との触れ合いを嫌う

それぞれの因子を分類した後、5つの型にプロフィール化して、性格特性を見ていきます。

A型(平均型)

全体的に平均的。特に問題もなく過ごせるタイプ。もっとも多い性格とも言えます。

平均的にどれもバランスが取れているので、どの方面でもそつなくこなせます。やや面白味にかけるかもしれませんが、平均的で平凡というのは社会や環境に適応しやすい性格特性とも言えます。

B型(不安定不適応積極型)

情緒面に不安定な傾向あり、性格的には活動的外向的なのですが、社会的不適応をおこしやすくもあります。

自分にとって不利益なことがあったりすると不安定になることもありますが、積極的で外向的な面が目立つので、良い方向性を見つけられれば、優れたリーダーシップを発揮する可能性が高いです。

C型(安定適応消極型)

控えめでおとなしく、あまり積極的に発言はしませんが、情緒が安定した穏やかな人です。


活動性が低く消極的なので、意見を言わないなどといった傾向はありますが、真面目で確実、勤勉。持続性や安定性が必要な場合は、縁の下の力持ちになってくれます。

D型(安定積極型)

情緒が安定していて、社会適応力も高いです。活動的、積極的外交的な部分が目立ちます。

このため、組織の中でリーダーシップをとる傾向があります。しかしながら性格特徴が偏ってしまうと、独善的で独裁者型になるので注意が必要です。

E型(不安定不適応消極型)

情緒が不安定になりがち。非活動的で内向的な傾向。

環境や本人の素質などで問題が起きてしまった場合、自分の殻に閉じこもってしまうため、引きこもりなどになることが多いです。

しかし芸術的なセンスや技術的な能力がある場合、優れた能力を発揮することがあります。

性格は良し悪しではありません

「性格が良い」「性格が悪い」ということを多くの方が気にされるかと思います。

YG性格検査は、

  • A型(Average Type):平均型
    B型(Black List Type):不安定不適応積極型
    C型(Calm Type):安定適応消極型
    D型(Director Type):安定積極型
    E型(Eccentric Type):不安定不適応消極型

といったように、ABCDEの頭文字をとって語られることが多いです。すると、B型やE型は、「悪い性格」と思われるかと思います。

YG性格検査は、けっして性格の良しあしを調べる検査ではありません。性格特性は誰しもあって、それを理解するために行う検査になります。

どのような性格傾向も良い側面もあれば、悪い側面もあります。環境によっても、その特性は良くも悪くも変化します。情緒不安定な傾向があるといっても、必ず問題になるわけではありません。

YG性格検査に結果は、臨床現場ではその人の性格特性に合わせた適した治療をするために生かしていきます。企業などの場合は、より適した職種を探すための参考にしていきます。

ですから検査は素直に自分に当てはまる項目につけてください。そしてその結果を踏まえて、今後に生かすことが大切です。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:心理検査  投稿日:2019年5月14日

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