【専門家が解説】精神科デイケア

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精神科デイケアとは?

精神科デイケアは、精神疾患を抱える方が社会復帰を目指し「こころ」と「からだ」のリハビリを行う外来治療の1つです。

治療と言っても医師と診療室で11になるわけではなく、病院などに併設されたスペースに通い、他の参加者の方と交流しながらプログラムに沿って日中を過ごします。

  • 人と上手に付き合うことができない
  • 対人交流がなく、人との関りを持ちたい
  • 日中に行くところがなく、こもりがちになってしまう
  • 生活リズムが安定しない
  • 就労、就学、復職、復学を目指している
  • 何かしたいけれど何から始めていいのか分からない

上記のように様々な思いを持った方々がデイケアを利用します。その中で、自分なりの目標をつくり、病気の回復や社会機能向上を目指していきます。

当院ではデイケア施設は運営しておらず、近隣のデイケアをご紹介させていただいております。

精神科デイケアの利用できる条件

精神疾患があり医療機関通院中の方で、以下の条件を満たす方が対象となります。

  • 主治医がデイケアの利用が有用であると判断している
  • 主治医がデイケアの利用が可能である病状と判断している
  • 単独通所が可能な方
  • デイケア側が利用可能であると判断した方。

一般的にはデイケア担当の医師が診察をした上で、デイケア内で受け入れ会議を行い判断することが多いです。

また、自施設の医療機関に通院している方のみ受け入れをしている所や、他院に通院中の方でも受け入れをしているところなど、条件は様々です。不明点があれば事前にデイケアに確認をお勧めいたします。

精神科デイケアの費用と自立支援医療

精神科デイケアは治療の一環ですので、健康保険が適応されます。具体的な費用はデイケアの規模やそれぞれの状態によって異なりますが、自立支援医療で1割負担の方は1800円程度が目安です。自立支援医療の方は月の上限額以上の負担はありません。

月の通所回数が多くなってくると、その分の費用負担も大きくなります。だんだんと通所回数を増やしていく方が多いことを考慮すると、精神科デイケアを利用する際には併せて自立支援医療の申請をしておくことがお勧めです。デイケア利用の相談を主治医にした際に併せて相談してみましょう。

自立支援医療の詳細については以下の記事を参照ください。

自立支援医療(精神通院医療)

また、基本的にはデイケアまでの交通費は自己負担することになりますが、交通費助成をしている地域もあります。(当院の近くであれば横浜市)お住いの役所に確認してみることをお勧めします。

精神科デイケアの時間と通所頻度

デイケアの時間は、朝から夕方までの16時間が基本です。9時~10時に開所し、15時~16時に終わるところが多いです。

デイケアの他、

  • ショートケア(午前・午後いずれかの3時間)
  • ナイトケア(夕方の4時間)
  • デイナイトケア(朝から10時間)

などが設定されている所もあり、それぞれの状態に合わせて選ぶことができます。

※施設によっては対応していない時間帯があるので注意が必要です。

基本的には週1日からの利用が可能で、時間も半日だけから利用できる施設が多いです。スタッフと相談しながら通所頻度を決めていき、慣れてきたらだんだん通所日数を増やしていきます。

精神科デイケアの活動内容

昼休みを挟んで午前と午後に分けて、デイケア独自のプログラムを行う施設が多いです。

プログラムは各デイケアや日によって様々ですが、

  • 料理、手芸、園芸、陶芸、カラオケなどの活動
  • 球技、散歩、ヨガなどのスポーツ
  • SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング/社会生活技能訓練)
  • 認知行動療法
  • 心理教育(疾患についての勉強)

など多岐にわたります。ボーリングをしたり、美術館に行く等の野外で活動したりすることもあり、季節によって誕生会やクリスマス会、日帰りバス旅行などのイベントを催している所も多いです。

プログラムは必ず参加しなければいけないわけではなく、施設内のフリースペース等で思い思いに時間を過ごすことも可能です。

昼休みには、昼食をデイケア内で取ります。午前からの通しで午後も活動する利用者に対して、昼食が提供されるデイケアも多くあります。(昼食提供がない所もあります)

精神科デイケアのスタッフと場所

精神科デイケアが受けられるのは、

  • デイケア併設の病院・クリニック
  • 保健所
  • 専門リハビリ施設
  • 保健福祉センター
  • 精神保健福祉センター

などがあります。

通院先に併設されていない場合や状態に適したプログラムが無い場合、他の場所で行われているデイケアに通うことも可能です。

一口にデイケアと言っても、規模、時間、プログラムの内容、雰囲気などは様々です。見学や体験通所もできるので、主治医と相談しながら自分に合ったデイケアを選びましょう。

スタッフは施設によって異なりますが、

  • 担当医師
  • 看護師
  • 精神保健福祉士
  • 臨床心理士
  • 作業療法士

など様々の職種のスタッフが連携を取りながら勤務をしています。

なかには、登録時に「担当スタッフ」が付くデイケアもあります。自身の担当スタッフが決まることで、デイケア内で心配事が起きた際に相談しやすくなります。

また、各々の職種の得意分野を生かしたプログラムを行っている施設も多くあります。

精神科デイケアの1日

細かなプログラムや内容は、場所によって様々ですが、一般的な精神科デイケアの1日を見てみましょう。精神科デイケアの開所時間は標準で6時間です。

  • 午前9時~10時 デイケア開始・ラジオ体操・朝のミーティング

開始時刻は午前9時から10時の所が多いようです。

まずはラジオ体操や朝のミーティングに参加します。ミーティングでは1日の予定を確認したり、係を決めたり、イベントの進行状況を報告したりします。

  • 10時~ 午前のプログラム開始

プログラムは施設や曜日によって様々です。デイケアによっては同時間帯に複数のプログラムを行い、選択性になっている所もあります。

  • 12時~ 昼食休憩

昼食と休憩は1時間ほどの所は多いです。食事は用意されている場合と、自分で持ち込む場合があります。

  • 13時~ 午後のプログラム開始

午前と同じように様々な内容のプログラムが行われます。

  • 15時~16時 清掃・終わりのミーティングなど

デイケアは6時間が基本なので、9時から始まれば15時、10時から始まれば16時には終わります。

デイケア利用の流れや手続き

デイケアを利用するときの一般的な流れや手続きをご紹介していきます。通院先にデイケアがなく、見学と体験通所を行っている施設を利用する場合をとりあげてみます。

  • デイケアに通所したい旨を主治医に相談

現在、通所可能な病状にあるか、通所することは本人とって有効かを主治医が判断します。病状によっては、デイケアを利用するべきでないこともあります。まずは主治医に確認しましょう。

  • デイケア探す

インターネットで調べる他に、主治医から情報をもらったり、役所の障害福祉課などに聞いてみましょう。また、通院先にソーシャルワーカーがいる場合は、ソーシャルワーカーに相談するのがスムーズです。

  • 候補のデイケアが決まったら、デイケアへ連絡を入れて見学の設定を行う

施設によっては見学なしで体験通所が始まるところや、体験通所なしで見学後に登録になるところもありますので、問い合わせた際に流れを確認しましょう。

また、この際にどのタイミングで主治医からの診療情報提供書と指示箋が必要になるかも聞いておきましょう。

  • デイケア見学に行く

この時に、デイケアの説明を聞いたり、状況把握の為にスタッフと簡単な面談を行うことが多いです。引き続きデイケア利用の意思がある場合は、体験通所日の設定も行います。

  • 体験通所を行う

体験通所の回数を~回と定めている所もあれば、特に決めていない機関もあり様々です。

  • 体験通所と並行して、デイケアの担当医師の診察を受ける

主治医の許可だけでなく、デイケア施設側の担当医師の診察を受ける必要があります。デイケア利用が適切かどうか、デイケア担当医が判断していきます。

体験通所での様子や医師の診察を基に、デイケアでの受け入れ検討が行われます。

デイケア利用手続きにあたり必要な書類

デイケア利用が必要である旨を記載する医師の指示箋と、デイケア担当医師の診察を受けるにあたっての診療情報提供書が必要となる施設が多いです。

病院間のやりとりで済ませてくれる場合もあれば、自身で主治医に記載依頼が必要な場合もあります。

精神科デイケアのメリット

  • 居場所や仲間が得られる

心の病気の治療中は仕事や学校に行けないことが多いため、どうしても社会から孤立してしまいます。

精神科デイケアでは、同じように病気を抱えている人とのつながりができ、病気を理解しているスタッフが見守ります。居場所や仲間が得られることで社会との接点が増えて生活に張りが出て、充実感につながることもあります。

  • 生活リズムが安定する

デイケアでは学校のように時間が決まっているので、参加すれば自然と生活リズムが整います。家に引きこもりがちになったり行く場所がないと、生活リズムを自分で律することが難しくなります。昼夜逆転などから体調を悪化させてしまう人もいます。

  • 対人スキルの向上

社会生活をする上で人間関係を築いていくことは大切なことです。

心の病気を抱える方は人との関りを苦手としている場合が多く、病気が発症した原因として対人関係のストレスが関与していることも珍しくはありません。

自宅に引きこもりがちになったり、行く場所がないことにより、自然と家族以外との交流がなくなってしまうこともあります。デイケアを通して対人スキルの向上・回復をさせることが大切な治療の1つになります。

デイケアでは、専門スタッフの監督の元で他の利用者やスタッフと交流ができます。トラブルや悩みが発生したときには、相談しながら問題解決に取り組むことができます。そのような過程を踏む中で、対人スキルの向上や回復をしていくことができます。

  • 社会技能の向上

デイケアでは、プログラムを通して社会技能向上を図ることもできます。例えば、料理のプログラムを通して調理の段取りや技術を学んだり、SSTのプログラムを通して苦手とする場面においての関わり方や考え方を学んだりすることができます。

デイケアから始め、作業所や就労移行支援事業所への通所を目指したり等、ステップアップしていくことも可能です。

  • 相談しやすい環境ができる

精神科デイケアには規模にもよりますが、精神科医、看護師、臨床心理士、作業療法士、精神保健福祉士など様々な専門職が勤務しています。デイケア中のことや病気のことで問題があったとき、診察以外に相談することができます。

また、利用者の家族同士が交流できる家族会を設けているデイケアもあります。利用者と同様、家族も日々の相談ができずに心のうちに貯めこんでいる場合があります。

上記のように、本人も家族も相談の場が増えるということはデイケアのメリットです。

  • 家族と互いに離れる時間を作ることができる

家での時間が増えると、家族であっても、お互いにイライラしてぶつかってしまうこともあります。

デイケアに通うことで家族以外との接点ができ、お互いの距離が開くことで余裕が生まれ、ぶつかる機会が減ることもあります。

デイケアごとの様々な特色

今まで紹介してきたのは一般的なデイケアの概要についてです。デイケアの中には、

  • 10代の児童、思春期の方の利用に特化したもの
  • 発達障害の方の利用に特化したもの
  • アルコール依存の方の利用に特化したもの
  • 離職者の方向けの就労プログラムに特化したもの
  • デイケア利用にはまだ早い方向けのプレデイケアとしての役割に特化したもの

など、さまざまな種類のデイケアがあります。

そもそもの対象グループを分けて別で運営している場合もあれば、普段は一般デイケアと共に活動をして特定のプログラムのみグループ分けしている場合もあります。

また、うつ病などの気分障害により休職中の方を対象とし、復職を目指していくリワークプログラムをデイケア内で行っている機関も数多くあります。

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医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。

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執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:制度・サービス  投稿日:2019年5月11日

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