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うつ病の診断基準とは?

  • 更新日:2020年08月12日 23:53
  • 作成日:2020年08月12日 23:53

うつ病の診断方法とは?

うつ病の診断はどのようにしていくのでしょうか?

うつ病の診断方法として、近年は光トポグラフィ検査などが行われています。しかしながら参考程度になるにすぎず、これだけで診断することはできません。(※診断精度が高いのならば、光トポグラフィ検査は積極的に推奨されて、全例行われることになるでしょう。)

うつ病は目に見えないので、本人からの問診を中心に判断していかざるを得ません。ですから、質問の仕方や評価の仕方は診断する医師次第なので、医師によって診断がかわってしまうこともあります。

これらの不確定さを少しでも減らすために、欧米を中心に診断基準による診断がすすめられています。厳密には、診察の方法も統一して(構造化面接)、診断基準をチェックしていくように診断することがすすめられています。このような診断の仕方は、マニュアルに従って診断をつけていくので、操作的診断といいます。

このような診断基準は、診断のブレをなくすためにも必要不可欠です。ですが、うつ状態に陥るのには様々な原因があります。これを探っていくのは、難しくもあり同時に非常に重要な部分となります。それによって治療の方向性も変わってくるからです。

ですから医師が診断を考えていくとき、患者さんが不調になる背景は何かを探っていきます。「外因性・内因性・心因性」といった不調の原因に分けた診断も行っていきます。その原因を意識しながら治療をすすめていきます。

うつ病の診断基準

うつ病を診断していくには、患者さんが感じている主観的な情報が最も重要になります。このため、一定の診断基準を設け、それに当てはまるか当てはまらないか、といった観点から診断を行っていくのが欧米での流れです。

診断基準には、アメリカの精神医学会が作成した「DSM」とWHOが作成した「ICD」のふたつが存在します。

 

DSM‐Ⅴ

アメリカの診断基準であるDSMを紹介します。DSMは、順番にみていくと誰でも同じように診断ができるように意識した診断基準になります。

2013年にDSM‐Ⅴが発表されましが、うつ病に関しては大きく以前と診断はかわっていません。

DSM‐Ⅴでは、双極性障害が明確に他の疾患とされた点と、死別によるストレスに対するうつ状態もうつ病に含められた点が異なります。

以下のうち、①と②のどちらかに当てはまり、合計5つの症状が2週間以上続く場合、うつ病と診断されます。

  1. 自分の言葉か、まわりから観察されるほとんど毎日の抑うつ気分
  2. ほとんど毎日の喜びの著しい減退
  3. 著しい体重の減少、あるいは体重増加、ほとんど毎日の食欲の減退または増加
  4. ほとんど毎日の不眠または過眠
  5. ほとんど毎日の精神運動性の焦燥または制止(他者によって観察可能)
  6. ほとんど毎日の易疲労性、または気力の減退
  7. ほとんど毎日の無価値観、または過剰であるか不適切な罪責感
  8. 思考力や集中力の減退、または決断困難がほとんど毎日
  9. 死についての反復思考、反復的な自殺念慮、または自殺企図

ICD-10

WHOの診断基準としてICD―10があります。この診断基準は、症状のチェックができるようになっていますが、典型的なケースを意識して症状が記述してあります。

ですから、病気のイメージも大切にしている診断基準といえます。

抑うつ気分・興味と喜びの喪失・易疲労感の増大のうち2つ以上の症状があり、かつ以下の症状の2つ以上が2週間以上続く場合、うつ病と診断されます。

  1. 集中力と注意力の減退
  2. 自己評価と自信の低下
  3. 罪責感と無価値感
  4. 将来に対する希望のない悲観的な見方
  5. 自傷あるいは自殺の観念や行為
  6. 睡眠障害
  7. 食欲不振

日本の伝統的な診断方法

うつ状態となるには様々な原因があります。これを探っていくことは、治療を考えていく上では非常に重要です。日本では伝統的に、原因を意識した診断がおこなわれてきました。客観的に診断をくだせるように診断基準も大事なのですが、治療を行っていくには伝統的診断も重要です。

不調の原因に応じて分けた診断として、

  • 外因性うつ病
  • 内因性うつ病
  • 心因性うつ病

があります。

外因性うつ病とは、脳の構造や外見から明らかな異常があるうつ病を意味します。例えば、事故などで頭部外傷や認知症、薬剤性のうつ病となる場合などです。

内因性うつ病とは、構造的な異常がはっきりはしませんが、遺伝や素質が原因となって脳の機能的な異常があると考えられるうつ病を意味します。ストレスの蓄積でうつ病になっていく従来のうつ病は、内因性うつ病と考えられています。その他に、統合失調症などの脳の機能的な異常による病気によるものなどがあります。

心因性うつ病とは、心理的なきっかけがあってうつ病を意味します。環境の変化や悩みごとや不安などが引き金になって発症するうつ病です。

「外因性」ですと、外因を取り除かないといけませんね。「内因性」ですと、適切なお薬をちゃんと使わなければいけません。「心因性」ですと、精神療法的なアプローチが必要になることが多いです。

他にも、「神経症性うつ病」や「抑うつ神経症」といった診断がされてきました。これらは、現在では気分変調症や全般性不安障害などと診断されることが多いです。不安が強く、落ち込みが慢性的に続くことが多いです。

うつ病と抑うつ状態の違い

抑うつ状態やうつ状態という診断をされている方もいらっしゃるかともいます。医師が「うつ病」と診断せずに「うつ状態・抑うつ状態」と診断するには、いろいろな場合があります。

うつ状態や抑うつ状態とは、落ち込みがひどい状態を指します。その原因が何かは問わず、あくまで「うつの状態にある」ということを示しています。一方でうつ病と診断する時は、ストレスが蓄積していく中で落ち込みがひどくなってしまった病気(典型的なうつ病)を意味します。

医師が「うつ状態・抑うつ状態」と診断を付ける時は、以下の3つです。

  1. 本質的な原因が他にある場合
  2. うつ病と明言すると不都合がある場合
  3. 純粋なうつ病とは異なる場合

本質的な原因が他にある場合

ストレスの蓄積の本質的な原因が他にある場合、うつ状態・抑うつ状態と診断することがあります。

診断基準を満たしているならば、「うつ病を合併している」と考えるべきです。しかしながら治療にあたっては、うつ状態の改善だけでなく、本質的な原因を治療していく必要があります。

このため、あくまで二次的なものであるとはっきりさせるために、うつ病とは診断しない場合があります。

うつ病と明言すると不都合がある場合

うつ病と明言すると不都合がある場合もあります。患者さんが不調にいたった背景は、1回の診察だけで判断できるものではありません。

その場合、暫定的に診断をつけて少しずつ背景を探っていく場合があります。患者さんにとっても、うつ病という診断は重たくなってしまうこともあります。例えば会社に診断書を提出するにあたって、うつ病という診断は偏見を生む可能性もあります。

純粋なうつ病とは異なる場合

純粋なうつ病とは異なる場合があります。

近年では、うつ病の診断基準は満たしているけれども従来のうつ病とは異なるケースが多くなってきています。

そのような場合に、うつ病という診断はつけない場合があります。

まとめ

うつ病の診断方法としては、診断基準による診断と、うつ病の原因から考えていく診断があります。

診断基準には、アメリカの精神医学会が作成した「DSM」とWHOが作成した「ICD」のふたつが存在します。

DSM‐Ⅴでは、「抑うつ気分or興味喜びの減退を含む、合計5つ以上の症状」が2週間以上でうつ病と診断します。

ICD-10では、「抑うつ気分・興味と喜びの喪失・易疲労感のうち2つ以上+その他の症状2つ以上」が2週間以上でうつ病と診断されます。

「外因性うつ病・内因性うつ病・心因性うつ病」といった不調の原因に分けた診断があります。

「うつ状態・抑うつ状態」とは、さまざまな原因で落ち込みがひどい状態であることをさしています。「うつ病」とは、ストレスの蓄積が原因で落ち込みがひどくなっている病気のことを意味しています。

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