過眠症こころみ医学

【精神科医が解説】過眠症の症状・診断・治療

  • 更新日:2019年09月07日 17:41
  • 作成日:2019年10月07日 22:00

過眠症とは?

過眠症は日中に強い眠気が続き、生活に支障をきたす睡眠障害です。不眠症に比べると「病気」と認識されることが少なく、「眠いのはやる気がないだけ」「気合が足りない」などと誤解されてしまうこともあります。

しかしながら、過眠症は脳の睡眠中枢・覚醒中枢の異常が引き起こす「病気」です。気合で何とかなるものではないため、努力をしても改善しない眠気で困っているときは適切な診断と治療が勧められます。

過眠症にはどのような種類があるのでしょうか?その種類・症状・原因・治療方法などをご紹介していきます。

過眠症の症状

「過眠」とは、日中に強い眠気が続き、仕事・学校・家事などに支障をきたしている状態です。

とはいえ、日中に眠気を感じることは誰にでもありますよね。そのため病気かどうかの判別が難しいのですが、

  • 日中に耐えがたい眠気があり、実際に寝てしまうこともある
  • 十分な睡眠時間(目安は7時間以上)を取っているのに眠い
  • 眠気を誘うような原因が思い当たらない
  • 眠気をさます努力をしても抵抗できない
  • 日中の眠気によって生活に支障が生じている
  • 耐えがたい眠気は少なくとも1週間に3回以上起きる

これらを満たした状態が続いているときは、過眠症または、他の睡眠障害や病気が原因の病的な眠気の可能性があります。

 

睡眠不足や過労などがあれば、日中に眠くなるのは自然なことです。ポカポカとした陽気に退屈な作業をしていたり、満腹になったりして居眠りをするのは健康な人でもよくあることです。

しかし、過眠症からくる病的な眠気はそのような原因が見当たらず、「眠ってはいけない」と頑張っても抵抗することができません。

そのため、

学業に集中できず成績が落ちる

  • 仕事でミスが増える
  • 遅刻や欠席が増える
  • 事故などのリスクが高まる
  • 周囲の人に「やる気がない」と誤解されてしまう

などの問題が生じてしまいます。

過眠症の診断とチェック

過眠症をしっかりと診断するためには、ビデオ撮影をしながらの終夜ポリソムノグラフィ検査が必要になります。1泊入院による検査で、睡眠中の脳波や筋肉の状態をはかる機械を取り付けて眠り、ビデオ撮影もして睡眠中の様子を確認していきます。

そもそも過眠症かどうかを判断する1つの目安として、補助的なチェックテストなどもあります。

過眠症の判定に用いられるチェックテストのうち、ここでは主観的な眠気を評価するエプワース眠気尺度(ESS)をご紹介します。

 <エプワース眠気尺度(ESS)>

①~⑧の状況で、どのくらい眠ってしまいやすいかを4段階で評価します。

  1. 座って読書をしているとき
  2. テレビを見ているとき
  3. 会議や劇場など、人が大勢いる場所で座っているとき
  4. 人の運転する車に1時間以上続けて乗っているとき
  5. 午後、横になって休憩をとっているとき
  6. 座って人と会話しているとき
  7. 昼食後静かに座っているとき(飲酒はしていない)
  8. 車の運転中、渋滞や信号で一時停止しているとき
  • 眠ってしまうことはほぼない…0
  • ときどき眠ってしまう…1
  • しばしば眠ってしまう…2
  • ほとんど眠ってしまう…3

となります。これらを合計し、11点以上だと過眠症が疑われます。

過眠症の原因と種類

過眠症を大きく分けると

  • 中枢性過眠症(脳の睡眠・覚醒コントロール機能に異常がある)
  • 2次性過眠症(睡眠の質や他の病気によって日中の眠気が生じる)

2種類に区別されます。

中枢性過眠症は、脳の睡眠・覚醒の機能に異常がおき、夜間の睡眠時間にかかわらず、日中に強い眠気が生じてしまいます。代表的なものには、

  • ナルコレプシー
  • 特発性過眠症
  • 反復性過眠症

があります。

これらの過眠症では脳の覚醒・睡眠中枢に問題があるため、夜間の睡眠や生活習慣の改善を行っただけでは日中の眠気がおさまりません。治療のためには適切なお薬の使用が必要になります。

一方、2次性過眠症は、他の病気や熟眠障害、薬の副作用、睡眠リズムの乱れなどで日中の眠気が生じてしまう状態です。この場合は、原因となっている病気の治療や、お薬の変更などが必要です。

過眠を生じやすい病気の代表は、

  • 睡眠時無呼吸症候群(SAS
  • うつ病

です。

ナルコレプシー

シーンを選ばず急な眠りに落ちてしまうことをくり返す過眠症で、「眠り病」とも呼ばれます。

日本人には比較的多く見られる中枢性過眠症の代表です。大切な会議中・食事中・会話中・車の運転中など、普通では考えられないときにでもストンと眠り込んでしまい、場合によっては重大な事故につながる可能性もあるため、早期の治療が勧められます。

睡眠発作のほか、興奮などの感情が動いたときに筋肉が脱力したり、金縛りや入眠時の幻覚が増えたりすることもあります。

詳しく知りたい方は、ナルコレプシーの症状・診断・治療をお読みください。

特発性過眠症

日中に続く強い眠気によって集中力や意欲が低下し、学業や仕事に支障をきたしてしまう過眠症です。

夜間の睡眠時間は十分にもかかわらず、日中の眠気が続きます。頭痛、胃もたれ、めまいなどの自律神経症状がみられることもあります。

ナルコレプシーのようにストンと眠ってしまうことはありませんが、仮眠をとっても眠気が取れず、一度眠るとなかなか起きることができません。主に10代~20代の若い世代で発症します。

詳しく知りたい方は、特発性過眠症の症状・診断・治療をお読みください。

反復性過眠症

1日中眠る傾眠期と、正常睡眠期を不定期でくり返す過眠症です。普段の睡眠は正常ですが、傾眠期に入るとほとんど眠っているような状態が続きます。

主に10代で発症し、男性に多い特徴がありますが、全体の数は少なくめずらしい病気です。

詳しく知りたい方は、反復性過眠症の症状・診断・治療をお読みください。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中の呼吸に障害がおき、いびきをかいたり、一時的に呼吸が止まってしまう病気です。睡眠が浅くなるだけでなく、心臓にも負担がかかります。

睡眠時間は確保されているため患者さん自身には自覚がなく、「眠っているはずなのに昼間眠い」「疲れが取れない」と困っている方が少なくありません。

詳しくは、睡眠時無呼吸症候群のページをお読みください。

うつ病

意欲の低下や落ち込みが主な症状の「こころ」の病気です。睡眠の症状は不眠が現れることが多いですが、最近は過眠がみられるうつ病も増えています。

詳しくは、うつ病のページをお読みください。

その他の病気

睡眠時無呼吸症候群やうつ病以外で過眠を生じやすい病気には、

  • 甲状腺機能低下症
  • 肝性脳症
  • 慢性腎不全
  • 脳腫瘍
  • 脳血管性障害
  • 認知症
  • パーキンソン病
  • 多発性硬化症
  • 季節性感情障害
  • 双極性障害

などがあります。

お薬の副作用

様々な病気の治療で使うお薬には、眠気を誘うものがあります。

  • 抗うつ剤
  • 抗不安薬
  • 抗精神病薬
  • ドパミン作動薬
  • 抗てんかん薬

など脳に作用するお薬のほか、

  • 抗アレルギー薬
  • 風邪薬
  • 咳止め
  • 吐き気止め
  • βブロッカー
  • 経口避妊薬

など、体の治療薬にも眠気を生じるものがあります。

とくに、鼻炎などの治療で使う抗ヒスタミン作用のある抗アレルギー薬では、強い眠気がおきることがあります。

過眠症に関わる睡眠障害

何らかの原因で夜間の睡眠の質が低下すると、結果として日中に強い眠気を生じることがあります。過眠症に関わる睡眠関連障害には以下のようなものがあります。

  • レストレスレッグ症候群
  • 周期性四肢運動障害
  • レム睡眠行動障害
  • 睡眠相後退症候群

などになります。

レストレスレッグ症候群

眠ろうとすると足がむずむずとし、足を動かさずにはいられない病気です。はっきりとした原因はわかっていませんが、ドパミン機能や鉄分などの異常が考えられています。

詳しく知りたい方は、むずむず脚症候群(レストレスレッグ症候群)の症状・診断・治療をお読みください。

周期性四肢運動障害

レストレスレッグ症候群と合併することも多く、寝ている間に足をぴくぴく動かしたり、ひざ蹴りをしたり、ひじをのばしたりする状態です。

軽いものなら健康な方でもおこりますが、ひどくなってくると睡眠の質を低下させてしまいます。

レム睡眠行動障害

レム睡眠時に夢に合わせた行動をしてしまう病気です。夢に合わせて大声で寝言を言ったり、立ち上がって行動してしまったりします。

詳しく知りたい方は、レム睡眠行動障害の症状・診断・治療をお読みください。

睡眠相後退症候群

サーカディアンリズムと呼ばれる体内時計の異常です。体内時計の調整が上手くいかず、入眠の時間が後ろへずれていってしまい、日中に入眠のタイミングがきてしまう周期が生じます。

過眠症の治療

過眠症は、「何が原因になっているか」によって治療も大きく異なります。他の病気やお薬の影響によるものはそちらへの対応が必要です。

ナルコレプシー、特発性過眠症、反復性過眠症などの中枢性過眠症では、主にお薬を使った治療を行います。どの病気にも特効薬というのはありませんが、強い眠気を防止するために有効なお薬がいくつかあります。それらの中から、患者さんそれぞれの症状や生活によって合ったものを選択していきます。

また、日常の睡眠リズムや生活習慣が乱れていたり、心身にストレスがかかったりすると症状が悪化しやすいため、可能な範囲で改善を行っていきます。

中枢性過眠症の治療について詳しくは、各病気の項目にまとめてあります。

過眠症の予防

中枢性の過眠症では覚醒・睡眠のコントロールにかかわる脳の機能に異常がおこりますが、それ以外でも、生活リズムが乱れると体内時計にも乱れが生じ、過眠・不眠などの睡眠障害が引き起こされやすくなります。

とくに、

  • ストレスをため過ぎる
  • 疲労
  • 睡眠不足
  • 入眠と起床のリズムがバラバラ
  • 食生活が不規則

などの状態が続くと、過眠症がおこりやすくなります。

過眠症を予防するためには、日ごろからできるだけ入眠・起床のタイミングを一定にし、活動・休息・食事のメリハリをつけた生活を心がけることが大切です。

夜間の睡眠の質が落ちれば、特別な病気がない人でも日中の強い眠気につながります。それを続けるうちに体内時計が狂ってしまい、過眠症を発症してしまうこともあります。夜間の睡眠の質を低下させないために、

  • アルコール
  • タバコ
  • カフェイン

については見直してみましょう。

寝酒は睡眠の質を下げることがわかっています。タバコやカフェインは眠気さましに使う方も多いですが、取り過ぎると夜間の睡眠の質を下げ、日中の眠気が強くなる→タバコやカフェインの量が増える…の悪循環におちいってしまいます。

また、夜間の睡眠の質を上げるには、

  • リズム
  • 体温

を意識してみましょう。

体内時計のリズムを保つには、以下のようなことがあげられます。

  • 起床時間ある程度一定にする
  • 昼寝を短時間にする
  • 夜に光の刺激を避ける
  • 朝食をしっかりととる
  • 夜食は控える

体内時計は起床時間からスタートしています。土日と平日で起床時間に差がある方は、できれば12時間にとどめておくようにしましょう。

体内時計には、光が大きく影響を与えます。体内時計にはメラトニンというホルモンが関係していますが、日中の光はメラトニンを分泌させ、夜間の光は抑えることが分かっています。朝はしっかりと光を浴び、夜はスマホやテレビのブルーライトなどをできるだけ避ける方が体内時計に乱れが生じにくくなります。

また、朝食はからだを覚醒させるために重要です。反対に夜食は入眠を妨げますし、遅い時間にたくさん食べて眠ると内臓が働き続けるために睡眠の質が落ち、朝になっても体が重だるく眠気が続いてしまいます。

睡眠中には体温を下げてよぶんなエネルギー消費を抑えます。そのため、入眠のタイミング体温が高い状態から低下するときに、睡眠はとりやすくなります。具体的には、

  • ぬるま湯のお風呂にゆっくりつかる
  • ストレッチなどで体をあたためる
  • 日中の運動習慣をつくる
  • 寝室の環境をととのえる

などの習慣をつけると入眠しやすくなり、睡眠の質が上がります。

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