抗不安薬(精神安定剤)こころみ医学

抗不安薬(精神安定薬)の妊娠への影響が気になる方へ

「お薬を飲んでいるときに妊娠したら?」「赤ちゃんへの影響は?」女性の方は、お薬の妊娠への影響がご心配かと思います。

抗不安薬(精神安定剤)で治療中のときに予想外の妊娠がわかり、慌てていらっしゃる方もいらっしゃるかもしれません。

抗不安薬は妊娠へどのように影響するのでしょうか?
飲みながら妊娠しても大丈夫でしょうか?

ここでは、抗不安薬(精神安定剤)の妊娠への影響と、注意していただきたいことをお伝えしたいと思います。

抗不安薬(精神安定剤)の妊娠への影響は?

精神薬が妊娠へ与える影響で考えなければいけないのは、

  • 妊娠初期の服用→赤ちゃんの奇形率を高めるリスクがないか?
  • 妊娠後期の服用→産後の赤ちゃんへの影響がないか?

の2つが主です。

抗不安薬(精神安定剤)については、奇形率を高めるリスクの方はほぼ心配ないと考えられています。以前は「口唇口蓋裂(こうしんこうがいれつ)」という奇形との関連が報告されていましたが、統計をしっかりとってみると因果関係が認められませんでした。

一方、妊娠後期~直前期の服用では注意が必要です。お薬は胎盤を通して赤ちゃんにも一部伝わっていますので、赤ちゃんの筋肉が脱力した状態で生まれてきたり、お薬が急に抜けることでふるえ・こわばりなどの離脱症状が現れたりすることがあります。

いずれも早期対応すれば一時的で、後遺症が残るたぐいのものではないので過度に心配することはありませんが、出産先の担当医に服薬のことをしっかり伝えておくことが大切です。

お薬の赤ちゃんへの影響について詳しくは、妊娠へのお薬の影響とは?よくある7つの疑問をお読みください。

抗不安薬(精神安定剤)の種類による影響の比較は?

抗不安薬(精神安定剤)と言ってもいろいろな種類がありますが、種類ごとで影響は違うのでしょうか?

一般的によく使われる「ベンゾジアゼピン系」の抗不安薬(精神安定剤)で比較してみると、

  • 奇形率を高める可能性→どれも同様にリスクは低いと考えられている
  • 出産後の赤ちゃんにお薬の作用が現れる可能性→作用時間・作用の強さによって異なる

となっています。

出産後の赤ちゃんへの影響は、作用時間が短いほど離脱症状が出やすく、催眠作用や筋弛緩作用が強いほど鎮静作用が出やすくなります。

具体的には、

  • 比較的現れやすい→デパス、レキソタンなど
  • 比較的現れにくい→メイラックス、リーゼなど

抗不安薬(精神安定剤)の作用の強さの比較をくわしく知りたい方は、抗不安薬(精神安定剤)の効果と作用時間の比較をお読みください。

ガイドラインによる各お薬のリスク比較を知りたい方は、向精神薬による妊娠への影響のリスク比較をご覧ください。

妊娠中はお薬に頼らない方法も取り入れましょう!

抗不安薬(精神安定剤)は、妊娠中に飲んでも大きな影響はないと考えられてはいるものの、飲まずに済めばそれが一番です。

お母さんの精神状態が悪化してしまうことも良くはありませんので、無理は禁物ですが、不安の改善方法はお薬だけではありません。生活習慣を整えたり、呼吸法や自律訓練法、漸減的筋弛緩法なども積極的に取り入れていきましょう。

生活習慣としては、カフェインを控えたり、生活リズムを整えることなどが大切です。

お薬に頼らない不安の改善方法を詳しく知りたい方は、薬に頼らずに不安を解消する4つの方法』
をお読みください。

まとめ

抗不安薬(精神安定剤)は、現在では奇形のリスクは低いと考えられていますが、出産直前期に連用すると赤ちゃんにお薬の作用が現れることがあります。妊娠中に精神安定剤を飲まれている方は、産科の主治医に必ず伝えましょう。

無理は禁物ですが、お薬に頼るだけでなく、生活習慣の見直しや、呼吸法や自律訓練法や漸減的筋弛緩法など、お薬に頼らない方法も積極的に取り入れていきましょう。

執筆・監修

※2022年4月、田町三田院オープン!
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こちらの記事は、下記の精神科医が執筆・監修しております。

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大澤亮太

  • 役職:医療法人社団こころみ理事長/(株)こころみらい代表産業医
  • 資格:精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医
  • 学会:日本精神神経学会

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