抗うつ剤の授乳への影響とは?
- 更新日:2021年01月13日 17:26
- 作成日:2019年09月19日 22:00
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抗うつ剤を飲みながら授乳はできるの?と心配な方へ
抗うつ剤は、毎日欠かさず飲んでいくことが重要なお薬です。
抗不安薬や睡眠薬なら「授乳中はやめておこう」という選択もできますが、抗うつ剤で治療中の方はそういうわけにもいかず、授乳への影響を心配されている方も多いのではないでしょうか。
抗うつ剤を飲みながら授乳をすることはできるのでしょうか?
ここでは、抗うつ剤の授乳への影響や、飲みながらの授乳についての考え方をお伝えしていきたいと思います。
※抗うつ剤について概要を知りたい方は、『抗うつ剤(抗うつ薬)とは?』をお読みください。
抗うつ剤の授乳への安全性は?
- 多くの抗うつ剤で、授乳への安全性は比較的高いと考えられています
抗うつ剤の添付文章などをみてみると、「服用中は授乳を避けることが望ましい」「授乳をしてはいけない」となっています。
ですが、海外のお薬と授乳のガイドラインなどをみてみると、抗うつ剤による授乳への安全性は高いといわれています。抗うつ剤は母乳に出ていってしまうことは避けられないのですが、これによる赤ちゃんへの影響はほとんどないと考えられています。
製薬会社としては、おそらく大きな問題はないと推定されるお薬だとしても、母乳へ出る以上は「絶対安全」と言い切ることができず、慎重な書き方になっています。
ですので、医師の立場としても、「抗うつ剤は安全性が高いといわれているけど、リスクも踏まえて自己判断してください」と、患者さんの選択にゆだねるしかなくなってしまいます。
母乳育児には様々なメリットがあるとも言われますし、微量の抗うつ剤が母乳へ出たとしても、母乳育児のメリットの方が高いとされることもあるのです。
最終的にはお母さん自身の判断になるのですが、授乳した直後に服用して授乳時の血中濃度をできるだけ低くしたり、さらに慎重をきすなら、赤ちゃんの器官が未熟な生後2カ月の間だけは人工乳にするなど、色々な工夫によって安全性を高めていくことができます。
主治医とよく相談しながら、授乳について考えていきましょう。
※お薬を飲みながらの授乳について、詳しく知りたい方は、『お薬は授乳へどう影響するのか』を、母乳育児のメリットについて知りたい方は、『母乳育児のメリットとは?』をお読みください。
抗うつ剤の授乳への影響の比較
- ほとんどの抗うつ剤が比較的安全と考えられていますが、とくにSSRI、中でもジェイゾロフトの安全性が高いとされています。
抗うつ剤の中でもSSRIは授乳への安全性が高いと言われます。
4剤(レクサプロ、ジェイゾロフト、パキシル、ルボックス/デプロメール)を比較してみると、ジェイゾロフトとパキシルは母乳に出にくいという特徴があります。さらにジェイゾロフトの方が全体的に副作用も少ないので、「もっとも安全」とされているのです。
レクサプロは母乳への移行量は多いお薬ですが、副作用の少なさから比較的安全性は高く、ルボックス/デプロメールに関しても、とくにネガティブなリスク報告などはされていません。
薬の授乳へのリスクを示したガイドラインとは?
お薬の授乳に与える影響に関しては、アメリカの『Hale授乳危険度分類』というガイドラインがよく参考にされます。
このガイドラインでは、動物実験やこれまでの使用実績のデータなどから、L1~L5の5段階で薬剤の授乳への安全性をランクづけしています。
L1:最も安全
L2:比較的安全
L3:おそらく安全・新薬・データ不足
L4:おそらく危険
L5:危険
日本にはこのような分類がなく、お薬の添付文章などを参考にした『山下の分類』というものがあります。妊娠と授乳への影響をひっくるめて「A・B・C・E・E・E+・F・-」の8段階で表示しています。
A:投与禁止
B:投与禁止が望ましい
C:授乳禁止
E:有益性使用
E:3か月以内と後期では有益性使用
E+:可能な限り単独使用
F:慎重使用
-:注意なし(≠絶対安全)
抗うつ剤の授乳へのリスク評価比較
上にも書いた通り、ジェイゾロフトがL1でもっとも安全とされ、その他のSSRIや三環系抗うつ剤も「比較的安全」のL2に分類されています。
サインバルタやリフレックス/レメロンなどSNRIやNaSSAも安全性は高いと推定はされていますが、新しいお薬でデータが十分ではないため、L3のカテゴリーにされています。
一方、お薬の添付文書を参考にした『山下の分類』ではほとんどが授乳を避けた方がよいor授乳禁止となっていて、ガイドラインでの評価とはズレがあります。
アモキサンだけが、有益使用となっていますが、これは、古いお薬なので添付文章が厳しくないためです。
確かにアモキサンは、三環系抗うつ薬の中では副作用が少ないのですが、アモキサンよりさらに副作用の少ない新しい抗うつ剤が軒並み禁止とされているのがとても不思議です。
おそらく、時代の変化を反映しているのでしょう。
まとめ
ほとんどの抗うつ剤が授乳への安全性は高いと考えられています。
産後はそれでなくても大変な時期ですし、抗うつ剤は急にやめてしまうと、病状が悪化してしまう可能性があります。
服用のタイミングを工夫するなどのことで母乳への影響は最小限にできますので、自己判断でお薬を止めたりはせず、主治医とよく相談しながら授乳方法を考えていきましょう。
※精神科で使うお薬全般の授乳への影響について詳しく知りたい方は、『お薬は授乳へどう影響するのか』もお読みください。
執筆・監修
※2022年4月、田町三田院オープン!
磁気刺激による新たな心の治療、東京横浜TMSクリニック併設!
こちらの記事は、下記の精神科医が執筆・監修しております。

大澤亮太
- 役職:医療法人社団こころみ理事長/(株)こころみらい代表産業医
- 資格:精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医
- 学会:日本精神神経学会