抗うつ剤(抗うつ薬)こころみ医学

抗うつ剤の効果と作用メカニズム

  • 更新日:2020年08月01日 23:47
  • 作成日:2020年07月31日 03:15

抗うつ剤に期待できる効果

抗うつ剤は、うつの治療薬として作られたお薬です。効果があるためにお薬として発売されているのですが、実のところ、どうして効果があるのかはハッキリしていません。

抗うつ剤は、脳内でモノアミンと呼ばれる神経伝達物質(神経細胞間を橋渡しをする物質)を増やす作用が認められます。うつ病の患者さんではモノアミンの働きが低下してしまっており、このモノアミンの量を調整することで脳内のバランスを整え、つらい症状を改善していくことができると考えられています。

抗うつ剤はこのような考え方に基づいて、モノアミン(セロトニン・ノルアドレナリン・ドパミン)を調整するお薬になっています。

うつ病と関係するモノアミン(神経伝達物質)として、以下の3つがあげられます。

  • セロトニン(不安や落ち込み)
  • ノルアドレナリン(意欲や気力の低下)
  • ドーパミン(興味や楽しみの減退)

これらの物質と症状の関係をもう少し細かくみていくと、以下の図のようになるといわれています。

抗うつ剤の神経伝達物質と症状の関係についてグラフでまとめました。

セロトニンが減ると不安や落ち込みが強くなり、ノルアドレナリンが減ると意欲や気力が低下し、ドーパミンが減ると興味や楽しい感情を失うといわれています。

それぞれの抗うつ剤が、これらの3つの物質に作用することで効果を発揮していきます。

※このような考え方はモノアミン仮説といわれていますが、これだけでは説明がつかないことも多く、その他にも何らかの作用があるといわれています。

抗うつ剤について概要を知りたい方は、抗うつ剤(抗うつ薬)とは?をお読みください。

抗うつ剤の作用のメカニズム

抗うつ剤はこれらのモノアミン(セロトニン・ノルアドレナリン・ドパミン)を、主に2つの方法によって増加させます。

  • 分泌されたモノアミンが再吸収されるのを防ぐ作用(再取り込み阻害)
  • モノアミンを増やす作用(自己受容体遮断)

主だった抗うつ剤は、再取り込み阻害作用が中心となります。分泌された神経伝達物質は、役割を果たすと回収されます。このことを再取り込みと呼びます。この再取り込みを阻害することによってモノアミンの量を増やします。回収されずに残ったモノアミンは残って作用し続けるので、効果が発揮されるのです。

自己受容体遮断による効果が期待できるのは、

  • NaSSA:リフレックス/レメロン
  • 四環系抗うつ薬:テトラミド
  • その他:デジレル/レスリン

になります。モノアミンが神経から分泌されると、それがメッセージになって受け取る側の神経に伝えられていきます。この分泌神経には、モノアミンがちゃんと分泌されたかを監視する目をもっています。それが自己受容体です。

モノアミンがちゃんと分泌されていれば、この受容体にモノアミンがくっつきます。もう十分と認識して、モノアミンの分泌を抑制します。この自己受容体をブロックしてしまえば、モノアミンが足りてないと勘違いするので、モノアミンの分泌が増加されます。このようにして効果が発揮されるのです。

その他にも、

  • 抗ヒスタミン作用
  • 抗α1作用
  • 抗コリン作用

なども影響を与え、効果にも副作用にもなりえます。

抗うつ剤の効果のみられ方

抗うつ剤は、飲み始めてすぐに効果が実感できることは多くありません。一般的には、効果が出てくるまでに2週間~1か月ほどはかかるといわれています。

このタイムラグがモノアミン仮説だけでは説明がつかない部分になりますが、効果はジワジワ出てくる傾向にあります。不安や不眠といった症状に対しては、薬によってはすぐに効果が期待できることもあります。

抗うつ剤の効果が安定するには、お薬が常にからだの中にあって安定していることが必要です。薬を規則正しく服用していると、少しずつお薬が体の中にたまっていき、安定していきます。この状態を定常状態といいますが、グラフでイメージすると分かりやすいです。

お薬を服用すると定常状態に達します。そのイメージをグラフにしました。

ですから抗うつ剤は、規則正しく服用することがとても大切です。もしもお薬を飲み忘れてしまったら、少しずれてもいいので必ず服用してください。

抗うつ剤を飲み忘れてしまったときの対処法を考えてみましょう。

詳しく知りたい方は、抗うつ剤を飲み忘れたときの対処法とは?をお読みください。

抗うつ剤は、飲み始めに副作用が強く出てしまうことが少なくありません。ですからまずは少量から始めて、副作用が出てこないか、様子を見ていきます。多少の副作用であれば、慣れてくることがほとんどです。問題がなければ、効果を見ながら少しずつ増量していきます。

2週間をめどに効果を判定していき、十分な量まで抗うつ剤を使っていきます。効果が認められて症状が安定したら、しばらく同じ量で様子を見ていきます。

よくなるとお薬をすぐにやめたくなってしまうかもしれませんが、脳の神経伝達物質が安定するにはしばらく時間がかかりますし、治りたての時期はストレスにも弱いです。不安の病気では、無意識に苦手意識が残っています。

少なくとも半年~1年は抗うつ剤を服用していきます。そして症状が本当に安定したのちに、生活の変化が少ない時期に少しずつ減量をすすめていきます。

抗うつ剤の効果の比較

抗うつ剤のタイプをご紹介してきましたが、それぞれのタイプの中でも抗うつ剤は様々あります。それぞれの抗うつ剤の作用をまとめてみます。

抗うつ剤の効果をまとめ、比較できるようにしました。

もっとも古くからある抗うつ剤は、さまざまな物質に影響を及ぼすことがお分かりいただけると思います。これらが副作用となるのですが、効果に厚みをもたらす部分もあります。ですから三環系抗うつ薬は、ハイリスク・ハイリターンなお薬になります。

四環系抗うつ薬は、後述しますがヒスタミンの作用により眠気の強いお薬です。このため、睡眠薬として使われることの方が多くなっています。眠気とのバランスがとれれば、抗うつ効果も期待できます。

それ以外のSSRI・SNRI・NaSSAが、おおむね2000年以降に発売された新しい抗うつ剤になります。

効果という面ではNaSSAが優れていますが、ヒスタミン作用による眠気や食欲増加が強いお薬になります。効果と副作用のバランスがとれているお薬として、SSRIのジェイゾロフトやレクサプロ、SNRIのサインバルタなどが良く使われています。

抗うつ剤は効かない?

心のお薬に抵抗が強い方は少なくありません。ましてや抗うつ剤といわれると、心理的なハードルが高い方が多いです。

抗うつ剤といわれるとうつ病のお薬というイメージかもしれませんが、実際には幅広く使われています。様々な不安障害や生理前の不安定さといった精神症状だけでなく、ストレスによる胃腸症状(過敏性腸症候群)や慢性的な痛み止めにも使われることがあります。比較的安全性は高いといわれているお薬になります。

抗うつ剤の効果は、NNT(治療必要数)=5程度といわれています。これは、抗うつ剤の薬効によって5人に1人の患者さんが改善するということになります。このようにきくと、お薬は20%の人にしか効果がないと思われてしまうかもしれません。とても低いように感じてしまうかもしれませんが、これは純粋に抗うつ剤の効果だけによって改善が認められた患者さんの数になります。

抗うつ剤によって、何らかの症状の改善が認められることは多いです。それを糸口にして、少しずつ症状が改善していくことが少なくありません。

さらには、プラセボ(偽物のお薬)だけでも40%の人が良くなるといわれています。実際の診察では患者さんのお話しをもとにお薬を処方していますが、その中で精神療法的な関りを上手に行えば、その確率はもっと高まります。

もちろん、お薬に限界があるのも事実です。どのように調整しても、お薬だけではよくならない患者さんもいます。また一定の効果はあっても、回復までには至らない患者さんもいます。

現在の心の病気の治療では、お薬の効果も利用しながら改善を目指していくのが、科学的根拠のある治療となっています。うつ病に限って言えば、少なくとも6割くらいの方がお薬を通してよくなるといえます。病気や病状によって薬の必要性の度合いは異なってきますが、医師から抗うつ剤の服用を提案された方は、納得して服用していただけたら幸いです。

まとめ

まずは抗うつ剤は使って治療していくことがスタンダードとなっており、効果も期待できます。お薬のみでは効果が不十分なこともありますが、患者さんのお話を踏まえてお薬を処方するという精神療法的な関りなどによって、多くの方が回復に向かいます。

うつ病と関係する神経伝達物質として、以下の3つがあげられます。

  • セロトニン(不安や落ち込み)
  • ノルアドレナリン(意欲や気力の低下)
  • ドーパミン(興味や楽しみの減退)

抗うつ剤はこれらの物質をターゲットにして、作用を強めることで症状の改善を期待するお薬です。

抗うつ剤の効果は2~4週間ほどで徐々に認められることが多いです。お薬の濃度が安定する定常状態を維持することが重要で、1日1回飲み忘れずに服用を続けることが大切です。

抗うつ剤の種類によって作用の特徴が異なりますので、主治医と相談して、ご自身の症状に適したお薬をみつけてください。

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