抗うつ剤(抗うつ薬)こころみ医学

抗うつ剤の頭痛と5つの対策

  • 更新日:2020年08月02日 01:47
  • 作成日:2020年08月02日 01:40

抗うつ剤による頭痛の原因とタイミング

いろいろなお薬で頭痛の副作用はみられますが、抗うつ剤でも頭痛の副作用がみられます。その一方で、片頭痛の予防薬として抗うつ薬が使われることもあります。

抗うつ剤で頭痛がみられるタイミングは大きく2つあります。薬の飲み始めと、薬の減量や変更のタイミングです。それぞれのタイミングで、頭痛の原因が異なります。

抗うつ剤を飲み始めての頭痛は、1~2週間ほどすると落ち着いてくることが多いです。なぜ飲み始めに頭痛が生じるのかは正確にはわかっていません。ですが、セロトニンと頭痛は大きく関係していると考えられています。

また、薬の減量や変更のタイミングで頭痛が出てくることもあります。この頭痛は、離脱症状としての頭痛です。薬が身体に慣れてから急になくなってしまうと、身体がびっくりしてしまいます。様々な症状がみられますが、頭痛もその一つの症状としてみられます。薬を飲んでいてしばらくたってから頭痛がみられたときは、薬の飲み忘れがないか思い返してください。

抗うつ剤について概要を知りたい方は、抗うつ剤(抗うつ薬)とは?をお読みください。

抗うつ剤の副作用全体について知りたい方は、抗うつ剤によくある副作用と対策とは?をお読みください。

セロトニンが頭痛を引き起こす原因

セロトニンがどのようにして頭痛を引き起こすのかは、片頭痛の原因をみていくと推測できます。片頭痛は、セロトニンの過剰な放出が原因といわれています。セロトニンの作用で脳血管が収縮します。時間がたってこのセロトニンが分解されていくと、反動で、急激に脳血管が拡張してしまいます。

脳血管が拡張されると、周りを取り巻いている三叉神経が圧迫されます。すると、三叉神経から神経ペプチドとよばれる「痛み物質」が作られて、これが頭痛を引き起こすと考えられています。

抗うつ剤はセロトニンを増加させるお薬ですので、似たような形で頭痛が生じるのではと考えることができます。セロトニンの脳血管への影響をもう少し詳しくみてみましょう。

セロトニン1B・1D受容体が刺激されると、脳血管が収縮することがわかっています。一方で、セロトニン2・7受容体が刺激されると、脳血管が拡張することがわかっています。さらにセロトニン2A受容体では、痛覚を刺激してしまうこともわかっています。これらが複合的に作用して、頭痛が生じるのだと考えられます。

頭痛の予防薬としての抗うつ剤

抗うつ剤は、頭痛の予防薬として使われることもあります。抗うつ剤は、セロトニンを増やすお薬ですが、セロトニンの作用が安定してくると頭痛の予防効果があります。予防効果としては、大きく2つのセロトニンの働きがあると考えられます。

  • セロトニンの脳血管収縮作用
  • 下行疼痛抑制系

それぞれについてご説明していきます。

セロトニンの脳血管収縮作用

セロトニン1B・1D受容体は脳血管を収縮する作用がしっかりとしています。抗うつ薬の飲み初めは作用が不安定になりますが、安定してくると脳血管の拡張を防ぎ、それによって生じる頭痛を防いでくれると考えられています。

実際に片頭痛の予防治療としても、抗うつ剤はよく使われています。三環系抗うつ薬のトリプタノールが使われることが多く、頭痛の予防効果としては10~60mgで使う事が勧められています。

心の治療でよく使うお薬としては、抗てんかん薬やβブロッカーなどにも頭痛予防効果があるといわれています。

下行疼痛抑制系

身体に何らかの痛み刺激が加わると、その情報が脳に届いてはじめて痛みを感じます。

身体が受けた痛みの情報は、まずは脊髄に伝えられます。そこから次の神経にバトンタッチして、一気に脳に伝えられます。ですが、状況によっては痛いなどと感じていられない場合もあります。このような時に備えて、ここのバトンタッチを調整する神経として「下行疼痛抑制系」という神経があります。

下行疼痛抑制系神経が働くと、このバトンタッチが抑えられます。この神経はセロトニンとノルアドレナリンの2つの物質で作用し、痛みを和らげるように働きます。

夢中で何かをしていたり、ピンチの時に痛みを感じない経験をされたことはありませんか?この時にはノルアドレナリンがドッと分泌されて、痛みを感じていないのです。我にかえってから急に痛みが襲ってきたりするのは、ノルアドレナリンがきれてきた証拠になります。

痛みの情報を脳に伝えるメカニズムに働くことで、頭痛の予防効果につながると考えられます。

薬だけでない頭痛の原因

薬の副作用としての頭痛だけでなくて、頭痛が起こる原因はたくさんあります。これを見分けるのは、なかなか難しいです。まずは、本当に薬の副作用なのかを考えなければいけません。抗うつ剤は頭痛を予防する効果もありますし、精神症状からくる頭痛だとしたら、薬のおかげでマシになっている可能性もあるのです。

そのためには、抗うつ剤と頭痛の変化に関係があるのかどうかが重要です。

  • 頭痛はいつから始まったのか?
  • どのような特徴があるのか?
  • どういう時におこるのか?

などをメモしておきましょう。頭痛ダイアリー(PDF エーザイ株式会社より)などを使うと便利です。

薬以外の頭痛の原因としては、

  • 身体疾患
  • 心の病気の症状のひとつ
  • 一次性頭痛(片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛など)
  • 薬物乱用性頭痛

などがあります。

身体疾患

危険な頭痛も頭に入れておかなければいけません。

くも膜下出血や脳腫瘍などの脳血管障害、緑内障発作、髄膜炎などは、ほっておくとマズイです。これらの病気を疑うような頭痛以外の症状があれば、気を付けなければいけません。

また、帯状疱疹も頭痛の原因となることがあります。できものがないかを確認しなければいけません。

心の病気の症状のひとつ

頭痛が心の病気の症状であることも多いです。

多くの精神疾患では、セロトニンやノルアドレナリンの働きが弱まっているためか、頭痛が認められることが多いです。

セロトニンやノルアドレナリンは、痛みの情報の伝達を抑える働きをします。上述しました「下行疼痛抑制系」の働きが弱くなってしまうので、頭痛が起こりやすいのかもしれません。

うつ病でみてみると、およそ6割の患者さんが何らかの痛みを感じているといわれています。頭痛はその中でも多く3人に1人くらいはいるでしょうか。鈍い痛みを訴える方が多いです。

一次性頭痛

これらが当てはまらない場合、片頭痛や緊張型頭痛、群発頭痛といった一次性頭痛を考えていきます。

一次性頭痛とは何かというと、基礎疾患のない慢性頭痛のことです。はっきりした原因はないのだけれども、頭痛が続くような状態です。頭痛の性質によって、原因を推測し治療していきます。

一次性頭痛と精神疾患の関係は深いといわれていて、きっちりと見分けるのは難しいことも多いです。「一次性頭痛がある方は精神疾患にかかりやすい」という報告もあるので、合併することも多いです。

薬物乱用性頭痛

最後に忘れてはいけない原因として、鎮痛薬の乱用があります。

頭痛がするからといって、「痛み止め」をしょっちゅう服用するようになると、それが原因で頭痛になってしまうことがあります。これを薬物乱用性頭痛といいます。

女性の方は、生理で「痛み止め」を使うことに慣れていることが多いです。そのせいで薬物乱用性頭痛になっている方は多いです。

詳しく知りたい方は、痛み止めで逆に頭痛?薬物乱用性頭痛についてをお読みください。

頭痛の副作用と5つの対策

抗うつ剤の副作用としての頭痛で悩んだときは、どのようにすればよいでしょうか?

頭痛の対策としては、以下があげられます。

  • 様子を見る
  • 痛み止めを使う
  • 増量のペースを緩める
  • 寝る前に服用する
  • 抗うつ剤を変更する

様子を見る

抗うつ剤を飲みはじめた時は、慣れるまで頭痛がみられることが多いです。身体がお薬に慣れてくると、少しずつ頭痛が和らいでいきます。ですから、ガマンできるならば様子をみていくようにしましょう。

抗うつ剤を増量した時に頭痛がみられるときも、同じように考えていただいて問題ありません。

減量した時に頭痛が認められる場合は、離脱症状であることがあります。その場合は元の量に戻せば、比較的すみやかに頭痛が改善することが多いです。

痛み止めを使う

抗うつ剤の頭痛は、薬に慣れるまでの間であることが多いです。ですから、この期間だけ「痛み止め」でしのぐことも一つの方法です。現実的にはこの方法が一番よくとられます。

痛み止めとしては、カロナールをまずは試してみます。カロナールは、慢性疼痛の方にも使うお薬で、身体に負担が少なく、また薬剤乱用性頭痛にもつながりません。

ですが、効果としてはマイルドです。このため、痛みが強い方にはロキソニンを使うことが多いです。ロキソニンなどのNSAIDsは、胃腸を痛めますし、腎臓にも負担の大きな薬です。また、慢性的に使用すると薬物乱用性頭痛につながりますので、できるだけガマンする意識をもって使ってください。

1か月ほどたっても頭痛が治まらないようでしたら、薬以外の理由も含めて、頭痛の原因を再考した方がよいです。

増量のペースを緩める

抗うつ剤を増量している時に頭痛がみられたときは、そのペースを緩めることもひとつの方法です。

変化が小さくなれば、身体が抗うつ剤に慣れる時間を稼げます。

寝る前に服用する

頭痛が起こるのを睡眠中にもってきてしまうことで、やり過ごせる場合もあります。朝起きたらスッキリしていることもあります。

抗うつ剤には不眠の副作用もあるため、不眠傾向であったり、薬の飲み方を変えて寝れなくなってしまったら、すぐに戻してください。

抗うつ剤を変更する

どうしても抗うつ剤が合わないと感じてしまう場合は、他の抗うつ剤に切り替えるのも方法です。

同じ系統のお薬であっても、お薬にも相性があります。ほかのお薬にしたら全く頭痛を感じないことも少なくありません。

必ず主治医に相談してください。

抗うつ剤と頭痛の副作用

頭痛の副作用はどれくらいあるのでしょうか?各抗うつ剤について、インタビューフォームという薬の詳しい説明書から、頭痛の副作用の頻度をみてまとめました。

抗うつ剤の頭痛の副作用について、承認時の治験結果からまとめて整理しました。

これをみると、古い三環系抗うつ薬よりも、SSRIやSNRIといった新しい抗うつ薬の方が頭痛の頻度が高いことがわかります。

三環系抗うつ薬は、いろいろな受容体に作用するので一般的に副作用が多いです。ですが、頭痛の副作用の報告が少ないということは、頭痛の原因が脳内の物質のアンバランスさにあることを意味しているのかもしれません。セロトニン・ノルアドレナリンなどの物質だけが異常に増加することが要因になっているのかもしれません。

SNRIのサインバルタで多いことが興味深いです。サインバルタは「痛みに効く」として、よく慢性的な痛みに使われます。線維筋痛症という痛みの強い自己免疫疾患にも使われるお薬です。このサインバルタでは、副作用としての頭痛の報告が21%と抜きんでて多いです。

SSRIは全体的には大差がなく、どのSSRIも10%程度の報告となっています。少なからず多くの抗うつ剤で頭痛の副作用は報告されていますが、頭痛が原因でお薬を続けられない方は多くはありません。

まとめ

セロトニンの作用による頭痛と離脱症状による頭痛があります。セロトニンの作用が安定すると、抗うつ薬には頭痛予防効果があります。

頭痛の原因としては、

  1. 身体疾患によるもの
  2. 精神症状によるもの
  3. 一次性頭痛(片頭痛・緊張型頭痛・群発頭痛)
  4. 薬物乱用性頭痛

などがあります。薬の副作用かを判断するには、「抗うつ剤と頭痛の関係はどれくらいあるのか」が重要です。

SSRIやSNRIでは比較的報告が多いですが、中止せざるを得なくなるほどの頭痛は少ないです。

頭痛の対策としては、以下があげられます。

  • 様子を見る
  • 痛み止めを使う
  • 増量のペースを緩める
  • 寝る前に服用する
  • 抗うつ剤を変更する
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