メラトベルこころみ医学

【精神科医が解説】メラトベル(メラトニン)の効果と副作用

  • 更新日:2020年06月09日 10:32
  • 作成日:2020年05月23日 20:37

メラトベル(メラトニン)とは?

メラトベル(一般名:メラトニン)は、メラトニン受容体作動薬に分類される睡眠薬になります。

これまで発売されていたロゼレムと同様ですが、メラトベルは体の中で作られているメラトニンそのものです。同じようにメラトニン受容体に刺激するように働きます。

メラトニンは、体内時計のリズムを整えているホルモンといわれており、こちらを刺激することによって

  • 眠気を促す(入眠作用)
  • 睡眠リズムを整える(位相作用)

が期待できます。自然な眠気を促し、リズムを整えていくお薬になります。

メラトベルは、神経発達症(自閉症スペクトラム障害やADHDなど)のお子さんに適応が認められたお薬になりますので、一般の睡眠薬としては処方することができません。一般の不眠症に対しては、わずかに入眠障害を改善するという報告がなされているのみになり、医薬品としては発売されていません。

このような独特の睡眠障害がある場合に限っては、メラトニンの入眠改善効果はかつてより知られていました。日本ではサプリメントとしても発売されておらず、海外のサプリメントを取り寄せて使用するようなケースもあり、2019年1月には小児神経学会より、早期承認に対する要望書が厚生労働大臣に提出されたという経緯があります。

メラトニン受容体作動薬は、

  • ロゼレム(一般名:ラメルテオン):2010年発売
  • メラトベル(一般名:メラトニン):2020年発売

と二種類となります。

メラトベルの睡眠薬としての適応

メラトベルの適応は、

  • 小児期の神経発達症に伴う入眠困難の改善

に限定されています。6歳~15歳までの小児期に限定されていて、それ以外の年齢での有効性と安全性は調べられていません。ですから保険診療では、成人には処方することができないお薬となっています。

神経発達症とは、

  • 自閉症スペクトラム症
  • ADHD(注意欠如・多動症)
  • LD(学習障害)
  • 知的能力障害
  • コミュニケーション症群
  • 運動症群
  • 他の神経発達症群

の7つになります。いわゆる発達障害や精神遅滞といわれていたようなお子さんが対象となります。

このようなお子さんでは、多動や過活動、興奮などが認められることが多く、それがゆえに発達特性を強めてしまうことがあります。それによってさらに睡眠状態が悪化するような悪循環に陥っている場合も少なくありません。

睡眠障害が発達特性を強めてしまっているような場合には、メラトベルが良い適応になります。同じメラトニン受容体作動薬であるロゼレムは、小児に対しては安全性が確認されていないとして、使いにくさがあるお薬でした。

メラトベルの特徴

 <メリット>

  • 自然な眠気を強くする
  • 入眠障害を改善する
  • リズムを整える効果が期待できる
  • 依存性が極めて少ない

デメリット>

  • 適応疾患が限られる
  • 眠気が残ることがある
  • フルボキサミン(抗うつ剤)との併用が禁忌
  • ジェネリックが発売されていない(薬価が高い)

それではメラトベルの特徴を、

  1. 効果
  2. 副作用
  3. 剤形と薬価

に分けてみていきましょう。

メラトベルの効果

メラトベルは、自然な眠気を強くするタイプの睡眠薬になります。このような睡眠薬は、

  • 依存性が極めて少ない
  • 強引さがなくて、効果と副作用に個人差がある

という特徴があります。

メラトベルで効果が実証されているのは、

  • 入眠障害

の改善になります。

プラセボと比較して20分~30分ほどの改善が確認されています。その改善効果は用量依存性の傾向があり、1~4mgまでの範囲では効果が強まっています。

またメラトベルは、リズムを整える作用も期待できます。ですから、

  • 昼夜逆転

の時などに効果が期待できます。

メラトベルの副作用

メラトベルの副作用としては、

  • 眠気が残る

ことが目立ちます。

メラトベルの効果は個人差があり、翌朝にも効果が残ってしまって眠気が続いてしまうことがあります。睡眠の質には大きな影響を及ぼさず、夢が増えるといったことは少ないです。

またメラトベルは、生理的な物質であるメラトニンと同じお薬ですので、依存性が極めて少ないという特徴もあります。

メラトベル承認時での副作用頻度は、

  • 傾眠(4.2%)
  • 頭痛(2.6 %)
  • 胃腸障害(1.3%)
  • 肝機能異常(1.0%)

となっています。

メラトベルの剤形と薬価

メラトベルのお薬としての特徴についてみていきましょう。

メラトベルにはジェネリックは発売されておらず、先発品のみとなります。現在メラトベルは、

  • 小児用顆粒0.2%

のみの剤形となります。

ロゼレムの薬価は、以下のようになります。

  • 小児用顆粒0.2%1g:207.8円(2mg相当)

これに自己負担割合(1~3割)をかけた金額が、患者さんの自己負担になります。薬局では、これにお薬の管理料などが加えられて請求されています。

薬価については、同じタイプのロゼレムをベースに算定されました。メラトベルは、アメリカの自閉症スペクトラム症での睡眠障害ガイドラインで推奨されていることから、有用性加算(5%)がついています。また小児加算(10%)もついているため、少し高めとなっています。

メラトベルの用法と効果のみられ方

メラトベルの用法は、以下のようになっています。

  • 開始用量:1mg
  • 用法:1日1回就寝前
  • 最高用量:4mg
  • 剤形:顆粒(0.2%)

メラトベルは、お子さんを想定してるために顆粒のお薬になります。用量は顆粒にして0.5g~2g(有効成分1mg~4mg)となっており、1mgから使っていくことが基本となります。

1週間はあけて効果を判定していき、効果が不十分な時は少しずつ増量をしていきます。また、空腹時を想定されていて、食後では効果が薄れてしまいます。(Cmax-15.4%)

【参考】メラトベルの半減期

お薬の効き方を見ていくにあたっては、

  • 半減期:血中濃度が半分になるまでの時間
  • 最高血中濃度到達時間:血中濃度がピークになるまでの時間

が重要になってきます。

メラトベルは、

  • 半減期(T1/2):1.41時間
  • 最高血中濃度到達時間(Tmax):0.32時間

となっています。

【参考】メラトベルの禁忌・併用注意薬

メラトベルは、おもにCYP1A2という肝臓の酵素で代謝されて分解されていきます。このためCYP1A2の働きに関係するお薬には、併用に注意が必要です。

【併用禁忌:CYP1A2を強く阻害するお薬】

  • 抗うつ剤:フルボキサミン

メラトベルと併用が禁止されているお薬として、抗うつ剤のデプロメール/ルボックス(一般名:フルボキサミン)があります。

【併用注意】

  • CYP1A2阻害:抗菌薬(ニューキノロン系)
  • カフェイン
  • 喫煙

カフェインや喫煙については、お子さんでの使用は想定されていませんが、メラトニンサプリを服用されている方には参考になるかと思います。

カフェインは、メラトニンの効果を強めます。メラトニン6mgに200mgのカフェインを服用すると、メラトニンの Cmaxが 137%、AUC が 120%増加したという報告があります。

喫煙に関しては反対に、CYP1A2 が誘導されるために効果が弱まります。喫煙者を1週間禁煙させてメラトニン25mg服用すると、禁煙前と比較して血中濃度が2.9倍に上昇したという報告があります。タバコをすうとメラトニンの効果が弱まることを意味します。

メラトベルの副作用の対処法

メラトベルの副作用としては、

  • 眠気
  • 頭痛

が認められます。

そして他の睡眠薬を服用されていてメラトベルに切り替える場合は、不眠がひどくなってしまうことに注意が必要です。睡眠薬を急に入れ替えてしまうと、前の睡眠薬の離脱症状が起こることがあります。それによって、反跳性不眠(不眠がひどくなってしまうこと)となってしまうことがあるのです。

それではメラトベルで副作用が認められた場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。それぞれの副作用について、詳しくみていきましょう。

メラトベルと眠気

メラトベルの承認時の副作用報告では、

  • 眠気:4.2%

となっています。メラトベルの中では最も多い副作用になります。

メラトベルは作用時間は短く、お薬の成分は比較的早くに身体から抜けていきます。しかしながら生理的な物質ですので、効果にも個人差があります。

メラトベルで眠気が認められた場合の対処法としては、

  • お薬の量を減らす
  • 服用時間を早める
  • 他の睡眠薬に変える

などがあります。

メラトベルと頭痛

メラトベルで次に多い副作用は頭痛になります。メラトベル承認時の副作用報告では、

  • 頭痛:2.6%

と報告されています。

メラトベルは血管に対する作用が認められており、

  • MT1:血管収縮
  • MT2:血管拡張
    ※MT=メラトニン受容体

このような作用があります。

メラトベルの作用機序については後述しますが、MT1とMT2の両方に作用します。MT1<MT2となると、血管拡張に作用します。

脳血管が拡張すると周囲にある三叉神経が圧迫され、刺激をうけます。そして痛み物質が放出され、頭痛として感じられます。

メラトベルで頭痛が認められた場合の対処法としては、

  • 慣れるまで様子を見る
  • 他のお薬に変える

のどちらかになります。

正しい睡眠習慣を意識させることから

メラトベルを使っていくにあたっては、睡眠習慣を見直すことも重要です。とくにお子さんの不眠症の治療については、まずは正しい睡眠習慣を意識して身につけていただくことから始めることが大切です。

お子さんの特性によって工夫は必要かと思いますが、シンプルに以下のことを実践させてみましょう。

  • 朝の光を浴びる
  • 朝ごはんを食べる
  • 昼間に体を動かす
  • 夜暗くして、早く寝る

このように一定の時間で規則正しく生活し、日中の活動を高めることで覚醒と睡眠のメリハリをつけていきます。一定の時間にすることで、入眠困難がどの程度なのか(入眠潜時)を把握することもできます。

そのうえで寝つきが悪い状態が続けば、メラトベルを使っていくことも選択肢となります。

【参考】メラトベル(メラトニン)の妊娠・授乳への影響

お子さんを対象としたお薬ですが、サプリメントとしてメラトニンを服用されている方もいらっしゃるかと思いますので、メラトベルの妊娠および授乳への影響についてもみてみましょう。

メラトベルの妊娠への影響から見ていきましょう。メラトベルのお薬の添付文章には、

妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断された場合にのみ投与すること。

このように記載されています。

これは、ウサギの動物実験で胎児の体重低値が、ラットの動物実験で出生児の体重低値と体重増加抑制傾向が認められているためです。

次に、メラトベルの授乳への影響をみていきましょう。メラトベルのお薬の添付文章には、

本剤投与中は治療上の有益性及び母乳栄養の有益性を考慮し、授乳の継続又は中止を検討すること。

このように記載されています。

これもラットを使った動物実験で、母乳への移行が認められているためです。そして乳児にとってのメラトベルの安全性が確認されていないため、授乳については慎重な判断となっています。

しかしながら母乳で育てることは、赤ちゃんにも非常に良い影響があるといわれています。このため服用継続しながら授乳することも、ひとつの選択肢とされています。

メラトベルのジェネリック医薬品およびサプリメント(メラトニン)

メラトベル錠は、2020年に発売されたお薬になります。

お薬の開発には莫大なお金が必要となるため、発売から10年ほどは成分特許が製薬会社に認められて、独占的に販売できるようになります。(先発品)

メラトベルのジェネリックは、この特許が切れた後に発売されます。(後発品)このためジェネリック医薬品が発売されるには、かなり時間がかかります。

また、メラトニンは海外ではサプリメントとして広く発売されていますが、日本ではあまり見かけません。個人輸入して、自己責任のもとでサプリメントとして服用されている方はいらっしゃいます。メラトベルが成人に適応を拡大するのは、その効果のエビデンスを証明するのが難しく、あまり期待できないかと思われます。

発達障害やADHDといった神経発達に伴う過覚醒に対しては、メラトニン関係の生理的なメカニズムを整えるインパクトが大きいことが想定されます。睡眠障害のメカニズムがはっきりしない一般の不眠には、明らかな効果が期待できないのでしょう。

【参考】メラトニンとは?

メラトベルは、体内時計のリズムを整えているホルモンであるメラトニンと同一の成分になります。

メラトニンは脳の松果体で作られるホルモンで、視床下部に働いて自律神経の働きを調節しています。睡眠と覚醒だけでなく、代謝や免疫など様々な機能の調節をおこなっています。このため、体内時計を司るホルモンと呼ばれています。

メラトニンには生理的な変化があり、20時ごろから分泌されて増加していき、夜間の1~2時をピークに、明け方に減少していきます。このようにロゼレムは、体内時計のリズムを整えて睡眠状態を維持していく役割を果たしています。

メラトニンは、必須アミノ酸であるトリプトファンからセロトニンをへて作られます。後述しますが、2つのメラトニン受容体に作用することで、睡眠作用を発揮します。

睡眠に関係する脳内物質の関係をまとめました。

【参考】メラトベルの作用機序

メラトベルは、身体で作られるメラトニンと同じ成分で、メラトニン受容体作動薬になります。メラトニンと同じように働き、受容体を刺激するお薬になります。

メラトニン受容体には、3種類があります。

  • MT1受容体:視床下部の視交叉上核
  • MT2受容体:視床下部の視交叉上核
  • MT3受容体:全身に存在

メラトニンは、視床下部の視交叉上核にあるMT1とMT2受容体に作用します。

それぞれの受容体の作用は、

  • MT1受容体:催眠作用(体温を低下させて睡眠を促す)
  • MT2受容体:リズムを整える作用(体内時計を同調させる)

このようになっています。この2つの受容体を通して、覚醒から睡眠に体内時計のリズムを切り替え、睡眠状態を安定させる作用が期待できます。

こころみ医学 - 内科の症状 - 【精神科医が解説】メラトベル(メラトニン)の効果と副作用