全般性不安障害(不安神経症)こころみ医学

精神科の治療にも漢方薬が使われます

漢方薬には、不安を和らげる効果が期待できるものもあり、とくに慢性的な不安が続く不安神経症の治療では、漢方薬が強みを発揮するケースがあります。

不安神経症の治療は抗うつ剤や抗不安薬を中心とした治療をしていくことが一般的ですが、漢方薬を上手く組み合わせることで、治療の幅を広げていくことができるのです。

不安神経症での漢方の位置づけ

慢性的な不安が続く不安神経症の治療では、SSRIを中心としたセロトニンを増加させる抗うつ剤による薬物療法を行っていくのが主流です。

お薬によって不安を抑えることで生活しやすくし、日常生活の中で精神療法を積み重ねながら、改善を目指していきます。

漢方薬は西洋薬に比べると、

  • 不安への即効性はない
  • 効き目がおだやか
  • 効果に個人差が大きい

といった特徴があるため、薬物療法のメインとしては、力不足となってしまう可能性が高いのです。

しかしながら、

  • 軽症の不安神経症
  • 不安神経症のお薬でとりきれない不定愁訴
  • 不安神経症のお薬による副作用の軽減
  • 精神科のお薬への抵抗が強いとき
  • 妊娠中で抗うつ剤や抗不安薬を飲みたくないとき

などのケースでは、漢方薬が治療の助けとなることがあります。

抗うつ剤はしっかりと効いているけれども、自律神経症状が少しだけとれない…抗うつ剤は続けたいけど、副作用がしんどい…お薬に対する抵抗や不安が強く、なかなか抗うつ剤などが飲めない…

そんなときに、漢方薬を併用していくと治療の幅を広げていくことができます。

漢方からみた不安神経症とは?

漢方では、不安神経症は「気の異常」と考えます。

「気」とは、生きていく上で必要なエネルギーのことです。生命の根源ともいえます。気が異常となる状態としては、大きく3つがあります。

気の異常 気うつ(気滞) 気が上手く流れない状態
気虚 気の足りない状態
気の上衝(気逆) 怒りやストレスで気が上昇する状態

それぞれの異常で生じる症状は以下のようになります。

気うつ 抑うつ気分・呼吸困難・喉頭部違和感など
気虚 意欲低下・疲労感・だるさ・食欲低下・下痢など
気の上衝 頭痛・めまい・発汗・のぼせ感・イライラなど

不安神経症の治療で漢方薬を使う場合、これらの症状を患者さんそれぞれの状態や体質である「証」と合わせ、その原因に応じたお薬を選んでいきます。

漢方薬は症状へのピンポイントではなく、状態に適したものを処方します。そのため、同じ不安神経症という病気であっても、患者さんによって効果的なお薬が異なってくるのです。

その点に注意し、安易に他人からもらった漢方薬を飲んだりしないことが大切です。飲み合わせや副作用、禁忌もないわけではありませんので、飲むときは医師と相談しながらにしましょう。

漢方薬と相性について詳しくは、漢方の「証」についてをお読みください。

不安神経症の治療で使われる具体的な漢方薬については、不安神経症の治療で使われる漢方薬とは?をお読みください。

まとめ

病院での不安神経症の治療でも、漢方薬が使われることがあります。中心となるのはSSRIを中心とした抗うつ剤ではありますが、その補助として使うことで治療の幅を広げることができます。

ただし、体質や病状に合わせて選ぶことが大切ですので、漢方薬を試してみたい…というときは、主治医と相談するようにしましょう。

執筆・監修

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こちらの記事は、下記の精神科医が執筆・監修しております。

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大澤亮太

  • 役職:医療法人社団こころみ理事長/(株)こころみらい代表産業医
  • 資格:精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医
  • 学会:日本精神神経学会

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