肺炎の尿中抗原検査

肺炎の尿中抗原検査

尿中抗原検査とは?

肺炎を引き起こす細菌の一部は、私たちのからだの免疫細胞にやっつけられ、処理された菌体抗原が血液をめぐり、腎臓で濃縮されて尿中に排泄されます。

このため、尿検査をすることで肺炎の原因菌を特定することができます。現在、検査として実用化されているのは、

  • 肺炎球菌
  • レジオネラ菌

の2つがあげられます。

肺炎球菌は、市中肺炎(普通の社会生活を送っていても感染する肺炎)の主な原因菌として知られています。一般的にのどや鼻などに存在する常在菌ですが、免疫力の低下などにより重い症状を起こすことがあります。

レジオネラ菌は、温泉などが感染源となって肺炎を引き起こすことが多いです。急激に進行して重症度が高く、そしてグラム染色や培養といった通常の方法では診断がしづらいという特徴があります。

肺炎の治療には、原因菌にあわせて適切な抗生物質を選択する必要があります。そのための検査として、尿中抗原検査は非常に有用です。

当院でも尿中抗原による検査は可能で、検査をして約15分~20分で結果判定が可能な迅速キット(脳脊髄膜炎起炎菌莢膜多糖抗原キット)を取り入れております。

尿中抗原検査の流れ

当院での尿中抗原検査の流れとしましては、

  1. 受付で、「内科の問診表」に記載いただきます。
  2. 医師が順番に診察をします。
  3. レントゲンを実施して、肺炎があるかどうかを調べます。
  4. レントゲン結果を踏まえて、尿中抗原検査が必要か判断します。
  5. 検査が必要な場合、看護師の準備が整いましたらお声掛けいたします。

このようになっています。

尿中抗原検査は、肺炎の原因を調べていく検査になります。まずはレントゲン検査を行い、肺炎かどうかを医師が判断します。肺炎が疑わしい場合、尿中抗原検査を行うことで、原因菌を探ります。

レジオネラと肺炎球菌の2つしか探れないのですが、特定できる場合は効果が期待できる抗生物質も特定できますので非常に有用です。

尿中抗原ではっきりしない場合は、重症度が高い場合は喀痰培養を行って、抗生物質を開始する前に原因を探っておきます。お薬が効けばよいのですが、効かなかった時にも備えておく必要があるからです。

尿中抗原検査は非常に簡単で、普通の尿検査と同じように採尿をしていただくだけです。採取した液体を試薬につけて、それを検査キットに垂らすだけです。尿中抗原検査は、15分ほどで結果がわかります。

結果が出ましたら、直ちに医師に報告します。

尿中抗原検査について詳しく知りたい方へ

尿中抗原検査は、普通の尿検査と同じ要領で非常に簡便に行うことができる検査です。肺炎の原因菌をある程度しぼることができ、治療を行いやすくしてくれる検査になります。

ここでは最後に、尿中抗原検査について詳しく知りたい方にむけて、どのようなメカニズムで肺炎原因菌の判定がなされているのかについてお伝えしていきます。

当院の尿中抗原検査キットのメカニズム

当クリニックで使用している迅速検査キットでは、「イムノクロムアッセ法」に基づいた尿中の肺炎球菌莢膜抗原検出試薬です。

付属の綿棒を尿検体に浸し、検査キットの綿棒挿入口に挿入し、添加試薬を滴下することで、肺炎球菌莢膜抗原を抽出します。

この抽出された肺炎球菌莢膜抗原はテストパネルを貼り合わせることで、メンブレン試薬のコンジュゲートパッドに移動します。コンジュケードパッドに乾燥含有されている抗肺炎球菌莢膜ポリクローナルウサギ抗体感作金コロイド粒子と抗原抗体反応を起こして、抗原–抗体複合体となります。

それが毛細管現象によって、メンブレン試薬上を展開します。抗原–抗体複合体がサンプル検出部に到達すると、サンプル検出部に固定化されている抗肺炎球菌莢膜ポリクローナルウサギ抗体に捕捉され、抗体-抗原-抗体のサンドウィッチ状の結合体ができます。

その結合体が、サンプル検出部に赤紫色の線(サンプルライン)として出現します。

一方で尿中に肺炎球菌莢膜抗原が存在しない場合は、サンプルラインは出現しません。また、肺炎球菌莢膜抗原の有無に関わらず、コントロール検出部に赤紫色の線(コントロールライン)が出現します。

  • (陽性判定):サンプルラインとコントロールライン両方が出現します。
  • (陰性判定):コントロールラインのみ出現します。
  • (判定保留):コントロールラインが出現しなかった場合やサンプルラインが不明瞭な場合検査は無効とし、別のテストパネルを使用して再検査を実施します。

当院の尿中抗原検査の精度

喀痰培養と血液培養、それぞれの結果との診断一致率をご紹介します。

喀痰培養とは、肺炎の患者さんの痰を培養することで、どのような細菌が存在しているかを判断することができます。

血液培養は、肺炎がひどくなって血液中に細菌が侵入してしまっている、重症肺炎の患者さんになります。培養することで、原因菌を特定できます。

尿中抗原検査との一致率をみていきましょう。

<喀痰培養法との比較>

尿中抗原検査と喀痰培養の一致率を表にしました。
  • 陽性一致率:61.3%(19/31)
  • 陰性一致率:72.1%(98/136)
  • 全体一致率:70.1%(117/167)

<血液培養法との比較>

尿中抗原と血液培養との一致率についてご紹介します。
  • 陽性一致率:80.0%(4/5)
  • 陰性一致率:73.7%(98/133)
  • 全体一致率:73.9%(102/138)

検査での注意点

<判定上の注意>

  • 尿検体中に共通抗原をもつ菌種(mitis)が存在する場合、偽陽性を示す場合があります。
  • 月齢2~60ヵ月の乳幼児において、鼻咽頭に肺炎球菌が常在している場合には、尿中肺炎球菌莢膜抗原が偽陽性を示す場合があります。
  • 迅速検査において、陰性の結果は肺炎球菌感染の可能性を完全に否定するものではありません。検体中の肺炎球菌莢膜抗原量が検出感度以下の場合、陰性となります。
  • 尿中の肺炎球菌莢膜抗原が検出感度以上に達する時期は、通常では肺炎症状出現後3日以降とされています。しかしながら、症例によって異なります。また、莢膜抗原は尿中に数日から数週間に渡って排泄されることがあります。