ホルター心電図(24時間心電図)

ホルター心電図(24時間心電図)

ホルター心電図とは?

ホルター心電図とは、長時間(主に24時間)の心臓の動きを調べるための検査です。24時間心電図と呼ばれることもあります。心臓は一日で約10万回脈を打っていますが、ホルター心電図では24時間全ての脈を記録し、異常を詳しく調べることができます。

心疾患の正確な診断や治療のために有効な検査で、普通の心電図検査では検査をした瞬間の心電図しか判断することができませんが、ホルター心電図では1日を通して異常がないかをモニターすることができます。

これによって不整脈や狭心症・虚血性心疾患などの診断、処方したお薬や手術の効果を確かめるときなどに行われる検査になります。

ホルター心電図を測る心電計は携帯式で、病院で取り付けて自宅に帰り、付けたまま日常生活を過ごしていただきます。その間の心臓の動きの情報は、デジタル信号や磁気によって記録されます。当院のホルター心電図検査は小型で防水仕様のため、長時間の入浴などを避けていただければ、普通に入浴も可能です。

検査では心電計の使用とともに、患者さん自身に1日の生活記録つけることと、動悸や不整脈など何かの自覚症状があったときには心電計のボタンを押すことをお願いしています。それらの結果を合わせ、自覚症状や生活状態と心臓の変化の関連性を調べます。

心電計での記録は専門のセンターでコンピュータ解析され、24時間の心拍数の変化や、心臓のリズムの乱れなどを知ることができます。循環器内科専門医に解読を依頼し、その結果を踏まえて当院の担当医より結果の説明をさせていただきます。

ホルター心電図からわかる病気

動悸や胸痛、脈が飛ぶといった症状がある場合、まずは心電図を測定します。しかしながら測定したタイミングで異常がなければ、何らかの心臓の機能異常がないとは断定ができません。そういった場合に、ホルター心電図を行っていきます。

ホルター心電図を測定することで、

  • 脈が乱れているかどうか(心房細動や期外収縮など)
  • 胸の痛みがあるかどうか(虚血性心疾患の有無)
  • 心臓の動く回数(頻脈か徐脈か)

を調べることができます。もう少し詳しくみていくと、以下のようなことがわかります。

  • 日常生活での不整脈の有無
  • 不整脈の種類・回数・発生時間
  • 自覚症状と心臓の関連性
  • 心筋虚血の有無(狭心症などの疑い)
  • 心房細動
  • 最高・最低心拍数
  • ペースメーカーの機能性
  • お薬による治療効果

このようにホルター心電図を行うことで、

  • さまざまな不整脈
  • 虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)

などがわかります。

病気が疑われた場合は、心エコーなど詳しく検査を進めていく必要があります。当院ではホルター心電図で専門的な治療が必要な病気が疑われた場合、当院の循環器内科外来でフォローさせていただきます。

必要に応じて、提携している総合病院に紹介させていただきます。

ホルター心電図の流れ

ホルター心電図の実施の流れをお伝えしていきます。

①医師の診察をうけていただきます。ホルター心電図を行うに当たっては、まずは検査の必要性を判断する必要があります。

②ホルター心電図の実施が必要と医師が判断した場合は、検査にすすませていただきます。患者様に測定機器を貸出しての検査となり、翌日も来院いただく必要がございます。すぐに検査が実施できない場合は、ウエイティングリストに登録させていただきます。順番が来ましたら、ご連絡させていただきます。

ホルター心電図の取り付けは、病院でスタッフが行います。電極を付ける胸や脇腹をアルコール消毒し、微弱電流を読み取りやすくするためのジェルで皮膚を拭いた後、ケーブルをつないだ電極を貼りつけ、上から皮膚用粘着テープでしっかりと固定します。

④記録用の小型装置は、安定した場所に携帯用のケースに入れて取り付けます。ズボンのバンドで腰に固定するか、専用ベルトを使ってポシェットのように下げます。

⑤スイッチをONにすると記録が開始されます。そのまま自宅へ帰り、普段通りの日常生活を過ごしていただきます。

⑥心電計の取り付け時に生活状態記入用のシートをお渡ししますので、それに沿って行動(食事、服薬、入眠、起床、排尿、排便、労作、喫煙など)を記入していただきます。自覚症状(動悸・息切れ・不整脈・胸の痛みなど)があったときは、心電計の記録用スイッチ(EVENTと書かれたスイッチ)を押すようにします。

⑦24時間経過後(翌日)、クリニックにお越しください。そこで心電計を取り外して終了となります。

解析は循環器専門医が行いますので、普通の心電図のようにその場ですぐに結果を知ることはできません。検査結果が分かるまでは少し期間が必要です。

ホルター心電図と一般心電図の違い

【ホルター心電図(24時間心電図)】

  • 一日を通した心臓の動きの変化を調べる
  • 症状や生活と心臓の状態を比較し、関連性を知ることができる
  • 携帯型心電計を1日付けたまま生活する

【一般心電図(安静時心電図)】

  • 安静時の一時的な心臓の動きを調べる
  • 病院での数分の検査で終わる

「心電図」とだけ言うと、一般的には病院で行う安静時心電図のことを指します。健康診断で受けた方も多いと思いますが、ベッドに横になって胸や手足に電極を貼り、安静にしていただいて心臓の電気の波形を測定する検査です。

心電図は、心臓の筋肉の動きで発する電気的な変化を読み取り、それを波形で表したものです。その仕組みはホルター心電図も同じですが、安静時の数分だけではなく、日常生活の動作・食事や睡眠・時間帯・自覚症状の有無など様々な条件下での心臓の動きを調べることができます

動悸・不整脈・息切れ・胸の痛みなどの状態や原因を診断するためには、心電図は欠かせません。しかし、病院で行える一般心電図は測る時間が1分程度と短時間で、一時的な状態しか見ることができません。

そのときに気になる症状が現れるとは限りませんし、心臓のリズムは生活状態・精神的影響・食事や睡眠・時間などによっても変化しているため、一般的な心電図だけでは正確な状態が把握しにくい弱点があります。

とくに、心臓を養うための冠動脈の血流不足による狭心症発作などは、日中の活動時・夜間や早朝におこりやすく、病院で行う心電図だけでは検査が不十分です。不整脈も同様で、異常が認められているときに心電図を測定しなければ、診断をつけることができません

その点、24時間つけたまま、しかも日常生活を普通に行いながらの状態の心臓の変化が測れるホルター心電図は優れ、より正確な診断や有効な治療を行うために役立ちます。

自覚症状と心臓の状態は必ずしも一致しているとは限らないため、その関連性を調べるためにもホルター心電図が有効です。24時間の日常生活の中での心電図の変化と、生活状態や自覚症状の記録を合わせることで、不整脈や動悸などの症状が何と関連しているかを客観的に調べることができます。

また、心疾患でお薬を処方した場合やペースメーカーをされている方に対しては、24時間の状態をチェックし、治療効果を確かめるために有効です。

しかし一方で、携帯しながら生活を行うホルター心電図では付けられる電極の数が少なく、短期間での心臓波形を見るには一般心電図の方が優れる面もありますし、病院ですぐに結果が見られます。そのため、まずは一般心電図を行い、必要な方にホルター心電図を行って診断することが多いのです。

ホルター心電図のメリット・デメリット

ホルター心電図のメリットとデメリットを整理したいと思います。

【メリット】

  • 24時間の心電図が記録できる
  • 症状や日常生活と心臓の波形の関連性を見られる
  • 一般心電図では判別できない病気を見つけやすい

【デメリット】

  • 電極を24時間貼り続けたまま生活する必要がある
  • 生活状態や自覚症状を自分で記録しなければいけない
  • 2日連続で来院することになる
  • 結果がすぐに見られない

ホルター心電図の一番のメリットは、日常生活の中での心臓の動きの変化を長時間記録できることです。上でご紹介した通り、より正確な診断や有効な治療のために必要な検査です。

電極を24時間貼ると聞くと何となく怖いイメージがあるかもしれませんが、体に電流を通すのではなく、元々体に流れている微弱電流を読み取っているだけですので心配はありません。

ただ、デメリットとして一番にあげられるのは、24時間付けっぱなしで生活を送るので、不便を感じる場面もあるということです。

入浴は可能ですが、長湯しない、熱風呂しないなどの配慮が必要です。それ以外はできるだけ普段通りの生活をしていただいた方がいいのですが、やはり不便を感じる場面はあるかと思います。生活状態の記録など、普通の検査に比べ手間もかかります。

また、汗などで剥がれないよう皮膚用粘着テープで貼り付けるため、皮膚がかぶれやすい方はかゆみを感じたり、あとが少し赤くなったりすることがあります。

また、取り付け・取り外しのために2日連続で来院していただく必要があります。病院が持っているホルター用心電計は多くないため、希望した日に受けられるとは限りません。結果も循環器専門医に依頼して解析しますので、結果をお話しできるまで期間がかかることがあります。

ホルター心電図の料金

心電図検査は、健康保険の適応になる検査です。このため診療報酬は医療機関で一律に決められていて、どの医療機関でも同じ金額になります。

  • 一般の心電図:130点(1,300円)
  • ホルター心電図(8時間以上):1750点(17,500円)

こちらの金額に自己負担額(1割~3割)を乗じたものが、純粋な検査にかかる費用になります。ですからホルター心電図は、1,750~5,250円となります。この金額に、機器のレンタル料、取付、消耗品費、解析までが含まれています。

窓口ではこの金額に、医師の診察料や病気の管理料などが加わって、患者様が窓口でお支払いする料金となります。

ホルター心電図の注意点

ホルター心電図を行うに当たての注意点を、箇条書きで整理したいと思います。

  • アルコールや粘着テープに弱い肌質の方は事前に申し出てください。
  • 温泉や入浴剤は避けてください。(シャンプーはOK)
  • 10分以上の長時間の入浴や熱いお風呂は避けてください。
  • ジャグジーバスやプールは避けてください。
  • 電極や器械強くこすったりテンションをかけないでください。
  • 入浴後は、タオルで抑えて水気をとってください。
  • 電気毛布や電気カーペット、低周波治療器の使用は避けてください。

このような点に注意して、普段通りの日常生活を行ってください。そして行動記録は、所定の用紙に従い記録してください。胸の痛みなどがあった場合は、安静にしてイベントスイッチを押してください。(右上にあるEVENTボタン)

検査当日の服装については、以下の点に気を付けてください。

  • 襟元が広く開いていると、電極が見えることがあります。
  • あまりにラインがぴったりした薄い服は、電極の線が浮かびます。

胸部に電極を貼りますので、上下が分かれた服や前ボタンのゆったりとした服が向いています。

心臓への負担を考えていただくなら、

  • 脱衣所や浴室を温めてから入浴する。
  • 水分をとってから入浴する。
  • かけ湯をしてから入浴する。
  • 熱湯や長湯を避ける。
  • 心配の慢性疾患や高血圧がある方は半身浴にとどめておく。

といった入浴の配慮が望ましいです。ホルター心電図検査の際も意識していただければと思います。

ちなみに、携帯式の心電計であることから『ホルダー心電図』と間違って呼ばれることもありますが、『ホルター心電図』になります。ホルターは、24時間心電図記録法を最初に発表したアメリカの物理学者(Holter博士)に由来しています。