肺炎球菌ワクチン

肺炎球菌ワクチン

【肺炎球菌ワクチン】の概要

【肺炎球菌ワクチンの料金】

  • ニューモバックス・・・8,250円(税込)
  • ニューモバックス(公費)・・・4,950円(税込)
  • プレベナー・・・11,000円(税込)

※ニューモバックスは、公費で受けることができます。条件や必要書類がございますので、受付にて確認させていただきます。

こちらのページでは、肺炎球菌予防接種の効果や副作用などをまとめていきたいと思います。

※肺炎について詳しく知りたい方は、『診療内容の肺炎のページ』をご覧ください。

肺炎球菌とは?

肺炎球菌は、

  • 肺炎
  • 中耳炎
  • 敗血症(感染に由来した全身性炎症)
  • 髄膜炎(脳や神経を守る膜の炎症)

などの感染症を引き起こす細菌です。

日常生活の中でも感染しやすい身近な菌で、そのわりに重い感染症を引き起こすリスクの高い病原微生物の代表です。肺炎球菌は莢膜(きょうまく)という厚い膜でおおわれているため、人間の持っている免疫機能が働きにくいのが特徴です。

肺炎球菌は主に呼吸によって体内に入り込み、鼻や喉の奥などにつきますが、それだけで肺炎などが発症することはありません。健康状態の良い人なら元々持っている免疫力によって抑えられます。

けれど免疫力の弱い乳幼児や高齢の方、持病を持っている方、疲れやストレスの影響で免疫力が落ちたときなどでは注意が必要です。菌の力に体の抵抗力が負けてしまい、様々な部位に炎症を引き起こして重症化する恐れがあります。

免疫力の弱い方や喘息などの方が肺炎球菌に感染した場合、重い肺炎を発症し、命の危険に及ぶケースも見られます。肺炎球菌はその名の通り、肺炎をおこしやすい菌の代表ですが、平成26年の厚生労働省の統計では日本の死亡原因の第3位が肺炎となっています。肺炎で亡くなる方は、年間12万人以上に達します。

肺炎の主な症状は、咳、発熱、痰など風邪の症状と似ており、「肺炎=風邪をこじらせたもの」と誤解されがちですが、肺炎と風邪は違います。肺炎では体内の酸素循環に関わる肺胞に炎症がおこり、酸素と一酸化炭素の交換がスムーズにいかなくなって命に関わることがあります。

肺炎を引き起こす病原微生物には、肺炎球菌、マイコプラズマ、インフルエンザウイルスなどがありますが、肺炎で死亡される方の原因で一番多いのが肺炎球菌の感染です。

肺炎球菌ワクチンの効果の仕組み

ワクチンは、体内に入れることで特定の病原微生物に対する抗体をつくり出し、感染症の発症や重症化の予防が期待できます。体内に入った病原微生物に対する抗体を持っているかいないかで、感染のリスクや症状の重さが大きく変化します。

ある病原微生物に感染した経験があると、体内の免疫機能でその微生物に対する抗体がつくられます。ワクチンはその仕組みを利用したもので、病原微生物の毒性を無害化したものを注射し、疑似感染をおこすことで体内に抗体をつくるように働きます。

こういったワクチンを不活化ワクチンといいますが、多くの方が経験したことがあるインフルエンザワクチンも同様です。

つまり、ワクチンそのものが病原微生物をやっつけられるというわけではなく、体が自分の力で戦えるように抗体をつくることで効果を期待します。ですから感染してしまった後に服用する抗生物質とは異なり、感染する前の予防として接種していきます。

肺炎球菌ワクチン予防接種の効果

肺炎球菌ワクチンの効果は、肺炎球菌に対する抗体を体内につくり、肺炎球菌感染症にかかりづらい状態にすることです。肺炎球菌ワクチンの効果が現れるまでには、接種後3~4週間かかります。

ワクチンを接種すれば感染する可能性がゼロになるというわけではありませんが、感染のリスクは大幅に低くなり、万が一かかったとしても症状が軽く済むことが期待されます。

ワクチンの効果によって抗体がつくられた場合、その効果がいつまで続くのかについては明確な答えがありませんが、肺炎球菌ワクチンでは5年以上持続すると考えられています。ワクチンはたくさん打てば効果が上がるというわけではなく、それぞれのワクチンの性質に合った間隔で接種することが重要です。現在日本では、肺炎球菌ワクチンについては5年ごとの接種が望ましいとされています。

また、肺炎球菌ワクチンには2つの種類があり、それぞれ作用の仕方が異なります。この2つを5年の期間に一定の間隔を置いて接種することで、様々な型の肺炎球菌への免疫力が強化され、予防効果が高まると考えられています。

一口に肺炎球菌と言っても、現在わかっているだけで90種以上の型違いが存在しています。開発されているワクチンがそのすべてに対応できるわけではないため、ワクチンに含まれない型の肺炎球菌が入ってくれば感染の可能性はあります。

ワクチンの効果には個人差もあるため万能とは言えませんが、肺炎球菌ワクチンによって世界中で高い予防率が報告されています。

肺炎球菌ワクチンが奨められる人は?

肺炎球菌ワクチンの接種は強制ではなく、基本的には患者さん本人の希望により受けていただくワクチンです。

ですが、以下のような方は肺炎球菌感染症のリスクが高いため、積極的な定期接種が厚生労働省や各医学会によって推奨されています。

  • 65歳以上の方
  • 5歳以下の乳幼児
  • 喘息やCOPD(肺気腫)など呼吸器の持病がある方
  • 心筋梗塞や狭心症など心臓の持病がある方
  • 糖尿病の方
  • 腎臓の持病がある方
  • 脾臓を摘出された方
  • その他、主治医により接種が有効と判断された方

その理由をご説明していきましょう。

  • 65歳以上の方

65歳以上の方では体内の免疫力が落ち、感染症にかかりやすく、かかると重症化しやすい傾向があります。とくに肺炎にかかったときの重症化リスクが高く、肺炎で亡くなる方のほとんどは65歳以上の方です。

そのため厚生労働省では65歳以上の方に対し、肺炎球菌ワクチンの5年ごとの定期接種を推奨しています。

  • 5歳未満の乳幼児

肺炎球菌は、5歳以下の乳幼児で重大な感染症を引き起こしやすい代表とされています。とくに2歳未満では免疫力が未熟なので重症化しやすく、髄膜炎が悪化すると脳や神経への悪影響が残るケースがあります。

現在は生後2ヶ月から接種できるワクチンがあり、生後2ヶ月~7ヶ月の間に初回の接種を受けることが推奨されています。

  • 持病のある方

若い方であっても、重大な肺炎を引き起こしやすい呼吸器疾患(喘息、COPDなど)や、炎症が症状を悪化させる心疾患(狭心症、心筋梗塞など)、免疫力が低下する糖尿病などの持病があると肺炎球菌感染症によるリスクが高まります。

ワクチン接種が向いているかどうかは持病の状態によって異なりますので、何らかの病気で病院にかかっている方は主治医にご相談ください。

肺炎球菌ワクチンの副作用

ワクチンを打つと免疫が反応しますので、調子の悪さが数日間続くことがあります。このため副作用というよりは、副反応と表現されます。

肺炎球菌ワクチンで多く見られる副反応としては、

  • 接種した部位が赤くなる
  • 接種した部位が熱を持ったり腫れたりする
  • 痛みやかゆみがでる
  • 頭痛
  • 脇が痛む

などがあります。

これはワクチンに対する免疫反応の1種で、通常5日程度で治まりますが、

  • 腫れや痛みがなかなか治まらない
  • 全身の発熱
  • 筋肉痛や脱力
  • 吐き気
  • じんましん

などの症状がでたときや、体調に異変があったときには医師に相談してください。

肺炎球菌ワクチンによる重大な副作用は稀ですが、報告されているものには以下のようなものがあります。

  • アナフィラキシー反応(呼吸困難、意識喪失、急激な血圧低下など)
  • 血小板減少(鼻血が出る、血が止まりにくい、青あざや斑点がでるなど)
  • ギランバレー症候群(筋力低下、しびれなど)

アナフィラキシー反応など急性の副作用では、接種後しばらくすると何らかの変化が見られることがあります。そのため、接種後は病院内で30分程度休み、特別な変化がないのを確認してから帰っていただく方が安心です。

肺炎球菌ワクチンが受けられないケースとは?

肺炎球菌ワクチンは、以下のような人には接種ができません。

  • 接種日に、あきらかな体調不良がある方
  • 発熱中の方
  • 肺炎球菌ワクチンでアナフィラキシーショックをおこした経験のある方
  • 妊娠中の方、妊娠の可能性のある方
  • その他、主治医の禁止がある方

肺炎球菌ワクチンは、できるだけ体調の安定しているときに受けていただいた方が安心です。また、妊婦さんに対しては、持病との関係でよっぽどの必要性があると判断されたときのみの適応で、基本的には接種できないことになっています。妊娠を希望されている方も、ワクチン接種後2ヶ月は避妊が奨められます。

その他、何らかの病気で治療中の方は必ず主治医と相談してください。病気・ケガの状態や治療の内容によっては接種できない場合があります。

肺炎球菌ワクチンの定期接種制度と回数

平成26(2014)年の10月より、65歳以上の方には肺炎球菌ワクチンが定期接種(B類)になりました。平成30(2018)年度までは、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳の5歳刻みでの定期接種が推奨されています。

その年度に対象年齢の誕生日を迎える方のうち、肺炎球菌ワクチンの23価多糖体ワクチン(ニューモバックス)を初めて接種されるときは、自治体によって費用の一部が補助される場合があります。(この制度は随時改正の可能性がありますので、詳細はお住いの自治体にご確認ください)

また、60~65歳で心臓、腎臓、呼吸器の機能に重度の持病(日常生活が極度に制限される程度)がある方や、ヒト免疫不全ウイルスにより日常生活がほとんど困難な方も定期接種の対象となります。

定期接種は患者さん自身の希望によって受けていただくもので強制ではなく、公費助成制度はお住いの自治体(市町村)によって異なります

対象外の方につきましては、患者さん自身の希望や状態に応じ、全額自己負担でワクチン接種を受けていただけます。

肺炎球菌ワクチンの乳幼児への接種

当院では乳幼児への肺炎球菌ワクチンの接種は行っていません。ですが、乳幼児での肺炎球菌についてもご紹介したいと思います。

現在は、生後2ヶ月から受けられる肺炎球菌ワクチンが承認されています。

お子さんの肺炎球菌感染症は、5歳未満(とくに2歳未満)で重症化することが多い病気ですので、生後2ヶ月~5歳までのお子さんの肺炎球菌ワクチンが定期接種となっており、できるだけ早い年齢で初回接種を行うことが推奨されています。

5歳未満の乳幼児の接種の場合、接種費用は無料となる自治体もあります。定期の予防接種の内容は、お住まいの自治体(市町村)が実施の主体となっていますので、詳細はお住いの自治体へご確認ください。

子どもさんは免疫の機能が未熟ですので、年齢によって複数回の接種が必要になります。

  • 生後2ヶ月~7ヶ月で初めて接種する場合

初回接種では27日以上の間隔をあけて、生後12ヶ月の間までに3回接種します。追加接種は生後12ヶ月以降に、生後12ヶ月~15ヶ月の間に1回接種します。

  • 生後7ヶ月~12ヶ月で初めて接種する場合

初回接種では27日以上の間隔をあけて生後13ヶ月までの間に2回、追加接種は生後12ヶ月以降に初回接種終了後60日以上の間隔をあけて1回接種します。

  • 生後12ヶ月~生後24ヶ月で初めて接種する場合

60日以上の間隔をあけて2回接種します。

  • 生後24ヶ月~生後60ヶ月で初めて接種する場合

1回接種します。

平成25年11月1日より、小児用肺炎球菌のワクチンが変更になりました。従来は7価ワクチンでしたが、現在は新たに6種類の肺炎球菌に対応する成分が追加され、13価ワクチンとなっています。

以前7価ワクチンで初回接種が終了された方は、8週間以上経過した後に13価ワクチンを1回接種すると追加6種類に対する抗体が上昇し、より高い予防効果が期待されると報告されています。その場合は費用の補助は受けられませんが、確実な予防のために接種が望ましいと言われています。

肺炎球菌ワクチンの種類と接種間隔

現在、日本で効果効能が認められた成人用肺炎球菌ワクチンは2種類あります。

  • 23価多糖体ワクチン
    ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)
  • 13価結合型ワクチン
    プレベナー13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)

乳幼児には13価結合型ワクチン『プレベナー13』のみ適応ですが、成人の方は希望に応じて2種類から選ぶことができます。

2018年現在、厚生労働省が5年ごとの定期接種として推奨しているのは、23価多糖体ワクチン『ニューモバックスNP』の方です。『プレベナー13』は患者さんの希望に応じ、『ニューモバックスNP』と併用することができます。

この2種のワクチンは作用の仕組みが違うため、2種類を併用することでより高い効果が期待されると言われています。

成人の方が同ワクチンを追加接種するときや、2種を併用するときに推奨される接種間隔は、ガイドラインでは以下のようになっています。

  • 23価多糖体ワクチン『ニューモバックスNP』を追加接種するとき

5年以上の間隔で行う

  • 23価多糖体ワクチン『ニューモバックスNP』の後に13価結合型ワクチン『プレベナー13』を接種するとき

1年以上の間隔を置いて行う

  • 13価結合型ワクチン『プレベナー13』の後に23価多糖体ワクチン『ニューモバックスNP』を接種するとき

6ヶ月~4年の期間内で行う

日本では、成人の方の肺炎球菌ワクチン接種は、23価多糖体ワクチンの5年ごとの定期接種が基本です。一方、海外では先に13価結合型ワクチンを接種し、その後6ヶ月~12ヶ月の間に23価多糖体ワクチンを接種する方法が取られている所もあります。

ワクチンの性質上は13価結合型ワクチンの後、6ヶ月~4年以内に23価多糖体ワクチンを接種すると効果が高まると言われているのですが、現在日本ではまだ明確なデータがそろっていないため、13価結合型ワクチンの接種については希望される方のみへの接種となっています。

将来的には、定期接種の方法・種類や公費補助制度が変更される可能性もあります。

ニューモバックス

日本では1988年に承認されたワクチンです。

「莢膜ポリサッカライド」は、肺炎球菌を守っている莢膜の主成分で、糖のつながった多糖体でつくられています。これに対するワクチンなので、多糖体ワクチンと呼ばれます。

この膜のせいで人間の免疫細胞は肺炎球菌を退治しにくいのですが、このワクチンを接種すると莢膜ポリサッカライドに対する抗体がつくられ、肺炎球菌への免疫細胞作用が増強されます。

23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチンは、23種類の型の肺炎球菌ポリサッカライドが含まれたワクチンで、これを接種することで23種類の肺炎球菌に対する抗体値が上がり、肺炎球菌全体からの感染を予防・軽減させると考えられています。

※ニューモバックスについて詳しく知りたい方は、『ニューモバックスの効果と特徴』をお読みください。

プレベナー

日本では2013年10月より小児での予防接種として承認され、2014年に、65歳以上の高齢者に対する効能・効果が承認されたワクチンです。

『ニューモバックスNP』に含まれない種類を含む、計13種類の肺炎球菌に対応する成分が含まれます。7価のものは以前から乳幼児用として使われており、現在は乳幼児用も13価のものに変更されています。

海外でのデータも含め、65歳以上の成人に対する安全性や効果は『ニューモバックスNP』とほぼ同等と報告されています。

2020年5月より年齢による制限が取り除かれ、肺炎球菌による疾患に罹患する危険性が高いと考えられるケースには、予防目的でのプレベナーワクチンが適応となりました。

※プレベナーについて詳しく知りたい方は、『プレベナー13の効果と特徴』をお読みください。

肺炎球菌ワクチンの接種費用と時期

肺炎球菌ワクチンには健康保険は適応されず、自費診療の扱いとなります。お住まいの自治体(市区町村)の制度により、対象の方が初めて肺炎球菌ワクチンを接種する場合に限り、費用が一部補助される場合があります。

補助の内容や負担額は各自治体や年度によって異なりますので、詳細はお住まいの自治体(市町村)へご確認ください。

目安

平成29年度(平成29年4月1日~平成30年3月31日)の神奈川県川崎市の接種費用

  • 該当期間に65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳の誕生日を迎える方

→3,000円(23価多糖体ワクチンを初めて接種される方に限り)

  • 生後2ヶ月~5歳未満の乳幼児

→無料

肺炎球菌ワクチンは、インフルエンザワクチンとは性質が違うため、特別冬の時期に受けなければいけないと決まっているわけではありません。都合の良いタイミングを選んで受けていただけますが、公費補助制度のある自治体では期間が定められている場合があります。

年度や自治体によって受けられる日程が異なりますので、お住まいの自治体にお問い合わせ下さい。