更年期障害とは?
「急に汗が吹き出てきて止まらない!」
「イライラして感情のコントロールができない。」
「体がだるい。仕事に集中できない。」
「腟の中や外陰部に不快感があって気持ち悪い。」
「手や足の関節が痛くてうまく動かせない。しびれもある。」
「夜なかなか寝付けない。寝てもすぐに目が覚めてしまう。」
このような症状で困っていらっしゃる、40〜60歳代の女性はたくさんいらっしゃいます。
これらは更年期障害において見られる典型的な症状です。
更年期における、このような不快な症状の内容や程度はひとそれぞれ大きな違いがあります。
あまり症状がひどくない場合には、ちょっとした生活の工夫をすることによって快適に過ごすことができますが、症状の程度が強く、毎日の生活に支障を来している場合には治療の適応となります。
“これぐらいはがまんしなくちゃ”と病院に行かずに我慢している方もいらっしゃるかと思います。
更年期障害に対してはいろいろな治療法があります。
また、その症状は更年期が原因ではなく背後に別の病気が隠れていることもあります。
更年期かも?と思うことがあれば、気軽に婦人科へ相談しにいらっしゃってください。
本日は更年期障害についてお話しします。
原因
日本産婦人科学会では「更年期とは閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた10年間である」と定義しています。
閉経前後には、卵巣機能が少しずつ低下していき、エストロゲンが減少することが原因となってしんどい症状が起こります。
では、そもそも閉経とはどのような状態を指すのでしょうか?
最後に月経(生理)が来た時から、12カ月間、出血がない状態が続いたときが閉経であると医学的には定義されています。
日本人女性においては平均49.5歳で閉経すると言われており、50歳プラスマイナス5歳の間において閉経するのは正常であると考えられています。
よって通常は45〜55歳で閉経します。
更年期障害の一番の原因は卵巣機能低下ですが、原因はそれだけではありません。
社会環境的要因や心理的要因も深く関わっています。
40〜60歳代の女性では、社会において置かれている状況はそれぞれ大きく異なります。
周りの環境やその環境に対する心持ちが更年期障害にも影響を及ぼす為、症状の出方や程度は個人差が大きいと言えます。
ひとそれぞれに感じている症状は違うんだということを理解することはとても大切なことです。
症状
簡略更年期指数 というチェックリストがあります。
以下の10項目について症状の程度から点数をつけ、その合計点によって症状の程度を評価できます。
- 顔がほてる
- 汗をかきやすい
- 腰や手足が冷えやすい
- 息切れ、動悸がする
- 寝付きが悪い、または眠りが浅い
- 怒りやすく、すぐイライラする
- くよくよしたり、憂うつになることがある
- 頭痛、めまい、吐き気がよくある
- 疲れやすい
- 肩こり、腰痛、手足の痛みがある
合計点が高い場合には、婦人科で相談して頂くほうがよいと言えます。
ただ、点数が高くない場合においても、その症状によって日常生活を快適に過ごすことができず、支障を来している場合には治療の適応となりますのでご相談ください。
診断
まずは患者様からの詳細な問診を行います。
どのようなことで困っているのかを具体的に話して頂けると助かります。
閉経が近いかどうかを知りたいという場合には、エストラジオール(E2)や卵胞刺激ホルモン(FSH)を測定することによって、卵巣機能を評価することができます。(あくまで参考程度です。)
更年期障害ではなく、それ以外の病気が原因で身体・精神症状が起こっていることもあります。
一番頻度が高い疾患は甲状腺機能異常です。
月経の異常、ホットフラッシュ、倦怠感、うつ症状は甲状腺疾患においてもよく見られます。
糖尿病や高血圧などの合併症や普段内服している薬剤が原因となっていることもあります。
このような情報も合わせて教えていただきたいです。
治療
生活習慣の改善
食事や運動など生活習慣を見直すことによって症状が改善することがあります。
エストロゲン濃度が低下することにより骨粗鬆症や動脈硬化のリスクが高まります。
骨粗鬆症を予防するために、カルシウム(乳製品、小魚、緑黄色野菜、大豆)やビタミンD(魚類、キノコ類)、ビタミンK(納豆、緑黄色野菜)を積極的に摂取するようにしましょう。
カフェインやアルコールの摂りすぎはカルシウムの吸収を阻害しますので注意してください。
動脈硬化を予防するためにはエネルギー摂取量を適正範囲内にし、体重を増やし過ぎないようにすることが大切です。定期的な運動も効果的です。
漢方療法
症状や体質から個々の患者様にふさわしいと考えられる漢方を処方しています。
まずは1カ月程度内服してみて、症状の改善があるかどうかを判断するようにしてください。
ホルモン補充療法
エストロゲンを補充し、ホットフラッシュ、発汗、不眠などの症状が改善することを目指します。
子宮摘出後であれば、エストロゲンのみを投与し、子宮を有する方には黄体ホルモンを併用します。
エストロゲン製剤には、内服するものと、皮膚から投与するもの(ジェル、パッチ製剤)があります。
血栓症予防の観点から、経皮製剤をおすすめしています。
黄体ホルモンは連続投与と周期投与があります。
長らく月経がない女性には連続投与を行い、月経がある、最近まであった方には周期投与を行うことが多いです。
ホルモン補充療法を行う前には、子宮頸がん(体がん)の検査、経腟超音波検査、血液検査、乳がん検診を受けて頂き、ホルモン補充療法を行ってもよいかどうかを判断しています。
※精神症状が強く出ている場合には、心療内科で相談されることをおすすめします。
まとめ
更年期はおよそ10年間続き、その期間にはひとそれぞれ様々な症状に悩まされます。
どのような症状が出るのか、どの程度症状がでるのかは個人差がとても大きいです。
更年期障害の症状は、それぞれ違っているということを理解することによりご自身の症状も、周りの方の症状も和らいでいく一歩になります。
また更年期障害と思っていたら、甲状腺の病気だったということもよくあります。
自己判断せず、病院で検査を受けてみることをおすすめします。
更年期障害の治療法にはいろいろな選択肢があります。
ご自身に合う治療法がきっと見つかるはずです。
更年期障害でお困りの際には気軽に婦人科へご相談頂けると幸いです。
一人でも多くの女性が、健やかな更年期を過ごせることを祈っております。
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カテゴリー:更年期障害 投稿日:2024-10-06
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