急性扁桃炎の症状、治療法は?何日で治るかについても医師が解説
扁桃炎とは
扁桃腺は、口と喉の間に位置し、体内に侵入する細菌やウイルスから体を守る免疫組織の一部です。
扁桃炎は、これらの扁桃腺が何らかの感染により炎症を起こす病気を指します。
扁桃炎には急性に炎症が起こるものと、慢性的に炎症が起こっているものがあります。
今回の記事では、この2つのうち、急性扁桃炎について解説していきます。
急性扁桃炎は、急性咽頭炎つまり喉の炎症のうち、口蓋扁桃(こうがいへんとう)という場所に主な炎症が起こっているものとされています。しかし、実際には急性扁桃炎と急性咽頭炎を厳密に区別することは難しい場合もあります。また、治療法もほぼ同じとなっています。そのため、以下では急性咽頭炎・扁桃炎に関してのご説明をしていきます。
原因と種類
扁桃炎は細菌性扁桃炎とウイルス性扁桃炎と、大きく分けて二つのタイプに分けられます。
細菌性では、A群β溶連菌(エーぐんベータようれんきん)、ウイルス性は風邪を引き起こすウイルスであるアデノウイルスなどが重要な原因です。
急性咽頭炎・扁桃炎の原因ウイルスとしては、アデノウイルスの他、RSウイルスやインフルエンザウイルスなどがあります。また、細菌性のものでは、肺炎球菌や黄色ブドウ球菌なども検出されると言われています。しかし、実際には細菌に単独で感染しているケースが43.8%、ウイルスと細菌との混合感染が10%、ウイルス単独感染が8.8%とされる調査もあります。
細菌やウイルスへの感染以外にも、幼少児期には扁桃(口蓋扁桃:こうがいへんとう)・アデノイド(咽頭扁桃:いんとうへんとう、のどのより奥の方の組織)が肥大し、何回も反復して扁桃炎になってしまうことがあります。なお、扁桃・アデノイド肥大の他の症状としては、いびきや睡眠時無呼吸などがあります。
症状
急性扁桃炎の主な症状には以下のようなものがあります。
- 喉の痛みや違和感
- 発熱
- 飲み込む際の痛み
- 頭痛
- 扁桃の腫れや赤み
- 声のかすれ
- 首のリンパ節の腫れ
さらに、細菌性扁桃炎では、扁桃に白い斑点が見られることがあります。
急性咽頭炎や扁桃炎になってしまった際に大切なポイントは、以下の2つになります。
- 原因が細菌によるものか、それともウイルス性によるものか判断すること
- 症状の重さ(重症度)はどのくらいの程度なのかに合わせた治療を行うこと
これらの2つのポイントを見極め、適切な治療を行っていくために、日本口腔・咽頭科学会ガイドライン委員会は急性咽頭炎・扁桃炎を症状などからスコアリングし、重症度を客観的に判定し、そしてその重症度に見合った治療をするように医療スタッフに呼びかけています。
なお急性咽頭・扁桃炎の重症度などについては、以下のようなスコアが用いられています。
このスコアの合計が高いほど、重症度が高いということになります。
診断方法
医師は患者の症状と喉の検査を基に診断を行います。
細菌性扁桃炎の疑いがある場合、喉から採取した検体を培養して細菌の存在を確認することがあります。
細菌の中でもA群β溶連菌の感染が疑わしいかどうかを判断することが、扁桃炎の診断では大切なポイントになります。そこで、A群β溶連菌感染かどうかを判断するため、年齢で補正されたCentor(センター)の基準が設けられています。この基準は、以下の4項目に年齢補正を加えて点数をつけ、A群β溶連菌感染の有無を推測するためのものです。
- 38℃以上の発熱
- 咳がない
- 首のリンパ節の腫れがあり、触ると痛い
- 扁桃炎があり、膿や浸出液などが出ている
そして年齢補正は、15歳未満なら+1点、15〜44歳なら+0点、45歳以上なら‐1点となります。
このスコアが高いほど、A群β溶連菌感染の可能性が高まります。
先ほどお示しした重症度が高いほど、同様にA群β溶連菌感染の可能性が高まると言われています。
治療
細菌性扁桃炎の場合は抗生物質が効果的です。
特に、A群β溶連菌感染で、症状が軽症から中等症の場合には、ペニシリン系の内服薬などが使われます。重症の場合には、場合によっては入院で抗生物質の点滴治療を行うこともあります。
外来で治療を行う場合、A群β溶連菌に対してはペニシリン系の抗生物質が10日間分処方されます。アレルギーなどがある場合には、他のタイプの抗生剤が選ばれることもあります。
A群β溶連菌感染をきちんと治療しておかないと、急性糸球体腎炎という腎臓の病気や、リウマチ熱という合併症が後ほど出現してしまう場合があります。
このような合併症を予防するためには、処方された分の抗生物質を内服し、治療を行うことが大切です。
また、細菌性扁桃炎の際に治療をしっかりと行うことは耐性菌の発生を避けるためにも重要です。
しかしながら、ウイルス性扁桃炎では、抗生物質は無効です。そこで、症状を和らげるための対症療法が中心になります。十分な休息と水分補給、痛みや発熱を和らげるための薬が処方されることが多いです。
繰り返し扁桃炎を発症する場合や、扁桃やアデノイドが肥大して呼吸や飲み込みに影響を及ぼす場合は、扁桃摘出術の検討が必要になることがあります。
回復期間:何日くらいで治るのか?
扁桃炎の回復期間は原因と治療方法によって異なります。
A群β溶連菌の場合には、適切な治療を受けた場合、速やかに解熱し、24時間後には感染力はほとんど消失します。
そして、抗菌薬投与なしでも、多くは4〜7日で症状は消失します。しかし、先ほど述べたように、症状が無くなっても処方された薬は飲み切ることが大切です。
ウイルス性扁桃炎の場合、症状は通常、7〜10日で自然に改善します。
予防策
扁桃炎は、免疫力の低下によって発症しやすくなってしまいます。
そのため、バランスが取れた食事や十分な睡眠時間を確保するなど、健康的なライフスタイルを送り、免疫力を高めることが重要です。また、良好な手洗い習慣や、うがいなどの基本的な感染症対策も効果的と考えられます。
まとめ
扁桃炎は、特に子供や若者に一般的な疾患です。
細菌性扁桃炎では抗生物質による治療が、ウイルス性扁桃炎では対症療法が主になります。完全に治癒するまで、小児科医や耳鼻科医から指示された治療を完遂することが必要です。
もし何度も扁桃炎を繰り返す場合には、耳鼻咽喉科の専門医に相談してみましょう。
参考文献
- 急性咽頭炎,急性扁桃炎の抗菌薬治療を考える.日耳鼻感染症エアロゾル会誌.2020;8(3):184-192.
- 急性咽頭・扁桃炎.口咽火.2005;17(2):189-195.
- 小児科からみたA群β溶血性レンサ球菌による咽頭扁桃炎.日耳鼻.2012;115:1-7.
- 扁桃・アデノイドの基礎知識と手術治療に関連する問題点.日耳鼻.2016;119:701-712.
- 規則正しい生活で防ごう「扁桃炎」 千葉県医師会
- Large-Scale Validation of the Centor and McIsaac Scores to Predict Group.A Streptococcal Pharyngitis.Arch Intern Med. 2012 Jun 11; 172(11): 847–852.
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カテゴリー:喉の病気 投稿日:2024-05-31
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