【医師が解説】かぜ(感冒)の症状・診断・治療

風邪とは?

元住吉駅前院の内科医がかぜについて詳しく解説します。

かぜ(感冒)というのは実は医学用語にはなくて、世間で広く使われている一般用語になります。

鼻からのどにかけての上気道と、喉から下の気管支や肺にかけての下気道に、細菌やウイルスが感染することによる病気の総称になります。一般的な症状としては、

  • くしゃみ
  • 鼻水
  • 鼻づまり
  • のどの痛み

などの上気道(鼻や喉)の症状、

  • 息苦しさ

などの下気道症状(気管支や肺)を認めることが多いです。

これらの症状に伴って、

  • 発熱
  • 頭痛
  • 関節痛
  • 腹痛

などの全身症状を認めることがあります。

医師はこれらの症状や所見から、

  • 鼻炎
  • 上気道炎
  • 咽頭炎
  • 喉頭炎
  • 気管支炎
  • 肺炎

など、どの部位に細菌やウイルスがいるか予想して診断します。部位によって感染する細菌やウィルスの種類、および気をつける病気が変わるからです。

症状が重篤な場合は、レントゲンや採血を行うことで重症度を判断することもあります。一般的に風邪の9割は、

  • ライノウイルス
  • コロナウイルス
  • エンテロウイルス
  • エコーウイルス
  • コクサッキーウイルス
  • アデノウイルス
  • パラインフルエンザウイルス

といったウィルスが中心になります。このウィルスの治療は、

  1. うがい手洗いでばい菌を体の外に追い出す
  2. 安静にして、体の免疫細胞がウイルスをやっつけるのを待つ

ぐらいしかないのが現状です。

一方で、残り1割が細菌です。細菌は抗生剤(抗菌薬)でやっつけられることができます。このように抗生剤はウィルスには意味がないですが、細菌には効果があるお薬なのです。

かぜの当院の診察について

クリニックには多くの風邪の方が受診されます。その症状、状態、受診した理由は千差万別です。

  1. 明日会社で重要な会議なのに喉が痛いから痛み止めを出してほしい。
  2. テスト前で何となく寒気がするから診て欲しい。
  3. 明日から旅行行くのに少し咳が出始めた。

といった軽症な方もいれば、

  • 熱が高くて寝たきりだ。
  • 喉が痛くて食事ができない。
  • 咳が激しくて、外に出れない。

と重症な方もいます。

軽症な方は、なるべく早く診察してもらって日常生活に戻りたい方が多いでしょう。一方で重症な人は、しっかりと診察して病気を確定した方が良いと思います。

このように同じ風邪症状でも、人によって求める医療が異なるのが風邪です。

そのため当院では事前に問診用紙で、

  • 診察医にまかせる
  • 検査は必要最小限で、なるべく早く処方して欲しい
  • 採血やレントゲン含めてしっかりと診断して欲しい

の3項目に分けて確認させていただきます。患者様のニーズに沿って治療を行っていきます。

我々の体は、実は非常に優れています。病状が悪くなった場合、採血やレントゲンの検査などよりも早く、バイタルサイン(血圧、脈拍、酸素状態、体温)や症状が異常を知らせてくれます。

そのため軽度の症状であれば、

  • バイタルサイン
  • 問診
  • 身体所見

を確認してお薬を処方することも可能です。

人によっては処方箋だけ欲しいといわれる方もいらっしゃいますが、診察はとても重要になります。風邪は、上気道か下気道に細菌やウイルスが感染した総称になります。実はそれぞれの部位で、重篤な病気が隠れていることがあります。怖い病気は最後にまとめておきますので、一読してみてください。

かぜで必要となる検査について

まずは診察の中で、ほっといたら命に関わる病気がないか確認することになります。先ほどお伝えした体のバイタルサインから、重大な異常がないか確認します。

具体的には、以下のようなものです。

  • 体温・・・ばい菌に感染した場合、まず最初に認めることが多いのが発熱です。
  • 血圧・・・血管の圧力です。低い場合は発熱による脱水、また敗血症(全身にばい菌が回ってる状態)を確認します。
  • 脈拍・・・心臓が脈打つ回数です。回数が多い場合(頻脈)及び低い場合(徐脈)は、血圧と同様に敗血症を疑います。
  • 酸素状態(SpO2)・・・血液中の酸素状態を見ます。低い場合は肺炎などで酸素が足りていない可能性があります。

特に血圧、脈拍、SpO2に異常がある場合は、非常に緊急を要することが多いです。このバイタルサインは、クリニックを初めとした全ての医療機関の基本です。ドラマなどの舞台になる高度救命センターも、まずはバイタルサインを確認します。

そして異常があれば、

  • どうしてバイタルサインが異常なのか?
  • どのようにバイタルサインを立て直すか?

に全力を注ぎます。そのためバイタルサインに異常がある方は、追加で検査、場合によっては当院の提携している総合病院にご案内させていただきます。

症状が重いので細かく検査して欲しい方も、スタートは同じです。まずは、バイタルサイン、問診、身体所見で、全身状態を確認します。そして、どこに原因が隠れているかの見当をつけます。

これらで必要があれば、

  • 採血
  • 胸部または腹部レントゲン
  • 心電図
  • 咽頭ぬぐい液検査(溶連菌・インフルエンザ)
  • 尿検査

などの検査をしていきます。

かぜで採血する目的

かぜをひいて採血をする場合としない場合があります。その違いについてお伝えしていきましょう。

採血することで最も知りたいのは、炎症の程度になります。具体的には、

  • CRP(C-反応性蛋白)・・・炎症や組織細胞の破壊が起こると血清中に増加するたタンパク質
  • 白血球・・・ばい菌と戦うための細胞

この2つの項目が、その指標になります。

これらの炎症の値は、治療効果判定にも用いられます。当院では、院内ですぐに検査をすることができる体制となっています。これらの値をみて、入院治療も検討する必要があるかの判断ができます。

そのほかにも、

  • AST、ALT・・・肝臓の状態を見ます。肝障害があると多くのお薬が使用しづらくなります。
  • BUN、Cre・・・腎臓の状態を見ます。悪化している場合は脱水などを考えます。
  • 塩分、カリウム・・・体内の電解質の状態を見ます。こちらも脱水症状の有無の確認になります。

などを調べます。ただしこれらの項目は、当院では当日に結果が出ないこともあります。その場合、翌日以降の結果説明となります。

また、せっかく採血するのであれば、他の病気が隠れていないか調べたいという方もいらっしゃいます。病気が隠れている疑いがある方に対して、当院でも検査をすることができます。

  • 脂質異常症
  • 糖尿病

などの生活習慣病などを中心に調べることが多いです。

どちらも最低限の項目であれば、院内で実施することもできます。特に糖尿病などが合併していると免疫力低下にもつながるため、風邪も長引いてしまいます。

当院受診を機に疑わしい病気がないかを調べたいという方は、医師にお伝えください。

かぜの治療

かぜの治療にあたっては、まずは原因を推定することです。細菌が原因と推定されれば、抗生物質を処方します。抗生物質といっても様々な種類があるので、疑わしい菌をやっつけることができるものを選びます。

細菌が原因でなければ、抗生物質を使っても意味がありません。インフルエンザなどの一部のウイルスには治療薬がありますが、多くのウイルスは自分の免疫でやっつけるしかありません。

かぜをひくとツライ症状がたくさんあるかと思います。ですがこれらは、実は細菌やウイルスが起こしている症状ではありません。敵と戦うために、私たち自身の体が引き起こしているのです。

一例をあげると、

  • 発熱・・・免疫細胞が戦うために出す炎症物質によって、ばい菌の繁殖を抑制します。
  • 咳・・・喉や気道に入ってきたばい菌を外に出す防御反応。
  • 鼻水や痰・・・鼻や気道にいるばい菌を除去した粘液物質。
  • 咽頭痛・・・痛みによって、喉にばい菌がいることを知らせてくれています。

このように全ての症状は、私たちの体が敵と戦うために自ら症状を出しているのです。そのため医師によっては、「風邪の症状は細菌やウイルスと戦ってる証拠だから、ゆっくりと休んでれば治る」と考え、お薬を処方しないことも多いです。

お薬を使うにしても、つらい症状を緩和させる対症療法となります。例えば、

  • 咳・・・メジコン・フスコデ
  • 鼻水・・・ポララミン
  • 痰・・・ムコダイン
  • のどの痛み・・トランサミン
  • 熱や頭痛・・・ロキソニン・カロナール
  • 総合的な症状・・・PL顆粒

こういったお薬が処方されます。

かぜの当院の治療方針

私たちのクリニックは、社会生活を大切に考えています。仕事や家事をしている多くの方は、突然の風邪に対して困ることも多いと思います。

  • 明日の会議は自分がいないと仕事にならない。
  • 大切な試験だから休めない。
  • 何か月も前から予約していたお店だから休みたくない

このような方は、「ゆっくり安静にしていれば治る」では困ることも多いでしょう。私自身も当直当日の朝に喉が痛くなった時に、「風邪だから今日の当直はできません」なんてことは、当然許されませんでした。

かぜの治療は対症療法になることがほとんどですが、対症療法は必要と考えております。つらい症状を少しでもお薬で和らげて、日々の生活を送れるようにしなくてはなりません。

ただし、大切なことがあります。解熱鎮痛薬や痰切り、咳止めなどのお薬は、あくまでも症状を一時的にごまかす治療になります。決して症状が軽くなったから治ったというわけではないので、無理だけはしないようにしてください。

さらに当院は、患者様の症状に合わせて的確な処方を心がけています。例えば風邪薬の代表的なお薬に、PL配合顆粒があります。配合と書かれている通り、非常に様々な種類のお薬が入っていて、利便性が高いです。一方でどんな種類のお薬が入ってるか、ご存知でしょうか?

PL配合顆粒には4種類のお薬が含まれています。

  • サリチルアミド:NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)として、解熱・鎮痛作用を発揮します。
  • アセトアミノフェン:NSAIDsとは違う機序の解熱鎮痛剤で、こちらも解熱・鎮痛作用を発揮します。
  • プロメタジンメチレンジサリチル酸塩:抗ヒスタミン薬として、鼻水やくしゃみといった症状を緩和します。
  • 無水カフェイン:脳を覚醒させる作用や疲労回復作用を発揮します。

咳や痰などの症状は、PL配合顆粒では改善する成分が含まれていません。また喉の痛みだけを何とかしてほしい人にPL配合顆粒で処方すると、抗ヒスタミン薬の作用は不必要になるばかりか、眠気などの副作用によってデメリットが大きくなってしまいます。

当院ではこのように、「風邪だったら風邪薬」と決めるのではなく、患者さんの症状に合わせた処方を心がけます。その一方で、いくつかお願いがあります。

当院で処方されたお薬でも効果がない場合は、状態が悪いことが多いです。痛みや発熱といった症状は、我々の体に何か起こってるという警報です。お薬はその警報を、一時的に和らげる役割があります。このお薬でも症状が治らない場合は、「もっと強力なお薬で無理をする」と危険になりますので、しっかりとお家で休むようにしましょう。

さらに症状が悪化した場合は、下に挙げるような危険な病気が隠れているかもしれません。我々も診察で細かく確認していきますが、医学に「絶対」はありません。また風邪が悪化して怖い病気に進行することもあります。

そのため、お薬で症状が改善しない場合、悪化していく場合、何か違う症状が出てきた場合は、すぐに病院を受診してください。場合によっては入院が必要になるような場合もあります。その場合は、連携医療機関をご紹介させていただきます。

また、薬を飲めば症状が取れるけど、だらだらと症状が続いている場合も危険なことがあります。何度も書きますが、お薬は症状を和らげるどまりで、病気を治すわけではありません。警報機が鳴り続けているのを無視し続けると病気が悪化して、場合によっては手遅れになる場合もあります。

例えば咳が出続ける病気でレントゲンを撮ってみると、肺癌や肺結核などといった怖い病気が隠れていることがあります。

ですから初診時に細かく採血やレントゲンを希望されなかったとしても、医師が必要と感じたり、再診時に症状が残っている場合、検査をお願いすることもあるのでご了承ください。

症状が軽くても怖い病気は多くあります。手遅れになる前に、必要な検査はしっかりと行って原因を調べていく必要があります。

風邪の症状で怖い病気

かぜと診断するのは実は非常に難しいです。なぜなら、全ての病気を除外して、残った病気が風邪だからです。

ここでは風邪と同じ症状だけれれども、怖い病気をいくつか記載させていただきます。

ここでご紹介する病気以外にも、多くの病気を我々は鑑別疾患として頭の中に入れながら治療していきます。「この病気は大丈夫かしら?」などといった心配ごとがあれば、遠慮せずにどんどんご質問ください。

髄膜炎

脳が浮かんでる髄液に、細菌やウイルスが感染した病気です。髄液は基本的に無菌のため、感染すると急激に悪化します。

代表的な症状としては、

  • 頭痛
  • 発熱
  • 項部硬直(首が固くなる)

の3徴がいわれていますが、3つ揃うのは約6割といわれています。発見が遅れると命に関わる怖い病気です。

副鼻腔炎

鼻の穴に隣接する副鼻腔に膿が溜まる病気です。鼻水を認めることがほとんどです。炎症が副鼻腔から脳に進行すると非常に危険です。副鼻腔に炎症がある場合、その部位を打診することで痛みが発生することがあります。

咽頭膿瘍

喉の部分(咽後間隙(いんごかんげき))に膿が溜まる病気です。症状としては喉の痛みや発熱とともに、悪化していくと食事もとれなくなります。

喉の中を視診して膿がないか確認しますが、視診だけでは確認できないことも多いです。咽頭膿瘍は、膿を切開しない限り治らない病気です。

喉頭蓋炎

喉の奥にある喉頭蓋に炎症が起こる病気です。喉頭蓋は、食物がのどを通過して食道に入るときに、隣接する気管に蓋をすることで、食べ物が気管支に行かないようにします。

この喉頭蓋に炎症が起こり腫大すると、食べ物が通過しなくても気道を塞いでしまい大変危険です。完全に気道を塞いでしまうと窒息してしまいます。症状は激しい喉の痛みです。食べ物が食べづらい、唾も喉が痛くて呑み込めないほどの痛みであれば、喉頭蓋炎を疑います。

膿胸

肺と筋肉の間にある胸腔という部分に膿が溜まる病気です。膿は抗生物質が効きづらいため、除去する必要があります。早期であれば、管(ドレーン)を側胸部から刺して膿を外に出します。

ただし、長期間たった膿はコンクリートのように固まってしまい、管を入れただけでは出てきません。場合によっては、手術で膿を掻き出す必要があります。症状は、長引く咳や痰、発熱です。悪化すると、息苦しさや胸の痛みが出てきます。

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大澤 亮太

執筆者紹介

大澤 亮太

医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師

日本精神神経学会

精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了

カテゴリー:かぜ(感冒)  投稿日:2019-05-09

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