健康診断でわかる主な血液の異常について

血液検査

健康診断で実施される血液検査は、病気の早期発見に役立つ重要な検査です。
実施される項目は健康診断の種類によって異なりますが、赤血球、白血球、血小板といった血液細胞の数や種類を調べることができます。
今回は健康診断でわかる主な血液の異常についてわかりやすく説明するとともに、検査値の異常が現れる可能性のある病気にはどんなものがあるか、そして健康診断で異常を指摘されたらどうすれば良いのかについてご紹介します。

健康診断における血液の異常についての検査項目

血液の異常について健康診断で実施する主な検査項目は、赤血球系、感染や白血病などを見る白血球系、血液の固まり具合を見る血小板系の3つに分けられます。
会社で行う健康診断の場合、法律で定められた貧血の検査を除き、どの項目を実施するかは会社が決めています。
人間ドックの場合はある程度自分の希望の検査を受けることができますが、検査項目が増えるとともに費用も嵩みます。
健康診断で実施する赤血球系の検査項目としては、以下のものがあります。

  • 赤血球数(RBC)
  • 赤血球の中にあるヘモグロビン(Hb)濃度
  • 血液の濃さを示すヘマトクリット(Ht) など

貧血の検査は労働安全衛生法で定められた定期健康診断の項目の一つであり、会社に言われて健康診断を受けている方は、必ず実施しているはずです。
また白血球系の検査項目としては白血球数や好中球分画など、血小板系の検査項目としては血小板数などがあります。

赤血球系の異常

赤血球は、肺から取り込んだ酸素を全身に運ぶ役割を担っています。
健康診断でわかる赤血球の異常は、主に赤血球の数に関する異常です。

赤血球が少ない

血液の中に含まれる赤血球のヘモグロビン濃度が少ない状態のことを、「貧血」と呼んでいます。
令和4年に定期健康診断を受けた方のうち、8.3%の方で貧血の項目の異常がみられました。
貧血にもいくつか種類がありますが、最も一般的な貧血は、鉄分の不足によりヘモグロビンが十分に作られないことが原因の鉄欠乏性貧血です。
その他、悪性貧血や溶血性貧血など、いろいろな種類の貧血があります。

赤血球が多い

赤血球が多い状態のことを、多血症と言います。
多血症には、骨髄での赤血球産生が過剰になっている真性多血症と、脱水などで血液中の水分が減少し、赤血球の割合が相対的に増加している二次性多血症があります。

白血球系の異常

白血球は、身体の外からやってくる細菌やウィルスと戦う機能(免疫機能)を担う血液成分です。
健康診断でわかる白血球の異常は、数の異常と形の異常に大きく分けられます。

白血球が多い

白血球が多い状態のことを、白血球増多症といいます。
血液の病気がない人でも、風邪や肺炎などの感染症や怪我などの炎症などにより、一時的に白血球数が増加することがあります。
白血球が増える血液の病気の代表としては、白血病があります。

白血球が少ない

白血球が少ない状態のことを、白血球減少症といいます。
主な原因としては白血病の他、原発性骨髄線維症や骨髄異形成症候群など、白血球が作られる場である骨髄の異常などがあります。
白血病については、病気のタイプや進行状況によって白血球数が増えることもありますし、逆に白血病細胞が増え過ぎて普通の白血球が減ることもあります。

白血球の形が通常と異なる

白血病やリンパ腫の場合、血液中に通常は存在しない形の血球がみられることがあります。
この場合は、すぐに血液内科を受診することをお勧めします。

血小板系の異常

血小板は、怪我などで血が出た時に血を固め、出血を抑える働きがあります。
健康診断でわかる血小板の異常は、主に血小板の数の異常です。

血小板が多い(血小板増多症)

血小板が多い病気のことを、血小板増多症といいます。
血小板が多すぎると、血栓(けっせん:血のかたまり)ができやすくなったり、逆に多すぎて固まりにくくなり出血の原因となります。
血小板増多症の主な原因は、正常な血小板が炎症などの影響で一時的に増えている反応性血小板増多症と、異常な血小板が慢性的に増えている本態性血小板血症です。

血小板が少ない(血小板減少症)

血小板が少なくなる病気のことを、血小板減少症といいます。
血小板が少なくなると、出血が止まりにくくなったり、紫斑(青アザ)ができやすくなったりします。
血小板減少をきたす代表的な病気としては、以下のようなものがあります。

  • 特発性血小板減少性紫斑病(ITP):自分の免疫機能が自分の血小板を攻撃して起こる
  • 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP):血小板同士をくっつける酵素の異常で細かい血栓がたくさんできるため血小板が減る
  • 再生不良性貧血:骨髄での血小板産生が低下する など

健康診断で血液の異常が出たら二次検診を受けよう

血液検査で異常値が出た場合は、必ず二次検診を受けましょう。
健康診断はあくまで「正常値との違い」をみているだけに過ぎず、病気の有無まではわからないからです。
血液の病気の中には白血病など命にかかわる病気も含まれているため、二次検診で本当に病気かどうか、病気の場合はどのような病気であるのかをきちんと調べる必要があるのです。

二次検診で「病気ではない」と診断された場合

健康診断で血液の異常がみられたからといって、必ずしも病気があるわけではありません。
ストレスや体調不良、検査時の誤差などが原因で、一時的に異常値が出ることもあります。
しかし同じ項目の異常値が何年も続いたり、例えば0めまいや息切れ・発熱など他の症状を伴っている場合は、病気が潜んでいる可能性が高くなります。

結論

健康診断で見られる血液異常には、赤血球の数が少ない貧血をはじめ、白血球数の異常や血小板数の異常などがあります。
中には白血病のように命にかかわる異常もありますので、定期的な健康診断を通じてこれらの異常を早期に発見し、二次検診を受けるなど適切な対応を取ることが重要です。
「精密検査を受けましょう」など、病院に行くことを勧める判定が出た場合は、無視せずにきちんと病院を受診しましょう。

【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。

診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。

【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。

クリニック一覧

医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。

(医)こころみ採用HP

取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。

カテゴリー:内科の検査  投稿日:2025-10-03

\ この記事をシェアする /

TWITTER FACEBOOK はてな POCKET LINE

関連記事

人気記事

【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用

喘息の長期管理薬とは? 喘息は、気道に慢性炎症が起きて狭くなっている状態です。それが引き金となって気道が過敏になり、ちょっとしたきっかけで咳や息苦しさをくり返します。 喘息の治療は、 炎症を抑え、喘息の悪化や発作を予防す… 続きを読む 【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用

カテゴリー:喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)  投稿日:

急性扁桃炎の症状、治療法は?何日で治るかについて

急性扁桃炎の症状、治療法は?何日で治るかについても医師が解説 目次 扁桃炎とは 原因と種類 症状 診断方法 治療 回復期間:何日くらいで治るのか? 予防策 まとめ 扁桃炎とは 扁桃腺は、口と喉の間に位置し、体内に侵入する… 続きを読む 急性扁桃炎の症状、治療法は?何日で治るかについて

カテゴリー:喉の病気  投稿日:

聴覚過敏

日常の音が苦痛になる?聴覚過敏の原因や対策について医師が解説 ※ここでご紹介している内容は一般的な情報です。実際に当クリニックで行っている診断や治療とは異なる場合がありますので、あらかじめご了承ください。 聴覚過敏とは … 続きを読む 聴覚過敏

カテゴリー:よくある耳鼻科の症状  投稿日:

元住吉駅前こころみクリニック
元住吉駅前こころみクリニック
内科・小児科・耳鼻咽喉科・婦人科
MOTOSUMIYOSHI-EKIMAE COCOROMI CLINIC
internal・pediatrics・otorhinolaryngology・gynecology

元住吉駅前こころみクリニック

〒211-0025
神奈川県川崎市中原区木月1-22-1
元住吉プラザビル 2階/3階

東急東横線・目黒線元住吉駅西口より
徒歩1分

044-789-8881

  • 内科
  • 小児科
  • 耳鼻咽喉科
  • 婦人科
  • 発熱外来

WEBサイトへ

元住吉こころみクリニック

〒211-0025
神奈川県川崎市中原区木月1-22-1
元住吉プラザビル5階

東急東横線・目黒線元住吉駅西口より
徒歩1分

044-789-8881

  • 心療内科

WEBサイトへ

武蔵小杉こころみクリニック

〒211-0063
神奈川県川崎市中原区小杉町3-1501-1
セントア武蔵小杉A棟203

JR線・東急線 武蔵小杉駅より徒歩2分

044-299-7099

  • 心療内科

WEBサイトへ

田町三田こころみクリニック

〒108-0023
東京都港区三田芝浦3-13-1
矢島ビル501

JR田町駅 徒歩3分、都営三田駅 徒歩5分

03-6435-1553

  • 内科
  • 心療内科

WEBサイトへ

上野御徒町こころみクリニック

〒110-0005
東京都台東区上野6-16-5
正三ビル201

上野駅から徒歩2分、御徒町駅から徒歩4分

03-5812-4698

  • 内科

WEBサイトへ

東京横浜TMSクリニック
みなと東京院

〒108-0023
東京都港区芝浦3-13-1
矢島ビル502

田町駅 徒歩3分、都営三田駅 徒歩5分

03-6381-7515

  • TMS

WEBサイトへ

武蔵小杉こころみクリニック
神奈川TMSルーム

〒211-0063
神奈川県川崎市中原区小杉町3-1501-1
セントア武蔵小杉A棟203

JR線・東急線 武蔵小杉駅より徒歩2分

044-322-9381

  • TMS

WEBサイトへ

田町三田こころみクリニック
八丈島巡回診療所

〒100-1511
東京都八丈島八丈町三根
306-11

羽田空港から飛行機で1時間

04996-9-5535

  • 内科
  • 訪問

WEBサイトへ

こころみクリニック

〒211-0025
神奈川県川崎市中原区木月1-28-5
メディカルプラザD元住吉 3階

東急東横線・目黒線 元住吉駅から徒歩3分

044-948-8572

  • 皮膚科
  • 美容

WEBサイトへ

こころみベース

〒211-0025
神奈川県川崎市中原区木月1-28-5
メディカルプラザD元住吉 3階

東急東横線・目黒線 元住吉駅から徒歩3分

044-948-8579

  • リワーク
  • 訪問
  • イベント

WEBサイトへ

手塚こころみクリニック
武蔵小杉

〒211-0063
神奈川県川崎市中原区小杉町3-20-1
光ビル205階

武蔵小杉駅から徒歩4分

044-322-9970

  • 心療内科

WEBサイトへ

飯島こころみクリニック
元住吉

〒211-0025
神奈川県川崎市中原区木月1-33-25
NEXUS Grand Mounthelie 1B

元住吉駅から徒歩2分

044-872-7555

  • 心療内科

WEBサイトへ

ISTこころみクリニック
浜松町大門

〒105-0012
東京都港区芝大門2-1-13
芝大友ビル6階

浜松町駅徒歩7分、大門駅徒歩3分

03-5843-8312

  • 心療内科

WEBサイトへ

齊藤こころみクリニック
綱島横浜

〒223-0052
神奈川県横浜市港北区綱島東2-12-19
加瀬ビル1階B号室

新綱島駅徒歩1分・綱島駅徒歩3分

045-633-7573

  • 心療内科

WEBサイトへ

恵比寿こどもクリニック

〒150-0013
東京都渋谷区恵比寿4-9-13
中健ビル3F

恵比寿駅徒歩5分

03-3442-2525

  • 小児科

WEBサイトへ

各種サービス

Service

企業との連携サービス

Partner

Page
Top