慢性中耳炎と真珠腫性中耳炎の原因・症状・治療法:早期発見と適切な対応で耳の健康を守ろう
中耳炎は耳の中に炎症が起こる病気で、臨床経過によっていくつかの種類に分かれています。
特に慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎は注意が必要です。
ここでは、慢性中耳炎と真珠腫性中耳炎の原因、症状、診断、治療法について詳しく解説します。
耳の健康を守るために、早期発見と適切な対応が重要です。ぜひ参考にしてみてくださいね。
中耳炎とは
中耳炎は耳の中、特に中耳という鼓膜の奥の空間に炎症が起こる状態を指します。
症状の進行度合いなどから、急性中耳炎や滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)、慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎(しんじゅしゅせいちゅうじえん)などに分類されています。
急性中耳炎は一時的な炎症ですが、慢性中耳炎は長期にわたり症状が続くことが特徴です。
そして、真珠腫性中耳炎は、慢性中耳炎の一種で、耳の中に異常な皮膚が増殖する状態です。
慢性中耳炎と真珠腫性中耳炎の違い
慢性中耳炎は、中耳腔や乳突蜂巣の慢性炎症が3ヶ月以上持続する状態として定義されています。
つまり、中耳の中や、その付近の骨構造の炎症が長引いてしまう状態のことです。耳だれや難聴が主な症状となります。
これに対し、真珠腫性中耳炎は、異常な皮膚組織が中耳内で増殖し、骨を侵食することがあります。
耳の中に真珠のような塊が形成されるため、この名が付いています。
真珠腫性中耳炎は、しばしば深刻な症状を引き起こし、治療が遅れると重大な合併症を伴うことがあります。
慢性中耳炎の原因と症状
慢性中耳炎の原因には、反復する急性中耳炎や耳管機能の障害が含まれます。
症状としては、持続的な耳だれ、難聴、耳の圧迫感などが挙げられます。
これらの症状が長期間続くと、耳の機能に大きな影響を与える可能性があります。
真珠腫性中耳炎の特徴
真珠腫性中耳炎には、慢性中耳炎の結果として起こる後天性真珠腫と、生まれつきある先天性真珠腫があります。
このうち、圧倒的に前者の後天性真珠腫が多いとされています。
真珠腫性中耳炎は、中耳に異常な皮膚が増殖することで発生します。そして、その発生場所によって、以下のような種類の真珠腫があります。
引用)真珠腫の診断と治療-鼓室形成術をめぐって-.2012;115:199-203.
真珠腫は異常な皮膚であり、耳の奥で骨を侵食し、重篤な合併症を引き起こすことがあります。
真珠腫性中耳炎の症状としては、耳だれ、難聴、耳の痛みなどが挙げられますが、初期には自覚症状が少ないこともあります。
真珠腫性中耳炎の合併症
真珠腫性中耳炎は、適切な治療を行わないと以下のような合併症を引き起こす可能性があります。
- 骨破壊:異常な皮膚組織が増殖し、周囲の骨を侵食することで、中耳内の骨構造が破壊されます。これにより、耳の機能が損なわれるだけでなく、顔面神経麻痺などの深刻な症状を引き起こすことがあります。
- 脳膿瘍:真珠腫性中耳炎が進行すると、感染が頭蓋内に広がり、脳膿瘍を引き起こす可能性があります。これは生命を脅かす状態であり、一刻を争う状況となることもあります。
- 髄膜炎:中耳炎の感染が内耳や脳に広がると、髄膜炎を引き起こす可能性があります。髄膜炎は、脳や脊髄を包んでいる膜である髄膜に炎症が起こってしまう病気です。髄膜炎は高熱や激しい頭痛を伴います。適切に治療を行わないと、最悪の場合命に関わることもあります。
- 側頭骨骨髄炎:中耳炎の感染が側頭骨に広がり、骨髄炎を引き起こすことがあります。これにより、骨の破壊が進行し、治療が非常に難しくなってしまうことがあります。
その他にも、顔面神経麻痺や、めまいといった症状が出ることもあります。
診断方法
中耳炎の診断には、耳鏡検査やCTスキャン、MRIが用いられます。
耳鏡検査では、耳の中を直接観察し、炎症や異常な皮膚の有無を確認します。CTスキャンは、耳の内部構造を詳細に把握するために使用されます。カルシウムの検出に優れているので、特に真珠腫性中耳炎の診断に有効です。
一方、MRIも内耳の構造を詳細に調べるために有効です。
治療法
慢性中耳炎の治療には、抗生物質の投与や手術が含まれます。
真珠腫性中耳炎の治療には、手術が主な治療法となります。
手術では、異常な皮膚を取り除き、耳の内部構造を修復します。
この手術には、鼓室形成術などが含まれます。
術後は、定期的なフォローアップが必要となる場合が多いです。
予防と管理
中耳炎の予防には、耳の衛生管理や早期治療が重要です。
特に耳を清潔に保ち、風邪や感染症を予防することが有効です。
また、中耳炎が再発しないよう、生活習慣の見直しも重要です。
まとめ
慢性中耳炎と真珠腫性中耳炎について解説しました。
中耳炎は早期発見と適切な治療が重要です。特に慢性中耳炎や真珠腫性中耳炎は、放置すると重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、急性中耳炎の治療はしっかりと行うことが大切です。
医師に指示された内服や点耳薬は最後まで使うようにしましょう。
そして、耳の健康を守るために、異常を感じたら早めに専門医を受診しましょう。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:耳の病気 投稿日:2024-06-29
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