耳の痛みを感じたらどうすればいい?原因と適切な対処法について

耳の痛みを感じたらどうすればいい?原因と適切な対処法について医師が解説

耳の痛みについて、元住吉駅前こころみクリニック耳鼻科専門医が詳しく解説します。

耳の痛みは誰にでも起こり得る不快な症状です。
この記事では、耳の痛みの原因、対処法、そして早めに耳鼻咽喉科を受診した方が良い場合について詳しく解説します。ぜひ参考にしてみてくださいね。

耳の痛みの主な原因

耳の痛みは、耳鼻科医が日常臨床でよく遭遇する症状の一つとされています。
耳痛をもたらす疾患としては、下記のようなものが挙げられます。

耳疾患が原因の場合
外耳疾患

・外耳道炎
・悪性外耳道炎
・耳介軟骨膜炎
・外耳道・中耳悪性腫瘍
・Ramsay Hunt症候群
・外耳道異物
・外耳道真珠腫
中耳疾患

・急性中耳炎
・真珠腫性中耳炎
・急性乳性突起炎
・航空性中耳炎
・耳管狭窄症
・ANCA関連血管炎性中耳炎
耳周辺の臓器に原因疾患がある場合
耳下腺疾患

・急性耳下腺炎
・反復性耳下腺炎
・流行性耳下腺炎
・耳下腺唾石症
・耳下腺腫瘍
その他の臓器による疾患

・先天性耳瘻孔
・顎関節症
・頸部リンパ節炎
・上咽頭炎
・上咽頭腫瘍
その他が原因となる場合
放散痛・関連通

・急性扁桃炎
・扁桃周囲腫瘍
・急性咽頭炎
・舌がん
・う歯
・中咽頭がん
・下咽頭がん
神経痛

・下咽神経痛
・三叉神経痛
・後頭神経痛


引用)耳鼻咽喉科領域の痛みを考える総説.日耳鼻.2014;117:1431-1437.p1432

この章では、代表的な耳の痛みの原因と、その症状について解説していきます。

急性中耳炎

主に細菌感染によるものです。肺炎球菌が原因菌として検出されることが多いとされています。
発赤膨隆した鼓膜、耳漏(じろう:耳だれのこと)を伴う、耳痛が強く出現します。
抗菌薬と副腎皮質ステロイドの投与が効果的とされています。
内耳障害がある場合は、速やかに耳鼻咽喉科の専門的な治療が必要です。

慢性中耳炎

長期間の炎症が慢性化することにより発生します。
好酸球性中耳炎など、特殊なケースもあります。長期間にわたる耳痛と聴力低下が特徴です。
治療法は、聴力の回復を目的とした鼓膜換気チューブ留置術や副腎皮質ステロイドの使用となります。

外耳道炎

耳かきのしすぎや、水泳後の感染で起こるものです。
細菌や真菌による感染が原因となります。
特に外耳道を清潔に保つことが重要。
症状としては、耳痛、耳かゆみ、耳だれなどがあります。
治療法としては、抗菌薬や抗真菌薬の局所塗布、適切な耳のケアがあります。

悪性外耳道炎

外耳道の細菌感染が深部組織にまで波及し、悪性外耳道炎を引き起こすことがあります。
糖尿病患者での発症が多いとされています。
症状としては、高度な耳痛と聴力低下があります。進行すると顔面神経麻痺を起こすことがあります。
治療法は、抗菌薬の投与、必要に応じて顔面神経麻痺の治療となります。
広範な耳のケアと監視も重要です。

ラムゼイ・ハント症候群(帯状疱疹)

ヘルペスウイルスによる顔面神経の感染症で、耳の痛みと共に顔面麻痺を引き起こすことがあります。
ラムゼイ・ハント症候群の治療には、抗ウイルス薬とステロイドが主に使われます。
痛みを和らげる鎮痛薬や、神経痛治療薬も併用されることがあります。
理学療法で顔面神経のリハビリを行い、補助療法として冷湿布や暖湿布が有効です。早期治療が回復を促進します。

耳痛の評価と診断のポイント

それでは、耳の痛みがある場合の診断の流れについて解説します。

問診と観察

耳鼻科を受診し、痛みの性質、発症の時期や経過を詳細に把握する質問がなされます。

画像診断

耳痛の原因となる様々な病態を診断するために、耳と周辺組織のCTやMRIが有用です。

生検と細胞診

耳の異常や炎症が疑われる場合、詳細な検査を行い、悪性疾患の除外を図ります。

耳の痛みの治療法

それでは、耳の痛みに対する治療法について、原因ごとに解説していきましょう。

炎症による痛み

炎症が原因の痛みには、抗生物質や痛みを和らげる薬が効果的です。
例えば、感染が原因で耳が痛くなる場合には、抗生物質で感染を治療し、痛み止めで症状を和らげます。

神経が原因の痛み

神経が損傷されて引き起こされる痛み(例えば、帯状疱疹の後に残る神経痛)には、特別な薬が使われます。
例えば、神経に作用する薬(プレガバリンなど)、気分を安定させる薬、けいれんを抑える薬などがあります。

心の問題が原因の痛み

耳に明らかな異常がない場合、痛みが心の問題から来ていることがあります。
このような場合には、精神を安定させる薬や心理カウンセリングが効果的です。

耳痛と関連する特殊な例

それでは、耳の痛みと関連する、特殊な病態についても解説しましょう。

耳下腺疾患

耳下腺の腫瘍や炎症は耳痛を引き起こすことがあり、MRIや超音波検査で診断することが可能です。
手術による腫瘍摘出が必要な場合もあります。

放散痛

中咽頭がんや下咽頭がんなどの頭頸部がんが原因で、耳に痛みが放散(ほうさん)、つまり広がることがあります。
がんの診断と治療が耳痛の管理に不可欠です。

神経痛

三叉神経痛や舌咽神経痛が耳痛の原因となる場合があり、耳痛のみならず、顔や頸部にも痛みが及ぶことがあります。

耳の痛みがある場合、こんな場合には専門医に相談すべき

以下のような症状がある場合は、速やかに専門医に相談することが重要です。

痛みが長引く場合

1週間以上続く場合は、耳鼻科医に相談する必要があります。

耳からの分泌物がある場合

耳から膿や液体が出る場合は、速やかに医師の診察を受けましょう。

聴力に異常を感じた場合

聴力の低下や耳鳴りが続く場合も、専門医の診察が必要です。

まとめ

耳の痛みは様々な原因で生じることがありますが、早期に適切な対処を行うことで治すことや防ぐことも可能です。
耳の痛みを感じたら、自己判断で済ませず、早めに専門医に相談することをお勧めします。

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カテゴリー:よくある耳鼻科の症状  投稿日:2024-07-26

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