首のしこり

首にしこり?知っておきたい原因と対策について医師が解説

首にしこりを感じたことはありませんか?
首のしこりは多くの人が経験したことがあるのではないでしょうか。
しかし、その原因や治療法はさまざまです。
この記事では、首のしこりの主な原因、関連する症状、治療法、そして特に注意が必要なしこりについて詳しく解説します。
健康を守るために、首のしこりについての正しい知識を身につけましょう。

首のしこりとは

そもそも、首のしこりとはどういったものでしょうか。
首の前面には、のどぼとけと言われるでっぱりがあり、その下には甲状腺というホルモンを分泌する器官があります。
そして、左右の頸動脈の周囲や顎の舌、耳の後ろや下などにリンパ節が複数あります。
正常では、これらは身体の表面からは触れることはできません
しかし、何らかの原因でこれらが腫れてくると、「首のしこり」として感じられることがあるのです。
ここでは、首のしこりについて大まかな原因を述べていきましょう。

首のしこりの原因

リンパ節腫脹

感染症(風邪、インフルエンザ、扁桃炎、耳感染症、上気道感染症など)や、悪性腫瘍(リンパ腫、転移性がん)が原因でリンパ節が腫れてしまうことがあります。
リンパ節は体の免疫システムの一部で、感染や炎症に反応して腫れてしまうことがあります。
特に、長期間腫れが続く場合は、悪性の可能性も考えられます。

甲状腺腫瘍

首にしこりを感じる時、甲状腺という臓器が腫れてしまう状態になっていることも考えられます。
具体的には、甲状腺がん、良性腫瘍(甲状腺腺腫)などがあります。
自分では感じないこともありますが、健康診断などで偶然甲状腺の腫大が発見されることもあります。
甲状腺にしこりがある場合、甲状腺機能の異常がないかも確認することが重要です。
また、他のがんと同様に、甲状腺がんは早期発見が予後に大きく影響します。

唾液腺腫瘍

首には、唾液腺(だえきせん)という口腔内に唾液を分泌する腺があります。
主に、耳下腺(じかせん)顎下腺(がっかせん)、そして舌下腺(ぜっかせん)というものがあります。
これらに、良性または悪性の腫瘍が発生してしまうことがあります。
症状として、首のしこりの他に、唾液の分泌に影響を与えることがあります。
唾液腺腫瘍は、悪性度、つまりたちが悪いかどうかなどの性質がとてもバラエティーに富んでいます。
そのため、耳鼻咽喉科や頭頸部外科などできちんと検査を受けることが大切です。

脂肪腫

首のしこりとして、良性の脂肪細胞が増殖した脂肪腫というものもあります。
脂肪腫は通常、柔らかく無痛で、圧力をかけると移動することが多いです。

嚢胞

嚢胞(のうほう)といって、袋のような構造ができて水分や粘液がその中に蓄積されてしまったものができることもあります。
嚢胞は皮膚や組織内に液体が溜まることで形成され、通常は無痛ですが、大きくなると不快感を生じることがあります。

先天性嚢胞・瘻孔

先天性嚢胞(せんてんせいのうほう)や瘻孔(ろうこう)という、胎児期の発育異常によって首にしこりを感じることもあります。
これらは生まれつき存在するもので、感染や炎症を起こすことがあります。

血管腫

血管腫とは、良性の病変で血管が異常成長したものです。
血管腫も生まれつきの良性腫瘍で、成長と共に自然に消えることが多いです。

炎症性疾患

猫ひっかき病や、伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう)といった炎症性の疾患によるものもあります。
これらの感染症は、リンパ節を腫らせる原因となります。
特に猫ひっかき病は猫に引っかかれることで発症します。

見逃せない首のしこり

ここまで、首のしこりとして考えられる疾患をいくつかご紹介してみました。
その中でも、見逃せないサインのある首のしこりについて解説します。

急速に大きくなるしこり

数週間から数か月で急激に大きくなるしこりは、悪性腫瘍の可能性があります。
早めに耳鼻咽喉科や頭頸部外科を受診し、医師の診察を受けましょう。

硬くて痛みがないしこり

硬く触れる際に痛みを感じないしこりは、悪性の可能性があるため、病院での精密検査が推奨されます。

固定されて動かないしこり

周囲の組織に固定され、動かないしこりは悪性腫瘍の可能性が高いため、すぐに医療機関を受診しましょう。

全身症状を伴う場合

発熱、体重減少、疲労感などの全身症状がある場合、全身疾患や悪性腫瘍が考えられるため、医師による詳細な検査が必要です。

家族歴にがんがある場合

家族に癌の既往歴がある場合、首のしこりががんであるリスクが高まる可能性があるため、定期的な健康診断としこりの観察が重要です。

首のしこりの治療法

それでは、首のしこりの治療法について、原因ごとに説明していきます。

感染症の場合

抗生物質や抗ウイルス薬の投与、安静と水分補給が推奨されます。
早期の治療が重要です。

炎症性疾患の場合

抗炎症薬の使用や、原因となる疾患の治療が行われます。
しこりが炎症に伴う場合は、冷却や安静も効果的です。

腫瘍性疾患の場合

手術、放射線療法、化学療法が選択されます。
腫瘍の性質や進行度によって最適な治療法が決まります。

甲状腺の問題の場合

甲状腺機能低下がある場合にはヨウ素補給、逆に甲状腺機能亢進症の場合には甲状腺ホルモンの調整などの投薬治療が行われます。
また、甲状腺がんなどが疑われる場合には、必要に応じて手術が行われます。
甲状腺機能の定期的な検査も重要です。

まとめ

首のしこりは多くの原因が考えられ、その性質や関連症状によって診断が異なります。
特に以下のようなしこりは早急に医療機関を受診することが重要です。

  • 急速に大きくなる
  • 硬くて痛みがない
  • 他の全身症状がある

適切な診断と治療を受けることで、早期に対処し、予後を改善することができます。
首のしこりを感じたら、早めに医師に相談しましょう。

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カテゴリー:よくある耳鼻科の症状  投稿日:2024-09-09

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