耳鳴りとは?種類や原因、対策について解説
はじめに
耳鳴りは、多くの人が経験する症状の一つですが、原因や治療法については十分に知られていないことが多いです。
耳鳴りは、外部の音が存在しないにもかかわらず、耳や頭の中で音が聞こえる状態を指します。
このコラムでは、耳鳴りの原因、診断方法、治療法、そして生活への影響について詳しく解説します。
ぜひ、参考にしてみてください。
耳鳴りとは
耳鳴りとは、明らかな音源がないにも関わらず感じる、異常な音感覚のこととされています。
つまり、外部の音が存在しないのに、耳の中で音が鳴っている状態として捉えられることが最も多いです。
以下の3つに分けられます。
- 拍動性耳鳴(はくどうせいじめい):約70%が他の人にも聞こえる耳鳴り(他覚的耳鳴:たかくてきじめい)のこと。
体の中に音の発生源があり、第三者が聞くことができるものです。
心拍に合わせて発生し、リズミカルな脈打つ音やシューという音として発生します。 - 非拍動性耳鳴(ひはくどうせいじめい):他覚的耳鳴の一部(ミオクローヌスという筋肉の異常収縮や、顎関節症によるものなどがあります)
- 自覚的耳鳴(じかくてきじめい):患者さん本人のみが聞くことができる耳鳴りのことです。
耳鳴りは、日本では人口の10〜15%の方が症状を有しているといわれています。
そして、臨床的に問題となる耳鳴りは、その20%程度です。つまり、人口の2〜3%の方にみられるとされています。
日本全体では、約300万人に及ぶ患者さんが、強い耳鳴りを抱えて耳鼻咽喉科を受診します。
耳鳴りの原因
耳鳴りの原因は多岐にわたります。
一般的には、加齢による聴力低下や長期間にわたる騒音への曝露が主な原因とされています。
これらの要因により、内耳の有毛細胞が損傷し、脳が正しく音を処理できなくなることが、耳鳴りを引き起こすと考えられています。
また、耳の感染症、耳垢の蓄積、メニエール病などの耳の病気も耳鳴りを引き起こすことがあります。
さらに、ストレスや高血圧、糖尿病など、全身の健康状態が耳鳴りに影響を与えることもあります。
診断方法
耳鳴りは、本人にしか感じられないため、診断は難しい場合があります。
まずは、耳鳴りの原因疾患を診断することと、それに基づく対応をすることが基本となります。
まずは、発症時期や進行しているかどうか、性状、部位、原因、わずらわしさの有無、悪化要因、騒音への暴露の有無、家族歴、睡眠への影響、社会的/就労上の影響などといった詳細な問診が行われます。
このように、患者の症状を詳細に聞き取り、聴覚検査を通じて耳鳴りの原因を特定します。
場合によっては、頭部や頸部のMRIやCTスキャンを行い、腫瘍や血管の異常が原因であるかどうかを確認することもあります。
また、耳鳴りの持続時間や音の種類、強さなども診断において重要な情報となります。
治療法
耳鳴りには、即効性のある治療法は存在しませんが、いくつかの対処法が知られています。
まず、耳鳴りの原因が特定できた場合は、その治療が優先されます。
たとえば、耳垢の除去や耳の感染症の治療などが効果をもたらすことがあります。
また、補聴器や聴覚保護具と呼ばれる装置を使って、耳鳴りを和らげることができます。
これらのデバイスは、外部の音を増幅させたり、耳鳴りを遮る音を提供したりすることで、耳鳴りの不快感を軽減します。
さらに、耳鳴りはストレスや不安感によって悪化することがあるため、認知行動療法やリラクゼーション療法が有効とされています。
心理的なサポートを受けることで、耳鳴りの影響を最小限に抑え、日常生活への支障を軽減することができます。
また、最近の研究では、音響療法や薬物療法、さらには脳の神経回路にアプローチする新しい治療法が注目されており、今後の治療法の進展が期待されています。
耳鳴りに対して、現状で保険適応のある薬は、ニコチン酸アミド・パパベリン塩酸塩配合剤(一般名:ストミンA)があります。
生活への影響と対策
耳鳴りは、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
耳鳴りが続くと、睡眠障害や集中力の低下、不安感や抑うつ状態に陥ることもあります。
これに対しては、耳鳴りを完全に消すことは難しいかもしれませんが、生活習慣の改善が有効です。
たとえば、騒音環境を避けることや、ストレスを管理する方法を学ぶことが大切です。
また、健康的な食生活や適度な運動を取り入れることで、耳鳴りの悪化を防ぐことができる場合もあります。
例えば、喫煙者は耳鳴りを発症するリスクが高くなります。
また、飲酒も耳鳴りのリスクを高めるとされています。
その他、肥満や高血圧、関節炎や頭部外傷の病歴は耳鳴りのリスクを高めます。
生活習慣などで予防できることは、できるだけ自分で取り組むようにすると良いでしょう。
まとめ
耳鳴りは、多くの人が経験する不快な症状ですが、その原因や影響、治療法を理解することで、適切に対処することが可能です。
生活習慣の改善や補聴器、心理的サポートなど、多様なアプローチが耳鳴りの緩和に役立ちます。
耳鳴りで悩んでいる方は、早めに医師に相談し、自分に合った治療法を見つけることが大切です。
正しい知識を身につけ、少しでも快適な生活を送るための第一歩を踏み出しましょう。
【お願い】
「こころみ医学の内容」や「病状のご相談」等に関しましては、クリニックへのお電話によるお問合せは承っておりません。
診察をご希望の方は、受診される前のお願いをお読みください。
【お読みいただいた方へ】
医療法人社団こころみは、東京・神奈川でクリニックを運営しています。
「家族や友達を紹介できる医療」を大切にし、社会課題の解決を意識した事業展開をしています。
医療職はもちろんのこと、法人運営スタッフ(医療経験を問わない総合職)も随時募集しています。
(医)こころみ採用HP取材や記事転載のご依頼は、最下部にあります問い合わせフォームよりお願いします。
カテゴリー:よくある耳鼻科の症状 投稿日:2025-03-12
関連記事
人気記事

【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用
喘息の長期管理薬とは? 喘息は、気道に慢性炎症が起きて狭くなっている状態です。それが引き金となって気道が過敏になり、ちょっとしたきっかけで咳や息苦しさをくり返します。 喘息の治療は、 炎症を抑え、喘息の悪化や発作を予防す… 続きを読む 【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用
カテゴリー:喘息の長期管理薬(吸入ステロイド) 投稿日: