【BCG】生後5ヶ月からのワクチン
BCGワクチンとは
結核を予防するためのワクチンです。
はんこ注射とも呼ばれています。
BCGワクチンの標準接種期間は生後5ヶ月から8ヶ月になるまで。
赤ちゃんは結核になると症状が重くなりやすいため、この期間の接種が推奨されています。
1歳になる前日まで定期接種として無料で接種することができますが、生後5ヶ月を迎えたら早めに受けるようにしましょう。
BCGワクチンの効果
- 結核の発病率を約半分に抑えます。
- 結核性髄膜炎や粟粒結核といった深刻な病気に対して高い予防効果があります。
※結核性髄膜炎は結核を原因として発症する髄膜炎です。けいれんや意識障害などを引き起こすことがあります。致死率が高く、治癒しても高い確率で後遺症を残す病気です。
※粟粒(ぞくりゅう)結核は結核菌が血液にのって全身に広がる病気で、結核の中でも重篤な病態です。
結核は「昔の病気」ではありません
結核は明治から昭和20年代まで日本でもっとも多い死因であり、「不治の病」と恐れられていました。
しかし、BCGワクチンの導入や環境衛生の向上により、結核の感染者数は大幅に減少しました。
早期に治療すれば治せる病気となり、結核は昔の病気と思われている方も多いですが、今でも年間10,000人以上が新たに感染し、1600人以上が結核で亡くなっています。
結核の症状
2週間以上の長引く咳や痰、微熱、体のだるさ、体重減少など。
結核の感染経路:空気感染
結核は、咳やくしゃみによって飛び散った結核菌を周りの人が吸い込むことでうつります。
ただし、吸い込んだ人全員が感染するわけではありません。
インフルエンザや新型コロナウイルスが鼻や喉の粘膜に付着するだけで感染が成立するのに対し、結核菌はそれだけでは感染せず、肺の奥深くまで到達して初めて感染します。
感染すると2年以内に約10%の人が結核を発病します。
感染しても免疫によって菌を冬眠状態にし、症状が何もないまま一生過ごす人もいます。
しかし免疫力が下がった時、冬眠していた結核菌が活動を始めて発病することがあります。
免疫力が弱い赤ちゃんは結核にかかりやすく重症化しやすいため、ワクチンによる予防が大切です。
感染と発病の違い
感染は、結核菌が肺に定着した状態です。
周りの人にうつす心配はありません。
発病は、感染したあとに結核菌が体内で増殖し病気を引き起こす状態をいいます。
発病しても痰の中に結核菌が出ていなければ周りの人にうつす心配はなく、外来での通院治療が可能です。
痰の中に結核菌が出ている場合には、専門病棟での入院治療が必要になります。
BCGワクチンの接種方法
一般的な注射とは異なり、BCGワクチンでは9本の針がついた特殊な注射器を使用します。
ワクチン液を赤ちゃんの腕に数滴たらし、管針(9本の針がついている専用の注射器)のツバで薬液を塗りひろげ、上下に場所をずらして2回押します。
接種後の注意点
BCGワクチンを接種した部位は15分ほどよく乾かしてください。
お兄ちゃんやお姉ちゃんが付き添っている場合には、触らないように伝えましょう。
ワクチンは光や熱に弱いので、接種後は直射日光を避けてください。
接種した当日もお風呂に入ることができますが、ゴシゴシ洗ったり、引っ掻いたりしないように注意してください。
BCGワクチン注射の痕(あと)について
BCGワクチンを接種して10日後くらいから少しずつ赤くなり、1〜2ヶ月後に強い反応が出るのが通常の反応です。
反応の出方には個人差があり、痕が出ない赤ちゃんもいます。
きちんと接種できていれば免疫はついていると考えられますので、過度に心配する必要はありません。
接種部位から膿が出てくる場合は、なにも貼らず清潔に保つようにしてください。
接種後3ヶ月経っても乾いていない時は、小児科でみてもらいましょう。
コッホ現象について
コッホ現象は、通常の反応よりも早く、接種して7日以内(多くは3日以内)に強い反応が出ることをいいます。
コッホ現象があらわれた場合、すでに結核に感染している可能性があります。
本当に感染しているか検査する必要があるので、接種した医療機関に速やかに連絡してください。
途上国を中心に蔓延している結核
世界では総人口の約4分の1が結核に感染し、未だ途上国を中心に蔓延しています。
結核患者の少ない国ではBCGワクチンを接種しない国もあります。
全員に予防接種するよりは、少ない結核患者を早く見つけて治療するという方針です。
一方、日本では結核患者が依然として多数報告されており、予防接種を中止できる水準には至っていません。
結核が多い都市部では、生後3〜4ヶ月にBCGワクチン接種を推奨している自治体もあります。
予防接種について不安を感じる親御さんもいるかもしれません。
お子さんの健康に関わる選択は、正確な情報に基づいて行う必要があります。
信頼できるかかりつけの小児科を持ち、いつでも相談できる体制を整えておきましょう。
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カテゴリー:こどものワクチン 投稿日:2024-11-23
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