小児喘息の治療

小児喘息の治療は主に吸入薬!治療のステップや症状を和らげる方法3つ

「小児喘息をよくするにはどうしたらいいの?」「小児喘息にはどんな治療があるの?」
このような疑問を持っていませんか?

小児喘息は正しい治療をおこなうことで、症状の緩和やコントロールが目指せる病気です。

本記事では、小児喘息の治療や症状を和らげる方法を紹介します。小児喘息の治療に疑問をもつ方のお役に立てれば幸いです。

小児喘息の治療法は吸入薬の使用

小児喘息の主な治療は、吸入薬(息を吸うタイミングで薬を直接肺に送り込む)の使用です。

一言で吸入薬といっても以下のような種類があります。

  • コントローラー:小児喘息の発作が起きないよう予防的に使う薬
  • リリーバー:小児喘息の発作がでたときに使う薬

症状がなくても、毎日コントローラーを使用することが治療の大事なポイントです。
毎日吸入することで、気道(空気のとおり道)の炎症が改善され、発作が起こりにくいからです。

症状がないときに吸入するのを忘れたり、やめたりすると小児喘息の症状が悪化する恐れがあります。

症状が落ち着いていても自分の判断で薬をやめたり、減らしたりしないようにしましょう。

小児喘息の治療開始の目安

一般的に、小児喘息と診断されたらすぐ治療を始めます。
気道の炎症をおさえたり、小児喘息の症状が出ることを防いだりすることが目標です。

定期的に小児喘息の状態を診て、お子さまの状態にあわせて薬を変えたり、調整したりするため、気になることがあれば主治医に伝えてくださいね。

小児喘息の治療ステップ

ガイドラインをもとに、小児喘息の治療は年齢別にわかれています。小児喘息の程度によって、治療ステップに沿って治療を進めます。
それぞれくわしくみてみましょう。

小児喘息の治療ステップ(5歳以下)

5歳以下のお子さまの治療ステップはつぎのとおりです。

段階 基本治療 追加治療
治療ステップ1 長期管理薬(コントローラー)なし ロイコトリエン受容体拮抗薬(小児喘息の発作をおさえる飲み薬)
治療ステップ2 ロイコトリエン受容体拮抗薬または低用量吸入ステロイド薬
(気管支や気道の炎症をおさえ発作を予防する薬)
基本治療と同じ薬を併用
治療ステップ3 中用量吸入ステロイド 基本治療にロイコトリエン受容体拮抗薬を併用
治療ステップ4 ・高用量吸入ステロイド薬
・ロイコトリエン受容体拮抗薬
以下の使用を検討
・β2刺激薬(気管支を広げ、小児喘息の発作を和らげる薬)
・吸入ステロイド薬増量
・ステロイドの飲み薬


参照:小児ぜん息 治療ガイドライン

上記の追加治療とは別で、数日から2週間くらい小児喘息の症状が一時的に悪くなったときに、基本治療をベースに治療を追加することもあります。

小児喘息の治療ステップ(6歳〜15歳)

6歳〜15歳のお子さまの治療ステップは以下のとおりです。

段階 基本治療 追加治療
治療ステップ1 長期管理薬(コントローラー)なし ロイコトリエン受容体拮抗薬
治療ステップ2 ロイコトリエン受容体拮抗薬または低用量吸入ステロイド薬 基本治療と同じ薬を併用
治療ステップ3 ・中用量吸入ステロイド
・低用量ICL/LABA
(気管支の炎症をおさえたり、気道を広げる効果がある薬)
基本治療にロイコトリエン受容体拮抗薬またはテオフィリン徐放製剤(長時間効果のある気管支を広げる薬)を追加
治療ステップ4 高用量吸入ステロイド薬
(ロイコトリエン受容体拮抗薬を併用することもあり)
以下の使用を検討
・高容量ICL/LABA
・吸入ステロイド薬増量
・ステロイドの飲み薬


参照:小児ぜん息 治療ガイドライン

5歳までの治療と同じように、小児喘息の症状が悪くなったときに数日から2週間程度、治療を追加する場合もあります。

6歳以上のお子さまでステップ4の治療をおこなっても症状が残る場合は、皮膚の下に注射をする薬(生物学的製剤)も使えるようになりました。

お子さまの状態や検査結果によって治療のステップは変動するため、くわしくは主治医に相談してみてください。

小児喘息の症状を和らげる3つの方法

ここでは小児喘息の症状を和らげる3つの方法を紹介します。

運動をする

運動をとおして体力や身体機能があがると、喘息の症状が出るリスクが下がると言われています。
その中でも水泳はおすすめです。

ランニングや自転車などに比べ、水泳では湿度の高い空気を吸い込むことや水中での呼吸などから、同じ強度の運動でも喘息の症状が出にくいからです。

小児喘息の発作を予防する薬を使いながら、体力をつけて発作を起こしにくいからだ作りを目指しましょう。

環境整備をおこなう

アレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)をおさえるために、こまめな掃除がおすすめです。

具体的な掃除の方法をみてみましょう。

  • 室内の掃除機をかける
  • 布団を干す
  • 防ダニ布団カバーを使用する
  • カーペットの使用をやめる など

アレルゲンを除去することで小児喘息の発作のリスクが下がるケースがあります。
とくに、寝室や布団類はダニを吸い込む原因となるため、定期的な掃除をこころがけてくださいね。

早めに医療機関を受診する

処方されている薬を使用しても、小児喘息の症状が落ち着かない場合は、早めに受診することをおすすめします。

薬を使っても症状がコントロールできない場合は、薬を変えたり量を調整したりする必要があるからです。

お子さまの小児喘息の状態にあった薬を使用することが、症状をコントロールするためには重要です。

小児喘息に関するよくある質問

小児喘息に関するよくある質問をまとめました。ご覧ください。

Q1:小児喘息はいくつで治りますか?

お子さまの症状の程度や環境など個人差によって違います。
思春期になると症状が軽くなるケースが多い一方で、約30%はおとなの喘息に移行すると言われています。

小児喘息の症状が悪くならないよう、症状をコントロールすることを目指していきましょう。

Q2:小児喘息の登園の目安は?

咳が原因で眠れなかったときやいつものように食事がとれないときは、幼稚園や保育園は休ませて病院の受診を検討してください。

小児喘息の発作がよくあるときには、登園できても薬を保育園や幼稚園に持っていったり、発作が出たときの対応を共有したりしなければなりません。

お子さまの小児喘息の状態によって対応は異なるため、くわしくは主治医に確認してみてくださいね。

Q3:小児喘息の吸入方法にはどんな種類がありますか?

吸入方法は、使う薬によって異なります。つぎをみてみましょう。

使う薬 特徴
ネブライザーに使う吸入薬 ・液状の薬を電動の機械に入れる
・薬がミストのように出てくるため、吸い込むタイミングを合わせることが難しい場合でも使える(小さいお子さま)
エアゾールの薬 小さな入れ物からミスト状の薬が出たタイミングで息を吸いこむ
(難しい場合は補助のマスクを使用する)
ドライバウダーの薬 粉末状の薬を吸いこむ
(一定量の吸い込む力が必要なため、学童以上で処方されることが多い)


出典元:小児ぜん息治療ガイドライン/一般社団法人日本小児アレルギー学会

吸入方法に関してくわしく知りたい方はこちらもあわせてご覧ください。


【医師が解説】喘息の長期管理薬(吸入ステロイド)の効果と副作用

小児喘息の治療について知りたい方へ

小児喘息は、症状に合わせ薬を変更したり、追加の薬を使ったりします。
医師の指示のもと、治療を続けることで症状が軽くなり、結果として症状が出なくなることが多いのが特徴です。

お子さまの症状にあわせて治療内容が変わるため、ご両親が気づいたことがあれば、主治医に伝えてくださいね。
なにかお困りのことがあれば、いつでも当院までご相談ください。

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カテゴリー:通年の子供の病気  投稿日:2024-07-26

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