嘔吐や下痢をしたときの水分の取り方
嘔吐や下痢では脱水に注意
ウイルス性胃腸炎などで小さな子どもが嘔吐や下痢をする時は、脱水に注意しましょう。
子どもは大人に比べて体の水分の割合が多く水分の調整機能も未熟であるため、嘔吐や下痢によって水分や電解質が失われると脱水になりやすい状況です。
脱水がひどくなるとショックや多臓器不全、死につながる可能性もあります。
早い時期から可能な範囲で水分補給をおこない、脱水を予防しましょう。
水分補給の方法
嘔吐や下痢をしているときの水分補給に最適なのは、「経口補水液(ORS)」を少量ずつこまめに飲ませる方法です。
経口補水液はナトリウムとブドウ糖をバランスよく配合しているため、体に吸収されやすくなっています。
そしてカリウムも必要な量を補えるのが特徴です。
反対に身近にあるお茶や水は吸収が悪く非効率で、スポーツ飲料やイオン飲料では必要な電解質が不足しています。
経口補水液を使用する方法は、WHOや小児急性胃腸炎診療ガイドライン2017でも推奨されています。
経口補水液の作り方
経口補水液は市販のものがありますが、子どもさんを置いて買いに行けないときなどは自宅でも簡単に作成できます。
- 水 1リットル
- 砂糖(上白糖) 40g(大さじ4杯+1/2杯)
- 塩 3g(小さじ1/2杯)
- お好みで…レモン果汁 少々
<材料>
- 水を沸騰させて冷ます
- 砂糖と塩を加えよく混ぜる
- お好みでレモン果汁を加える(飲みやすくなり、カリウムも補給できる)
<作り方>
水と塩分、糖分のバランスが重要なため、きちんと計量して作成しましょう。
作成後はその日のうちに飲みきり、翌日も必要であれば新しく作成します。
嘔吐しているとき
嘔吐直後は水分を与えてもすぐに吐いてしまうため、吐いてから30分程度おいて飲めそうであれば少量ずつ水分を与えます。
子どもに経口補水液をボトルごと渡してしまうとガブガブと飲んでしまうため、必ず大人が与えるようにしてください。
下痢しているとき
水分を与えると刺激になって下痢がまた出てしまうと考えるよりも、下痢によってなくなった水分を補給するのを優先しましょう。
嘔吐よりも下痢のほうが水分の失われ方はひどいので、脱水になるリスクが高いです。
共通すること
1回5ml(ティースプーン1杯あるいはペットボトルのキャップ3/4杯分)を5分ごとに飲ませます。
大丈夫そうであれば、少しずつ1回量を増やしていきましょう。
不足している水分と同じ量を摂取する必要があるため、3〜4時間で50〜100ml/kgの量を飲ませるのを目安にします。
途中で吐いてしまったら、また1回5mlから始めてください。
- 目安例)体重5kg : 250〜500ml
- 体重10kg : 500〜1,000ml
経口補水液は飲み慣れないため、子どもが嫌がる場合もあります。
その場合は無理せず、飲めそうな水分(好きなもの)から始めても構いません。
うどん出汁や味噌汁の上澄みなどでもよいです。
嫌がって水分をまったく摂取できない状況にならないように工夫してください。
胃腸に刺激を与えないように、水分の温度は冷たい物よりも常温のほうがよいです。
そして、オレンジジュースやグレープフルーツジュースや炭酸、乳製品は胃腸に負担をかけて嘔吐や下痢を誘発するので避けましょう。
状況が改善してきたら経口補水液を与えるのは止めて、柔らかい食べ物や通常の水分に移行させてください。
経口補水液は電解質が脱水時に必要なものに特化しているため、体に悪い影響が出てきます。
母乳・ミルク
母乳やミルク(人工乳)を飲ませるのは問題ありません。
母乳は飲み始めると多量に飲む場合があるため、搾乳して少量ずつスプーンやスポイトで与える、時間を決めて授乳させるなどして量を調整してください。
ミルクは希釈する必要はありません。
通常の濃さで与えてください。
受診するタイミング
少量ずつの水分補給をおこなっても、嘔吐や下痢が続き脱水症状が改善しない場合があります。
- 1日5回以上の下痢
- 嘔吐が続いている
- 半日以上おしっこが出ていない
- おしっこの色が濃い
- 泣いても涙が出ない
- 目が落ちくぼんでいる
- 唇や口の中が乾燥している
- ぐったりと元気がない、うつろな表情
- おもちゃや遊びに興味を示さない
- ずっと眠っている
- 顔色が悪い
- 水分を受け付けない
- 38℃以上の熱がある
上記のような症状がある場合は、脱水が進んでいるかもしれません。
早めに小児科などの医療機関で医師の診察を受けてください。
まとめ
子どもは大人に比べて体内の水分の割合が多く、嘔吐や下痢になると簡単に脱水になってしまいます。
脱水状態を放っておくと最悪の場合死に至るケースもあるため、早い段階から水分補給をおこなって脱水が進むのを防ぎましょう。
嘔吐や下痢をしているときは、必要な塩分・糖分がバランスよく含まれる経口補水液を、少量ずつこまめに与えてください。
経口補水液はご家庭でも簡単に作れるため、外出ができなくても手に入れられます。
1回5mlから始めて徐々に量を増やしていきます。
症状がおさまってきたら、経口補水液から通常の水分や柔らかい食事へ移行していきましょう。
水分をまったく受け付けない、ぐったりしてきた、脱水の症状が変わらないときなどはためらわずに小児科を受診してください。
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カテゴリー:よくある子供の症状 投稿日:2025-01-19
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