子供の発熱の対応法と解熱剤について
速やかに受診が必要な場合がある
3カ月未満の子供が発熱すると、重篤な感染症や急変の可能性があるため、早急な受診が必要です。
発熱だけで他の症状がなく、元気な場合は自宅で様子を見ることができます。
受診が必要な場合については、あくまでも目安であり、お子さんの様子を見て判断してください。
夜間・休日でも受診する
以下のような症状が見られる場合は早急な受診が必要です。
- 意識がない、ぐったりしている
- 顔色が悪い
- 泣き方が弱々しい
- 水分がとれない
- 頭やお腹を異様に痛がる
- けいれんが止まらない
状態によっては、救急車を呼びましょう。
通常の診察時間に受診する
- 発熱が4日以上続く
- 発熱の他に咳や鼻水、下痢などの症状がつらそう
発熱以外の症状はないか、水分摂取の様子やおしっこの量などを診察時に伝えましょう。
自宅で様子をみていい場合
- 食事や水分が摂取できる
- 機嫌がよい
体温の数値だけで判断をせずにお子さんの状態をよく観察することが大切です。
受診について迷うときは、厚生労働省の「こども医療電話相談事業」が利用すると小児科医師や看護師に相談ができます。これは、全国同一の短縮番号#8000を押すと居住地の窓口に自動転送され、利用料が無料で通話料は自己負担となるものです。各自治体によって対応の時間帯が異なります。
また、総務省による救急車の適性利用を促すための「救急安心センター事業(#7119)」を利用すると、救急車を呼んだ方がいいのか、受診できる医療機関について専門家からアドバイスを受けられます。全国普及を進めている段階で、実施されている地域については総務省消防庁のホームページを参考にしてください。
緊急だと思ったら、ためらわずに119番通報をするよう呼びかけられています。
発熱について
医学的には37.5度以上が発熱で38度以上が高温とされています。
体温は1日の中で変動するリズムがあり、早朝が最も低く、夕方にかけて上昇します。平熱といっても差がでるため、お子さんの体温変動を知っておくことも大切です。
体温調整機能が未熟な子供は、室温や服装など環境の変化も受けやすく、容易に体温があがります。
なお、体温が41度を超えると体に障害がおこり、生命活動に影響します。
熱があがるしくみ
熱の産生と放散の調整が行われているのは脳の視床下部です。
ほとんどの場合が発熱物質の刺激を受け、体温設定温度(セットポイント)が上昇することで発熱がおこります。
熱を上げる指令が出ると血管が収縮するため手足が冷たくなったり、顔色が悪くなったりします。
体のふるえがおこる理由は、体温をできるだけ早く上げるため筋肉が活動しているからです。
また、熱を作り出すための酸素が必要で呼吸数は増え、代謝が亢進することで心拍数も多くなります。
一見すると体に負担がかかっているような症状は、実は理にかなった体の防御反応です。
多くの細菌やウイルスは、低温で繁殖し、高温になると活動が弱まります。私たちの体は体温が上がると免疫細胞が活性化され抵抗力をあげるように働くため、病原体に正しく対応しているといえます。
発熱の原因
発熱の多くは、ウイルスや細菌などによる感染症が原因です。リウマチや膠原病などの自己免疫疾患や腫瘍、薬剤なども原因となります。
体温調節を行う場所に異常がおこっている頭部外傷や脳出血などの場合は注意が必要です。
他にも血液の感染症である敗血症や、脳や脊髄まで病原菌が入り込む髄膜炎なども発熱をおこし、命に関わることがあります。
また、乳幼児期に多くみられる川崎病は全身の血管に炎症がおこるもので、5日以上続く発熱が主症状です。
このように発熱をきたす病気は数多く、熱以外の症状(発疹やのどの赤み、目の充血など)が正しい診断につながります。
発熱と脳への影響
脳に影響を及ぼす重大なものとして髄膜炎、急性脳炎、脳症などが挙げられます。これらの病気は致命的で脳障害や難聴などの重い後遺症を残すことがあるため、一刻も早い治療が必要です。
発熱の他に強い頭痛、嘔吐、首の後ろがつっぱるなどの症状があり、乳幼児では分かりにくいため発見が遅れることもあります。仰向けに寝かせた状態から首を起こそうとしたら泣く、いつもに比べて眠りがちなど保護者の方から見た何となくおかしいという視点が非常に重要です。
一方で、発熱だけで脳はダメージを受けません。脳に影響していると心配になる理由として、熱せん妄や熱性けいれんが考えられます。
熱せん妄とは、高熱が脳内のホルモンに影響し、突然笑う、興奮するなど普段と違った症状をおこすもの。10分程度の比較的短期間で改善し、後遺症はほとんどないと言われています。
また、急な体温の変化に弱い子供の脳は、発熱により熱性けいれんをおこすことが多いです。
これらは一般的にみられるもので心配はいりませんが、他の重い病気との鑑別も必要になります。
解熱剤の使い方
生後6カ月以下の子供は体温調整機能が未熟であり、保護者の自己判断で解熱剤を使用すると危険です。
体温計の高い数値をみると心配になりますが、高熱が重症とは限らず、直ちに熱を下げる必要はありません。
お子さんの状態をみて解熱剤を使用するか判断しましょう。
子供がしんどい時に使う
解熱剤を使用すると頭痛やのどの痛みにも効果を発揮し、食べたり、眠ったりすることで子供の体力回復につながります。
ただし、寝ている時に起こしてまで使わないようにしましょう。入眠することにより免疫機能が高められ、病原体とたたかうことができています。安眠といった正しい体の反応が何よりの治療になっているのです。
寝る前に解熱剤を使用すると子供の良眠が得られ、看病をしている保護者の休息につながります。
熱が上がりきってから使う
解熱剤は、熱が上がりきってから使うと効果的です。子供の手足が冷たい、ぶるぶるとふるえている状態は熱が上がるサインのため上着を着せたり、かけものを増やしたりします。
顔のほてり、発汗がみられてから解熱剤を使用するとよいでしょう。
適切に使う
内服ができない場合は坐薬を使用します。子供がぐずっている、排便のタイミングなどで坐薬を使用してもすぐに排出されることがあり、適切な使用が求められます。
子供の薬剤は体重によって使用量が異なるため、自宅にあった兄弟のものや過去に処方されたものの使用は控えてください。ただし頻回に発熱をするお子さんは、解熱剤が処方されてから時間の経っていない場合もあるため、薬剤師に相談してから使用しましょう。シロップは他のものより保存期間が短いため注意が必要です。
こんなときどうする?
内服後に嘔吐した場合
直後なら同じ量を飲ませても問題はありませんが、胃腸を休ませることも大切です。再び内服するかは状況に応じて判断します。
坐薬を使用してすぐに排出された場合
原型が排出されていたら新しく再挿入できます。出てきた坐薬の形が変わっている場合は吸収されたものとみなして再び使用するのは控えましょう。挿入後に排便があっても坐薬が確認できなければ再挿入せずに様子をみます。
発熱時の過ごし方
発熱だけで他に症状がなく食事摂取が可能で機嫌がよい場合などは、自宅で様子を見ることができます。
以前に処方された抗生物質を飲むことはやめてください。抗生物質を乱用すると薬が効きにくくなってしまいます。
ゆっくり休む
子供が十分眠れるように環境を整えることが大切です。こまめな水分摂取をすることで脱水が予防できます。
入浴は可能ですが、体力を消耗するため、状態によっては体を拭きます。
熱が下がったからといってすぐに登園するのは控えましょう。十分な免疫力が回復していないため、他の病原体に感染するリスクもあります。
また、子供から病気をもらう可能性があるため、保護者も十分な休養がとれるよう心がけてください。
クーリング
発熱時には、頭やわきの下、足のつけ根など大きな血管がある部位を冷やしますが、子供が嫌がる場合は無理に行わなくでも構いません。あくまでも症状をやわらげる目的であり、子供が心地よいと感じる程度にしましょう。
熱の上がり始めに冷やすことは避けてください。病原体に対抗して体が熱を上げている作用に逆効果です。
なお、よく使用されている冷却シートは体温を下げるものではありません。気化熱を利用した効果により、使用すると子供はひんやりと感じるため苦痛が緩和されるものです。小さなお子さんに使用すると、はがれて鼻や口がふさがれる窒息事故が報告されているため、保護者の目が届く範囲で使用してください。
一方で脳の体温調整に異常をきたしている熱中症などの場合は、積極的なクーリングにより熱の放出を促すことが必要です。
備えて安全
感染症による発熱に備えるためには、予防接種が効果的です。
致命的となる細菌性髄膜炎や急性喉頭蓋炎などはヒブワクチンを接種すると病気の予防につながります。
また、子供の状態が悪化したときの緊急な受診に備えておむつ、母子手帳、お財布などの荷物を用意しておくといざというときに安心です。
まとめ
子供は体温調整が未熟なため発熱しやすいです。
発熱は体を守るための生体防御反応であり、食事や水分摂取が可能で機嫌がよい状態であれば無理に熱を下げる必要はありません。
お子さんの状態を観察して、必要なときに解熱剤を使用しましょう。
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カテゴリー:よくある子供の症状 投稿日:2024-05-31
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