更年期による皮膚トラブルとは?原因や対処法を婦人科専門医が解説

更年期障害各論「皮膚トラブル」

エストロゲンは皮膚を健全に保つ働きもしています。
更年期になり女性ホルモンの分泌が減ってしまうと、皮膚にもさまざまなトラブルが見られやすくなります。
とある更年期外来に受診している患者さんへのアンケートでは、約29%の方が皮膚症状で困っていると回答されました。
更年期障害と言えば、ホットフラッシュやイライラ・うつなどメンタル不調が代表的な症状ですが、
皮膚の不調にも注目していただきたいと考えています。
皮膚が乾燥したり、かゆくなったり、湿疹が出たりしていませんか?
年のせいだから仕方ないかしら・・・とあきらめないでください。
日常生活でのちょっとした工夫で皮膚がキレイになるかもしれません。
この記事では、更年期における皮膚トラブルについて解説します。

原因

女性ホルモンが変化すると皮膚にも影響が出ます
女性ホルモンであるエストロゲンが急激に減少することによって、皮膚の状態は大きく変化します。
皮膚は体の表面にある臓器で、外からの異物侵入を防いだり水分を保ったりしています。
皮膚の一番外側の角層(かくそう)はバリア機能を保つために重要な役割をしています。
角層の奥には真皮(しんぴ)があります。
真皮は膠原線維がメインで、その間に弾性線維があります。各線維の間にはヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸があり、クッションの役割を担っています。
真皮の状態を良い状態に保つことで、皮膚の若さを維持することができます。
エストロゲンが減少すると、皮膚にも変化が起きます。
角層が薄くなるため、外部からの刺激に対して敏感になります。
真皮の膠原線維や弾性線維が減ってしまい、皮膚が薄くなって弾力が低下します。
弾性線維が変性するとシワになってしまいます。

症状

  • 乾燥してかさつく
  • かゆみがある
  • シミ・シワが目立つ

が代表的なものです。
皮膚が過敏になるため、今まで皮膚トラブルがなかった方に急に湿疹が出ることもあります。
今まで使っていた化粧品が急に合わなくなったということもよくあります。

診断

皮膚トラブルの原因は更年期だけではありません。
貧血や肝臓・腎臓などの臓器障害によっても皮膚に症状が出ることがあります。
自己免疫疾患や悪性腫瘍(がん)の影響によって皮膚にサインが見られることもあります。
次に紹介する対策を行っても皮膚の状態が良くならない場合には、更年期と決めつけずに、皮膚科専門医の診察を受けることをおすすめします。
特に異常が見つからなかった場合には、更年期が原因である可能性が高くなります。

治療

正しいスキンケアを行う

スキンケアにおいて大事なポイントは3つあります。
「洗浄」「保湿」「遮光」です。
皮膚をきれいに洗い、アレルゲンや微生物を排除することが大切です。
ごしごし洗うと皮膚を傷つけてしまうので、ぬるま湯で優しく洗いましょう。
洗った後は軟らかいタオルで優しく水分をふき取りましょう。
保湿剤を使うことはとても大切です。
尿素は角層に浸透し、角層表面を軟らかくして皮膚の乾燥を和らげます。
ヘパリン類似物質も水分を吸着することで保湿効果を高めます。
尿素やヘパリン類似物質はドラッグストアで購入することが可能です。
紫外線を浴びると弾性線維が変性し、シワになってしまいます。
外出するときは日焼け止めを使用しましょう。
遮光できるマスクやアームカバーを使って、日に直接当たらないようにすることも効果的です。

生活習慣を見直す

心の状態は皮膚に反映されることが多いです。
気持ちが落ち込むと、皮膚にも湿疹やかゆみが出てしまいます。
更年期によって些細なことが気になったりイライラしたりする場合には、気持ちが落ち着く方法を考えてみましょう。
ホルモン補充療法や漢方薬が効果的な治療と言われています。
食事や睡眠も皮膚に影響を及ぼします。
暴飲暴食は避け、バランスよく食事をとりましょう。
睡眠をしっかりと取れるように生活のタイムテーブルを見直しましょう。

ホルモン補充療法

エストロゲンを補充すると、皮膚の弾力低下、皮膚の厚みの低下、水分量の低下を食い止めることができると考えられています。
ホルモン補充療法は、婦人科を受診しないと受けることができない治療です。
子宮を摘出されている場合には、エストロゲンのみを投与し、子宮を有する方には、エストロゲンに黄体ホルモンを併用します。
エストロゲン製剤には、内服するものと、皮膚から投与するもの(ジェル、パッチ製剤)があります。
血栓症予防の観点から、経皮製剤をおすすめしています。
黄体ホルモンは、連続投与と周期投与があります。
長らく月経がない女性には連続投与を行い、月経がある、もしくは最近まであった方には周期投与を行うことが多いです。
ホルモン補充療法を行う前には、子宮頸がん(体がん)の検査、経腟超音波検査、血液検査、乳がん検診を受けていただき、ホルモン補充療法を行ってもよいかどうかを判断しています。

まとめ

更年期の女性にみられる皮膚のトラブルは、卵巣機能の低下が原因の一つと考えられています。
エストロゲンは、皮膚を健康に保つという重要な役割を担っています。
エストロゲン低下により皮膚の弾力低下、バリア機能低下が起こります。
清潔に保つ、保湿を行う、紫外線から守ることが大切です。
保湿剤を使うことも大事なケアです。
食事や睡眠など、生活習慣を見直すことでも、皮膚の症状を和らげることはできます。
ホルモン補充療法も皮膚症状に有効かもしれないと考えられている治療法です。
つらい症状はひとそれぞれです。
ひとりで我慢せずに、お気軽に婦人科でご相談ください。
一人でも多くの女性が、健やかな更年期を過ごせることを祈っております。

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カテゴリー:更年期障害  投稿日:2025-05-16

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