子宮筋腫の原因・症状・診断・治療
子宮筋腫とは?
子宮の壁は筋肉でできています。その筋肉の中にできる腫瘍(できもの)が子宮筋腫です。
子宮筋腫は良性の腫瘍ですが、まれに子宮肉腫という悪性の腫瘍との鑑別が必要となります。
良性なので、筋腫ができただけで命に関わることにはなりません。
ただ、筋腫ができた場所やサイズによっては月経量が増えたり頻尿になったりして生活の質を落としてしまいます。
原因
子宮筋腫ができる原因はまだはっきりとわかっていません。筋腫は月経が定期的に来ているときには大きくなることが多いですが、閉経するとサイズが小さくなります。よって筋腫の発育には女性ホルモンが関係していると考えられています。
症状
筋腫はできた場所によって「筋層内筋腫」「粘膜下筋腫」「漿膜(しょうまく)下筋腫」に分類されます。
粘膜下筋腫
子宮の内側の膜である、子宮内膜に接している筋腫です。子宮内膜は月経のときに剥がれる血液でできています。粘膜下に筋腫ができると、内膜の表面積が大きくなるので月経のときの出血量がかなり増えます(過多月経と言います)。子宮の内膜に受精卵が着床して妊娠が成立するため、粘膜下筋腫が不妊の原因になることがあります。
粘膜下筋腫が胎児のように子宮の口から出てくることがあります。これを筋腫分娩と呼びます。筋腫分娩が起こると大出血するので緊急手術を行います。
筋層内筋腫
最も頻度が高い筋腫です。サイズが小さいと自覚症状はでません。筋腫が大きくなって、子宮内膜に接するようになると内膜の表面積が大きくなるので過多月経になります。月経痛の原因となることもあります。
子宮の前には膀胱、後ろには直腸があります。筋腫が大きくなると膀胱や直腸を圧迫し、排尿や排便がスムーズできなくなることがあります。
漿膜下筋腫
子宮の表面を覆っている膜を漿膜と言います。漿膜の直下にできた筋腫のことを漿膜下筋腫といいます。子宮の外側にできるので症状は出にくいです。まれに筋腫の茎の部分がねじれて腹痛がおこることがあります。
診断
超音波検査を行うと筋腫は黒く丸く映ります。筋腫ができている場所や大きさを測って診断します。サイズが大きくなると、CT検査でも筋腫ができているとわかります。CTは子宮や卵巣を見ることを得意とはしていないため、さらに詳しく筋腫のサイズや位置を知りたい場合には骨盤MRI検査を行います。
筋腫が急に大きくなった時や、筋腫の内部の映り方が典型的ではない時には悪性の可能性が否定できないので、骨盤MRI検査を行います。
過多月経の有無については、血液検査を行って貧血があるかどうかで客観的に判断します。
治療
ただ筋腫ができているだけでは治療の適応とはなりません。1年に1-2回程度、超音波の検査を行い、筋腫のサイズ変化や自覚症状がないかを見ながら経過観察することができます。
過多月経や月経痛など生活に支障が出るような症状があれば治療適応となります。
子宮筋腫に対する治療法には大きく分けて2種類あります。ホルモン療法と手術療法です。
ホルモン療法
子宮筋腫は女性ホルモンによって大きくなります。GnRHアナログ製剤を投与することによってエストロゲンの分泌を抑えて筋腫が小さくなるようにします。
今までは注射製剤、点鼻薬しかありませんでしたが、数年前に内服薬が発売され治療の選択肢が広がりました。
女性ホルモンの働きを抑えるので、更年期症状が出ることがあります。イライラやホットフラッシュがみられ、このような症状には漢方薬で対応することが多いです。骨密度を低下させるので、投与期間に制限があり、最大6か月までしか使用することができません。
手術療法
内服治療では症状のコントロールができない場合に行います。挙児希望がある場合には、筋腫のみを摘出する手術を行い、挙児希望がなければ子宮全摘出術を行います。手術前にホルモン治療を併用して筋腫のサイズを小さくしてから手術を行うこともあります。
上記以外にも、困っている症状に対して対症療法を行います。
月経困難症
鎮痛剤や漢方薬を使用して痛みを抑えます。低用量ピルを内服して頂くと、月経量が減り痛みが少なくなります。
過多月経
月経量が多く鉄欠乏性貧血を来している場合には、内服もしくは注射で鉄を補います。月経時に止血剤を内服してもらうこともあります。
子宮内黄体ホルモン放出システム(商品名;ミレーナ)を子宮内に装着すると、黄体ホルモンの働きによって子宮内膜の増殖を抑えることができ、月経量の減少が期待できます。
まとめ
月経量が多いのに放置している女性はたくさんいらっしゃいます。
大きなナプキンが1時間ほどで漏れてしまう、タンポンを併用しても追い付かないという場合には月経量が多い可能性が高いです。
また、健康診断で貧血を指摘されたときには、子宮筋腫による過多月経が原因であることが多いです。
生理の量は他人と比較できないため、過多月経に気づかず、毎日の生活の質を落としてしまっているケースはよく見られます。
婦人科を受診して頂くと、痛みを伴わない超音波検査で子宮筋腫を診断することができます。
つらい症状があるときには治療を受けて頂きますが、いきなり手術をするのではなく、まずはお薬での治療から始めることができます。
子宮筋腫の治療法には様々な種類があり、ご希望に応じて治療を受けることができます。
月経のことでお困りでしたら、気軽に産婦人科医にご相談して頂けると幸いです。
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カテゴリー:子宮筋腫 投稿日:2024-05-30
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