クラミジア子宮頸管炎の原因・症状・診断・治療
クラミジア子宮頸管炎とは?
日本国内で最も感染者が多い性感染症はクラミジアです。2020年には日本全国で2万8000人が感染したと言われています。
クラミジアに感染しても、男女ともに症状は軽く無症状であることも多いです。このため感染に気が付かないまま性行為をおこない、クラミジアはどんどん広がっていってしまいます。厚生労働省によるとクラミジア感染者は毎年1000人ずつ増加しています。
クラミジアは放置していても自然に治ることは基本的にはありません。それどころか放置することによって将来不妊症になってしまう恐れがあります。
クラミジアは強い感染力を持ち、たった1回の性行為でも感染することがあります。
正しい知識を持って、積極的に検査や治療を受けることでご自身の大切なからだを守ることができます。「もしかして感染してしまったかもしれない」と思いあたることがあれば、気軽に婦人科へご相談ください。
本日はクラミジア子宮頸管炎についてお話しします。
原因
クラミジア・トラコマティスには性行為によって生殖器に感染します。女性では子宮頸管炎と骨盤内炎症疾患を、男性では尿道炎と精巣上体炎を引き起こします。
クラミジアは咽頭(のど)にも感染を起こします。オーラルセックスにより感染している性器を舐めると、のどにクラミジアが感染してしまいます。
症状
クラミジアの潜伏期間は1〜3週間です。感染したあと数週間経過すると発症します。
子宮頸管炎を起こすと、帯下(おりもの)が増えたり臭いが変化したりします。しかし、半数以上のケースでは無症状であると言われています。症状だけでクラミジア感染を発見することは困難です。
クラミジア感染を放置していると、感染や炎症は性器内でどんどんひろがっていきます。子宮頸部→子宮体部→卵管→腹腔内(お腹の中)へと感染は広がります。
卵管はとても細い管ですが、妊娠成立において重要な役割を果たしています。クラミジアが卵管に感染すると、卵管の中や周りに炎症が起こり、管が狭くなったり詰まったりしてしまいます。卵管は卵子を輸送し受精に関わっている場所です。卵管が狭小化すると自然に妊娠することは難しくなります。つまり不妊症になってしまいます。
妊婦がクラミジアに感染すると、胎盤周囲に炎症を起こします。子宮収縮が増加し、流産や早産の原因となります。分娩時にクラミジアに感染している状態だと、産道で赤ちゃんがクラミジアに感染してしまいます。新生児に結膜炎や肺炎を発症します。
腹腔内にクラミジアが感染すると、お腹の中に癒着や炎症が起こります。癒着というのは臓器同士が互いにくっついてしまうことを言います。腹膜炎を起こすので急にお腹が痛くなり、重症例では救急搬送されることもあります。肝臓周囲に炎症を起こすことが多く、Fitz-Hugh-Curtis(フィッツ・ヒュー・カーティス)症候群という特別な名前がついているほどです。
オーラルセックスによりのどに感染すると、咽頭炎を起こします。のどが痛くなったり咳が出たりします。風邪と似たような症状を起こします。
診断
内診台に上がって頂き、帯下の様子を観察します。子宮頸管をぬぐい、検体を採取します。この検体をPCR検査に提出し、クラミジアに感染しているかどうかを判定します。
のどへの感染が疑われる場合には、うがい液もしくは咽頭をぬぐった検体をPCR検査に提出します。
クラミジアに感染している方では、同時に他の性感染症に感染していることが多く、特に淋菌との同時感染が多いと言われています。ご本人の同意を得ることができれば、同時に他の性感染症の検査も行います。子宮頸がんの検査についても受けていない方にはおすすめしています。
結果がわかるまでに数日〜1週間程度かかります。
☆先ほどもお話ししたように、クラミジアでは症状が何も出ないことが多いです。たった一度の性行為でも感染します。このため感染の疑いが少しでもあれば検査を受けることをおすすめしています。
- パートナーがクラミジアと診断された。
- いつもとは違う人と性行為をした。
- 性的パートナーが複数存在する
- オーラルセックスをした。
このような場合には検査を受けることをおすすめします。
治療
クラミジア感染が判明したら、抗菌薬を内服し治療を行います。以下のようにマクロライド系もしくはニューキノロン系の経口抗菌薬を治療に使います。
- アジスロマイシン 1000㎎を1回内
- クラリスロマイシン 1回200㎎ 1日2回 7日間
- レボフロキサシン 1回500㎎ 1日1回 7日間
- シタフロキサシン 1回100㎎ 1日2回 7日間
③と④は妊婦では原則投与しません。
強い腹痛を伴うような重症の方では入院して頂き、点滴での抗菌薬投与を行います。
☆パートナーも必ず検査と治療を受けてください。
☆治療後3週間以上あけて再検査を行います。クラミジアが治っているかどうかを判定します。自分もパートナーも治っていることがわかるまでは、性行為は控えてください。
まとめ
クラミジアは日本で最も多い性感染症です。男女ともに症状が出にくいので、自覚症状だけでは感染に気づくことはできません。相手に感染させる力が強く、たった1回の性行為でも感染してしまいます。オーラルセックスによる咽頭感染にも要注意です。
放置すると感染が広がります。不妊症になってしまったり、流産や早産の原因にもなります。
少しでも気になることがあれば、婦人科へ相談にお越しください。早めに検査や治療を受けることで、クラミジアは治すことができます。
参考文献
- 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023
- 性感染症 診断・治療ガイドライン2020
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カテゴリー:性感染症 投稿日:2024-05-30
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