性器ヘルペス

性器ヘルペスの原因・症状・診断・治療

性器ヘルペスとは?

性器ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスにキスや性行為によって感染することによって起こります。

ヘルペスウイルスに感染すると、性器に潰瘍や水疱ができます。初発時(初めて症状が出たとき)には激烈な症状が見られます。発熱したり鼠径(そけい)部のリンパ節が腫れたりします。

性器ヘルペスでは症状が治まった後においても完治することはありません。ヘルペスウイルスは神経節に潜伏感染するからです。何らかの理由によってからだが弱ってしまうと、ウイルスが再活性化し、再び性器に症状を引き起こします。

症状の強さは初発時と再発時で異なります。再発時の症状はマイルドです。

1年に何度も性器ヘルペスを繰り返してしまうことがあります。外陰部に痛みが出て生活の質を落としてしまいます。このような場合には予防的に抗ウイルス薬を内服して、発症を予防することができます。

本日は性器ヘルペスについてお話しします。

原因

ヘルペスウイルスに感染したことがある人は、症状がないときにおいても子宮頸管、尿道、肛門周囲からウイルスを排泄しています。

キスや性行為によって接触があると単純ヘルペスウイルスに感染します。

感染した後、2〜10日間の潜伏期を経て突然症状が出ます。

ヘルペスウイルスは神経節に潜伏感染します。感染した時には無症状であっても、時間が経って再活性化し初めて症状が出現することもあります。

ヘルペスウイルスを完全に排除できる薬剤はなく、症状が治まった後も完治することはありません。ウイルスが神経節に潜伏し、疲労・風邪・月経・性行為などを契機に再活性化して、性器に症状が出ます。

症状

初発時には激烈な症状が突然出ます。

外陰部や腟内に、浅い潰瘍や水疱がたくさんでき、強い痛みを伴います。38℃を超える熱が出ることもよくあります。鼠径(そけい)部のリンパ節が腫れます。

症状がかなり強い場合には、排尿や歩行することが難しくなることもあります。

抗ヘルペスウイルス薬による治療を行うと、1〜2週間で治癒します。

潜伏感染しているウイルスが再活性化することにより再発します。再発時は初発時と比べて症状は軽いです。外陰部や臀部に潰瘍や水疱を作りますが、病変の数は1〜数個程度であり少ないです。

再発する前には外陰部や太ももの内側に違和感や軽い痛みを感じる方が多いです。

ヘルペスは疲労やストレスにより再発します。再発しているということは「疲れている」というサインです。しっかりと休みましょう。

診断

内診台に上がって頂き、外陰部や腟内の病変を観察します。ヘルペスウイルスの皮膚所見は特徴的なので、見た目で判断することが可能です。

患部を拭った液を用いてウイルス抗原があるかどうかを検査することもできます。

治療

性器ヘルペスと判明したら、内服薬による治療を行います。

  • アシクロビル 200㎎ 1日5回 5~10日間内服
  • バラシクロビル 500㎎ 1日2回 5~10日間内服
  • ファムシクロビル 250㎎ 1日3回 5~10日間内服

抗ウイルス薬には外用剤(ぬり薬)もありますが、内服するほうが効果は高いです。

  • アシクロビル軟膏、ビタラビン軟膏 1日数回 患部に塗布

初発時、重症である場合には点滴での治療を行います。

  • アシクロビル 5㎎/㎏/回 8時間毎 7日間点滴静注

外陰部の疼痛が強いときには痛み止めも使います。

1年に6回以上再発を繰り返す場合には、再発予防を目的として抗ウイルス薬を1年間内服します。

  • バラシクロビル 500㎎ 1日1回 1年間内服

ヘルペスを発症しているときには、外陰部や腟内に痛みが出ます。性行為は控えましょう。

妊娠中の方は、分娩時にヘルペスを発症していると、産道を介して赤ちゃんに感染する危険性が高まります。性器ヘルペスの症状が見られたら、早めに主治医に報告しましょう。

まとめ

性器ヘルペスは一度発症すると、神経節に潜伏感染してしまいます。このため再び同じような症状がでることが多く、やっかいです。

外陰部に症状が出た時にはできるだけ早く抗ウイルス薬を内服すると、痛みが治まる効果が高いと言われています。早めに病院を受診しましょう。

1年に何回も再発してしまう場合には、外陰部の痛みによって生活の質が低下してしまいます。バラシクロビルを予防的に内服することで、再発を抑えたり、再発時の症状を和らげることが可能です。

性器ヘルペスでお困りでしたら、気軽に婦人科で相談していただきたいと思っています。

参考文献

  • 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023
  • 性感染症 診断・治療ガイドライン2020

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カテゴリー:性感染症  投稿日:2024-05-30

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