淋菌感染症の原因・症状・診断・治療
淋菌感染症とは?
日本国内で最も多い性感染症はクラミジアですが、クラミジアと同時感染していることが多いのが淋菌です。
クラミジア感染者が増加しているため、淋菌の感染者も増加傾向にあります。2021年には日本で約1万人が感染したと報告されています。
淋菌は強い感染力を持ちます。たった1度の性行為でも30%程度で感染することがあります。
近年は性行動が多様化しています。オーラルセックスやアナルセックスにより、咽頭(のど)や肛門/直腸に感染するケースが増えています。
淋菌は放置していても自然に治ることはありません。それどころか放置することによって重症化する危険があります。将来不妊症になってしまう恐れがあります。
正しい知識を持って、積極的に検査や治療を受けることでご自身の大切なからだを守ることができます。「もしかして感染してしまったかもしれない」と思いあたることがあれば、気軽に婦人科へご相談ください。
本日は淋菌感染症についてお話しします。
原因
淋菌には性行為によって粘膜が触れ合うと感染します。女性では子宮頸管炎や尿道炎を、男性では尿道炎を引き起こします。重症化すると女性では卵管炎や骨盤内炎症疾患、男性では精巣上体炎に進展します。
淋菌は咽頭(のど)や直腸にも感染を起こします。オーラルセックスにより感染している性器を舐めると、のどに感染してしまいます。アナルセックスによって性器⇔直腸に感染が起こります。
症状
淋菌の潜伏期間は2〜10日です。感染したあとすぐに症状が出ることが多いです。ただ、近年は症状が軽いケースが多くみられ、何も症状が出ないこともよくあります。
子宮頸管炎を起こすと、帯下(おりもの)の増加、不正出血、下腹部痛が出ることがあります。
膀胱炎を起こすと、排尿時の疼痛や頻尿になることがあります。
淋菌感染が重症化すると、感染や炎症は性器内から腹腔内へどんどんひろがっていきます。子宮頸部→子宮体部→卵管→腹腔内(お腹の中)へと感染は広がります。
お腹の中に淋菌が感染すると、腹膜に強い炎症が起こります。腸管、肝臓と腹膜の間に癒着(ゆちゃく)が起こり、臓器同士がベタベタとくっついてしまいます。急に強い腹痛を感じ、救急搬送されるほどの痛みが起こります。
卵管の周りにも炎症や癒着を起こします。卵管はとても細い管ですが、妊娠成立において重要な役割を果たしています。卵管は卵子を輸送し受精に関わっている場所です。卵管がせまくなると自然に妊娠することは難しくなります。つまり不妊症になってしまいます。
妊婦が淋菌に感染し、分娩時にも感染している状態だと産道で赤ちゃんが淋菌に感染してしまいます。新生児に結膜炎を起こし、治療が遅れると失明する可能性があります。
オーラルセックスによりのどに感染すると、咽頭炎を起こします。性器に感染している人の10〜30%で咽頭からも淋菌が検出されています。のどが痛くなったり咳が出たりして風邪と似たような症状を起こします。
アナルセックスにより直腸に感染すると、直腸炎を起こします。肛門周囲のかゆみ、不快感や下痢・血便などがみられます。
診断
内診台に上がって頂き、帯下の様子を観察します。子宮頸管をぬぐい、検体を採取します。この検体をPCR検査に提出し、淋菌に感染しているかどうかを判定します。クラミジアと淋菌は同時に検査することが可能です。
のどへの感染が疑われる場合には、うがい液もしくは咽頭をぬぐった検体を検査に提出します。
結果がわかるまでに数日〜1週間程度かかります。
治療
淋菌感染が判明したら、抗菌薬を点滴もしくは筋注し治療を行います。
- セフトリアキソン 1回1g静注 単回投与
- スペクチノマイシン 1回2g筋注(臀部)単回投与
重症の方では上記治療薬を数日間投与することを考慮します。
☆パートナーも必ず検査と治療を受けてください。
☆近年は薬剤が効きにくい淋菌が増えています。そのため治療後に治っているかどうかを必ず確認します。自分もパートナーも治っていることがわかるまでは、性行為は控えてください。
まとめ
淋菌はクラミジアに次いで日本で2番目に多い性感染症です。男女ともに症状が出にくいので、感染に気づかないことがよくあります。相手に感染させる力が強いため、感染に気付かないまま性行為を行い、どんどんと淋菌は広がっていくことになります。
一般的な性行為だけではなく、オーラルセックスやアナルセックスによる咽頭や直腸への感染にも要注意です。
放置すると淋菌は重症化します。急激な強い腹痛が起こり、治療が難渋してしまいます。不妊症になってしまったり、流産や早産の原因にもなります。産道を介して赤ちゃんに感染してしまうこともありえます。
コンドームを使わない性行為をした、いつもとは違う人と関係を持った、複数のパートナーがいるという方は、淋菌に感染している可能性が高くなります。
少しでも思い当たることがあれば、婦人科へ相談にお越しください。早めに検査や治療を受けることで、淋菌は治すことができ、あなたとパートナーのからだを守ることができます。
参考文献
- 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023
- 性感染症 診断・治療ガイドライン2020
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カテゴリー:性感染症 投稿日:2024-05-30
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