腟トリコモナス症

腟トリコモナス症の原因・症状・診断・治療

腟トリコモナス症とは?

トリコモナスという原虫が腟、子宮頸部、尿路において感染することによってさまざまな症状を引き起こします。

腟トリコモナス症は性行為によって感染します。トリコモナスに感染しても症状が出ないことがあり、気が付かないうちに性行為によって感染を広げてしまいます。

浴槽、プール、便器やタオル・下着を介してトリコモナスに感染することもあります。このため性行為の経験がない方においてもトリコモナスに感染することがありえます。よって幼い子供から高齢者まで、様々な年代の方で感染がみられます。

トリコモナス感染による症状は人によって違いがあります。10〜20%の感染している女性では無症状であると言われています。一方で、泡状で悪臭が強い帯下(おりもの)が出たり、外陰部に強いかゆみを引き起こすこともあります。

早めに検査を受け、適切な治療を受けることで治すことができる感染症です。

本日は腟トリコモナス症についてお話しします。

原因

トリコモナス原虫には性行為によって生殖器に感染します。女性では腟炎・子宮頸管炎や膀胱炎を、男性では尿道炎を引き起こします。

性行為だけではなく、日常生活において感染してしまうこともあります。

トリコモナスは水場において長時間生きられるという性質をもっています。

このため銭湯・温泉・サウナやプールに生息しています。浴槽やお風呂の椅子・床などに座った時に感染してしまうことがあります。トイレの便座を介して感染することもありえます。

感染している人と下着やタオルなど身に着けるものを共用することによって感染することもあります。

症状

トリコモナスに感染しても1〜2割の感染者では無症状であると言われています。女性では男性よりも症状は出やすいです。

トリコモナスは腟に炎症を起こします。帯下(おりもの)が増え、泡状になったり臭いが強くなったり黄緑色になったりします。外陰部や腟内が過敏となって、痛みが出ます。強いかゆみがでることもあります。

尿路に感染すると、排尿時の痛みや頻尿を引き起こします。

健康な女性の腟内には乳酸桿菌が多数存在し、腟内を洗浄して良い環境を保っています。良い環境の腟内は酸性です。何らかの原因によって乳酸桿菌が減少し、嫌気性菌や大腸菌が増殖して腟内の環境が悪化することがあります。この状態を細菌性腟症といいます。

トリコモナスによって腟炎を起こしているときには、細菌性腟症も同時に起こっていると考えられています。トリコモナスを治療することによって腟内の環境は改善します。

診断

内診台に上がって頂き、帯下の様子を観察します。帯下をぬぐい、検体を採取します。この検体を顕微鏡で観察すると、トリコモナス原虫を見つけることができます。原虫の数が少ないときには顕微鏡によって見つけることは難しいため、培養検査に提出します。結果が出るまで数日かかります。

治療

トリコモナス感染が判明したら、内服薬による治療を行います。以下の薬剤の投与中に飲酒をすると、腹痛、嘔吐、紅潮などがみられます。このため治療中〜終了後3日間は禁酒してください。

  • メトロニダゾール 250㎎ 1日2回 10日間内服

メトロニダゾールの内服は妊娠3カ月以内の妊婦ではできません。このため以下の通り腟錠による治療を行います。

  • メトロニダゾール腟錠 250㎎ 1日1回 10~14日間

治療終了後は、再度帯下の培養検査を行い治療が成功しているかどうかを確認します。

治療失敗時には7日間あけてメトロニダゾールを再投与します。それでもなお無効であれば以下の通りチニダゾールの投与を行います。

  • チニダゾール 200㎎ 1日2回 7日間内服

もしくは

  • チニダゾール 2000㎎ 単回投与

☆パートナーも同様の治療を行う必要があります。お互いに治ったとわかるまでは、再度感染してしまうリスクがあるため性行為は控えてください。

☆メトロニダゾール内服による治療効果は90%以上であると言われています。飲み忘れなくしっかりと治療を行えば、トリコモナスは治すことができます。

まとめ

トリコモナスには性行為によって感染します。感染すると帯下(おりもの)に不快な症状を引き起こします。

性行為以外の日常生活においても感染することがあります。プールや公衆浴場での感染が多いと言われています。性行為がなくても、帯下に何らかの症状がある場合にはトリコモナス感染である可能性が考えられます。

内服薬による適切な治療を受けると治すことができる感染症です。パートナーが診断された場合にも治療を受ける必要があります。

帯下(おりもの)の様子がいつもと違うときや、外陰部にかゆみや痛みがあるときには、トリコモナスが原因かもしれません。

気になる症状があれば、気軽に婦人科で相談していただきたいと思っています。

参考文献

  • 産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023
  • 性感染症 診断・治療ガイドライン2020

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カテゴリー:性感染症  投稿日:2024-05-30

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