糖尿病の合併症
糖尿病の初期症状はほとんど全くみられず、合併症が生じてから自覚症状が現れます。
それでは合併症にはどのような病気があるのでしょうか?
この記事では、糖尿病の合併症の種類、三大合併症、大血管症、合併症が起きる順番、合併症は治るのかについて解説します。
これを読めば、糖尿病の合併症の概略が理解できます。
糖尿病の治療をする際に役立ててみてください。
糖尿病の合併症「しめじ」「えのき」とは?
糖尿病の合併症には複数の種類があり、名称を覚えるのに語呂合わせが使われます。
細小血管障害「しめじ」
- 「し」:神経障害
- 「め」:目の網膜症
- 「じ」:腎症
大血管障害「えのき」
- 「え」:足の壊疽
- 「の」:脳梗塞
- 「き」:虚血性心疾患
2.糖尿病の三大合併症「しめじ」
細い血管が傷ついたり、つまったりすること(血行障害)で起こる合併症です。
2-1.糖尿病の合併症で神経障害とは?
神経を養う細い血管の血行障害から神経障害を起こします。
神経障害には、末梢神経障害と自律神経障害が含まれます。
手足の末梢神経障害
糖尿病では3つの末梢神経障害がみられます。
- 糖尿病性多発神経障害:両足もしくは両手・両足のしびれ・疼痛・異常感覚
- 両足のアキレス腱反射の低下・消失
- 両足の振動覚の低下:振動する感覚が分かりにくくなる
自律神経障害
体の働きを調節する自律神経の障害により、さまざまな症状が現れます。
- 瞳孔の機能異常:明暗に伴う瞳孔の大きさの調整がうまくいかなくなる
- 発汗異常:汗をかきやすい
- 起立性低血圧
- 便通異常:便秘や下痢
- 膀胱の機能障害など
2-2.糖尿病の目の合併症は?
目の細い血管も傷つき、さまざまな目の症状が現れます。
白内障(出現率60%)・網膜症(30-40%)・角膜症(2%)・緑内障(1%)・眼筋麻痺(0.2%)・視神経症(0.1%)
この中でも糖尿病性網膜症が最も重要な合併症です。
網膜症では、網膜の細い血管の障害から眼底出血・網膜剥離を起こし、視力低下・失明を来します。
2-3.糖尿病の合併症で腎症とは何ですか?
腎臓の細い血管の障害により腎機能障害を起こす合併症です。
糸球体障害から尿タンパク、尿細管障害から腎機能の低下を起こします。
初期にはほとんど全く自覚症状がありません。
進行すると、むくみ・貧血・高血圧がみられ、腎機能が高度に低下すると人工透析が必要になります。
3.糖尿病の合併症:大血管症「えのき」
太い血管がつまったり、破れたりすることで起こる合併症です。
3-1.糖尿病の足の合併症にはどのようなものがありますか?
糖尿病では神経障害と合わせて、足の末梢動脈の血行障害を起こします。
たとえば感染・潰瘍・足組織の破壊性病変などの病態です。
足の感覚鈍麻、足の変形、皮膚の乾燥・角化などの症状がみられ、重症化すると壊疽(えそ)を起こして下肢切断につながります。
3-2.なぜ糖尿病で脳梗塞が起こるのですか?
糖尿病では、血液の粘度の上昇、高血圧、脂質異常症、肥満症がみられ、動脈硬化が進行します。
動脈硬化が進むと血管がつまったり、破れたりします。
脳の血管がつまって、脳の組織が死んでしまうのが脳梗塞です。
血管が破れて出血するのが脳出血・クモ膜下出血です。
糖尿病では脳梗塞が多く、以下のような症状がみられます。
- 片麻痺:片側の手足が動かせなくなる
- 構語障害:うまく話せなくなる
- めまい・意識障害
- 急死することもあります
3-3.糖尿病による心臓の合併症は?
動脈硬化のため心臓を養う血管である冠動脈が細くなると、狭心症、つまると心筋梗塞を起こします。
2型糖尿病でHbA1cが1%増加すると、心筋梗塞の発症リスクが18%増加すると報告されています。
一般的に狭心症・心筋梗塞では激しい胸痛を起こすのですが、糖尿病性神経障害があると痛みを感じないことがあります。
この場合、心臓の合併症が起こったことに気づかず、悪化してしまいます。
4.糖尿病の合併症が起きる順番は?
糖尿病の三大合併症は「しめじ」の順番に起こります。
- 神経障害
- 網膜症
- 腎症
したがって新たにどの合併症が起こってきたかによって、糖尿病の病期が分かります。
5.糖尿病の合併症は治りますか?
早期で軽症のうちは改善が見込めます。
しかしある程度進行すると改善は難しい病気です。
進行した場合、合併症の症状を和らげる対処療法が行われます。
6.まとめ
糖尿病の合併症には、細小血管障害として神経障害・網膜症・腎症、大血管障害として足の壊疽・脳梗塞・虚血性心疾患が含まれます。
症状は、手足のしびれ、自律神経障害、視力低下、失明、むくみ、貧血、高血圧、足の壊疽、片麻痺、胸痛などです。
糖尿病の合併症は、早期で軽症のうちは改善が見込めます。
しかしある程度進行すると改善が難しい病気です。
医療機関に通院しながら、血糖のコントロールによる予防と、検査による合併症の早期発見に努めることが重要です。
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カテゴリー:糖尿病 投稿日:2025-08-01
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