辛い片頭痛…その対策とは?
日本での片頭痛(偏頭痛)の年間有病率は5-10%と言われていて、日本人の10人に1人はこの片頭痛を経験していることになります。
中でも若年~中年の女性に多く、30代・40代の女性の有病率は15~20%に及んでいます。
片頭痛を予防する最大の対策は、「自分の片頭痛を誘発する要因が何か」を探し、できるだけその要因を減らしていくことです。
ここでは片頭痛の原因となりやすいものをご紹介していきますので、ご自身の片頭痛要因を振り返ってみてください。
片頭痛(偏頭痛)ってどんな頭痛?
「片頭痛」は具体的にどのような特徴があるのでしょうか?
名前の通り、頭の片側のコメカミあたりがズキズキと痛むことが多いのですが、必ずしも片側とは限りません。両側や後頭部が痛むこともあります。
また、片頭痛には大きく分けて
- 前兆のない片頭痛
- 前兆のある片頭痛
の2タイプがあります。前兆は、
- 目の前がチカチカする
- 手足や唇や舌がチクチクしたりマヒしたりする
- 言葉が出づらくなる
などが痛みの60分くらい前におこる状態です。中でも目の前にまぶしい光が現れる前兆は、片頭痛を診断する上で重要なポイントになります。
※片頭痛の症状について詳しくは、『頭の片側がズキズキ痛むのは片頭痛?片頭痛の症状とは?』をご覧ください。
片頭痛の原因は?
片頭痛を誘発する原因は、
- 精神的要因
- 外的要因
- 病的要因
- 食べ物
など多岐に渡ります。
片頭痛そのもののメカニズムについては諸説ありますが、残念ながら、現時点では明確なことまではわかっていません(※詳しくは『片頭痛が起きるメカニズムとは?片頭痛の原因と作用機序』をお読みください)
しかしながら、多くの片頭痛(全体の約75%)では、痛みの発作を引き起こす何らかの因子があると言われています。
それは人によってさまざまのため、「何が自分の片頭痛を誘発しやすいのか」を考えてみることが、最大の予防につながるのです。
痛みの誘発原因がある程度特定できれば、できるだけそれを避けるように行動できますし、「あの痛みが急に襲ってきたらどうしよう」という不安も軽減されるからです。
その主なものとして、
- 精神的要因:ストレス、疲れ、緊張、寝不足、過眠
- 外的要因:天気や温度
- 病的(内的)要因:生理、高血圧、副鼻腔炎
- 食べ物:空腹、アルコール、チョコレートやチーズなどの特定の食べ物
が挙げられます。これらの要因および予防について詳しくみていきましょう。
1.精神的要因
片頭痛の原因として、もっとも多いのが精神的要因です。分かりやすく言えば、ストレスですね。片頭痛の方の約60%が、ストレスを感じたときに頭痛があるといい、25%の方は、ストレスから解放された時に片頭痛が起きるとされています。
ストレスがかかったときだけでなく、解放されたときも痛みが起こるのは意外な感じもしますよね。
ストレスは、色々なことを考え・指示を出す司令塔である脳に直接影響するといわれています。片頭痛に限らず、全ての慢性頭痛の大敵です。
とくに、ストレスによって自律神経のバランスが乱れることが、片頭痛と深い関係があると言われています。自律神経が乱れることで、様々な炎症物質の産生、脳血管への影響につながります。
ストレスの元としては、
- 仕事
- 交友関係
- 学業
など、人によって様々な要因が生活の中にはあると思います。ストレスを無くすことは難しいですが、「どのストレスが片頭痛を引き起こしやすいのか」を知っておくだけでも予防の意味があります。
また、こういったストレスに起因した
- 疲れ
- 緊張
- 寝不足
といった状態は、片頭痛に限らず多くの病気の増悪因子になります。
片頭痛で仕事ができず、さらに忙しくなって疲れがたまって、寝不足にもなり・・・
といった悪循環にはまってしまうと大変なので、ストレスはためこみすぎず、できる範囲で睡眠や休息をとるように気を付けてください。
ただし、過眠には要注意です。疲れていたら安眠を求めるのは正しい行動ですが、とり過ぎはかえって片頭痛の原因になってしまうことがあるのです。
寝すぎることで、
- 首や肩に負担をかける
- 副交感神経が優位になり続けることで血管が拡張する
など、片頭痛がおこりやすい状態になるため、睡眠は適度にとることが大切です。
2.外的要因
外的要因とは、特定の光や音、匂い、味など、外から与えられる何らかの刺激のことです。
あるデータによると、片頭痛の患者さんは
- 光過敏(69%)
- 音過敏(67%)
- 匂い過敏(57%)
- 味覚過敏(19%)
であると報告されています。
この他にも、
- 天候
- 温度
が関与することもあります。
1.光
光の中でも片頭痛を起こしやすいものとしては、
- テレビ・パソコン
- 携帯
- 映画などのスクリーン
など、人工的な光が原因となることが多いです。特に最近LEDの登場で、光に対して反応する方が増えているようです。
2.音
音では、
- テレビ・映画の音量
- 雷などの激しい音
- 騒音
など大きな音が原因になりやすいです。
3.匂い
匂いの中では、
- タバコ
- 香水
- 生魚や生肉
- 洗剤
が挙げられています。
4.天候
片頭痛に限らず、天候が悪いときは「身体が痛む」「何となく調子が悪い」と感じる方は多いのではないでしょうか。
片頭痛の患者さんも約53%の方が天候に左右されると言われています。
5.温度
急激な温度変化にも注意が必要です。
- 暖房や冷房
- お風呂
など、温冷の差が大きくなるようなときは血管の収縮・拡張もさかんになるため、片頭痛が引き起こされやすくなります。
片頭痛を誘発しやすい場所とは?
上でお伝えした通り、片頭痛は
- 人工的な光
- 大きな音
- タバコや香水などの匂い
などによって誘発されやすくなります。ですから、それらの要因にたくさん触れる
- デパート
- 電車
- 喫煙所
- 映画館
- スーパー
などに行ったあとは片頭痛がおこりやすいという方も多いかもしれません。片頭痛をおこした時、またはその前に行った場所をたどっていくと、何が自分の片頭痛を誘発しているかの手掛かりになります。
3.内的要因
内的要因とは、私たちの身体の中でおこっている変化などのことです。片頭痛にかかわるものとしては、
- 生理
- 高血圧
- 副鼻腔炎
- 腰痛や頚椎症
などが考えられます。
持病や身体に不調があればストレスがかかりますので、どんな病気でも原因になるかもしれませんが、とくに片頭痛との関与が深いのは主にこの4つです。
1.生理
片頭痛の内的要因として一番多いのは、女性の生理です。
片頭痛で悩む女性の約半分が、生理の開始2日前から生理後3日の間に片頭痛の自覚があるとされています。なぜその時期に片頭痛がおきやすいのか細かいことはわかっていませんが、
- 生理前後の急激な女性ホルモンの変化
- 生理によるストレス
などが関係しているのではないかと考えられています。
2.高血圧
高血圧の方では、脳の血管圧が上がることで脳を刺激し、片頭痛を引き起こしやすいことがあります。
3.副鼻腔炎
鼻がつまるストレスおよび、呼吸が浅くなることによる自律神経の乱れが起こり、片頭痛の原因になります。
4.腰痛や頚椎症
腰や首に痛みがあれば、そのストレスや、血液循環の悪さから脳への血液もとどこおりやすくなることから、頭痛を生じやすくなります。
4.食べ物
片頭痛に特徴的なのは、食べ物によって誘発されやすいということです。原因になりやすい食べ物としては、
- アルコール(とくに赤ワイン)
- チラミンを含む食べ物(たまねぎ、チーズ、チョコレート、かんきつ類、ナッツ)
- グルタミン酸ナトリウムを含む食べ物(カップ麺、スナック菓子)
- 亜硝酸ナトリウムを含む食べ物(ハムやサラミ)
が挙げられます。
片頭痛の方は、片頭痛が起きる前に何を食べたかを考えて記録してみると、原因の食べ物が分かるかもしれません。
1.アルコール
まずアルコールは、片頭痛の大敵と言われています。二日酔いを経験したことがある人は分かると思いますが、アルコール自体が頭痛の要因となります。
アルコールを飲むことで血管の拡張作用があり、それによって頭痛が起きると考えられています。
中でも赤ワインは、
- 血管拡張を促すポリフェノール
- 血圧を上昇させるチアミン
- 痛みに関与するヒスタミン
が含まれており、片頭痛の人は絶対に避けた方が良い飲み物として有名です。
2.たまねぎ、チーズ、ナッツ、チョコレートなど
血圧を上昇させるチアミンは、赤ワインに限らず多くの食品に含まれています。
とくに、
- たまねぎ
- チーズ
- チョコレート
- ナッツ
- かんきつ類
などが知られています。
とくにチョコレートは、赤ワインと並び片頭痛の敵として、かなり有名な食べ物です。
実際に片頭痛の誘因として、イギリスでは20%の人がチョコレートを挙げたとのことです。
赤ワインを片手に、チョコレートやチーズをつまみに一杯。オシャレなシーンではありますが、片頭痛の人にとっては最悪な組み合わせになってしまうわけですね。
3.カップ麺、スナック菓子
うまみ成分であるグルタミン酸ナトリウムも片頭痛の引き金になります。
カップ麺やスナック菓子の独特な美味しさはグルタミン酸ナトリウムの力が大きいのです。
これらの食べ過ぎは片頭痛に限らず、様々な病気の原因にもなりますので、注意しましょう。
4.ハムやサラミ
ハムやサラミも赤ワインのつまみによくなりますが、これらには塩分の一種である亜硝酸ナトリウムが多く含まれ、頭痛の増悪因子になり得るといわれています。
まとめ
多くの片頭痛には「痛みを誘発する原因」があると言われています。
何が原因になるかは人によって違いますが、
- ストレス
- 光
- 音
- 匂い
- 気温の変化
- 生理
- 持病
- 食べ物
など、日常的なところにその原因がひそんでいます。片頭痛を誘発している犯人が見つかれば、対策・予防がしやすくなって痛みへの恐怖もやわらいでいきます。
その対策として、片頭痛がおきたとき、おきる前に自分がどのような行動をしていたか、何かストレスになるようなことがなかったか、記録をつけてみる方法もお勧めです。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
カテゴリー:頭痛 投稿日:2020-01-07
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