更年期のイライラの原因と対策
更年期になると 、 些細なことが気になってしまったり、何気ないことでイライラしてしまったり、急に怒ってしまったり・・・感情のコントロールが難しくなることがあります。
イライラするということ自体は人としての自然な反応であり 、 病的ではありません。
ただ「イライラ」を強く感じ、毎日の生活に支障が出る場合には、何らかの対処が必要になります。
本日は更年期のイライラについてお話しします。
原因
イライラを感じる原因の一つとしては「不安」があります。
人間は強い不安を感じているとき 「 イライラ 」 という形で表面に現れてくることがあります。
不安症は 、 男性よりも女性に多くみられます。
ライフサイクルの中では更年期に発症しやすくなっています。
またホットフラッシュを感じている女性ほど不安を感じることが多かったという研究結果があります。
ホットフラッシュを改善することで 、 不安感の軽減が期待できるかもしれません。
原因の二つ目としては「うつ」があげられます。
うつと言うと 、元気がなくなって塞ぎ込んで寝込んでいる状態を想像する方が多いかと思います。
ただ、軽度のうつ状態では、活気の無さよりもイライラ状態がメインとなることもあり、本人も周囲もうつと気づかないことがあります。
うつ病発症は更年期女性に多いといわれており、閉経前と比較し 、 閉経後では1.8倍の女性が抑うつ状態であるという報告もあるくらいです。
女性ホルモンが不安定になることも大きく影響しています。
症状
以前は気にならなかったことでイライラしたり怒りっぽくなります。
感情のコントロールが難しくなり、周りの人に八つ当たりしてしまうこともあります。
感情の起伏が激しくなり、急に漠然とした不安を感じることもあります。
同時に「 ほてり」や「のぼせ」を感じることもよくあります。
日常生活において疲れやすくなり、強い倦怠感を感じ 、 やる気がなくなってしまいます。
診断
イライラをいつから感じるようになったかをお聞きします。
普段の生活環境や抱えている問題についても差し支えなければ、お話してもらえるとありがたいです。
月経が規則正しくきているか、痛みや出血量について教えてください。
精神症状と月経の時期に関連があるかどうかについてもお話しください。
他の更年期症状(ほてり、のぼせなど)があるかどうかを確認します。
血液検査を行い、女性ホルモンの測定を行います。
閉経状態にあるのか、閉経が近いかどうかを判断することができます。
甲状腺機能の異常によっても更年期症状に似た症状が出ます。
甲状腺ホルモンの測定も行います。
肝臓や腎臓などの臓器障害や貧血などによっても精神症状が出ることがあるため、血液検査で同時に評価します。
治療
血液検査で異常がある場合には、その治療を行います。
臓器機能に明らかな異常がなく、女性ホルモンが低下している場合には、更年期障害として治療を行います 。
更年期障害の治療は、ホルモン補充療法と漢方療法がメインです。
エクオールというサプリメントもおすすめです。
エクオールは大豆イソフラボンから産生される成分で、エストロゲンと似た働きをすると言われています。
このため女性ホルモンが低下しつつある更年期女性の様々な症状を改善することが期待されます。
ホルモン補充療法
子宮摘出後ではエストロゲン単独、子宮を有する場合にはエストロゲン+プロゲステロンを併用して投与します。
皮膚に問題がない場合には、エストロゲンは貼り薬や塗り薬などを用いて経皮投与することが望ましいです。
プロゲステロンは内服薬での投与となります。
月経がある女性では周期投与を行い、閉経後では連続投与を行います。
エストロゲンとプロゲステロンがともに含有されている、パッチ製剤もあります。
ホルモン補充療法においてはわずかに乳がんのリスクがあります。
治療開始前に乳がん検診を受けることをおすすめします。
漢方療法
ご自身の体質に合わせて漢方薬を処方します。
症状が改善しているかを聞き取りしながら、合うお薬を処方していきます。
上記治療を行っても、精神的な症状が強い場合には、心療内科をご紹介します。
まとめ
更年期の女性では、女性ホルモンの分泌が不安定となり、こころやからだに大きな変化が現れます。
女性ホルモンは急に無くなってしまうのではありません。
上がったり下がったりを繰り返しながら、やがて閉経に至ります。
家庭や仕事において重要なポジションにあり、さまざまな問題に直面していることも症状悪化の一因となります。
更年期障害にはさまざまな対処法があり、ご自身に合う治療法が見つかれば生活の質が上がります。
イライラ、不安、疲れやすいという症状でお困りでしたら、お気軽に婦人科で相談して ください。
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執筆者紹介
大澤 亮太
医療法人社団こころみ理事長/株式会社こころみらい代表医師
日本精神神経学会
精神保健指定医/日本医師会認定産業医/日本医師会認定健康スポーツ医/認知症サポート医/コンサータ登録医/日本精神神経学会rTMS実施者講習会修了
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