メニエール病とは|原因や治療法について医師が解説
メニエール病とは?
メニエール病は内耳に起こる障害で、突発的なめまい、難聴や耳鳴りなどの聴こえの症状、そして第Ⅷ脳神経(聴神経)以外の神経症状がないといった症状を特徴とする病気です。
内耳のリンパ液のバランスが崩れることで発生すると考えられています。
今回の記事では、メニエール病の原因やリスク要因、治療について解説していきます。
メニエール病の原因とリスク要因
メニエール病の原因には、内耳という部分が関係していると考えられています。
内耳とは
内耳とは、耳の奥の骨でできた構造で、聴覚を司る蝸牛(かぎゅう)と平衡感覚を司る前庭系(ぜんていけい)の2つの部分から成り立っています。
そして、内耳の中は液体で満たされています。
この内耳の中に存在している液体の量が過剰になる内リンパ水腫が原因となり、メニエール病の症状が引き起こされると考えられています。
こうした内リンパ水腫には、ストレスや不規則な生活が関連しているのではないかと言われています。
しかし、なぜ内耳の液体の分泌量が増えたり、あるいは再吸収量が減ったりしてしまうのかはまだわかっていません。
メニエール病の症状の特徴
メニエール病は30〜40歳代、やや女性に多いと言われています。
メニエール病の症状は、重度のめまい(回転感)、耳鳴り、一時的な聴力低下などによって特徴付けられます。
これらの症状は数時間持続することがあり、疾患が進行するにつれて症状が頻繁に発生するようになります。
メニエール病の診断基準としては、以下の3つの症状を満たすこととされています。
- めまい症状が反復する。めまいは誘因なく発症し、持続時間は10分程度から数時間程度。
- めまい発作に伴って難聴、耳鳴り、耳詰まり(医学用語では「耳閉感(じへいかん」)などの聴こえの症状が変動する。
- 第Ⅷ脳神経以外(聴神経)以外の神経症状がない。
この3つの症状を満たしていることがまずは必要です。
さらに、聴力検査や平衡機能検査、神経学的検査や造影剤を用いたMRI検査で内リンパ水腫が見つかるなどの条件を満たすかどうかを調べます。
そして、確定診断例や確実例、疑い例、というように分類されます。
メニエール病の最初の発作の際には、めまいを伴う突発性難聴と区別ができないことが多いです。
そのため、診断基準に示されている、めまい発作が何回も繰り返されるということを確認した後に、メニエール病の確実例と診断されます。
診断方法
メニエール病の診断は、主に症状の評価、患者の医療歴、身体検査、そして特定の検査結果に基づいて行われます。
先ほど述べたように、診断基準には、患者の症状の種類と頻度、およびその他の原因による症状の除外が含まれます。
以下は、メニエール病の診断プロセスにおける主要なステップです。
1. 病歴と症状の評価
症状の記録
患者が経験するめまいの発作の頻度、持続時間、強度を詳細に記録します。
耳鳴り、一時的な聴力低下、耳の圧迫感の有無についても詳しく聞きます。
病歴の確認
過去に耳の病気やけが、めまいの発作、聴力の変化などがあったかを確認します。
2. 身体検査
耳科学的検査
耳を詳しく調べ、外耳や中耳に問題がないかを確認します。
神経学的検査
めまいの発作を引き起こす可能性のある他の神経系の問題を除外します。
3. 聴力検査
純音聴力検査を行い、聴力の低下の程度とタイプを評価します。
メニエール病では、低音域での聴力低下が典型的です。
4. 平衡機能検査
ENG/VNG検査
この検査は、電気眼振図検査(electoronystagmography : ENG)あるいはビデオ眼振検査(video nystagmography : VNG)のことです。
眼振という目の動きを詳しく調べることができ、この検査で、平衡機能に異常がないかを確認します。
回転椅子検査
平衡機能をさらに詳しく調べるために使用されることがあります。
5. 追加検査
MRI検査
脳や内耳の画像を撮影し、腫瘍や多発性硬化症など、他の原因によるめまいを除外します。
造影剤のアレルギーがなければ、MRI用の造影剤を用いて詳細に内リンパ水腫などを調べていきます。
メニエール病の治療
メニエール病の治療は、発作が起こっている時と発作が起こっていない時に分けられます。
発作急性期
発作が実際に起こっている時の治療です。
めまい発作の症状を軽くするための抗めまい薬や、吐き気などの症状を軽くするための制吐(せいと)薬、さらに発作に対する精神的不安を抑えるための鎮静薬が用いられます。
脱水傾向になるので、点滴治療も行ってきます。
発作間欠(ほっさかんけつ)期
内耳の液体の循環を改善するための薬を使ったり、あるいは内リンパ水腫に対して利尿薬を用いることもあります。
その他には、水分を大量に摂取することや、有酸素運動、また心理的・精神的治療、中耳加圧治療があります。
外科的治療
メニエール病に対する上記の治療を行っても、3〜6ヶ月の生活指導や薬物治療が効かず、めまいが頻発し、難聴が進行する場合があります。
メニエール病全体の10〜20%では、こうした難治例がいると考えられています。
こうした方には、内リンパ嚢手術や前庭神経切断術、ゲンタマイシン鼓室内(こしつない)投与という外科的な治療が行われることもあります。
生活上の注意点
メニエール病の管理には、カフェイン、アルコール、タバコの摂取を避け、ストレスを減らすことが重要です。
また、定期的な運動が推奨されます。
メニエール病は治療可能な状態であり、適切な管理と治療を受けることで、多くの患者が症状の軽減と良好な生活の質を維持できます。
まとめ
今回の記事では、メニエール病の原因や治療法について解説しました。
メニエール病の原因であると考えられている内リンパ水腫は、いまだなぜ発症するのかはわかっていません。
しかし、現時点では治療はめまいの症状を改善することとされています。そして、生活習慣の改善も重要です。
めまいの症状が続くようであれば、耳鼻咽喉科やめまい専門医を受診するようにしましょう。
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カテゴリー:耳の病気 投稿日:2024-06-22
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