前庭神経炎の診断プロセス
前庭神経炎の診断プロセスは、患者の症状や医歴を詳しく聞き取ることから始まります。
主な症状には、めまい、平衡感覚の喪失、耳鳴り、聴力の低下があります。
診断の過程で、以下のようなステップや検査が行われることが一般的です。
1.病歴聴取と身体診察
患者の病歴、特にめまいやバランス感覚に関連する症状について詳しく聴取します。
身体診察では、神経系の機能を評価するための様々なテストが行われることがあります。
例えば、以下のようなものがあります。
視覚的観察
・眼振の確認
眼振は、目が不随意に動く現象で、前庭系の異常が原因で発生することがあります。
患者に一点をじっと見てもらい、目の動きを観察します。
・視線固定の能力
患者が動く対象や静止した対象を視線で追い続ける能力を評価します。
バランスと歩行のテスト
・ロムバーグ試験
患者に足を揃えて立ってもらい、目を開けた状態と目を閉じた状態でのバランスを比較します。
目を閉じたときにバランスが著しく悪化する場合、感覚や前庭系の問題が疑われます。
・歩行テスト
患者に直線上を歩いてもらい、バランスや歩行の様子を観察します。
歩行時にふらつきが見られる場合、前庭の機能に問題がある可能性があります。
2. 聴力検査
前庭神経炎は耳の内部に影響を及ぼすため、聴力検査を行って聴力の低下や異常がないかを確認します。
前庭神経炎の場合は基本的には聴力低下はないので、正常聴力か、あるいはめまいとは関連のない難聴を示すこともあります。
3. ビデオ診断検査
ビデオ眼振計(VNG)やビデオ頭位変換眼振計(VHIT)などの検査を用いて、眼の動きを評価し、平衡感覚に関与する前庭系の機能を調べます。
4. 回転検査
特殊な椅子に患者を座らせ、回転させることで前庭機能を評価します。
5.カロリックテスト
温水または冷水を耳道に流し込み、前庭反応を引き起こすことで前庭機能を検査します。
6. MRIやCTスキャン
脳や耳の構造を詳細に観察し、他の疾患や異常が前庭神経炎の症状を引き起こしていないかを調べます。
これらの検査を通じて、前庭神経炎の診断が行われ、他の疾患(例えばメニエール病や脳腫瘍など)が原因で同様の症状が起こっていないかを除外します。
前庭神経炎の治療方法
前庭神経炎は後遺症を残さずに治ることも多いのですが、眼振などの後遺症が残ってしまう場合もあります。
そのため、症状が出た当初にステロイドを用いて神経障害の進行を防ぎ、神経機能を回復することを目標とした治療が広く行われるようになっています。
急性期の治療
治療は症状の管理が中心となります。
めまいが強く、眼振がある場合には入院の上、安静を保つようにします。
薬物療法には、めまいを軽減するための薬や、吐き気を抑える薬が用いられます。
場合によってはステロイドが用いられることもあります。
慢性期の治療
急性期がすぎたら、早めに離床し前庭の機能を回復させます。
リハビリテーション療法が回復を助けることもあります。